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世界中の本好きのために

渡瀬謙

Profile

1962年、神奈川県生まれ。明治大学卒後、一部上場の精密機器メーカーに営業職として入社。その後、(株)リクルートに転職、社内でも異色な無口な営業スタイルで入社10ヵ月目で営業達成率全国トップに。94年に有限会社ピクトワークスを設立し、広告や雑誌制作などを中心にクリエイティブ全般に携わる。その後、事業を営業マン教育の分野にシフト。内向型で売れずに悩む営業マンの育成を専門に、「サイレントセールストレーナー」として、全国でセミナーや講演などを行って現在に至る。

Book Information

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コピーライターを選んだのも「必然」


――その後、営業されている方の教育にシフトしていくわけですが、そのきっかけとは?


渡瀬謙氏: デザインの会社を10年ぐらいやって、3冊くらい雑誌の仕事を色々な会社から受けていました。ちょうど出版不況の時期が来て、雑誌の廃刊が多くなった時期になり「あと3ヶ月でうちの雑誌は廃刊になる」などと言われたのです。そこで思ったのは、「独立してフリーでやっているにも関わらず雇われているのと変わらない」ということ。それはなんか面白くない、と。「自由生産に携わることのできるような、もう少し川上にいきたい。自分で発信者になれないかな」という思いが生まれました。ちょうどメールマガジンが流行り始めた頃だったので、メールマガジンを配信することにしました。

――「サイレントセールスのススメ」ですね。


渡瀬謙氏: 最初はボランティアでクリエイター向けの営業の指南のようなものをメルマガ用に書いていました。自分で初めて営業のことを語ってみたのですが、意外と受け入れてもらえて、認めてくれました。「これは本になりますよ」といったコメントなどもいただいて、自分もその気になりました。同時期にメルマガを始めた人との横の繋がりもあり、彼らには出版のオファーがきていたので、「僕ももうすぐ来るかもしれない」と待っていたのですが、なかなか来ませんでした。そのうえ、メルマガ上で「1年以内に本にする」と宣言をして、自分を追い込んでいました。よく考えてみると、企画が決まってから本になるまでタイムラグがありますよね。「1年以内に」と考えたら、出版するなら早く決めないといけないと焦りました。そして、企画書を見よう見まねで作り、40社くらいに送りつけたのが、最初の出版のきっかけとなりました。

――それまでもメルマガは書かれていましたが、本として書かれることになって、難しいなと思ったことはありましたか?


渡瀬謙氏: メルマガは1話で完結できたのですが、本は連続性や流れも意識しなければいけません。ですから別作業という感じでもありました。そうやってできた本が書店に並んだ時は、やっぱりうれしかったです。高校の時に太宰治の『人間失格』を読んで、面白いと思ったのと同時に、「読者をこんな気持ちにさせる、こういう本を書けたら気持ちいいだろうな。でも自分にはできないな」と思っていたのを思い出しました。リクルートの後にコピーライターを選んだのも必然だったのかもしれないな、などと感慨深いものがありました。
最初は、本=小説というイメージが強かったので、小説家じゃないと本は書けないと思っていました。しかし、ビジネス書というジャンルでも本を書くことができるということを知って、そちらから入ることにしたのです。ビジネス書をやっていれば編集者との繋がりができるし、「そのうち小説を書くタイミングもあるだろう」と考えていました。そういったご縁があって、小説形式のものも出せました。編集者との出会いというのは、やはり大きいですね。

――著作者として、渡瀬さんが思う理想の編集者像は?


