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世界中の本好きのために

中村亨

Profile

1959年、京都府生まれ。神戸大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。松阪大学政経学部講師・助教授・教授を経て、現職。専門は計量経済学、開発経済学、国際金融論。 著書に『経済発展の計量分析』(晃洋書房)がある。直近には『大恐慌論』(ベン・S・バーナンキ著。日本経済新聞出版社)の翻訳など。

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経済に進んだのはラッキーだった


――神戸大学に入られるわけですが、経済を選んだのはどういった理由があったのでしょうか?


中村亨氏: 当時、私の兄が神戸大学の経営学部の3年に在籍しており、「経営学部に入ろうかな」と言ったら「経営学部はやめとけ。数学が好きだったら、数学を扱える経済の方が絶対お前に合う」と言われたんです。経済学部に入ったことは、ある意味ではすごくラッキーだったと思っています。その当時、経済学部にはノーベル賞にもノミネートされることのあった置塩先生がいらっしゃって、そのゼミに属すことができました。ゼミの授業ではケインズ経済学のエッセンスを扱ってくださいました。今思うと、本当にありがたい研究環境だったと思います。ゼミ以外はあまり授業には行っておらず、家で様々な分野の本を読んでいました。今では、世界的に有名な経済学のテキストはたくさんあるのですが、当時はほとんどなかったんです。数少ないテキストの中でも、サムエルソンの『経済学』をひたすら読んでいました。読んでいくと、その本の中に置塩先生の名前を見つけて、その先生の偉大さを再確認しました。

――その後、博士課程に進まれたわけですが、研究者になろうと思ったのはいつ頃でしたか?


中村亨氏: もちろん大学院も試験があったので、落ちたら普通の就職活動をしようと思っていました。「なんとしてでも研究者になりたい」という感じではなかったと思います。でも、“学問が好き”という思いはありました。統計学に関しては、大学の授業で借りた友達のノートの出来がかなり良かったこともあり(笑)、それで「統計学ってすごく面白い」と思い、そこから統計学・計量経済学をやり始めたんです。だから、統計学・計量経済学を専門にしたことは偶然だと思います。今でも、その時ノートを借りた友達には頭が上がらず、いつか感謝の意を伝えたいと思っています。この他にも色々な偶然なきっかけでこの道に来ているので、自分でも不思議だと思いますね。

――ご自身の教育・行動指針は、どういったところにありますか?


中村亨氏: とにかく子どもを信頼し、やらせてみる、というような感じです。自分の2人の子どもを育てながら分かったのが、同じ刺激を与えても、人によっては違うものになるということ。子どものためにと思ってやったことが、実は全然子どもは刺激を受けなかった、ということもありました。同じ自分の子どもでも同じようには反応しないし、同じものを読んでも読むツボが違ったりするのだと思います。そこは人間の難しいところですね。今19歳で、海外の大学にトライしている娘がいるんですが、家に本を置いていると、チラチラと見ている内に興味を持っていくようなので、大体私と同じような読書癖だと思います。私は「読め」とは言わないのですが、本棚を見て自分でつまみ食いをし、さらに自分の読書の世界を広げているようです。



本は死ぬまで書きつづけるんだという姿勢


――本を執筆されることになったきっかけをお聞かせ下さい。


中村亨氏: 基本的に私の研究スタイルは実証分析にありますので、データの整備も含め大変時間がかかります。しかし「本は死ぬまで書くんだ」という姿勢だけは失わないようにしたいと思っています。最初の本の執筆に関しては、今まで自分が貯めていた論文の集大成、という感じだったでしょうか。

――今年の3月に出された『大恐慌論』に関しては、どちらかというと経済の専門家を読者に想定されているように感じたのですが、出版されるきっかけはどういったことだったのでしょうか?


中村亨氏: 私を含め3人の翻訳者がいますが、その1人とはハーバードに留学した時からの付き合いなんです。キャノングローバル戦略研究所にいらっしゃって、その方を通じて、出版社を紹介してもらいました。原書は古典になるというか、確実に残ると言われている本ですし、著者のベン・S・バーナンキは、我々のアカデミックな社会では、“今後、確実にノーベル賞をとる”という風に見られていますので、出版社の方もそれを見越して出版したのだと思います。利益が上がるかどうかのビジネス的視点を度外視されたのではないでしょうか。

――執筆に対するこだわりや、思いはありますか?


中村亨氏: 専門の文章となると、「できるだけ難しく見せよう」というややペダンティックな感情がはたらきがちです。でも、それはある意味様々な学問において、誤解を生み、研究者同士の知的交流を妨げてしまうリスクを生んでしまうのではないでしょうか。哲学の碩学に、竹田青嗣さんとそのお弟子さんの苫野一徳さんという方がいらっしゃいます。苫野一徳さんとは実はTwitterで知りあって、それがきっかけで交流が進み、竹田青嗣先生ともお会いして意見交換もさせて頂きました。彼らの本を読んで、「本当に分かった」人の哲学の描写というのはとてもシンプルで、読者の方もクリアに理解できる、ということを感じたんです。やはり学問はそうあるべきだなと思いました。だから本を書く時は、私もシンプルでクリアな文章を心掛けるようにしています。それは授業においてもそうですし、常に意識しないといけない点だと思っています。

著書一覧『 中村亨

この著者のタグ: 『大学教授』 『経済』 『考え方』 『働き方』 『研究』 『教育』

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