BOOKSCAN(ブックスキャン) 本・蔵書電子書籍化サービス - 大和印刷

世界中の本好きのために

寺田昌嗣

Profile

1970年12月23日、福岡市生まれ。名古屋大学法学部卒。高校時代に「右脳」「1冊1分」をうたう夢のような速読に傾倒し、7年がかりで自力で速読をマスター。公立高校・中学校で公民科の教師を7年間務めながらさらに7年かけて実用的ビジネススキルとして速読術を完成。人気ベンチャー企業や大手電力会社まで幅広く社員研修を実施。速読メソッドを詰め込んだ近著『フォーカス・リーディング』は2ヶ月で8万部を越えるベストセラー。現在は福岡で古典・名作などの課題図書を楽しむ読書会(博多非凡塾・読書倶楽部)を主催。福岡市を中心とした読書会・勉強会(朝活・セミナーetc)ネットワークの事務局を務める。

Book Information

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学びを捉えているか、取り入れる仕組みを持っているか



株式会社Jエデュケーション代表取締役。フォーカス・リーディング開発者であり、速読講師。7年かけて実用的ビジネススキルとして速読術、フォーカス・リーディングを完成。2001年に独立し、その指導と普及にあたる寺田さんに、『読書』の在り方や今後の『電子書籍』について語っていただきました。

文化が変わりアクセシビリティも変わる

――ブックスキャンについては、いつごろからご存知でしたか。


寺田昌嗣氏: いつごろからっていうのは、正確には覚えていないんですけど、一時期話題にというか騒然としましたよね?BOOKSCAN自体はfacebookで誰かが『いいね!』を押しててサービスを見てたんで、それで知っていたんです。

本をスキャンするという機能を表す会社の名前だからこそなんでしょうけど、BOOKSCANさんが実はまっとうなことをやっているという、ちゃんと自己主張をなさっているところで、それでかなり印象には残っておりましたね。

――著作者の側から見て、本を裁断してスキャンするという行為に関してはどういった印象をお持ちですか。


寺田昌嗣氏: 買った人がどうしようと、好きにしたらいいんじゃないの?っていう話ですよね。もちろんそれをスキャンして本体はそのままにして転売、転売でデータだけを売りさばくような人たちは論外だし、あとは本をコピーするにしても、人に売るにせよ、あるいは漫画喫茶にせよ、それを自分のものにせずに人に何かを提供して対価を得たりとかいうのは、要するに窃盗と同じことなので言語道断ですけど、自分の本をね、どうして裁断して文句言われなきゃいけないの?っていう気はしていますね。

――寺田さんと同様に買った本をどうしようが関係ないと仰る作家の方は結構いらっしゃいますね。


寺田昌嗣氏: それは、文学作品の作者さんは含まれていないんじゃないですか?

――その中で漫画家さんからお聞きしたんですけど、作品は読まれないと死んでしまうと。常に無料であれ有料であれ、とにかくコンテンツを公開するのが大事だとおっしゃってましたね。


寺田昌嗣氏: なるほど、その発想もありますよね。どうしたら、より読者に届くか、というね。
実は僕、書籍やメルマガを朗読するサービスっていうのを考えたことがあって、実際夏目漱石の文豪といわれる著作権が切れた人たちのは音声にしているんですよ。
その時に、私の仲間で目が悪くて本が読めない人たちのために朗読サービスをしようとした人が、著作権切れでないものを録音した瞬間に著作権法にひっかかるっていうことで、それをサービスとしてできないっていうことに悩みを持っていらっしゃって。

自分が録音して読み上げて自分で聞くのはいいのに、なんでじゃあ、自分が目が見えないから読み上げてもらうのはダメなのか?と。サービスとしてどこまでがグレーでどこまでがいいのか?って。そこでサービスにしようとしたらいろいろと問題がありそうで、結局マンツーマンで電話だったかな?あの当時。または、対面で朗読してあげるだけの本当に大変なサービスになっちゃったっていう。