渡瀬謙氏: 一番良いなと思うのは、著者の将来を考えてくれる編集者です。「この本が単体で売れるかどうか」という目線でお仕事をされている方が多いのですが、「この本を通してこの著者のビジネスをどう展開していくか」ということまで考えてくれる編集者も中には居て、そういう人はすごいなと思います。そういう方とお仕事をすると、結果的に良いと思える本ができますし、結果もついてくるのです。僕にとって編集者とは、思い込みで書いている部分を、読者目線でジャッジをしてくれる存在でもあります。書くということは、自分と向き合う行為でもあるし、それも世に出てしまったら修正がきかないので怖くもあります。ですが、僕はその覚悟をもって書いています。Amazonなどのレビューを見ると、当然、賛否が出ています。別段、否の意見を参考にしているというわけでもないのですが、「もしかしてこんなことを言ったらカチンとくる人も中にはいるかもしれない」というように、色々な目線を意識しながら書いています。また、「ハードルが低いから、こんな自分にもできるかもしれない」という気持ちになってもらえるよう工夫もしています。



電子書籍は安くなくていい


――電子書籍は使われていますか?


渡瀬謙氏: 以前から青空文庫で昔の小説などを読んでいました。スマートフォンだと読むには画面が小さいし、タブレットだと画面は大きいけれど重い。本を読むとしたらKindleくらいのサイズと重量が気持ちいいですね。山などへ釣りに行って、「この魚は何?」という時に図鑑が欲しくなるのですが、持って行くには重いですよね。また、寝る時にハードカバーの本を読むと、重くて疲れるじゃないですか。そういった時にはすごく便利だなと思います。でも、普段用には電子書籍は使いづらいなと僕は思っています。僕が本を読む時は、目次を読むのと同時にパラパラっと見て、目についた大きな見出しのところを読み始めるという読み方をしたいのです。また、本を書く時には、参考資料に付箋を付け、並べてめくりながら作業をするのですが、電子だとそれがしにくいなと思います。紙の本が電子書籍に置き換わるというより、その2つは別ものだと思っています。今はハードがあってソフトになっていますが、電子書籍でしかないものもあってもいいと思います。去年あたりから、僕が本を出している色々な出版社から「この本を電子化したいんですけど」という打診がすごく多かったのです。おそらく、今コンテンツをそろえている時期なのでしょうね。

――電子書籍が普及するためには、どのようなことが必要だと思われますか?


渡瀬謙氏: Amazonでは、ハード版と電子版という2つの金額があって、電子版は若干安くなっていますよね。でも、安い必要はないと思いますし、むしろ高くてもいいと僕は思います。学研の図鑑が意外と安くて3000円くらいで買えたりするのですが、同じ内容で5000円だとしても僕は電子書籍を買うと思います。本と電子書籍はお互いがライバルという関係ではないのです。これは僕がいつも営業で言う台詞です。今は類似商品が多いのですが、微妙な違いで売ろうとしてもあまり意味が無い。お客さん側としては元々はどれでもいいんです。じゃあどこで選ぶかというと、ひとつは値段です。でもだからといって売り手側がどんどん値段の競争をしていくと、消耗戦になってしまう。それに、値引き作業だけの営業活動は面白くない。だから僕は「もっと別の売り方をしましょう。土俵を変えて別のところで売り出しに行きましょう」という話をずっとしています。それは電子書籍でも同じことが言えるのではないかと思っています。

――今後の展望についてお聞かせください。


渡瀬謙氏: 今はまた営業マン向けの小説本を書いているところなので、その参考になる『夢を叶えるゾウ』などを何度か読んでいます。『朝5分!読むだけで「会話力」がグッと上がる本』もそうなのですが、コミュニケーションを円滑にするためのものに、もう少し力を入れていきたいなと考えています。仕事においては個々の能力の差も多少ありますが、ちょっとした人との付き合い方や、挨拶の返し方、あるいは声の掛け方などが大きく人生を左右してしまう、ということをすごく感じているのです。今ここで一言言わないがために、人生が変わってしまうのだったら、もったいないですよね?昔の自分のような悩みを持っている人は、今もたくさんいると思うのです。壁に当たったまま挫折して、その道を外れて別の道を探す人も多いと思います。僕はたまたま、「営業なんか向いてない」と思っていても、自分に合った方向性を見つけることができて、続けることができました。だからこそ、昔の僕と同じように悩んでいる人に対して、諦める以外の方法へのヒントを与えられるような存在であり続けたいなと思っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

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