BOOKSCAN(ブックスキャン) 本・蔵書電子書籍化サービス - 大和印刷

世界中の本好きのために

古籏一浩

Profile

1969年生まれ。長野県のまんなかあたりに在住。昔はmz-700でゲーム制作、少し前はWeb/JavaScript、今は映像なども手掛け、幅広いスキルを持っている。WEB上でのノウハウ、情報公開にも積極的。Google API Expertとしても活躍している。書籍は50冊ほどに渡り、Web関係の書籍多数。主な著書として『JavaScriptポケットリファレンス』(技術評論社)、『10日でおぼえるHTML5入門教室』(翔泳社)など。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

全てのデバイスは「30年後も使えるか」が基準


――電子書籍関連のお話をお伺いさせていただきたいのですが。


古籏一浩氏: そうですね。今そこに『kobo』があるけど、それは30年たったら動いて使えると思いますか?まあダメでしょうね。

――『Kobo』の使用感などはどうですか?


古籏一浩氏: 2度と使わないよって感じはしますね。大体アプリケーションが最初から入らなかった。Mac版は特に。Windows版もそうだったけど、インストールしても起動しないですからね、まともに。昔のKindleもいじりましたね。『Kobo』はあれと比べれば確かに早いし、ちゃんと縦書きにはなってます。

――30年たってもちゃんと使えるのかというのは、古籏さんの中でひとつの大きなポイントになっているのでしょうか。


古籏一浩氏: そうですね。もっというと、うちにはこういう骨董品の古書もあります。気が向いたので近所のショッピングセンターの骨董市で買ったんですよ。ひらがなで書いてあるけれど読めない(笑)。

――隔世の感がありますね。


古籏一浩氏: 一応和紙なら1000年以上持ちますからね。電子書籍とか書籍っていうのは長期間残すのか、単にぱっと見て捨てるようなものでいいのか、ライトノベルとか小説みたいな字が多いのもあれば、できるシリーズとかああいう複雑にレイアウトしてあるのもありますからね。そうすると一言で電子書籍にすればOKっていうけど、書籍にすること自体が難しいですよね。

――今の電子書籍の普及状況の問題点やご希望などはありますか?


古籏一浩氏: 出版社が電子書籍を出すこと自体が本当に良いのかという疑問はありますね。例えば貴重な資料を1回紙で刷ってしまえば、出版社の責任において保管しなくても、国会図書館が保管できるわけですよ。でも楽天がうんと頑張って『kobo』が世界中普及しちゃった。でも楽天が何かの拍子に事業をやめちゃって、その資源を外国に売却しちゃったら・・・。そうしたら本の資産は全部外国に行ってしまうわけですよ。そうしたら自分の国の本なのにお金を払えと言われますよね。そういう所が想定されますよ。大体自分のメールとかも海外のサーバーにあったりするわけですし。情報が筒抜けですよね。今は楽天の『kobo』が電子書籍のベストだと思っても3年後は、「もうそんなの全く読めませんよ」って言われたらどうするんだと、多分みんな思っていますよね。紙で買っておけば間違いなく自分のものですから。物理的にね。

――そこが足かせというか、爆発的に普及しない原因なのでしょうか?


古籏一浩氏: いろんな所に問題がありすぎて、早々には行かないですよ。大体じゃあ昔の本でも、懐かしいからPDFでもいいから電子化しろと言われても、データがあるのに開けないし見られない。作る側にそもそも問題があるんですよ。出来上がったレイアウトがたいがいぐちょぐちょですからね。だからそれを『EPUB』にしようとするとやり直しなんですよ。自分でDTPをやるとわかると思うんですが、テキストベースの本の電子化は楽なんですよ。あとはフォーマットが決まっているもの。文字があって、図があると。こんなのは文字と画像をただ流し込めばできちゃう。でもレイアウトが複雑な本は困るわけですよね。図の上にさらに図があったりする。これを『EPUB』で電子化というと難しいわけです。もう挫折ですよね。大半こんなのが多いんですよ。校正やチェックを誰がするのという問題もありますし。あと、電子書籍でみんなやりたいのはAmazon型の集中管理ですよね。でも、そこがこけたらもうアウトですよね。

