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世界中の本好きのために

津田倫男

Profile

1957年生まれ、島根県松江市出身。三和銀行に入行後、スタンフォード大学経営大学院卒業。ケミカルバンク(現JPモルガンチェース)VP、ソシエテ・ジェネラルSVPを経て、デル・ベンチャーズ・ジャパン(Dell Computer傘下VC)代表に。2001年より現職。現在は、起業を志す個人やグループの支援、公開前後のベンチャー支援、中堅・大企業のM&A助言や海外進出支援を行っている。 主な著書に、『銀行員の分岐点』(宝島社新書)、『定年後の起業術』(ちくま新書)、『老後に本当はいくら必要か』(祥伝社新書)など。近著に、『大予想 銀行再編 地銀とメガバンクの明日』(平凡社新書)がある。

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まだ見ぬ世界へ



株式会社フレイムワーク・マネジメントの代表を務める経営コンサルタントの津田倫男さん。企業アドバイザーとして大手からベンチャー起業家まで、幅広く経営助言をする一方、最近ではアジア英語圏の大学の日本事務局も務め、銀行員のみならず社会人、学生に、アジアを視野に入れた異文化理解の重要性も説いています。「想いを大切に仕事に取り組んでほしい」という津田さんに、銀行業界のこと、本の可能性、伝えたい想いを伺ってきました。

“小さなお客さんを大切にする”という原点


――経営コンサルタント、企業アドバイザーのお仕事について伺います。


津田倫男氏: いくつか関わる会社があるのですが、「これは面白そうだな」という気持ちから始まり、それをどのようにして社会に役立つことと結びつけられるかを念頭において仕事をしています。理想を現実に落とし込むのではなく、現実を理想に近づけたいという想いを持っています。特殊な業務をするのに必要な能力、経験という意味においてはスペシャリストだと思っていますが、経営的な視点からジェネラルにものを見ることができないと、いい助言ができません。経営者と同じ目線も必要ですが、見落としていることに気付いて指摘したりと、アクセルやブレーキを踏みながら一緒に進んで行くという感じです。

――銀行員としてのキャリアと、現在のお仕事はどのように結ばれていくのでしょうか。


津田倫男氏: 実家は家具の小売業として、100年以上続いていました。“小さなお客さんを大切に”という想いは、この頃育まれて行ったのだと思います。私も家業を継ぐつもりだったのですが、1970年代の当時、五木寛之が書いていたシベリア鉄道などにも憧れていました。故郷は観光都市ですから外国人も多く来ます。彼らと話ができればと考え、NHKの『基礎英語』などのラジオ講座を聴いていました。毎朝六時に起きて、十五分間集中し五分間で復習する、ということを毎日繰り返していました。“継続は力なり”で、だんだん聞きとれるようになっていきました。これで自信もついた私は高校三年時に一年間、米カリフォルニア州に留学することになりました。

――身につけた英語を存分に発揮されたのですね。


津田倫男氏: ところが、最初はほとんど英語が聞きとれません(笑)。周りが次々と“英語耳”を取得する中で、焦っていましたが四ヶ月経った頃、英語で夢を見るようになってからは、慣れていきました。四六時中、英語漬けの状況の必要性を感じたことは、今の海外大学の事務局をやっていることにも繋がっています。ともあれ、留学したことにより「さらに広い世界を見てみたい」という想いはますます強くなりました。当時はインターネットもなく、世界を見るためにはまずは東京に、と一橋大学に進みました。「実学」を学びに行くつもりで、早くから進学先は決めていました。

――モノ作りの世界から、銀行員へと進まれたのは。


津田倫男氏: 当初、やはりモノづくりやサービス構築をする姿を将来像に描いていましたので、メーカーを中心に就職先を考えていました。その中で、たまたま銀行の人と話をする機会があり、業界で働いている人に興味が湧きました。やはり銀行業の根幹となるのも“人”なのです。窮屈な枠組みを嫌う私が、十四年間という長い間務めることができたのも、周りの“人”に魅せられたからこそでした。入行後は、早いうちから海外勤務もし、その後銀行業務の中でも極めて異例の業務である、企業買収などを担当していました。その経験が、今の経営コンサルタント、企業アドバイザーという仕事につながり、執筆にも活かされています。


