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世界中の本好きのために

三浦佑之

Profile

1946年生まれ、三重県出身。 成城大学文芸学部卒業、同大学院博士課程単位取得退学。共立女子短期大学、千葉大学教授を経て、現職。 日本古代文学、伝承文学を専門とする。 ベストセラーとなった『口語訳 古事記』(文藝春秋)のほか、上代文学関連で多くの著作がある。 近著に『あらすじで読み解く古事記神話』(文藝春秋)、『面白くてよくわかる!古事記』(アスペクト)、『日本霊異記の世界 説話の森を歩く』(角川選書)など。

Book Information

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電子と紙、両方を使用


――先生も電子媒体を使っていると思いますが、電子書籍も含めて、電子媒体をどう感じていますか。


三浦佑之氏: 可能性はすごくあると思う。わたしは本を1冊自炊するとか、そういったことはほとんどしませんが、論文などは使う際に検索しやすいので、自分でPDFにしています。整理して自分なりに使いやすくするという点でいえば、電子データは非常に便利だと思いますね。

しかし、やはり今まで何10年もそれでやってきたので、紙媒体の使いやすさは否めません。ですから急に全てを電子データに、というわけにはなかなかいかないですね。わたしは、家でも、学校でも、本に囲まれているのですが、背表紙を見ていると落ち着きます。それに、本棚はあまり整理されていなくても「あそこに置いてある」という感覚で本が探せます。もちろん電子データだともっと違う検索方法がいくらでもあって、そういう点では便利でしょうが、やはり紙の手触りや、質感とか紙面の感じとか、そういうところが離れられない魅力でもあります。今は、両者をうまく使い分けていくのが1番だと思います。それから、本というのはやはり場所の問題があると思います。いらない本を整理しながらやりくりしていますが、普通はそんなに大きな書庫を作れません。新しい本を買うためにも、たまった本を整理して圧縮する、アーカイブにすることが必要になってくると思います。わたしのところも、もうなんとかしないと、本の量がすごいことになっています(笑)。

買う便利さは電子書籍、買う楽しさは街の本屋さん


――先生は、本は直接書店で買われていますか。


三浦佑之氏: 最近はインターネットのAmazonなどで買うことが多いですね。ただし欲しい本には古本も結構あるので、行きつけの古本屋さんに頼んだりもします。新本も、わたしは家に帰る途中で通る新宿や渋谷に大きな書店はいくつもあるので、帰りにのぞいて選んだりもします。電子書店というのは欲しい本が決まっていれば便利ですが、何か関連本を探すということは難しいですね。
書棚の大きな本屋さんで関連本を探すとか、知らない分野の棚や自分がいつも見る棚ではない書棚をのぞいて、新しい本を見つけるという楽しみや、発見は、実際に本が並んでいないとなかなか起きないですよね。

――最近では、どんな楽しい発見がありましたか。


三浦佑之氏: ちょうど今手元にあるこの本ですが、仕事とは全然関係のない『ATG映画を読む』という本です。2009年に8刷りになっていますが、1991年が初版なので20数年前に出た本です。それを、数日前に偶然に新宿の紀伊国屋で見つけました。ATGというのは、日本アート・シアター・ギルドのことです。1960年代から80年代に、わたしは新宿のATGへよく行っていましたが、この本はそこで上映された映画を紹介した本なのです。「ああ、昔見たなあ」という懐かしい映画ばかりで、写真を眺めているだけですごく楽しい。こういう思いもかけない本がふと見つかるのが書店なのです。書店で映画の棚をチラチラと見ていて、「ああ、こんな本があるんだ」と思って見つけるのは思わぬ喜びです。古本屋さんも、今は「日本の古書店」というサイトで、全国の古本屋さんの在庫が分かるので、1番安いのを買うことができます。これは本当に便利で、いいサイト。だから、古本で買いたい本がある時はこのサイトで買いますが、やはり神保町を回って1軒ずつ歩くあの楽しさというのは何物にも代え難いところがありますね。

――電子書店の検索性は便利ということですが、逆に「こういう機能はいらない」、というようなことはありますか?


三浦佑之氏: 電子書店でも、例えばネットである本を買って、次にそのサイトに行くと「あなたに関連する本」がズラッと出る。こういうおせっかいは必要ありませんし、うるさい。趣味の問題もありますから(笑)、「僕はこんな本を読みたくない」、「勝手にそんなことをするな」と嫌になりますね。

古事記の面白さを伝えたい


――先ほどの、電子データによるアーカイブに関してはいかがですか。


三浦佑之氏: アーカイブについては、もう大学の紀要なども全部データ化してアップしないといけません。これは文科省や学術会議の方針としても決まっており、博士論文は必ずデータ化しなければなりません。去年までは国会図書館に入れておけばよかったのですが、アーカイブにして全部公開するということになりました。こうすれば誰でも読めるという利便性がありますし、今問題になっているようなコピー&ペーストなどもすぐに見つけられるので、とても良いことだと思います。また、国会図書館でも大いに進めていますが、古い論文もPDFになって検索でき、簡単に読めるというのはすごくいいことです。大いに進めてほしいと思っています。

――今後はどういう取り組みに力を入れていきたいですか。


三浦佑之氏: わたしの仕事は『古事記』が中心で、今色々なかたちでみなさんに読んでいただいたり、講演などをさせていただいたりしています。
『古事記』は、敗戦まで極めて偏った読み方をされてきました。戦後解放されたと言いながら、なかなか正当に読まれてこなかったところがあります。『古事記』を悪者にして禊ぎをしたつもりになっていたのかもしれません。しかし、『古事記』は悪くはないわけで、わたしは『古事記』のお話としての面白さを、どうしたらみなさんに理解してもらえるかを考えています。今も多くのみなさんは、『古事記』というのはアマテラスから始まり、天皇家の称賛すべき歴史が語られていると思っているのですが、決してそれだけではない。そして、『古事記』というのは、そういう思想的な問題を排除したところに、物語としての面白さ、文学や古典としての大切さがあるのであり、それを理解してもらいたいと思っています。そのためには、人文科学の研究対象として、きちんと評価できるかたちで読むという作業を、わたしたち研究者は率先してやらなければいけないと思っています。また、『古事記』を広く知ってもらうという点でいえば、漫画になって読まれたりしているのはとてもいいことだと思いますし、さまざまなアプローチが大事だと思います。絵でも映像でも、多様な分野からアプローチしながら、『古事記』の神話や伝承をみんなで楽しむのがいいのではないかと思っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 三浦佑之

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