人類の文化の歩みを残すためにも、全てを電子化しない方がいい



古籏一浩氏: どんなものでも100年経てば非常に価値が出るものなんですが、人類が2000年か3000年後は生きているかもしれないけど、例えば今のコンピュータ文化、コンピュータを使った世界がなんらかの拍子に崩壊したとする。また1からやり直しだけど、今度はまた同じような歴史をたどるはずですよね。大体。その時に例えば、漫画で言うドラゴンボールがあるじゃないですか。まあ5000年ぐらい経ったとしましょうか。それで、日本で発掘調査したら、ドラゴンボールの本が出てきた。それで他の本は出てこない。
漫画を見ると人間が空を飛んでいるわけです。「なんだこれは、昔の人間は空を飛んでいたのか」と。ところがもっとまずいことに、アメリカで発掘しても、フランスでも香港でも世界中あちこちで同じような本があって、「昔の人間は間違いなく空を飛んでいたはずだ」とか、とんでもない解釈がされてしまったら・・・。きっと、余計な情報が消えさると、そんなオチになっちゃうわけですよ。だから、僕は余計な情報というのは非常に大事だと思っています。司馬遼太郎なんかも、時代考証の資料として、普通の人の日記を集めていました。いろんな庶民の日記を照合していくとこういう文化の中でこうなっていたということを知るために。今だとドラゴンボールは漫画本だってわかっているけど、5000年経ったら漫画文化が無い可能性はありますし、ひょっとすると『ドラゴンボール』が正しい歴史書になるかもしれない。まずいですよね。

――ということは、電子書籍以外にも紙で資料を残す必要があると。


古籏一浩氏: 考えとしては、例えばどこかに統括してもらって、そこに全部データを打ち込むと。それで紙の本は紙の本で、保存用として残しておくか受注生産にするって手ですね。

――選択肢として紙の本も残しておくということですね。


古籏一浩氏: そうそう。手元に残しておきたい長期保存と、今とりあえず読めればいいものと。

未来を読むのには『日経サイエンス』を読むといい



古籏一浩氏: 僕は本を自分で沢山自炊しているんです。自炊すると読まなくなる。これは確かですね。あれば満足なんだと思います。所有しているという満足感ですね。もうひとつわかったのが、自分の本もPDFだと、調べる時プログラム系はすごく楽だということです。非常に便利ですね。

――ご自身が書かれた本が、電子化の際に裁断されることについて、何か特別な思い入れはございますか?


古籏一浩氏: それは全く無いですね。紙は劣化しますしね。僕の田舎の家は、家が3軒あるうちの2軒は全部本で埋まっているんですよ。親が買ったものや僕が買ったもので。面白い雑誌と言えば、『日経サイエンス』ですね。多分将来の流れがどうなるのかを知りたいなら、『日経サイエンス』を見たほうが早いですね。あれが10年後とか20年後とかの世界をのぞかせてくれる。読むと「ああ未来はこうなるんだな」というのがわかるから。今の携帯とかスマートフォンの特集も、確か1992年か90年近辺にやっていましたよ。

――92年といったらもう20年前ですよね?


古籏一浩氏: 15年ぐらい経つとそのシステムが使えるようになって、20年たつとみんなに浸透しているという法則があるわけです。そういうことを覚えておいて、読んでおくと、「ここに投資しても無駄だ」っていうのがわかる。とても丁寧に書いてありますよ。逆に一番あてにならないのは経済関係の週刊誌ですね。売れているけれど、あれをあんまりあてにしちゃいけないと思います。僕はあそこに書いてあることは全部うそだと思っていますよ。あんなに外れる予想は無いから。『iPhone』は何故売れないかとかね。こんなものは売れないとか書いてある。でもその半年後にバカ売れしているわけですよ。でもなんでこんな雑誌が生き残っているのかと思ったら、状況対応力が優れているからですよね。
最近思うのが、編集者の価値っていうのがどれぐらいかわかりました。計算したことありますか? 編集者をきちんと入れて、原稿を書いて本にしたものと、自分でただ書きおろして『Google AdSense』とかに広告をはりつけて売ったものがあるとして、売れ行きがどれぐらい違うと思います? 編集者によって違うんですけど、自分一人でやった時の大体2万倍です。1万か2万倍。編集者の価値っていうのはそのくらいあるんですよ。こっちの売り上げは1000円しか無いのに、編集者にお願いすると200万円とかそれぐらいになってくるんです。だから最近編集者の価値がどれぐらいかを、数値化したいという人もいるわけです。

――インタビューを読まれる読者に向けて一言メッセージをお願いできますか。


古籏一浩氏: 電子書籍に対して? それはこれしかないです。あまり期待しないことですよね。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 古籏一浩

この著者のタグ: 『英語』 『漫画』 『海外』 『数学』 『コンピュータ』 『インターネット』 『可能性』 『紙』 『ノウハウ』 『歴史』 『研究』 『本棚』 『お金』 『雑誌』 『世代』 『プログラミング』 『スマートフォン』 『レイアウト』 『アプリ』 『プログラマー』 『売り上げ』 『ライトノベル』

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
著者インタビュー一覧へ戻る 著者インタビューのリクエストはこちらから
Prev Next
ページトップに戻る