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世界中の本好きのために

上杉隆

Profile

1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。大学在学中から富士屋ホテル(山中湖ホテル)で働き、卒業後NHK報道局へ勤務。26歳から鳩山邦夫の公設秘書などを5年間務めた後に退職。その後「ニューヨークタイムズ」東京支局取材記者を経て、フリージャーナリストに。2012年より、メディアカンパニー「株式会社 NO BORDER」を設立。文化放送「吉田照美 ソコダイジナコト」のコメンテーターとしてもレギュラー出演するなど、政治・メディア・ゴルフなどをテーマに活躍中。近著に『新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか』、『大手メディアが隠す ニュースにならなかったあぶない真実』、『メディアと原発の不都合な真実』

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未来の世代のために、今のダメな言論システムを破壊したい


――先ほど紀里谷監督とお話されたと仰っていましたが、一緒に活動されていらっしゃるんでしょうか?


上杉隆氏: 紀里谷さんと提携して『NO BORDER×FREEWORLD』というのを作りました。今後、一緒になっていろいろなことをやっていこうという話になったんです。僕がいま『NO BORDER』でやっているのは、ハフィントン・ポスト(米国のインターネット新聞)とかプロパブリカ(米国の非営利の報道メディア)とかポリティコ(米国の政治ニュースサイト)みたいな感じの新聞形態のメディアを先取りしたもの。「こういうやり方があるんだ」と賛同してくれる人たちで作っていけばいいと思っている。それで紀里谷さんと猪子さんと3人で、どう進めていけばいいかということでミーティングをしたんです。チームラボの猪子さんに入ってもらったのは、いろいろな形のメディア空間を作ろうと思っているからですね。

――なぜ『NO BORDER×FREEWORLD』を作ろうと思われたんですか?


上杉隆氏: やっぱり、くだらない言論空間のシステムを何とか破壊したい。風穴を開けるだけでも開けておきたいと思ったからです。僕たちの世代で壊しておかないと後から来る若い世代が萎縮してしまうんじゃないかという気がして。そういう意味では未来のためにも何かやろうと思ったんですね。僕らより上の世代が「はい、どうぞ」と席を譲ってくれることを待っていてもしょうがない。僕は、その席を自分から取りにいかなくちゃいけないと思っている。別に誰かがやってくれてもいいんですよ。ただ、僕は、それは自分の役割じゃないかなと思っています。

――具体的にはどういったことから始めているんですか?


上杉隆氏: 7、8年前から記者クラブシステムを潰そうとしています。ただ、これをやっても何の得もないんですよ。よく勘違いされているのは、記者クラブを潰すことでメディアを私物化をしようとしてるんじゃないかとたたかれるんです。でも、アホかって話ですよ(笑)。僕が代表を務めている自由報道協会(報道を目的とする人ならば、フリーランスの記者であろうとインターネットの記者であろうと、誰もが参加できる記者会見を主催している協会)も私物化していると言われてるんだけれど、僕はこの協会のために身銭を切っているんです。『NO BORDER』だってかなりの額を出資している。どちらもまだまだ赤字ですよ。

――なぜそれでもやろうと思われたんでしょうか?


上杉隆氏: なぜやっているかというと、やっぱり〝ジャーナリズムで得たものはジャーナリズムにお返ししないといけない〟と思っているからです。これは、ニューヨークタイムズの時に習ったことで、僕は全財産を日本のメディアが変わるためにつぎ込んでもいいと思っている。これは誰かがやらないと変わらないと思うんです。たまたま僕の場合は、ゴルフの仕事もしていて、そっちが本業だとも思っているので、日本のジャーナリズムなんて本当はどうでもいいんです(笑)。でも、何か自分にできることはないかなと思っていろいろなことをやっている。海外ではこれがふつうのスタイルだよと見せてあげる。後はそれに気づいた人が「あ、こういうのもありなんだ」とみんなが真似してくれればいいんです。

日本は変化に鈍い。『電子維新』が来たとしても、みんな後で気づく


――上杉さんは変化のきっかけをつくっていらっしゃるんですね。


上杉隆氏: 中東とか、あるいはヨーロッパ諸国もそうだけれど、そうした国は社会的な変革が1日でパーンと来ることもある。でも日本の場合は、そういう変革が何年間か掛かって緩やかに起るんですよね。ようするに日本では、「この日が革命の日ですよ」とみんなが意識できないわけ。何年間かのスパンで変化が起こって、後から後世が「あれは明治維新だった」と名付けたりするわけですよ。日本は、じわじわ修正する革命なんです。だから今も実はメディア環境の革命期にあって、いわゆる本というものが〝紙〟から〝電子〟に移っているんだけど、それが一般に普及されるまでに時間がかかるんです。

――日本は変化するスピードが遅いのでしょうか?


上杉隆氏: 日本人は急激な変化に慣れていないんですよ。社会全体が一瞬でワッと変わることに対する恐れがある。僕もニューヨークタイムズにいた時、昨日まで一緒に働いていた人間が、次の日からワシントンポストにいて「おーっ!」って驚いた経験があるんです。米大リーグのイチロー選手のトレードなんかも日本人はなかなか受け入れられないですよね。「何でイチローは昨日までシアトルマリナーズだったのに、今日からニューヨークヤンキースなんだ?」ってなりますよね。これがアメリカだとすぐ受け入れられるんです。でも日本は、こうした変化を心の中で整理するまでに時間がかかっちゃう。

国家官僚は、メンツや利益よりも未来を考えよ


――今後、電子書籍は普及していくと思われますか?




上杉隆氏: 電子書籍に関しては、いつか当たり前のように普及すると思います。紙より便利なんだし。国会図書館だって全部電子書籍化する方向ですよね。電子書籍化しないと、物理的にすべての書籍が納まりませんよ。そうした流れをなぜ既得権を持つ人たちはダメと言うのか。そういう意味では、官僚や記者クラブなども含めて、自分たちの既得権益とつまらないメンツを守るために、国家の利益を本当に大きく損ねていると思います。

――出版業界や国家官僚は、今後どうなるといいと思われますか?


上杉隆氏: もっと先を見てほしいですね。100年じゃなくても1年の計でいいと思います(笑)。「今を見るな、1年先を見ろ。」と言いたいですね。

(聞き手:沖中幸太郎)

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