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三浦俊彦

Profile

1959年、長野県生まれ。東京大学文学美学芸術学科卒業、同大学院総合文化研究科比較文学比較文化博士課程修了。和洋女子大学専任講師、助教授を経て現在教授。また、1990年『M色のS景』(河出書房新社)で小説家デビュー。 著書に『思考実験リアルゲーム 知的勝ち残りのために』『論理パラドクシカ 思考のワナに挑む93問』(二見書房)、『フシギなくらい見えてくる! 本当にわかる論理学』(日本実業出版社)、『エクリチュール元年』(青土社)、『シンクロナイズド・』(岩波書店)など。

Book Information

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学術書は電子書籍に。小説や詩集は雰囲気のある紙の本に


――編集者と作り上げていく本の一形態としての電子書籍の可能性、どんなところに注目していますか。


三浦俊彦氏: 検索ですよね。学術書の類いはどんどん電子書籍になって欲しいです。小説や詩集は、ちゃんと製本された、雰囲気のあるものにしてほしい。
例えば経済学の教科書だと、データもどんどん更新されますから検索で統計などをすぐにピックアップできた方が良いですよね。能率を考えても、学術書はどんどん電子化されないと困るのではないでしょうか。論文は、かなり電子化されてきています。僕の属している学会なんかでも電子化が進んでいますから、すぐにアクセスできます。読みたい論文がすぐに見つかるので、昔に比べて楽になりました。

自分だからこそ出せる本を作りたい


――どういった想いで執筆されていますか。


三浦俊彦氏: 他の人が書かないものを残したいなというのはあります。僕にくる依頼は、「論理学の入門の入門を書いて下さい」というものがほとんどなのですが、それはもう多くの人が書いているし、このテーマでは、限られた自分の時間でこれ以上書く価値はないと思っています。でもまだやり残しているものがあって、1、2冊書かなければいけないのですが、他に類書のないものを書こうと思っています。こういう本があったんだ、こんな本もあった、と言われるような本、また「俺がいたからこういう本が出た」と、「俺がいなきゃこの本はなかったでしょう」と思われるような本を書きたいです。

――どんなテーマで考えていますか。


三浦俊彦氏: 努力して見つけなくても、書くべきことというのはいっぱいあります。つまり、今まで何故か書かれてこなかったけれども、書かなきゃいけないというテーマがいっぱいあるので、それを1個1個片付けていこうと思っています。タイトルはまだ決まっていませんが、「下半身論理学」と「フェチ論」です。この2つについてはそろそろ書かなきゃ、と思っています。「下半身論理学」は、下半身にまつわる色々な話を論理学的にがっちりとやろうじゃないかという、いわゆる分析哲学と呼ばれるスタンスの論じ方で、下半身の下ネタの、どうしようもない話題を(笑)きっちりと学問的に体系化しようというのでやり始めました。風俗業界の裏側など、下ネタは、おもしろおかしく社会評論風に書いたものがいっぱいありますが、これを本当に学術風の論じ方で、本当に大真面目に哲学的に論ずる。これをやりたいですね。下半身トピックが語られる時、現実社会とネット空間には、大きな差があります。つまりネットでは常識になっていても、現実では全く論じられないという事柄がありますよね。

――現実ではなかなか本音が語られない……。


三浦俊彦氏: 特に男性の本音は出てくることはありません。男性が女性の前で本音など言ってしまったら、まず嫌われてしまいます(笑)。一方女性はというと「結婚するならお金持ちがいい」なんて、本来人前でははばかられるはずの本音をどんどん言います。「私は収入なんて関係ないよ」と言っていたら、お金持ちと結婚できませんよね。ですから女性が何を考えているかは男性には筒抜けです。そして女性は本音を言った方がお金持ちをゲットできる確率が高まるのです。ところが男性が本音を言ったら、女性はみんな引いてしまい、セックスに応じてくれる相手もいなくなるので、絶対本音を言いません。だから現実社会で言えない事の代替として、ネット空間では本音を言う男性がたくさんいるわけです

――男性は隠す事によって目標に到達し、女性は表明することによって近付くと。


三浦俊彦氏: 恋愛と結婚は別物、という価値基準を持っているのは実は、けっこう男の方だったりします。結婚相手にはこういう相手、恋愛ではこういう相手とちゃんと区別しています。つまり遊んで楽しい女が結婚相手にしたい女ではないし、逆もまたしかり。みんな知っていることですが、現実社会でそんなことを表立って言った男は矢面に立たされるので、誰も言いません。でも、ネットでは当たり前のように言われています。調べてみると、「それ」を書いている本はないんですよ。まだ現実社会の建前と密接なつながりを持つ紙の本は、それを言う段階にないのです。とにかく「モテる女=セックスに物わかりのいい女」と女性側に発信し、でも、そんな女性、実は男の結婚対象としては「?」ですよ、とは言わない。“セックス礼賛”の方が売れるからです。それに反することを言おうものなら、まず、女性がそっぽを向く。男性も「俺たちの本音をバラしやがって」という風に、「邪魔をするな」となりますよね。セックスできるチャンスがなくなるわけだから。ネットでも、本音を隠したい人々が叩きに回って炎上したりしてますね。そういう男の本音はこうだぞということを書きたいのです(笑)。女子大で教授をするにあたって、そういった男の二重基準に気がつけずに、傷ついてしまった学生の悩みを何度も聞くことがありました。それはやはり、女性は男性の本音をあまりにも知らな過ぎるからです。私の役割は、こういった社会の盲点を潰していくことだと思っています。

――建前では見えない、盲点ですか。


三浦俊彦氏: 進化心理学においても、人間の遺伝的本能みたいなものは調べ尽くされていて、女性の経験人数と、離婚率やDVの率が比例するということはもうはっきりしています。人間は本能で生きていますから。文化的建前はどうであれ、どうしても生理的な本能で変わってくるじゃないですか。だって血の繋がりのない親子の方が絶対に、虐待の率が高い。こんなの当たり前の話ですが、何故かそれが今、文化的な「常識」の中で分からなくなっている。建前だけで語ると見えないのです。これを直に書こうと思っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 三浦俊彦

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