BOOKSCAN(ブックスキャン) 本・蔵書電子書籍化サービス - 大和印刷

世界中の本好きのために

高山直

Profile

1957年、広島県生まれ。 個人のやる気や情熱、志などの潜在的な能力や可能性が、学歴に関係なく、公正、公平に判断される社会の創造を目指して、1997年株式会社イー・キュー・ジャパンを設立(現運営会社は株式会社アドバンテッジリスクマネジメント)。 EQ理論提唱者のイェール大学ピーター・サロベイ博士、ニューハンプシャー大学ジョン・メイヤー博士との共同研究でEQ理論に基づいた個人の自立と成長を支援するプログラムを開発。2010年、EQグローバルアライアンスを設立。 著書に『EQ 相手のこころに届く言葉』(日本実業出版社)、『EQ入門―対人能力の磨き方』(日本経済新聞出版社)など。

Book Information

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

上げよう 心の知能指数



「学歴、学校差別のない社会を目指そう」という志のもと、EQ――「心の知能指数」に着目し、その理論を広めてきた高山直さん。現在は株式会社 アドバンテッジ リスク マネジメントにて、EQ理論とEQI行動特性検査を使い、職場風土の改革や組織開発、人材育成プログラムの実施を行なっています。人材のプロが見つめてきた学歴偏重社会のゆがみ、と違和感。高山さんが日々伝える、EQへの想いを伺ってきました。

学歴偏重社会への違和感


――EQ(Emotional Intelligence Quotient)理論を広げるため、東奔西走されています。


高山直氏: EQは感情能力といって、日本では「心の知能指数」というふうに広まってきました。このEQ理論というのはアメリカで生まれ、1995年には「ビジネスで成功している人の要因はIQが20%で、EQが80%である」という理論が提唱されました。この理論を、EQという能力がどういう能力なのか、また、何をすればEQは上がるのかなどのトレーニング方法を講演の中で紹介しています。

ぼくが就職してから今まで、学歴偏重社会で覚えた違和感を解決したいという想いが、今に繋がっています。ぼく自身は学歴社会とは無縁の子ども時代で、ずっと野球をやっており、甲子園を目指していました。大学には、野球の遠投と100メートル走だけで入ったようなものです(笑)。全日本大学選手権などに出ていましたから、将来はそのままノンプロに入って母校に帰り、野球部の監督でもしようかなと思っていたのです。ところが、ノンプロの世界で幸せになっている先輩が見当たらず、野球を辞め就職してみようと思いました。

――そこで初めて、野球以外の人生を考えるように。


高山直氏: 最初は「オフィス」という場所で働いてみたいな、という軽い気持ちでした(笑)。就職情報誌会社に就職しました。そこでは「優秀な人材の確保」してもらうため、各企業から広告出稿をしてもらっていました。クライアントの求める「優秀な人材」とは、偏差値の高い、良い大学を出た人間でした。30歳を過ぎたある時、クライアントに「やる気がある人材、志が高い人材、情熱がある人材はどうか?」と打診したところ「それは二の次で」と言われ、そこで違和感を覚えたのが、最初のきっかけだったのかもしれません。日本の学歴偏重社会とぶつかることによって、「学歴差別をなくしたい」という思いが生まれたのです。

さらに、昇格でも学歴差別があると知りました。ある日、部長であるぼくの部下とライバル部長の部下との昇格を決める役員会議がありました。ライバル部長の部下は有名私大卒、ぼくの部下は普通の私大卒だったのですが、結果はライバル部長の部下が昇格しました。理由は「ポテンシャルが高いから」。

――採用だけではなく、昇格でも……。


高山直氏: 思わず「それは、10年前のポテンシャルですよね?」と言ってしまいましたよ(笑)。求人誌は、人の人生に深く携わるものです。仕事の入り口は、人生の入り口。そのような会社ではイカンと、転職を決意しました。30歳を超えてからの転職は、勇気がいりました。ジャパンタイムズが新しい人材事業の責任者を探しおり、ぼくに声がかかり転職しました。会社に残って役員という道もありましたが、当初から「20年働いて、40歳になったら独立したい」という想いを持っていたので、それまでの新たなチャレンジをしたいと思っていたのです。組織を経験し、上司という立場を経験し、マネジメントができなければビジネスは成功しないだろう。熱い思いだけではダメ。20年は修行だとぼくは考えていましたので、苦ではありませんでした。
その後、最後の会社務めとなった組織では、取締役までさせていただきました。