自炊問題も同じように考えると例えば私が自分でやる代わりに会社のバイトの子にさせるとか。それはいいでしょ?ということですね。

――最近法が改正されまして、アクセシビリティの関係で目の見えない方のためにそういった利用するのはOKになっていますね。色んなその知恵の探求だったりとか、人間だれしも持っていると思うんですけど、ハンディキャップがある方もなるべく等しく近づけられるようにということで、電子書籍というのは大きな助けになると思いますが、寺田さんは電子書籍に対してどういったお考えをお持ちですか。


寺田昌嗣氏: 電子書籍というもののとらえ方って僕の中では、固まってないんです。それはなぜかっていうと、そもそも電子書籍のフォーマットがバラバラだったり、携帯のいわゆる携帯小説は電子書籍なのか?とかですね。そういうところを考えると、まだ電子書籍というくくりで語るには厳しいなと。

それからですね、例えばコマースの中にeコマースが入ってきたと。ただそれはパソコンが便利な受注マシンでしかない限りはFAXの代替品でしかなかったわけです。それが今クラウドの時代になって完全に新しいビジネスになってきましたよね。そこまで時間が経って文化が変わった瞬間に、やっとeコマースっていうものの、まったく新しい価値が生まれてきたっていうね。

それと同じように考えると電子書籍は、場所を取らないとか、あるいは取り寄せが簡単っていう便利さだけしかまだ、私たち享受できてないと思うんですよ。そこで価値っていうのはなかなか語りがたいなと思うんです。

10年後『電子書籍がもたらす新しい本の楽しみ方』が生まれる


――では、現在電子書籍に望むものはありますか。


寺田昌嗣氏: 僕の中でね、電子書籍と本っていうのはそもそもメディアとして別物っていう考え方があるんですね。もちろん私のフォーカスリーディングも半年前に契約書を交わしたんで、そろそろ電子化されるかな?って思うんですけど。おそらくコンテンツは同じなんですけども、取り扱われ方は全く違うというか、コンテンツが目指すものが違うっていう気がしているんですね。

メディアっていうのは、コンテンツを伝えるものには、僕は3種類あると思っているんですね。1つは空間軸メディアと言われるもの。もう1つは時間軸メディアと言われるもの。この2つのカテゴリっていうのはですね、実はいとうせいこうさんが使った言い方なんですけども、空間に存在してパラパラと自由自在に行き来できるもの。その代表が本ですね。それに対して時間軸メディアっていうのは音楽プレイヤーであるとかテレビ。時間にそってずっと見ていかないとコンテンツを享受できないものですよね。

それともう1つが新しく検索っていうことで生まれてきた、これは名前が付けがたいんですけど、例えて言うなら四次元ポケット的メディアというべきもの。『これがほしい』と思って手を入れたら出てくるけども、そこに何が入っているかは自分でもつかめない。テキスト化されて検索されうるものであれば、電子書籍は四次元ポケット型ですね。

ということはGoogleと同じ存在なわけですよ。それが自分のiPadの中に入っているかGoogleの中に入っているかの違い。それでいうと、電子書籍でわざわざiPadの中に入れなくても自分が思い出したいフレーズは大体誰かがブログに書いてるから、わざわざ電子書籍化しなくてもどこかで見つかるだろう?っていう気も実はしているんですよ。

それに対して、スキャンしただけの画像としての電子書籍は、実は空間軸メディアである本が時間軸に変わっているわけですよ。どこかに辿り着こうと思ったらずっとめくっていかなきゃいけない紙媒体書籍であれば言葉が並んでいるのを無意識で受け取れますので、パラパラやっているうちに探せますよね。電子書籍はそれが無理なんですよね。iPadなんかだと確かにだぁ~っとタップしたままにしておけばページめくれますけど。

――まだ人間の脳みそと機能に追い付いていないといいますか。


寺田昌嗣氏: そうですね。日本語の場合はカタカナ・ひらがな・送り仮名の増減も含めてですね、検索を相当柔軟に対応しない限りは取り出しにくいですよね。Googleなんかはそこはできますけど、じゃあ、iPadはそれが可能なのか?ですよね。そうなったときにその四次元ポケットに収められちゃったメディアは果たして資産になりうるのかというところですよね。

