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世界中の本好きのために

高野秀行

Profile

1966年、東京都八王子市生まれ。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。1992-93年にはタイ国立チェンマイ大学日本語科で、2008-09年には上智大学外国語学部で、それぞれ講師を務める。近著に『またやぶけの夕焼け』(集英社)。『ワセダ三畳青春記』(集英社文庫)で第一回酒飲み書店員大賞を受賞。

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電子書籍と紙の本は、ユーザーは一緒でも別のものと考える



高野秀行氏: 電子書籍関係の記事とかを読んでいて、腑に落ちないところがあるんです。電子書籍と紙とどっちがいいとか、すぐそういう話になるじゃないですか。僕はもうこの二つは比べるものじゃないと思っているんです。電子書籍を使う人は、基本的にものすごく本が好きな人しかいないと思う。刺激的な動画や画像や音楽がネット上にあふれているのにわざわざ白黒の字だけのものを読みたいなんていう人はおかしい(笑)。電子化されてまでも本が読みたいなんて紙の本が異常に好きな人ですよ。だから紙の本は読まなくて電子書籍だけが残るということはありえないと思うんですよ。本を仕事でも使いたいという人たちだから、紙と電子はもうまったく対立しない。書籍の電子化で本当に必死になるのは書店だと思うんですよね。書店はもう紙の本しか売らないので、奪い合う顧客は同じだから。

――個人で紙の本を電子化する場合には、本を裁断する必要が出てきます。高野さんは本を断裁するということについて、何か抵抗などはございますか?


高野秀行氏: 売れ残った本なんて、片っ端からものすごいスピードで断裁処理をしていくんですよ。出版社だって倉庫代はすごくかかるでしょう? だから、僕の本なんかでも随時断裁されていくわけですよね。で、断裁されているうちに、ロングセラーで少しずつ売れていて、重版がかかったりとかね(笑)。結局トータルで売れている分は、初版分しかなかったみたいなこともある。昔から、何十万、何百万という単位で断裁しているわけだし。今どき読んだ本を断裁することに、心理的だとか何とかというのは、それは感情論でしかないと思いますよ。

――電子書籍に関して心理的な抵抗みたいなものはございますか?


高野秀行氏: 紙で読むに越したことはないと思いますよ。もし物心ついた時から普通に電子書籍に触れていたら、それがしっくりきて、紙の本なんかまったくなじまないと思うし。単に習慣の問題で、僕はもうそういう風に育ってきてるので、紙の方が好きなんです。でも、電子書籍が本当に活用できるのは、旅行中や外国にいる時だと思いますね。電子書籍の活用として、家に本が多すぎるから電子で処理するという記事は良く出てくるけど、僕は「もっと重要なことがある」と思っています。例えば、海外に住んでいる日本人は100万人以上いるわけです。その人たちが、本が買えなくてすごく困っている。それで、日本にいる日本人と、海外にいる日本人と比べると、海外にいる人の方が圧倒的に本を読むわけですよ。異文化にとり囲まれていると、自国の文化にすごく興味を持つし、そこに戻っていくというか、そこに何かを見いだしていくわけです。そこで日本語の本に飢えてすごく読みたくなる。そんな時にとにかく本が手に入らない。バンコクとかマレーシアとかそういうメジャーなところとか、パリやロンドンなら紀伊國屋もあるけど限られているし、しかも値段が高い。そうした時に、電子書籍というのはものすごい福音だし、海外にいる人はこれからどんどん読むと思いますよ。海外はとても大きなマーケットだと思います。

旅行中は、資料や参考書籍などはできれば電子化したい


――電子化が進めば海外に住んでいる日本人がもっとスムーズに日本の本を読むことができますね。


高野秀行氏: いやー、それはほんとうに大きいですよ。僕は時差がなく、同じ値段で本が自由に手に入るんだったら、本当に外国に住んでもいいですね。僕が日本にいるメリットの何割かぐらいは、日本語の本が自由に入手できることなので。外国で例えば執筆作業したい、書きたいと思う時に、難しいのは資料を全部持ってかなきゃいけないことなんですよ。ノンフィクションをやっているから、それはしょうがない。でも、大量の資料を持って移動することは、めちゃくちゃ大変です。もし電子化してあれば、場所はどこでも書けますよね。

――旅行や取材の時には、どのようにされているんですか?