想いを託して


――津田さんだから書けること、を本に記されています。


津田倫男氏: 銀行員として働き、現在はユーザーの立場にいます。その経験と視点を活かしたものを届けたいですね。私が今、主に書いている「銀行」は、特に公益の度合いが高いものです。世の中から何を求められているのか、頭取以下しっかりと認識していなくてはいけません。私は現役の銀行員や経営者との対話を欠かさないようにしていますので、今、何が起こっているかは、わかっているつもりです。「外にいるからこそ、客観的に言えること」ということもあると思います。

テーマによってそれぞれ違いますが『銀行員の分岐点』の場合は、ドラマなどの影響もあって(笑)、悪い印象ができてしまった「出向」に対して、そうではないのだということを知って欲しいという想いで書きました。『大予想 銀行再編』は、銀行経営者に向け、原点を思い出して欲しいというメッセージを込めています。

――想いを込めて、届けられています。


津田倫男氏: 最近は、書くスピードが速くなってきました。三週間ぐらいで脱稿することもあります。「良い本」の定義は様々あります。読者、編集者あるいは出版社、書き手、それぞれの想いが上手く合えば素敵なことですが、なかなか難しいものです。毎回、悩みながら書いています。面白い本を作るために、知恵を出していくということは、なにも文章を正しく書けるということだけではありません。だから、文章に出てこないものをいかに引き出すか、ということが編集者の腕の見せどころだと思います。今後、新しい分野からの出版参入も起こってくると思っています。新規参入、の場に電子書籍は最適だと思います。抜本的に業界のあり方を変えて、印税をあげてでも面白いコンテンツを書いてもらう、という発想が必要です。

時代も国も超えて伝わる「本」の魅力


――津田さんにとって、「本」とはどんな存在ですか。


津田倫男氏: 思考や思想が記録として残る素敵な媒体です。しかもそれを、自分だけではなく、他の人にも知らせることができます。最近、再読の重要性を実感しています。池波正太郎の『剣客商売』や『鬼平犯科帳』などを読み直しているのですが、「年代に応じた読み方があって、いいな」と感じました。両方とも三回ぐらい読んでいますが、今は『剣客商売』の方がしっくりきます。『鬼平犯科帳』はリーダーとか、マネージャーの心得を感じ取ることが出来ましたし、年を重ねてからは、もう少し人の痛みがわかるとか、人間の陰陽を表す金言が散りばめられています。年代に応じて、何度も読み返せる本があるといいですね。

神保町の本屋さんに行くことも多いですし、東京堂書店さんは少し変わった良い本も置いているので、私の大好きな場所の一つです。本屋通いは、ふっと見て衝動買いできるようなものを見つける楽しみがありますよね。私は良く衝動買いをしてしまいますが、これはネット検索にはない楽しみだと思います。新聞などの書評を見て、これを読もうかなと思っても、大体忘れてしまいます。それを、店頭で「あ!この本だった」と思い出して買う楽しみがあります。電車の中で、老いも若きも、これほど本を読んでいる国は、他にはありませんので、小さな本屋さんも、その店のカラーといったものを大事にしてほしいですね。



――そんな素敵な媒体の書き手として、これからどんなものを届けていきたいですか。


津田倫男氏: 実は全く違ったテーマを考えています。私はこの五十年の間に、世界七十カ国を旅行しました。その紀行を書きたいと思っています。何度も同じ場所へ赴くこともありますが、旅行を通してそこからにじみ出てくる国民性や気質といったものを、エピソードを交えて書いてみたいと思っています。紀行以外にも、現在書いている「銀行モノ」も新しい視点で書いています。毎年「新しいものを」という挑戦をこれからも続けていきたいですね。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 津田倫男

この著者のタグ: 『英語』 『コンサルタント』 『アドバイザー』 『銀行』 『旅』 『インターネット』 『可能性』 『アジア』 『新聞』 『印税』 『キャリア』 『経営者』 『リーダー』 『マネジメント』 『経営コンサルタント』

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