だから本棚に並んでいるものがコンパクトに場所を取らなくなりますよということは、別の意味でアクセシビリティが非常に困難になると思うんですよね。アクセシビリティというよりはトレーサビリティの方が近いのかなっていう気がするんですけど、思考を辿っていった時に記憶として目の前に並んで背表紙の記憶とかから手繰っていけるのか。キーワードからしかたぐれないのか。ですよね。

――生まれた時から、電子書籍が本だと思っている子供も出てくると思いますが、そういった子供たちは思考回路が変わっていると思われますか。


寺田昌嗣氏: そうですね。たぶん5年たったら、5年じゃ無理かな。10年たった時に電子書籍がもたらす新しい本の楽しみ方っていうのが生まれてきてるんだろうとは思うんですよ。今言ったみたいに空間軸メディアから時間軸の中に放り込まれた時にそれをどう活用できるのかっていうのは、ちょっとまだ未知数だなっていうところですよね。さっきのeコマースの話と同じように、僕らの文化が変わらない。

LPのファンは、紙のレーベルがいいとかね。あれ自体に価値があると、芸術作品として。本もね、手触り、匂いっていうのは、よく本好きの方が言われるんですけど、それはそれとして残るだろうし、そうじゃないコンテンツに価値があると思えば、別に電子だろうが音声だろうが書籍だろうが関係ないしという話ですよね。

電子書籍もソーシャルメディアも本質的な部分は変わらない


――次の質問です、電子書籍になることで読書や学びのシーンにどういった変化が起こると思いますか。




寺田昌嗣氏: 僕は起こらないと思っているんですよ、実は。すごい厳しい言い方をするとどんなに他人がいいと思ったとしてもですね、それを共有する仕組みができたとしても、結局その人が自分の学びっていうものをどう捉えているか、ですから。そんなに学びって簡単に成果が上がるものじゃなくて。喜びは確かに広がるんだけど、それで僕らの知性が高まるわけでもなく、ただ知的好奇心が満たされるに過ぎない。

それはそれで価値はありますけど、たぶん君はそれじゃ成長しないよね?って僕は思ってるんですよ。例えば本を持ち寄ってシェアし合う読書会でも、良い本読んだね。すごい言葉だね。って言っても、それを取り入れる仕組みを自分の中にもっていない限りは、その人はただその場が楽しいだけなんですよ。

そうじゃない人は、インターネット以前の時代から、本の奥付にある参考図書からどんどんどんどん関連書を引っ張ってくるし、友達の会話の中でいい本があるって言ったらボンボン買うし。私のやっている読書会に、人が良いっていったら確実に次の週には読んでるっていう人がいるんですよ。そういう人にとっては、機会が広がるのは確かだとは思うんですけど、機会が広がれば広がるほど、情報って自分のテリトリーを超えて他人事になっていきますからね。そういう人たちはじゃあどうフォーカスして読んでいくのかっていうところですよね。結局のところ、電子書籍だろうがソーシャルメディアだろうが、その場限りの刹那の喜びは増すけども、本質的な部分としては大して変わらない、と。

あとはですね、ソーシャルで、確かにfacebookは顔が見えるところからの情報ではあるんだけど、不特定多数の人たち、顔が見えない人たちが『この本いいよ』って言ったとして、その言葉の奥に何があるのかですよね。

例えば書評家を名乗るアルファブロガーの人たちと本出すときに話した時があるんですよ。何のために本を紹介しているの?って聞いたら、『あれはお小遣い稼ぎだよ』って言われて。要するに『売れる本しか紹介する気がない』っていうわけですよ。ということは、相手がそれで幸せになれるかどうかはわからなくて、自分はマーケターとして本を紹介しているに過ぎない。読みたくなるように書くと。それを受け手がどこまで汲み取れるかですよね。

相手が持ってるプロフィールからその言葉をどう取り扱ったらいいのかということを判断して、この人はこの現場にいて、こういう問題を抱えているはずだ、と。そしてあるいはこのブログを読んでいる人はこういう人だからこの人はこういう想定でこういうメッセージを書いている、と。そこまで汲み取れるかですよね。相手の言葉の裏というか奥というか。それを抜きにしていい本だという情報を『いい』という評価だけで受け取っていいのか?ですよね。

