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世界中の本好きのために

中谷彰宏

Profile

1959年大阪府生まれ。1984年早稲田大学文学部演劇科卒。大学在学中は映画史を専攻し、1ヶ月に100本の映画を観るという目標を掲げ、4年間で約4000本の映画を観る。博報堂でCMプランナーを務めたのち、独立。1991年(株)中谷彰宏事務所を設立。現在、執筆・講演など、幅広い分野で活躍している。ビジネス、マナー、小説、恋愛エッセイなど多ジャンルにわたり書籍を執筆。著書は900冊を超える。CDも『月刊中谷彰宏』など多数。ベストセラー『面接の達人』は、現在も毎年、改訂され、就職活動中の学生のバイブルとなっている。
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中谷彰宏が予想する『電子書籍の未来』とは



早稲田大学を卒業後、博報堂に入社。CMプランナーとして活躍後独立、中谷塾を主宰。生き方から恋愛、ビジネスまで幅広く執筆・講演活動を精力的に行っている中谷彰宏さんに、著者として電子書籍の未来についてお伺いしました。

“理想”は未来に『1ヶ月10円』で電子書籍が読めるようなビジネスモデル


――電子書籍が普及するとどういった変化があると思いますか?


中谷彰宏氏: 僕自身は電子書籍の読者というよりも、書く側なのですが、電子書籍が普及する事によって、何が起こるかと言うと、「本がタダになる」というのが電子書籍の理想の未来形だと思っています。

――本が「タダ」になるとはどういったことですか?


中谷彰宏氏: 例えば、1ヶ月の課金がたったの10円で読めるとか。イメージとしては、僕は今著作が900冊あるんですが、その本全部が月々10円で読めるといった感じになります。何故それができるかというと、電子書籍というのは流通コストも製造コストも、限りなくゼロに近づくわけです。今までの本の定価が1冊1000円、1500円というのが決まっているのは、製造原価や流通コストなどそれぞれが上積みしていって生まれた価格があって定価が決まる。それがあるからみんな納得して本を買っているわけですね。これは世界中共通ですよね。世界には本が高い国もあるし安い国もあるんだけど、電子にすると圧倒的に製造コストが減るということが起こります。

――製造コストが減ることで、販売する価格を10円だったり、「タダ」にするのはなぜですか?


中谷彰宏氏: 定価を『今までの価格の半分にしましょう』とか、『3割にしましょう』とかはナンセンスですね。でも、製造費がそれだけ安くなっているんだったら、『全部の本が月々10円で読める』という形を作って、その形が世界中に広まった方が、最終的にはビジネスモデルとしては、僕は見返りが大きいと思う。その方が、ユーザー側としても使いやすいし。

本が電子書籍化する究極のメリットとは。


――ユーザーのメリットとしてはどういったことがありますか?


中谷彰宏氏: 「10円課金モデル」で、ユーザーのメリットは何かというと、1つは「図書館並みに本が安く読める」こと。2番目は、「かさばらない」こと。つまり在庫を持たないで済む。僕の本を読んでいる人で、例えば「中谷さんの本を全部持っています」というファンの人は、家の中が本であふれちゃって大変な事になっているんですね。

――電子化されることで、本をたくさん所持するスペースの問題が解消されますね。


中谷彰宏氏: 僕自身だって自分の本をキープするだけで、900冊分の本棚が必要なわけです。それで、通常の家庭には、そんなに本を置くことはできない。今は家の中の物をどんどん減らす時代です。そうなってくると本棚の置き場所が家の中に無くなってくる。もし、今の電子書籍が端末に1000冊入るとしたら、予想として未来の電子書籍の保管スペースはクラウドコンピューティングにつながったら無限になるわけです。自分のところにデータを保存していなくても、読む時もつながっていればいいわけですから。だからある意味保管スペースの限界は無くなる。

――著者にとっては、電子化されることでどういったメリットがありますか?