高野秀行氏: 取材へ行く時も大変ですね。まず、辞書とか資料のたぐいをかなりの量を持っていくのですごく重いんです。そこだけでも電子化して持っていけたら楽ですね。向こうで「あれどうなってたんだっけ」とか、「どういう問題があったんだっけ」というのをチェックできるので。本3冊とか持っていくとそれだけですごく重い。それから、僕は英語の資料をけっこう使うんですが、取り寄せるのにすごく時間がかかる。つくづく思うんですが、日本は世界から見ると、へき地の離島みたいなもので、英語の本や資料をAmazonで注文しても、時間がかかる。早くて2週間くらいかかる。やっぱり今欲しいわけですよ。でも来ないから、2週間のあいだどうしてればいいんだよと思う。中古のものなんてもっと時間がかかったり、キャンセルされたりすることがあるんです。要するに本1冊わざわざへき地の離島に送っても、利益にもならないし、面倒くさがられる。でも電子書籍だったら瞬時に手に入る。デメリットはそこでいっぱい資料を買っちゃってますます赤字が増えちゃったりすることかな(笑)。

インディ・ジョーンズや『ムー』が好きだった少年時代


――高野さんの幼少期からの読書歴について伺えますか?


高野秀行氏: 子どもの時から本はすごく好きでしたね。母親が幼稚園くらいの時から、読み聞かせをしてくれていたみたいなんです。少し大きくなって小学生ぐらいになると、自分で読むようになった。今でいう岩波少年文庫や、ホームズとかルパンとか江戸川乱歩の明智小五郎シリーズやドリトル先生のシリーズを読みました。ドリトル先生は大好きでしたね。

――実際に執筆活動を始められたのは、いつ頃からでしょうか?


高野秀行氏: 初めて書いたのは、早大探検部のとき、アフリカのコンゴに怪獣を探しに行った話ですね。『幻の怪獣ムベンベを追え』(PHP研究所。その後『幻獣ムベンベを追え』と改題され集英社文庫)です。あの話は、けっこう行く前に話題になっていたので、出版社から、「体験記を書きませんか」という依頼を2、3社から受けたんです。で、そのうち、一番早く来たのがPHP研究所だったので、「分かりました」といって、僕が早稲田大学探検部のリーダーだったので、代表して「じゃあ書かせてもらいます」と書いたのが最初なんです。だから、それまで、自分が物書きになるとか考えたこともなかったし、本当にたまたまですね。それで、書いてみたらわりと評判が良かったんで、「おう、こういう手があったか。これはおいしいな」と思ったんですよね。自分の行きたい辺境の地に行って、それを本にして生活できるならすごいと思った(笑)。現実は全然そんなに甘くなかったですけれどね。もともと就職するつもりはなくて、外国へ行って暮らしたり、研究者になりたいとか漠然とそんな風に思っていました。

――学生時代の読書の中で、印象に残っている本はございますか?


高野秀行氏: 高校時代はインディ・ジョーンズが好きだったので、学研の『ムー』という雑誌に出てくるような、「超古代文明」とか、「アトランティスの謎」のようなテーマの本が好きでした。謎を解き明かすのがとにかく好きでしたよね。それから全く趣向がちがうけど、筒井康隆や藤沢周平も好きで、発売されたものは全部読んでました。大学に入ってからは、文化人類学の本やガルシア=マルケスみたいな南米の文学、藤原新也や金子光晴なんかもよく読んでましたね。

著書一覧『 高野秀行

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