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世界中の本好きのために

武村政春

Profile

1969年、三重県生まれ。三重大学生物資源学部卒業、名古屋大学大学院医学研究科博士課程修了。名古屋大学助手、三重大学助手等を経て、現職。博士(医学)。 専門分野は生物教育学、分子生物学、細胞進化学、複製論。生物教材開発研究、DNAポリメラーゼの分子進化に関する研究、細胞核の起源に関する研究を行っている。 著書に『新しいウイルス入門』(講談社ブルーバックス)、『レプリカ―文化と進化の複製博物館』(工作舎)、『DNAの複製と変容』(新思索社)など多数。『ベーシック生物学』(裳華房)などの教科書・参考書も。

Book Information

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本は捨てられない、知的財産


――読み手としてはいかがですか。


武村政春氏: 私は知識を得るための本を読んだりすることが好きで、全部通読するのではなく、必要な部分だけを読みます。それを考えた時に、電子書籍よりも、書棚に並んでいた方が、「ゲノムについて知りたい」「あそこにゲノムの本があるぞ」と、すぐに目的の本を手に取ることができます。書棚を見るだけで全体が見渡せて、どこに何の本があるのか全部分かるのです。脳の中の記憶の引き出しへの回路が可視化されているイメージがあります。電子書籍では、画面の中で何度かプロセスしないと、いきつきません。私のように興味のあるところだけ読むというような使い方の場合は、電子書籍はまだまだ不便かなと思います。

ジャーナルや論文なども電子化されていますが、読む時は印刷して読みます。以前聞いたことがありますが、電子端末の画面からは透過光が、紙に印刷しているものは反射光が眼に入ってきます。それぞれ脳の中に入ってくる情報の度合いが全然違うというようなことがあるようです。確かに自分もパソコンの画面で読むと目が疲れます。私はなんとなく紙で読みたいと思いますね。

――最近読まれたのはどんな本ですか。


武村政春氏: 私が最近読んだのは、『ラインズ 線の文化史』という本です。ある新聞で書評を頼まれて読んだんです。ラインというのは線で、世界の全てはラインでできているということを、文化人類学的な視点で読み解いていった、重厚で何回も読まないと理解できないような難しい本です。比較するのはおこがましいですが、私の『レプリカ』は、世界は全て複製で成り立っているという本で、スタンスとしては似ているのかなと思いました。もちろん『ラインズ 線の文化史』のほうが分析は格段に緻密です。だから、私の複製論の1つの先行研究的な位置づけとしてみても勉強になりました。

――今まで読んだ本の中で、特におすすめの本はありますか。


武村政春氏:癌の歴史』、『鼻行類』と『複製の哲学』、この3冊です。『複製の哲学』は、哲学者の吉田夏彦先生の本で、世の中を複製の観点で見ています。私の『レプリカ』でも結構引用させていただいていますし、何度も読み返しました。『癌の歴史』は1997年、私が大学院を卒業する頃に出た本です。私は当時、ガン細胞の研究で、ガンのDNAの複製のメカニズムということを研究していました。ガンを歴史的に紐解いている本はなかなかなかったので、そういう意味で新しいなと思いました。

――その3冊はどのようにして選んだのですか。


武村政春氏: 書店でたまたま手に取っただけです。書店では、何かいい本ないかなと背表紙をずっと眺めてぶらつくのが好きなのです。そういう時は、文庫、新書は必ず見ます。背表紙が並んでいるのは文庫ではあまり見なくて、平積みしているのを見ます。専門書のところでは、棚置きしているのを見ますね。もちろん何かを買いたいという目的で行く時もありますけど、あまりそういうことはなかったですね。

それと、最近は専門的なもの以外で読むのは怪談話が多いですね。最近読んだのは、木原浩勝さんの『隣之怪』という本です。一昔前ですが、木原さんと中山市朗さんという怪談収集家のような方との共著本で『新耳袋』というのが流行ったのです。ベストセラーになってDVD化され、人気の本でした。『新耳袋』は全10巻で、それぞれ99話書いてあって、100物語形式なのです。その流れで、木原さんが『隣之怪』を書かれたのです。100物語的ではなくて、1つ1つのストーリーは長いのですが、誰かから話を聞いて書いた実話怪談系の怪談でした。私は『新耳袋』のファンだったので、『隣之怪』も文庫本で買っているところです(笑)。だから、書店に行くと、怪談系の本は必ず探します。

――(研究室の書棚を見て)本当に色々な本があります。


武村政春氏: もうごちゃまぜ状態です(笑)。私は、本を捨てられない人間なのです。1度買った本は絶対に捨てませんし、古書店に売ったこともないので基本的にたまる一方です。みなさんそうおっしゃると思いますけど、本というのは何か知識が詰まっている、知的財産なので捨てられません。それで、増設しました。今8年目なので、8年で1つ増設して、それでも足りなくなってきています。増設にも限界があるので基本的に積んでいくしかありません。

自宅も結構本がありますが、自宅に置きすぎると床が抜けたりするので、時々こっちに持って来ます。私、普通のはんこ屋さんで、自分の蔵書印を作って全部蔵書印を押しています。私の本ということで、武村蔵書と。私が亡くなった後、息子たちが売ったりすると、武村蔵書という本がそのまま古書店に並びます(笑)。古書店で、武村蔵書というのを見てくださる人がいるというのはなかなかいいかなと思いますね。

研究成果で、人類のよりよい社会に貢献したい


――執筆や研究を今後どのように進めていきたいですか。


武村政春氏: 『レプリカ』を書いた時に、自分ってなんだろうということを知りたいと思いました。例えば、私が武村政春という個体の中に入っている意識があるわけです。では、どうして他人の中に私がいないのか。逆に、他人の意識も私の中にいません、それぞれそこに存在しています。その仕組みを知りたいのです。

多少遺伝子が違いますが、同じ仕組みで働いている脳です。なんで私はここにいるのか、その仕組みを明らかにしたいと思います。それに、世の中の全ては複製できるけど、自己意識というのは複製できません。自分が永遠に生きていたいといって、自分のクローンを作るという議論が時々ありますが意味ないですよね。クローンになった時点で自分ではない。別個体になると自分である意識というのは全然違います。そういうところに肉薄したいと思います。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 武村政春

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