ラーメンがおいしいというのと本が良い、面白いっていうのは全然別物なんで。だからそこをどこまで自分の文脈に落とし込めるかが、最終的にソーシャルな情報が価値を持つかどうかにかかわってくるのかな?という風に思いますね。

――やはり、見極める目が必要になってきますか。


寺田昌嗣氏: 見極める目と自分にとってのフォーカス、というものですよね。

『速読』を極めると『ゆっくり読むところに行きつく』というのはラディカルだと思う


――本とのかかわりも含めてお伺いしたいと思います。学生時代までどんな本を読まれていましたか。


寺田昌嗣氏: 学生時代。中学時代は、ひたすら推理小説と星新一ですね。高校時代は角川文庫とあの頃は、ちょっと今の中二病というか青春というキーワードに引っ掛かるものはあらゆるものを読んでたんですね。古典でいえば武者小路実篤の著作とかも「青春なんとか」ってあったらそれを読んでるし、今どきの著者のも読んでるし、あとはミヒャエル・エンデだったりっていうのも読んで、意外と手当たり次第読んでたような気がします。

本が好きだったのか?と言われるとそうでもないんですけどね。中学、高校時代を通じて、図書館から、『あなたよく読みましたね』的なものは届けられてたんで、意外と読んでたのかな?という気はしますが。

――その中で、今でも影響を受けてるなと思われる本はありますか。


寺田昌嗣氏: 今僕の中でですね、自分の中で人生の3冊っていうのを持っていて、1つは大学1年の時に読んだダグラス・ラミスっていう、津田塾大学の政治学の教授が書いた、『影の学問、窓の学問』っていう本ですね。晶文社だったかな。

――どういった内容ですか?


寺田昌嗣氏: 『影の学問、窓の学問』っていうのは、言葉で言いづらいんですけど、物を見るときにラディカルな目を持てと。例えば僕ら伝統に縛られるっていうけれども、伝統は僕らを縛るのか?救うのか?みたいな話であったりとか。学問には世の中の真実に窓を開いてくれるものと、真実を覆い隠して影の世界にとどまらせてしまうものがあるぞ、と。
例えば僕の速読の本も実はタイトル案として、『フォーカスリーディング』と、『ラディカルリーディング』っていうのがあったんですよ。『ラディカルって意味が分からないから』って言って却下されたんですけどね。それぐらい、この『ラディカル』は僕の中のキーワードなんですよ。

速読って何のため?っていう風に考えたら、速読は本の価値、読者の価値を高めるためだ。ってなったら、最終的にじゃあゆっくり読めばいいっていう結論にいってもいいじゃんと。

速読の価値を極めた結果、ゆっくり読むところに行きつきましたっていうのは、ラディカルだと僕は思うんですよ。ラディカルっていう言葉は実は、急進的なっていう意味と、その原義としてですね、根本的な、根源的なっていう意味があるんですよ。根本に立ち返った時に現実を覆すような結論が出てくると。そういう話が宇宙船の例えで、宇宙船の窓際で真実を見てしまった少年と、それを見ないで影の世界、自分たちが実は宇宙船の中にいることすら知らず、そこで生きている人たちと。目指すべきはどっちかという話なんです。

――あと2冊についてはどういった本ですか。


寺田昌嗣氏: あとはですね、これを読んだのは高校時代だったか大学時代だったか覚えていないんですけど、福沢諭吉の『学問のすすめ』ですね。これはもう『一身独立して一国独立す。』という。『自分はまず地に足をついて自力で歩ける人でないと国家は成り立っていかないよ。』って。国家って言わなくても組織は成り立っていかないよっていう考え方を示したもので、個人と社会の在り方を問う内容ですね。感銘を受けたなというところです。

読書は自分の中の『豊かな大地』を育む行為


――なるほど。今ひと月に平均どのくらい読まれますか。


寺田昌嗣氏: これはその時によって全然違って。2年前、3年前。いや違う。例えば起業して最初の数年間は年間200~300冊くらいの話だと思うんですよ。せいぜい。僕冊を何回も読む人なんでそんなに読まないんですけど、一昨年は200冊近く読んでるんですよね。去年はたぶん110冊くらいしか読んでなくて、今年はせいぜい月4~5冊。週1ですね。資料としてとか、トレンドを追っておくためにとか、そんな本は多分もっとあるんですが、純粋に本当に読んだといえるのは週1冊。僕の中で価値がある本として読んでいるのは月2冊。

――どのような読み方をされていますか?




