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世界中の本好きのために

糸川洋

Profile

1949年、東京生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、医療器械メーカー勤務、マニュアルライターなどを経て翻訳者に。著作『死者は語る』、訳書に『僕らは星のかけら』、『ポアンカレ予想を解いた数学者』、『数学のおもちゃ箱』、『マーカス・チャウンの太陽系』(iPadアプリ)など物理学や数学に関する訳本が多数あることで知られる。自著絶版作品であった『死者は語る~リーディングの奇跡~』を2012年4月に電子書籍アプリ『死者は語る』としてApp Storeから自らリリース。大ヒットアプリ『マーカス・チャウンの太陽系図鑑』にも出てくる小惑星イトカワ。その由来になった糸川英夫博士は、氏の伯父に当たる。

Book Information

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――出版業界というのは、文化の担い手であると思うので今後もますます期待されますね。


糸川洋氏: だからね、例えば今回みたいに、自分の書いた本をスキャンしてもらってデータ化してそれを電子書籍にしましたよと。それがこうやって売れているんですよと。それはある意味そういう活動に市民権を与えることになると思う。だから宣伝してください(笑)

――しっかりと取材させて頂きます。(笑)


糸川洋氏: ええ(笑)。これはあとがきに書いたんだけど、自分の書いた本が絶版になるというのは非常に悲しいことで、今まではほとんどそれを救済する手段はなかったけど、こうやって私が実際にやっているのは、それが出来ることを証すためにもやっているんだよと。これに刺激を受けて、みんなどんどんやってくださいよ、と書いてあります。

――そうなんですね。今まではやりたくでも出来なかった、解決したくても解決出来なかった絶版本に対する救済策として、電子化という方法を使わない手はない、ということなんですね。


糸川氏奥様 : そうですね。それにしてもこの歳でITに詳しいっていう人なかなかいないんですよね。

糸川洋氏: 同期会とか同窓会とか行くでしょう。『お前何やっているの?』と言われるんです。『iPadのアプリとかを制作しているんだけれども…』と説明しても『iPad、なんだいそれは』と言うことになる(笑)。誰も持っていない。30人、40人ぐらいで1人も持っていないの。『お前等何でiPad持っていないんだよっ』て言うと『何するんだよと。携帯があるからいいよっ』って、そうじゃないだろと。(笑)

――何だか笑い話ですが、『アイフォーン知っているよ』と言って、『病院のナースコールで押すアレだろ』という方もいらっしゃったらしいですけど。(笑)時間もあっという間に過ぎ最後の質問になりましたが、電子化で、今後何が変わるのか、読み手にとって書き手にとってどういった影響を与えると思われますか。


糸川洋氏: まあ、インターネットが普及したことによる書き手の意識の変化っていうのはあるかもしれないですね。昔、例えば『WE DON’T DIE』の訳本を出した頃には、読者カードっていうのがあったんですが、今はもう全然ないですね。読者カードは結構たくさん送られてきました。他にも出版社に手紙が来ていましたね。そういうのが定期的に送られてきて、それを読んで『なるほど、こういう人もいるのか』とか思いましたね。あと刑務所の中から書いている人とか。まあ、いろいろな人がいますよ。死後の世界を扱った本だから、怖い手紙もあったけど。でも、それが唯一の読者との接点だものね。電子書籍というよりAmazonみたいなサービスが出来たり、ブログが登場してから、直接読者のレビューや感想を読めるようになった。そうすると、うれしい事もあるけども、傷つく事もある。「何だ、この翻訳は下手だなあ」とか、「分かりにくいなあ」とか。色々な事を言う人がいるわけですよ。『超マシン誕生』という本を訳した時には、何かこの翻訳は『のっぺりしている』とかTwitterで言われましてね。

――難しいですよね、特に扱う題材がサイエンスだったりすると、その技術的な側面での翻訳プラスアルファの表現、文章形式が好まれそうですよね。


糸川洋氏: そうそう、盛り上がりに欠ける、とか(笑)。盛り上がりって言われても、ねぇ。(笑)ただそういった読者の声は、自分にとって大きな励みになるし、へこむ原因にもなる。そういう両方の面があるけれど、電子書籍になれば、直接的な交流が出てくるでしょうね。だけど、だからと言って、書き手がこれは電子書籍だから書き方を変えるとか、これは紙の書籍だから…という事は無いと思うんですよね。ただ、もし電子書籍でこういう事ができたら、本当はここでリンクを飛ばしたい、という事例はあるでしょうね。『マーカス・チャウンの太陽系図鑑』についていえば、ニュートリノってなんでも突き通しちゃうんですけど、スーパーカミオカンデというのがありますよね、小柴さんの。あそこで撮った夜の太陽という画像があるんですよ。何かって言うと、地球の昼側にある太陽から飛んできたニュートリノが地球を突き抜けて裏側に出たもの。夜の太陽って不思議ですよね。

――なんだか、文学的ですね。素敵ですね。


糸川洋氏: マーカス・チャウンはそういうのが大好きなんです。彼はその夜の太陽の画像を自分のウェブサイトに載っけているわけです。だから例えば、自分がこのiPadの『太陽系』を作ったら、ニュートリノのところにそのリンクを入れたいなと思うわけです。紙ではそんな事できないですよね。

――はい。そういった意味で制約から解き放たれた読み物コンテンツになりうるわけなんですね。


糸川洋氏: そう。だから広がりがすごく持てるっていう意味じゃ面白いですよね。

――今回の『マーカス・チャウンの太陽系図鑑』、是非こういう読み方、発見をして欲しいという所はありますか。


糸川洋氏: まあ、発見というか、iPadと紙の書籍の両方を持っている人には、やっぱり両方読みくらべて頂きたい。どちらにも利点があって、大陸移動説や、その他いろいろなシュミレーションが動的にわかりやすいのが電子書籍版。でも、段階的な詳しい説明は、紙の書籍でなくちゃ力不足だし、そういうのも必要なんだなって、改めて思いましたよ。

――どちらも補完しあっている存在なんですね。


糸川洋氏: そうなんですよ。だから電子書籍も、紙の書籍もお互いを補完し合う存在だと思っている。『マーカス・チャウンの太陽系図鑑』の紙書籍版と電子書籍版、この2つってすごく象徴的なんです。というのは、この出版元であるタッチプレスという会社は、セオドア・グレイが書いた『元素図鑑』のアプリ版を出して大ヒットしています。そのセオドア・グレイとスティーブ・ジョブズがすごく親しかったのです。彼はスティーブ・ジョブズが凄く困っていた頃に、色々とプログラミングの手助けをしてあげた。ほとんどボランティアみたいな形で。それである時、ジョブズが『iPadができるよ』と言って、グレイが『えぇ~それはいい話だね』となったんです。じゃあ、その発売に間に合わせて『元素図鑑』の本をアプリにしようじゃないかという話になったそうです。だから紙の書籍が先なんですね。本当は紙の書籍じゃなくて、水素が爆発する様子をスローモーションで見せたい、それが自分の夢だとグレイは言っていたんですね。

著書一覧『 糸川洋

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