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高橋克徳

Profile

1966年生まれ。一橋大学大学院修士、慶應義塾大学大学院博士課程単位取得。野村総合研究所、ワトソンワイアットを経て、2007年、サザンオールスターズや福山雅治らを抱えるエンターテインメント企業「アミューズ」のグループ企業として設立された株式会社ジェイフィールの創設メンバーとなり、組織活性化、人材育成などの研修やコンサルティングを行っている。2010年より現職。『不機嫌な職場』は、28万部を超えるベストセラーに。主な著書に『潰されない生き方』『明日から部下にイライラしなくなる本』『職場は感情で変わる』『人がつながるマネジメント』など。

Book Information

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大学で2浪、肺を破って入院の2重苦の時代


――それでは、高橋さんの本との関わりについて伺えればと思います。学生時代はどういった本を読んでいらっしゃいましたか?


高橋克徳氏: 今回、「そもそも僕はどういう本を読んできたんだろう」と思い返してみたんですよ。僕は中学、高校ぐらいまでは色々な本を読んでいましたけれども、妹の影響もあって例えば星新一さんとか新井素子さんとか、何かちょっとSFとか空想小説みたいな物が多かった。アイデアや発想が面白い物を読んでいたなと思います。それから、大学を受験するわけですが、僕は大学受験に失敗して、2浪したんです。2浪が決まって、その直後に自然気胸、肺を立て続けに2回破って2か月半位入院をしました。

――2か月半入院されたんですね。入院をきっかけに何か心境の変化のようなことはありましたか?


高橋克徳氏: 入院をすると、心臓病棟だったので、命を亡くしかけたおじさんが沢山いたんですね。そのおじさんたちが、唯一の若者に人生を語ってくれた。死にそうな瞬間に駆け巡ったこと。助かって今思っていること。いろんな話をしてくださったんですね。「いやあ、人間っていつ何が起こるか分からないよ、だから生きている間、真剣にきちんと生きた方がいい」とか、そんな事を言われて、いつ死んでも「よく頑張って生きたな」と自分で思える生き方をしないといけないなと思ったんですね。

――人生の大先輩たちが助言してくれたんですね。


高橋克徳氏: 退院後、自宅浪人をして、塾にも行かず一人で家に閉じこもる1年間でした。病気もまだ完治せず、肺が痛いから外にもなかなか出られなかった。その時に福永武彦さんという、フランス文学者の本に出会って、ほぼ1年中その人の本を読み続けたんです。

――どういった本でしたか?


高橋克徳氏: 福永武彦さんのテーマは「生と死」がテーマなんです。実際に彼も肺の病気を患っていて長期の入院をしている。そういう背景もあって、『草の花』(新潮社)という本に最初に出会った時には、生きる事と死ぬ事、愛や孤独を、すごく考えさせられたんですよ。だからどちらかというと僕の中で「人の原点」というのは孤独なんですよ。人って孤独な生き物だし、やっぱりすごく奥深い所で色々な事に悩むものなんだなとすごく感じましたね。だから多分、人の苦しみとか悲しみを、自分の中の深い所で考えざるを得なくなった時期が浪人時代だったんですね。

――大学時代はいかがでしたか?




高橋克徳氏: 大学に入ってからは逆にいろんな仲間に囲まれて、バンドやゼミに熱中しました。大学時代とか大学院時代に「ニューサイエンス分野」が流行ったんですね。それは物理学や生物学の世界ですが、今までは要素還元主義といって、色々な物の全体を分解して、その1個1個を検証すれば物質の性質が分かり、基本原則が分かると思われていた。ところが、そうではないんじゃないかと。例えば分解して部分を取って、その部分をもう1回組み合わせてみた所で同じ物にはならないと。という事は、部分と部分をつないでいる物があるはずだ。あるいはそこの中に全体と個というのが完全に独立した物じゃなくて、全体と個の内包関係みたいな物があるんだとか。そういう新しい議論が当時盛んだったんです。僕はその分野の本を色々と読みあさって、ものすごくはまったんです。その時に僕の中で、「確かに1人1人は孤立した個だけれども、一方で個人は個人だけで成り立っている物じゃない」という考えが確立されたんです。人間は「お互いの関係性や周囲との関わりによって成り立っている物」だと。逆に、自分自身も周囲によって色々な影響を受けるし、自分も色々な影響を与えている、それがお互いの関係性であり社会を作っていくという。そこに対するこだわりとか意識がすごく高くなったんです。だから社会人になって、色々な企業の研究をやったり個人の研究をやったりしている中で、やはりその考えと結び付けていつも研究をしていました。

人は周囲との関係性なしでは、生きていけない


――今のお考えの核となる物が、大学時代に確立されたんですね。


高橋克徳氏: 人って結局、孤独な物だし、孤独と常に向き合わざるを得ないけれども、その一方で、だからこそ周囲との関係という物を必要としている存在なんだと思う。それを抜きにして何かを語っても、結局上っ面に感じられるなということを、根っこでずっと思っていました。でもコンサルティングの仕事を続けていくと、そうはいっても企業は収益や利益を出さなければならない。そのために、人はどういう風に働けばいいかとか、どうやって上司はやる気を引き出すのかとか考えなくてはならない。人をパーツみたいに扱って、それぞれをどうやって上手く機能させたら最大のパフォーマンスが上がるかみたいな事を考えている人たちもいる。なんて傲慢な論理がまかり通るのだろうと思っていた、ずっと疑問だったわけです。仕事をしながらも。組織や人はそんな簡単な物じゃない。

――今、そのような事がだんだん分かってきていますね。


高橋克徳氏: 今、ジェイフィールで組織感情診断というものをやっていて、「ご機嫌な職場」と「不機嫌な職場」との違いを分析したんです。「ご機嫌な職場」って、あたたかいだけの仲良し集団ではないんですよ。むしろ、無理をしてでも頑張らないといけないとか、強い緊張感を持っていたり、謙虚さとか厳しさをすごく持っている。一方で「不機嫌な職場」は逆で、自分は主体的だし、支え合おうという気持ちがあるのに、周囲の人たちは違うと自分を正当化して、周囲を否定する人が多くいます。どうしてこんな差が生まれるのか。それは周囲のことが見えなくて、閉じ込められた人たちは、自分を守ろうという心理が働きやすくなるからです。最初は前向きな人も、閉じこもる中で、気付いたら防御的になり、批判的な事を平気で口にしてしまう人間になってしまう。周囲からも自分からも、向き合うことから逃げてしまったら、結局は自分を追い込んでしまいます。

――向き合うという事は、自己肯定する事でもあるという風におっしゃっていらっしゃいましたね。


高橋克徳氏: 他人に対してであれ、自分に対してであれ、向き合うことは苦しいことです。でも、相手をよく知り、自分をよく知る中で、自分の良さも悪さも見えてくる。その悪い部分があったとしても、そこに向き合い、どうにかしたいと思っている人は、そんな自分を肯定できるようになります。

著書一覧『 高橋克徳

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