寺田昌嗣氏: 私はですね、読書っていうのは、比喩ですが、自分の中にある、豊かな大地を育む行為だって捉えているんですね。今どきのノウハウ書を読むというのは、よそで作られた作物を採ってくるようなもんだ、と。それは今の自分には役に立つけれども、決して自分の中は豊かになっていないっていう前提があるんですね。

だから自分を豊かにするために、今自分はどんなステージに立っていて、どこを目指しているのか?ということを、要するに今と未来を繋ぐデザインっていうものを明確にしましょうってことですね。今の自分の課題と目指すところを見た時に何をどう読まなきゃいけないのかを明確にすることが前提として必要だ、と。

1冊10分でざーっと流していいとこ取りしていくような収穫して、今の自分を元気にする。あるいは明日のエネルギーを得る。そんな読書をしなきゃいけない時はあるし、地面を耕したりだとかそこを豊かにすることだけにフォーカスして読むこともあっていいと。

そういう意味では、たくさん読んでた時期っていうのは、明日のビジネスを作るためにノウハウを吸収していった時期であり、同時にその中でも自分の大地を耕しているっていう同時進行ですよね。

――読み方っていうのは人それぞれでもそうですけど、その時期に応じて一律ではないということですね。


寺田昌嗣氏: そうですね。だから速読も効率を上げるために使う時もあれば、効果を高めるために使う時もある。つまり、概要をとらえるのにゆっくり読んでいたら捉え損なっちゃうから、その概要をとるにふさわしい読み方をする。その結果『1冊10分しかかかりませんでした。』なのか、『90分かかりました。』なのか。効率を高めたいのか効果を高めたいのかってことをまず明確にして速読を使う。だから僕は速読をできるからと言ってたくさん読むという風にはならない。あくまで自分のデザインの中で、この時期には何を読むっていうのが出来あがってるんですよ。

2009年から5年計画っていうのがあって。もちろん、何を読むかはまだ決まってないんだけど、ここに行きたいからこういう風に人生のステージを上げていかなきゃいけないっていうのがあって、じゃあ2012年を迎えた時に、今年はこういうフェーズだからこういう風に読書を作っていこう、と。つまり読書っていうより自分の成長のデザインですね。

今年は本を読むのではなくて今まで相当ため込んできたもので、今、人に無料でカウンセリングというかコンサルティングをずっとしてるんですよ。経営だったりとか勉強の。そこで自分がどれだけ知識を生きたものとして人に提供できるのか?っていうのを実践しているんですよね。だから今は、読書のプロセスのうち、処理、出力の部分でどんどんどんどん活性化している時と。

私の中の読書というのは、読む行為だけを指すのではなくて読んだものが自分の中に入って、処理されて、自分の行動とか思考の様式が変わることであり、自分の文化まで変えていく行為。読むっていう行為だけしかフォーカスできていないと、どれだけ読みましたか?っていう話になるんだけども、そこの先にある自分の文化が変わっていくところまでフォーカスがいくと、やっぱり今は読んでちゃだめだよねっていう話なんですよね。


『新刊書』は一切追わないし人にも薦めない


――読んだうえでどうするかですよね。寺田さんが今気になる本っていうのはありますか。


寺田昌嗣氏: 気になる本。全然ないんですよね。アンテナ立ててないんですよ。

――じゃあ、何かを読もうと思った時はどういったきっかけでしたか。


寺田昌嗣氏: 今はですね、新刊を一切追わないことにしているんですね。ビジネス書の著書をプロデュースする仕事に関わっていたので、去年まではビジネス書、新刊をずっと追ってトレンドとかを見てたんですけど、今年はそこから一旦離れたんで、追わなくなりました。
もともと僕は、人にも新刊書って基本的に薦めないんですよ。

僕は読書会を3つやっているんですけど、そこに出てくる課題図書っていうのは、もうかなり前に出版されて評価も定まった本。しかも自分が読んで、これはこういう風に読んでもらいたいっていうのが明確な本なんですよね。

