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世界中の本好きのために

出口治明

Profile

1948年、三重県美杉村(現・津市)に生まれる。 72年、京都大学法学部を卒業後、日本生命保険相互会社に入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを歴任。東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2008年、60歳でライフネット生命保険株式会社を開業(74年ぶりの日本国内の独立系生命保険会社)、代表取締役社長に就任。13年同社会長に就任。17年、会長職退任。2018年1月、初の公募制により立命館アジア太平洋大学(APU)学長に就任。

Book Information

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進化は適応の歴史
変化できたものが生き残る



出口治明氏: 人間はさまざまなケース(思考パターン)を得ることで、生き残り進化してきました。進化とは適応の歴史です。ダーウィンの「進化論」で言われているように、強いものが生き残るのではなく、変化に適応できたものが生き残るのです。

本の読み方にしても、ぼく自身、一時期、本に対するフェティシズムのようなものを持っていましたが、今は変わりました。ひとつの節目となったのが、日本生命時代のロンドンへの転勤で、引っ越しでそれまで貯め込んでいた蔵書を手放さざるを得なくなってから、本に対する姿勢が大きく変わりました。手を洗って読むなんていうこともなくなりましたし(笑)。

電子書籍についても、手を変え品を変え10種類ほど試してみましたが、ぼくには合いませんでした。ただそれだけのこと。習慣の問題で、たまたま自分は今の形の紙の本に慣れ親しんだということだと思います。

これからデジタルネイティブの世代たちが、どんな形で読もうと、それはまったく構わないと思います。コンテンツを読んで何かを得ることには変わりはないですし、そもそも今の書物だって、もともとは巻物だったわけです。同時代に生きている人間でも、皆それぞれ違います。良いものがあれば少しずつ取り入れて変えていく。これが正しい本の読み方だ、なんていうのはありません。



――変化に適応して、より良くしていく。


出口治明氏: これはこれからの「働き方改革」にも関わってきます。戦後の製造業をベースにした時間労働制の「工場モデル」、夜の10時まで働いて「メシ・風呂・寝る」では、誰が本を読めますかという話です。こうした社会構造こそが、「本を読めない人」をつくってきたと理解すべきだと思うんですよね。現実を見て、いい加減、変えなければなりません。

ぼくは自分を保守主義者だと思っていますが、これは保守主義の行動倫理そのものです。よく誤解されますが、保守主義とは意固地に変えない人のことではなく、長く続いているものは正しいと「仮定」して、現実に即して不都合が生じたら変化に対応していこうという考え方です。

「人間は賢いで。考えたことは正しいんやで」ということを否定し、「人間はアホなことをする」という前提で、新しいものに一定の距離を保ちつつ、現実に即して少しずつ変えていき、次代に向けて「より良く」していく。その姿勢こそが真の保守主義です。

人は絶えず変わります。ぼくも、小さい頃はロケット工学者のフォン・ブラウンに憧れていましたが、大学は法学部へ進み、その後、生命保険業界に入り、60歳で起業し、今は学長を拝命しているわけですから。ただ、変化に適応して「より良く」していくことだけを考えてきただけ。APUで学長をしているのも、変化に適応していく中で、良好なライフネットの財務状況と、社長を任せられる人材の出現、そのタイミングで学長の公募があり誰かがぼくを推挙してくれたこと、そうしたさまざまな偶然と縁が重なり合った結果ですから。


世界に評価され、選ばれるAPUへ
「今が残りの人生で一番若い」


――出口さんの「より良く」は、これからAPUで発揮されます。


出口治明氏: ぼくは、2006年にライフネット生命を創業する前、2年ほど東京大学の総長室アドバイザーを務めていたことがあります。その時に、大学は「未来の社会の競争力そのもの」だと気づき、教育研究の重要性に改めて目を啓かされました。

APUはマネジメント教育の国際的な認証機関であるAACSBより、学部・大学院ともに世界でも最高水準の教育を提供する教育機関として認証を取得しています。また、今年の3月には、観光に関する世界最大級の国連機関であるTedQualの認証も国内の私大で初めて取得しました。こうした世界で信頼のおける二つの国際的な第三者評価機関から同時に評価を受けている、日本で唯一の私大です。英国の教育専門誌タイムズハイヤーエデュケーション(THE)が発表した2018年世界大学ランキング日本版でも、西日本の私大で1位、全国の私大では5位と評価されました。

また、「数字で見るAPU」をご覧になっていただきたいのですが、冒頭で90カ国、約半数(3000人)とお伝えした学生数にしても、2000年の開学から数えると、約150カ国16,000人もの卒業生が全世界で活躍しています。今も国連の加盟国数の約半分の国々の学生が、山の上にあるこの街に集まって学び、暮らしている。ひいき目に見ても、こんな大学は他にありません。世界的に見てもユニークな大学が日本の、この大分県別府市にあるということを、もっと知っていただくのが今のぼくの最大の務めです。

もちろんビジネスとは勝手が違うこともありますし、教育には時間がかかります。一朝一夕にはいきません。けれど、その違いを受け入れ「ワクワク感」を忘れずに日々邁進していく。リーダーが楽しんでいないと、誰もついてきてくれませんから。

「過去は変えられないし、未来はわからない」。変わらないことを考えても時間がもったいないので、それならば今を、歴史に学んで今を精一杯生きる。だからぼくは「今が残りの人生で一番若い」という言葉が、大好きなのです。

――出口さんの「今」は。


出口治明氏: APU全体としては、是永駿前学長の頃より2030年に向けた「 APU2030ビジョン」を創っています。今、教員や職員が一丸となって頑張っています。ぼく個人について言えば昔から、「5年後にこういうことがしたい」「あと5年後にはこういうプランを持っています」というものはありません。そう言える人は、ものすごい才能を持っている幸せな人だと思っています。ぼくのような凡人は、そんな才能なんて持ち合わせていないので、出来ることは「変化に適応していくこと」だけです。

こうしてご縁を頂いた場所で自分の持っているものをすべてはき出して適応させ「APUをグローバル社会が抱える問題の解決に寄与する大学に、今まで以上に進化させたい」と、今のところそれ以外に夢はありません。もちろん、自己評価というのは自己満足で何の意味もありませんから、今後の評価に関してはこのあと、ぼくのいないところで、こっそり周りのスタッフに聞いてみてください(笑)。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 出口治明

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