瀬戸内寂聴

Profile

1922年5月15日生まれ。僧位は僧正。1997年文化功労者、2006年文化勲章。学歴は徳島県立高等女学校(現:徳島県立城東高等学校)、東京女子大学国語専攻部卒業。学位は文学士(東京女子大学)。徳島県徳島市名誉市民の称号を取得。京都市名誉市民。元天台寺住職現名誉住職。比叡山延暦寺禅光坊住職。元敦賀短期大学学長。代表作には『夏の終り』や『花に問え』『場所』など多数。古典に造詣が深く、特に『源氏物語』に関する著書は多数。98年『源氏物語』の現代語全訳完成。近年では『源氏物語』に関連する著作が多い。これまでの著作により多くの文学賞を受賞した。

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本屋も大きく変わった


――手書きだけでもすごいのに、墨というのは凄いですね。いろいろなスタイルがあるんでしょうが、でもそれも含めてすべて変わってくるんでしょうね。何が良い悪いではなくて。


瀬戸内寂聴氏: (山田)詠美さんなんてね、あの年代でもやっぱりペンで書いていますよ。林真理子さんもたしか手書きですよ。それからもっと若い人でもね。江國(香織)さんも確かペンだった。今は知りませんけれども。

――書き手も読み手も使いやすいものを使うのがよいということでしょうか。


瀬戸内寂聴氏: そうそう。そんなの何でもいいのよね。書くのはね。

――電子書籍のようなものが仏教の教えだとかに何か役に立ちそうだなと思うことはありますか? 例えば、東日本大震災のときもそうだったと思うんですけれども、本が欲しいけど入りにくい、物流の問題もありますし、学校の教育の問題も――。


瀬戸内寂聴氏: 本が欲しいと言って入らないというのがずいぶんあってね。本屋が、昔は要求する人、需要が少なかったからね。だから本を買いたいと思えば、何が欲しいと電話したら本屋が必ず届けてくれたのよ。雑誌なんかは黙っていたって本屋が届けてくれたの。

だけど今は本屋に行ったってなかなか買えない状態じゃないですか。そういうのも変わりましたね。それから昔は町に小さな本屋、古い本屋が沢山あったんです。そういうところは主人も小僧も全部分かっていたね、本のことを。今は本屋が大きくなったからね、そんなの分からないじゃない。そういうのも変わりましたね。

――そういった面でも電子書籍は役に立ちそうですか。手元にあったらすぐ本が手に入る、例えばインターネットで本が買えたりだとか、沢山ある本を持ち歩かなくても――。


瀬戸内寂聴氏: そりゃ便利ですよ。私なんか、ちょっと長編を書くのにどこかに行こうと思ったら、トランクいっぱい資料を持っていかなきゃいけない。

――トランクですか。


瀬戸内寂聴氏: そう。箱に入れて送ったりしなきゃならないじゃないの。昔は物なんか書くとそうだったんです。そういう意味ではそれは便利になると思いますよ。

――仏教の経典というのも膨大な量になると思うんですけれども、ああいったものも――。


瀬戸内寂聴氏: そうなるでしょうね。便利なものは直ぐになります。国会図書館なんかもそうなっているでしょう。とっくにね。だって場所がなくなるじゃないの。私なんか資料とか好きで買った本は、とても家に置けなくなったから、徳島に文学館を作って貰って、そこへ全部送りましたよ。トラックで何台も。3万冊ぐらい。

紙の本は残る、絶対に――


――3万冊はすごいですね。電子化への心理的な抵抗のようなものはないんですか? 紙の良さとかみたいな。


瀬戸内寂聴氏: 電子ブックもなかなか綺麗なものですよ。装丁もキレイな絵がパッと出ますしね。

紙の本は残ります。絶対に残ります。今でも高い本があるでしょう、特別な本。ああいうのを買う人が数万人はいるの。だからそれだけを作っていても成り立つんですよ。便利なものは便利で使う、使いっぱなしだけれどもね。だけどどうしても貯めておきたいとか、特に愛着があるなんていうのは必ず出ますよね。だから紙の本が無くなるということはないと私は思う。

――そうですね。最後に瀬戸内さんにとっての本というのは、どういう存在でしたか?


瀬戸内寂聴氏: いやもう、本に知識をすべて与えられたからね。私はやっぱり子どもに、とにかく本を読ませなきゃだめだと思いますね。学校で習う教科書というのは知れているからね。やっぱり自分で本を沢山読んだ人と読まない人といったら、話して分かりますよね。本を読まない人間はこの商売はできないのね。悩んだりするときに答えを……いま身の上相談っていっぱい来ますけれどもね、自分で考えられますよね、本を読んでいたら。これはどうしたらいいかな、とかね。あの小説の中でそっくりなのがあったなとかね。

瀬戸内寂聴氏

そして、やっぱり本を読むことにおいて、その本が電子ブックであろうが何であろうがいいんですよ、また違うのが出てくるかもしれない。とにかく知識を得るということはやっぱり読書ですね。

どんな商売の人でも、例えば銀行マンになってもお金の計算だけじゃないでしょう? やっぱり教養がなきゃね。教養というのは書物を読むこと。そこから宗教も出てくるし哲学も出てくる。恋愛なんかする場合もやっぱり本を読んでおかなきゃね、口説けないじゃない。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 瀬戸内寂聴

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