BOOKSCAN(ブックスキャン) 本・蔵書電子書籍化サービス - 大和印刷

世界中の本好きのために

浜辺陽一郎

Profile

1984年司法試験合格、翌年慶應義塾大学法学部卒業。1987年弁護士登録、1995年米国ニューヨーク州弁護士登録。都内の渉外法律事務所等を経て、現在、弁護士法人早稲田大学リーガル・クリニックにおいて企業法務を中心とした弁護士業務に携わる。主要図書に『図解 新会社法のしくみ(第2版)』『図解 コンプライアンス経営(第3版)』『執行役員制度(第四版)』『国際ビジネス法入門』(以上、東洋経済新報社)、『法科大学院で何を学び、司法試験をどう突破するか』(法学書院)、『会社法はこれでいいのか』(平凡社新書)、『コンプライアンスの考え方』(中公新書)、その他多数。

Book Information

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

企業法務と司法制度のドッキング



浜辺陽一郎氏: 留学から帰ってきてからは、日本IBMの社内弁護士をやられていた方が60歳を越えてから開いた、高石法律事務所にお世話になりました。彼は社内弁護士の草分けであると共に、企業倫理であるとか、いわゆるコンプライアンスだとか内部統制などの話につながる問題を扱っていました。企業法務は当時、日本IBMが先駆的でしたが、ちょうどAppleやWindows95でパソコンがどっと入ってきた時代でもありました。

――企業法務という切り口で本を出されていますよね


浜辺陽一郎氏: 企業内取締役の話にも触発されて、『取締役という人びと』を出しました。その後、東洋経済で『図解 コンプライアンス経営』が出ました。たまたま事務所も、森・濱田法律事務所というところに入って、不思議なんですけれども、日弁連の会務で濱田松本法律事務所の先生と一緒になったこともありまして、濱田先生の事務所に入ることができたんです。濱田松本が、森綜合と一緒になり、森・濱田松本という日本のトップファームとなって、そこで私は企業法務の実務に接することができる機会を得るに至りました。
その頃から企業の方から発展してきた企業法務というのは、伝統的な弁護士の会社法の仕事とは異なっていました。もっというと、アメリカ型の企業法務です。源流はIBMであったり、Appleであったりする。その企業法務の流れと司法改革のドッキングしたものが、今、法科大学院でやっていることで、まさにそこに日本社会の法務に対するニーズがあると思っています。

――法曹教育の現状には、かなり変化が見られるのでしょうか?


浜辺陽一郎氏: 理解が十分に浸透してるとは言えないところがあります。法科大学院で、学生と面接して「どういう弁護士になりたいですか」と聞くと、1番多いのが街弁なんです。よく聞くと「地域社会に密着した仕事がしたい」という、それらしいことを言うんです。でも「地域社会の仕事がしたいなら、弁護士として地方公共団体の法務にニーズがありますよ」と言うと、「ちょっと、そういうのは興味ありません」とか、「考えてませんでした」って言うんです。「考えていませんでした」はまだギリギリセーフで、知らないのはしょうがないと思うのですが、非常にネガティブな反応を目の当たりにすると、「本当にあなたは地域社会に密着した仕事がしたいのか」と聞きたくなります。地方公共団体は権力を持った“悪い奴ら”で、自分はそれと対決するというイメージを持っているのかもしれないのですが、現実はそうじゃないんです。地方自治体は自分たちで適正に運営していかなきゃいけないのに、それを外部の誰かにお任せしてしまうから、うまく行かないのではないでしょうか。少なくとも、まだまだ法律実務家の間で、地方自治には、「やりがいのある仕事があるんだよ」ということについて、必ずしも十分な意識があるとは言えないのです。

企業・行政の問題に対応する法務教育を



浜辺陽一郎氏: それからもう1つ、なぜ街弁になる人が多いかと言うと、企業法務をやりたい人は、法科大学院に来ないで、すぐ企業に入ってしまうんです。それでちゃんとした企業法務ができれば良いのですが、企業法務にはマインドとスキルも必要です。丸腰だと厳しい。いわゆるブラック企業もいっぱいあって、非常に危ういわけです。きちんとした教育機関がようやくできているわけだから、それは利用するべきです。世の中が情報化、高度化しているから、昔の様なやり方で勉強していたんじゃダメなんです。
世界中の法律専門家というのは、皆、大学院レベルの教育を受けているのです。法学部は、はっきり言って何も分かってなくても、それなりの要領さえ良ければパパッと卒業できてしまいます。しかしそれをベースに法務の仕事はできません。日本の村社会だけでやるんだったら良いけれども、世界の競争はそれでは通用しません。これから企業法務とか、あるいは国家公務員にしても地方自治体にしても、日本の大きな社会問題をきちんと解決するためには、人材の問題があります。もちろん法務だけとは言いませんが、少なくとも法務はそれぞれの分野において、まだまだ弱いわけです。そこにしっかりとテコ入れするために、執筆やその他の仕事がお役にたてればと思っています。

――言論活動のモチベーションとなっているものはなんでしょう。


浜辺陽一郎氏: 一言で分かりやすく言うと、社会正義です。ただ社会正義という言葉は、中身が人によって違うので、詳しく見ていくと、あるいは政治的な立場になると細かい議論があるので、抽象的な言葉で言うと、「公正で合理的」という言葉になるでしょうか。やはり、世の中には不合理なことが多いですから、不条理なこと、筋の通らないことをなくしていきたいのです。企業社会でも行政の分野でも、教育システムでも、それが基本的な価値観です。不合理、不条理はなぜ生じるかというと、誤った考え方に毒されていたり、不勉強であったり、分かっていなかったりするからです。一人ひとりが知識を持ち、賢くなることが基本です。

著書一覧『 浜辺陽一郎

この著者のタグ: 『考え方』 『生き方』 『可能性』 『弁護士』 『原動力』 『教育』 『モチベーション』 『法律』

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
著者インタビュー一覧へ戻る 著者インタビューのリクエストはこちらから
Prev Next
ページトップに戻る