例えば僕が読む本を選ぶのは、僕の師匠である土井英司氏あるいは私が注目するビジネスリーダーが勧める本の中で、出版から時間が経過している本ですね。少なくともここ10年以内には出てない本みたいなもの。それからその人が書いた本だったり、その人が参考文献に挙げている本だったりとか、結局自分が尊敬する信頼する人を通じてってことになりますね。

子供の教室も、うちの子供を通わせるためにやっている


――お仕事のスタイルを次にお聞きしたいと思います。普段はどちらでお仕事されてますか。


寺田昌嗣氏: 今オフィスで、小学生向けの学習教室をやっているので、日によりますけど、3時半~夕方6時までは、子供の教室です。僕が一人で教えていて、そこで使う教材も自作しているんで、午後は大体子供のための時間ですね。午前中は、学校の読み聞かせボランティアがあったりPTAの活動があったり、無料で面談してたりとかするので、あちこちに出没しています。

自分の仕事をするときは、スターバックスにわざわざバスで30分かけて出かけて行ってそこで仕事をして、また30分かけて事務所に戻ってくるという感じが多いですね。

――お気に入りのスターバックスがあるんですか。


寺田昌嗣氏: というより、近所にないんですよ。それでバスに乗って、と。

――そうなんですね。じゃあ、大体1日のスケジュールというか、大体睡眠時間はどれくらいとってますか。


寺田昌嗣氏: 今は、5時間半ぐらいですかね。大体10時半に寝て4時に起きる。

――朝の4時に起きるんですか!1日の行動を大まかなスケジュール教えていただけますか。


寺田昌嗣氏: 基本的に僕、5時半から朝8時までは、朝食作って弁当作って子供を小学校に送り出してって感じで、主夫やってるんですよ。朝早く起きているからその分仕事しているっていうのではなくて。
だから仕事をしたり、勉強したりっていうのは、せいぜい朝の1時間半ぐらい。

――4時に起きてすぐに頭は働きますか?


寺田昌嗣氏: もうずっとそのスタイルですんで。っていうか去年の秋までは朝3時に起きてたんですよ。それを1時間ずらして今4時にしているので、全然問題ありませんね。

――いつからそういった生活ですか。


寺田昌嗣氏: ずいぶん前からですね。教師の時代は5時にしか起きていませんでした。起業して数年間はプログラマーやっていたんで、もうめちゃくちゃだったんですね。今のような朝型が定まったのは、子供がたぶん3歳になってから。添い寝をして子供と一緒に9時に寝て3時に起きる。そしたら6時間寝られるじゃないですか。僕の場合家事をする時間があるので、その前にメールの処理とかしようと思ったらどうしても早く起きざるを得ないっていうのがあるんですよね。

――今、お子様はおいくつですか。


寺田昌嗣氏: 7歳。いいもんですね。子供の教室も、うちの子供を通わせるためにやっているんですよ。実は生徒って5人しかいなくて、そのうち家の息子が1人なんです。自分の息子のために教室作っているんですよね。売り上げとしてもでたらめですけど、それは子育ての時間の延長っていう感じで。

――自分の子供に気づかされることって何かありますか。


寺田昌嗣氏: 気づかされるというか、世の中は自分の思い通りには動かないっていうことをいつも教えられてますね。どこまで自分が期待していることを裏切られてイラっとくるんじゃなくて、『あぁそうか、期待通りいかないのか。じゃあこうしよう』っていう風に提案できるような。いつもニュートラルな姿勢でいられるというか、そこは精神修行(笑)。
子供が融通の利かない存在としてあるんで、それに合わせてライフデザインを変えていっているので、自分の仕事を精選するというか、フォーカスするというか、そういう発想も鍛えられます。例えば今やっているPTA活動は相当大変で、そのために仕事を削って、この作業をやらないっていうことをどんどんどんどん作っていくっていうような。