新卒から会社経営まで 組織のすべてを知り得たからこそ伝えられるもの


――新卒から会社経営までを、組織で経験されたのですね。


高山直氏: そこがぼくのメリットであり、発信することだと思っています。長年IQビジネスに携わって、EQの必要性をどこかで感じていたのだと思います。EQは、仕事先のアメリカで知り合ったアパレル会社の部長に紹介されました。その方曰く「シリコンバレーのベンチャーで成功している人は総じてEQが高い」と。その翌日には、EQの論文を渡してくれました。ぼくはそれを日本に持ち帰り、そのまま机の引き出しに入れておきました。「IQよりEQが大事だ」という言葉は、ぼくの言っている「学歴よりも、やる気や志の方が大事だ」ということと同じだと思いました。これは日本においても必要だと、感覚的にわかったので、その後、2、3年をかけて。40歳を迎えた後、イー・キュー・ジャパンを設立しました。色々な偶然や人との出会いがあって会社を作りましたが、学歴差別をなくしたいという気持ちが、ぼくの中のどこかに脈々と流れていたのだと思います。その思いが大きなきっかけとなりました。「EQには、出会うべくして出会ったのだろうな」と思います。



――その想いが、最初の本『 EQ こころの鍛え方』としてまとめられました。


高山直氏: 自動車会社から仕事を受注した時の、そこの社員を思い描きながら書いた本です。おかげさまで多くの人々から反響を頂き、その後は色々な出版社、編集者の方が来られました。
ぼくの辞書にNOという言葉はありません。「NO」と言うのが面倒くさいから、「何でもこい!」ですね(笑)。ただ、原稿の受け取りだけではなく、整合性をつけて修正を提案してくれるような編集者が理想ですね。

本は、ぼくの分身です。書店で自分の本を見つけるのは、自分の子どもを見つけるような感覚
で……今も書店には足しげく通っています。以前、自分の本に見入ってしまって、自分の本の上に携帯を忘れてしまったこともありました(笑)。

心の知能指数を上げて「幸せ」を


――EQを広げることで、少しずつ社会に変化をもたらしています。


高山直氏: ぼくは、毎年1月1日にその年のテーマを書いています。今年のテーマは「幸せは自分から」。「自分が幸せでいることが第一ですよ」ということを、色々な人に言葉で言えるようになってほしいと思っています。みんな、会社のため、家族のため、部下のため、一生懸命働いています。EQのトレーニングをしていても、その気持ちが伝わってくるのですが、「じゃあ、ご自分は幸せですか?」と聞くと、皆さん顔が曇るのです。「みんなが幸せになることがぼくの幸せです」と言う方もいますが、実は、自分の幸せに鈍感な方も多いのです。
EQの一番重要なところは、まず自分の気持ちを感じることです。それがEQを発揮する軸になります。その次が相手です。自分の気持ちを感じられない人は、実は人の気持ちも感じられないのです。

例えば、機嫌が悪い時は、どんな話を聞いても良い話には聞こえませんよね。ですから、「ぼくは今、不機嫌だから、この話がこういう風に入ってくるんだな」と理解しなければいけないのです。これが実はEQ能力なのです。でもみんな、自分の感情自体をわからないまま、人の話を聞いています。これは最悪です。自分の気持ちを感じることができれば、不機嫌であっても、正確にその情報が頭に入ってきますし、機嫌の良い時は、トラブル報告まで楽しくなります。やっぱり、自分の気持ちが最初。それがEQを通して一番伝えたいことです。自分のことを考えるのは大切だということをわからない人は、生きていくのは辛いだろうなとぼくは思います。

自分が幸せでなければ、人を幸せにできない、ということ。自分が幸せになるために、人を蹴落とせとはぼくは言っていません。自分の気持ちがいつも最初にあって、幸せだと感じている人は、人も幸せにできると思うのです。「ぼくは不幸で、何てだめなやつなんだ」と言う人に、幸せにしてもらいたくないですよね。だから、自分がどう幸せであるかというのを、いつも感じることがとても大事。それは、“感じる力”なのです。人間は感じる動物で、感じなくなったら生きていないのと同じです。この“感じる力”がいかに大事かということも、伝えていきたいと思っています。

――EQは感じる力、IQは考える力。


高山直氏: 「感じる」と「考える」では、「感じる」の方が先にあります。ですから、感じないとIQは働かないのです。今の日本の社会にある歪みを、EQや感情の大切さといったことが、軽減してくれることをぼくは願っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 高山直

この著者のタグ: 『コミュニケーション』 『海外』 『組織』 『考え方』 『働き方』 『可能性』 『ビジネス』 『社会』 『研究』 『新聞』 『子ども』 『人生』 『クライアント』 『リスク』 『メリット』 『マネジメント』 『ベンチャー』 『きっかけ』 『転職』 『人材』

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
著者インタビュー一覧へ戻る 著者インタビューのリクエストはこちらから
Prev Next
ページトップに戻る