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世界中の本好きのために

孫崎享

Profile

1943年旧満州国鞍山生まれ。1966年東京大学法学部中退、外務省入省。 在ソビエト連邦大使館、在アメリカ合衆国大使館の参事官とハーバード大学国際問題研究所の研究員、在イラク大使館の参事官、在カナダ大使館の公使等を経てウズベキスタン駐箚特命全権大使、外務省国際情報局局長、イラン駐箚特命全権大使など要職を歴任。 2002年から2009年まで防衛大学校の教授を務めた。 著書に『小説 外務省―尖閣問題の正体』(現代書館)、『日本を疑うニュースの論点』(角川学芸出版)、『独立の思考』(共著。角川学芸出版)、『「対米従属」という宿痾』(共著。飛鳥新社)など。

Book Information

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情報の量的優位性はなくなり、問題意識がより重要に


――資料的な側面として電子書籍について、どう思われますか。


孫崎享氏: 圧倒的に、素晴らしくなったと思います。例えば、アメリカの大統領選挙の一般教書。私が国際情報局長の時は、言わなければ、一般教書は手に入りませんでした。ところが今は、原文を、日本中の誰でも見ることができます。情報を集めるという意味では、外務省や新聞記者は、かつては圧倒的に優位に立てたのですが、今はもう、熱意のある一般市民に負けますよね。つまり情報の量的なものによる優位性は、非常に垣根が低くなっているのです。これから問われるのは、そのポストによる優位性ではなく、何を問題と思えるか、その問題意識の勝負になってくるだろうと思います。例えば、堤未果さんは、アメリカについての問題設定が、他の人より優れているため、成功しています。

今非常にいいなと思うものはTwitterです。最初は懐疑的でしたが、京都へ講演会に行った時に、要望があって始めることにしたんです。すでに日常化していますね。毎朝、日本の新聞と、外国の新聞のヘッドラインをザーッと見るし、今起こっていることについては、一応わかるような体制をとっているし、それから論評などをやり、発信すると、今度は反応がわかってきます。

私はブログもやっているのですが、記事別アクセスを見ると、自分が発信したもので、今どういう需要があるかが分かるのです。それから年齢も出てくるので、不正選挙についてはそんなに敏感ではないなど、リアルタイムに、読者が何を感じているかがわかってきます。例えば、20代の会員をできるだけ増やしたいという時は、表題に「20代の人へ」と呼び掛けたりします。そうすると確実に入ります。非常に面白いですね。

フォロアーが7万人ほどいるのですが、本を出すと予告すると、かなりの人が買ってくれるんです。7万人の中には、日々のニュースだけじゃなくて、本も追っかけていこうという人たちもいらっしゃるようで、彼らとのつながりは私の財産だと思っています。

0で掴む



孫崎享氏: 私には人生哲学があります。0と言ったら、多くの人は、タダで誰かに何かをしてあげるということを思い浮かべるのかもしれません。だから、タダというものに対してアクションしない傾向があります。だけど不思議なことに、そのタダのものは、人生において、必ず何らかの形で戻ってくるんですよ。

成功している方の中には、タダのものをものやっている人が、多くいます。例えば、地方コミュニティのボランティアだったり、大学の同窓会で幹事をやるということでもいいのですが、0のものを、いかに発出できるかということが大事。0のものは、必ず利子がついて返ってくると、私は思っています。

東洋経済の中東の担当者が、私のところへ取材に来たことがあったのですが、報酬はありませんでした。それを申し訳なく思ったのか、その記者から「『東洋経済』の書評欄に、書評を時々書いてくれませんか」と言われました。これも向こうにしてみたら、ただですよね。

それで、『イスラエルロビーとアメリカ外交』というウォルトとミアシャイマーの本の書評を書いたんです。好評だったのか、講談社の翻訳部長の人がものすごく喜んで、「お礼に行きたい」ということで、防衛大学へ来られました。その時に、大学の資料を題材に、日米同盟みたいなものを書いてみたいと思っていると話したところ、新書部の編集者に頼みますからと言われました。そうやって出ることになったのが『日米同盟の正体 迷走する安全保障』でした。そういった積み重ねがあると、ますます0で頑張ろうと思いますよね。

リスクはプラスになる


――今後どのようなことを、積み重ねたいと思われますか。


孫崎享氏: 社会が何を求めているかを考え、その求めに合わせて、動いていくしかないと思っています。将棋の羽生さんは、「常にリスクのある方を取っていく。未知のところへリスクを取ることによって、展開が開けてくる。今のものを継続をしようと思ったら、そこで止まる」と言っています。

リスクなしの言論人では務まりませんし、そのリスクは、マイナスに転ぶこともあります。でも総じて、リスクは、取った人にプラスに入るだろうと私は思うのです。だけど今は、多くの人がそのリスクにひるんでいる状況になってしまっているのではないでしょうか。私はこれからも、リスクを取っていきたい。他の人よりは、失うものがあるとは感じていないということ。それが私の利点、強みだと思うので、それを生かしていきたいと思っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 孫崎享

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