中谷彰宏氏: ユーザー側のメリットでもあるけれど制作サイドのメリットは何があるかというと、絶版がなくなること。今までの紙の本は、本屋さんで見て次の日買おうと思ったら品切れということが多かった。本はロットの数が少なくて、商品としては極めて珍しいぐらいに全ての物がビンテージみたいなものなんです。ほとんどの本が絶版になってしまう。これだけの貴重なコンテンツが絶版状態にあるので非常にもったいない。電子書籍は、その絶版がゼロになるということなので、ユーザー側からしても、買おうと思ったらその瞬間アクセスして閲覧することができる。また、製本などが関係ないので1ページごとでも買える。ボールペン1本でも家まで配達してくれることが、当たり前になってきている時代の中で、なぜ本は丸々1冊買わなくちゃいけないのかということですよね。

――必要な部分だけ購入することができるんですね。


中谷彰宏氏: 例えば占いの本を買う時に、自分はおひつじ座で、他の星座はいらない。12分の1しか必要ないのに、他の星座のページまで買わなくちゃいけないのか。その部分だけ欲しいという人が出てきた時に、そういう選択肢があるのがいいですね。法律専門の出版社でいうと、昔の判例集は絶版になっているけれど、電子書籍で出版すれば判例を調べようと思った時に、いくらでも調べることができる。こういう絶版になっているけれど優良なコンテンツを出版社としても電子書籍で出すことができる。ユーザーとしてもそれを利用できるようになるというのは電子書籍の利点ですね。だからどこでも手軽に読めるという、一番表層の部分だけの問題では決してない。だから電子書籍が普及すると、読書形態が根本的に変わります。

電子書籍の市場は『世界』に向かって開かれている


――読書形態はどのように変化するでしょうか?


中谷彰宏氏: 例えば、先日僕の読者で、ケニアのロゴマ君という人が中谷塾に来ました。彼に「何から僕を知ったの?」と聞いたら、「最初、中谷さんの本を読んだ」と言ったんです。最初に、僕の本を読んだ時は、ピンとこなかったそうで、次に僕のDVDをTSUTAYAで借りたら凄い面白かったらしいんです。それでもう1回本を読み直してみたら、DVDと同じで面白かったと言うんです。これは本から始まってDVDへ行って、また本へ帰ってくるという面白いケースですよね。興味深いのは、普通DVDへ行ったら行ったきり帰ってこない。DVDがあればいいとなるのに、なぜロゴマ君は本に帰ってきたのか疑問だった。聞いてみたら、そのロゴマ君が読んでいるのは電子書籍なんです。彼は全部本をiPadに入れて読んでいるそうです。

――ケニアの方も中谷さんの書籍を読まれるんですね!


中谷彰宏氏: ロゴマ君の例からもわかるように、電子書籍になると、海外の本が自由に読めるようになるんですね。これは非常に大きいことです。僕が20代の頃には、アメリカにロケで行った時に、Barnes&Noble(バーンズ&ノーブル/アメリカ最大級の書店チェーン)などの書店に行って、海外にしかない本を買ったものです。日本に洋書で入ってくるものには限りがあるので、向こうで面白い1コマ漫画というのを、買って帰っていた。それがこれから電子書籍になれば、海外の本が自由に手に入るようになりますよね。

――日本の出版社も世界へ向けて発信できますか?


中谷彰宏氏: 日本の出版社にとっても、世界のマーケットに参入できるということは大きいですね。日本語だから日本の本を読める人が少ないだろうというのは思いこみで、現にケニアのロゴマ君が、僕の本を読んでいたりするわけですから。

――電子書籍は、今後どのように変わっていくと思われますか?


中谷彰宏氏: ハリーポッターの映画で、ハリーが読んでいる『日刊予言者新聞』って、写真が動きますよね。あのムービーのようなものが電子書籍の中で動くようになるのではと考えています。今グラフやイラストで説明しているものが、動く素材として読めるようになる。そうすると、映像と本が全く分離した形ではなくなる。今、本にDVDが付いているものがありますよね。エクササイズ系では本の中に映像が入ってくるタイプのものが多いから、今DVD in Bookが、過渡期として存在する。でも電子書籍が普及したらDVDはいらない。クリックしたらその画像は動くようになる。

電子書籍のデバイスは、未来はどう変化してゆくのか


――電子書籍が、例えば今タブレットなどで閲覧できるようになっていますが、未来は形態としては紙に近づくでしょうか?