教科書がiPadに置き換わるだけでは、勉強の効率が悪くなる


――寺田さんにとって、本とはどういう存在ですか。


寺田昌嗣氏: 本というのはですね。実自分を常に基本に立ち返らせてくれる師匠のような存在だといつも思っているんですね。だからそこで新しいものを取り入れて喜ぶのではなくて、その情報は自分にとってどんな価値を持つのか?ということを考えて、それをじゃあ自分はどう活かしたらいいのか?そしてそれを自分が抱えて大事にしているお客さんだとか家族にどう伝えたらいいのか?あるいは、自分の行動を変えて、どういう風にその人たちに貢献できるのか?ということとか、内面と対話するきっかけを与えてくれる存在。

場合によっては自分のなんとなくまとまっていなかった思考が、本の中のフレーズをきっかけにバッと結晶化してきて、全く本とは関係のないメモを取ってたりっていうこともあるし、あるいはそこで至らない自分に気づかされることもあるし。
人生の師匠みたいな人がいるんですけど、その人も頭もいいしすごいんですよ。その人は静かに大事なことは語ってくれるけど、むしろ自分を基本に立ち返らせてくれるんですよね。本もそういう風に思っているし、そういう風な本と出会いたいと思っている。っていう感じですね。全てがそうではないんだけど。

――教育で、生徒1人1人に端末が渡されて、その中に教科書が入っているということが進められていくことについてはどう思われますか。


寺田昌嗣氏: それは先ほどの話と同じ話で、そのメディアが存在する空間がどういう文化に変わっていくのかによりますよね。教科書がiPadに置き換わっただけだと、たぶん勉強の効率が悪くなると思うんですよね。電子メディアで双方向でやり取りが出来たり、音が出たりっていうものと、じゃあ、ノートはどういうあり方になるのかとか、先生がどういったあり方になるのかとか、教科書が変わるだけでなく、全てが変わっていかなければならないので、そこは相当な実験な試行錯誤を繰り返していかなきゃ変わらないだろうなと。

それを誰が実験していくのか?っていうと、それをどんどん取り入れようとしている学習塾であったりとか、ビジネスセミナーでやっている方。あるいは、ひょっとしたら、教育大学付属の小学校とかでやっているかもしれないけど、かなりの時間と試行錯誤を経てじゃないと変われないだろうなという風に思っています。

――関わる全ての人たちがその文化を少しずつ変えていって、初めてその結果が出るということですよね。


寺田昌嗣氏: そうですね。空間軸メディアから時間軸メディアに置き換わるわけなんで、そうなるともう、『じゃあ何ページ参照して』とって言われて、パラパラパラ~っと、『あ、ここにあった。』っていうことがなくなるわけですよね。それはひょっとしたら検索できるのであれば効率は上がるのかもしれないけれども、知的好奇心を刺激しない存在になるかもしれないとか。ひょっとしたらまた別のものと化学反応を起こすかもしれないしっていう。それちょっと今想像がつきませんね。

読書を核とした『社会人が学ぶ文化』をもっと日本に豊かな形で伝えること


――最後の質問になります。今後どんなふうに、どんなことをやっていきたいですか。




寺田昌嗣氏: 私の最終的なゴールっていうのは、読書っていうものを核にした『社会人が学ぶ文化』というものを日本にもっと豊かな形で伝えることなんですね。本を読んで自分が成長できるという仕組みを作りたい。そしてみんなが自分を成長させなきゃと思うマインドも作りたい。そういう意味でも文化ですよね。そこに対して、本を中心にした教育、『社会人の学びについて尋ねるんだったら寺田さんに一言お願いしたいよね』と言われる存在になりたいと思っているんですよ。

僕の2015年のゴールになんて書いてあるかっていうと、地方メディアで教育の専門家としてコメントを求められる人になっている、と。地方メディアっていうのは、僕の拠点は福岡なので、全国メディアである必要がないっていう話ですけども。そこで多くの人が、あるいは発信する側の人が、『寺田さんに聞いたら間違いないよね』という風に認識してくれるということなんですね。

今学習教室をやっているのもそのためのステップという意味もあります。実は書店のプロデュースにも関わっているんですよ。老舗の本屋の再生に。そういうのも含めて、対価が全く発生しないところでいろいろな活動をしているんですけども、自分をそこで育ててもらって、2015年までに自分が目指す場所まで上っていきたいと考えています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 寺田昌嗣

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