中谷彰宏氏: それはハードウエアの問題ですよね。紙でどうしても読みたいという人は、この紙一枚があればいいと思います。紙の形態感を味わいたいという人は、これをめくると、白紙だった所に文字が写るような形の技術が出てくれば済む。こういう事は、例えばフワフワなオムライスが出てきたからといって、昔の薄焼きの卵を焼いたオムライスがなくなるわけではない、好みの問題ですね。

――紙の書籍は紙の書籍という形態の中で進化する可能性もありますね。中谷さんが電子書籍に一番求めるものはなんですか?


中谷彰宏氏: 電子書籍になると現実問題として、新幹線の移動の時間持ち込んでいた大量の書籍とか、僕が美容院に行くとき持ち込んでいる13冊くらいの書籍、全てが電子化されれば、その荷物がなくなるということです。僕は新幹線の東京―大阪移動の間に、ポータブルのブルーレイプレイヤーで映画やテレビの録画を見ているんです。この時に何が面倒くさいかというと、ブルーレイのディスクの持ち歩きが通常10枚くらいで、かさばるので減らしたい。この10枚が、ハードウエアの中に入っていればいいなと思うんです。結局新幹線の中で寝ちゃって、持って行った10枚を見ないまま帰ってきたら、「ああ、これもっと少ない枚数にしておけばよかった」と思う。少ない枚数で足りなくなっちゃったら、「もっと持ってくればよかった」と思う。いつも感じるこのストレスをなくしたい。ハードウエアを小さくして欲しいという事と同時に、今度ソフトウエアであっても、究極はハードウエアがなくなるという状態というのがベストだなと。

――ハードウエアも持ち運ぶ必要なく閲覧できて、ソフトウエアも充実しているというのが理想でしょうか?


中谷彰宏氏: 要するに何も持たない状態で閲覧できるのがいい。今でもそうだけれど、今の時代はお金持ちの方がより物を持っていない。物を沢山抱え込んでいるのは豊かでない。豊かな暮らしというのは、物を持たないことが豊かな暮らし、という風に変化してきている。一昔前までは、物を持つことが豊かだという概念があって、これはもう既に通り過ぎているんです。例えば蔵書を沢山持っているとか、車を沢山持っているとか、洋服や宝石を沢山持っているということが、豊かだというのは20世紀で終わりました。これからの時代は、本であればクラウド、映画に関しても全てサーバーへアクセスできるし、資産があれば、旅行へ行っても必要なものを現地調達できる。今の時代、アメリカ軍の迷彩服だって、場所の背景に合わせて柄が変わる時代ですよ。みんなが頭の中でまだ20世紀に生きてしまっているから、ついていけないかもしれないけれど。

今までの『出版』というビジネスモデルは、いわばチャリティだった


――本が電子化に進んでいき、21世紀での出版社の役割というのはどのようなものでしょうか?


中谷彰宏氏: 新しいコンテンツをいかに生み出していくかということでしょうね。それから既にある沢山の絶版になっているコンテンツを、どう掘り起こしていくか。ということになると思う。素晴らしいコンテンツを持っている出版社がいっぱいあるにも関わらず、現在の本を売るというビジネスモデルが半ばチャリティ。今までの出版社は、初版を刷って増刷のあった瞬間に著者にお金を払うという、このチャリティのようなビジネスモデルをやり続けていた。本来の意味の「ビジネスモデル」というのは、誰がやってもそこそこいけるという型なはずなのに、きちんとモデルを運用しても、もうかるためには「運」の要素が強いというモデルは、これはやっぱりチャリティなんですね。それを「ビジネスモデル」とは呼べないんです。だから9割の出版社が赤字というのは、これはもう仕方がないことです。

――もうかるための「ビジネスモデル」をつくっていくことが、今後の課題でしょうか?




中谷彰宏氏: 今、初めて新しいビジネスモデルが生まれようとしている。「本を売る」という本来の意味のね。今までは、本を売ってビジネスが成り立つという時代は過去に1度もなかったということを認識しなくてはいけない。これまでは売れたけど、もうダメになったとかじゃなくて、これまでに実は「1度もなかった」ということをね。チャリティで成り立つ会社って、それはビジネスとしては認められないわけですよ。これからは、持っていたんだけれど、もうからなかったコンテンツを、きちんと売っていくという時代になる。これまでは、ビジネスモデルやマーケットとコネクトすることができなかったコンテンツやクリエイターがネットを使って「新しい知」を想像する時代が来ますね。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 中谷彰宏

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