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世界中の本好きのために

花輪陽子

Profile

1978年、三重県生まれ。 青山学院大学国際政治経済学部を卒業後、外資家の投資銀行に入社。 リーマン・ショックの影響で夫婦同時に失業するも、猛勉強の末、ファイナンシャル・プランナーとして独立し、処女作「夫婦で年収600万円をめざす!二人で時代を生き抜くお金管理術」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は5万部のヒットとなっている。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」、NHK「ドラクロワ」などに出演。日経電子版、Yahoo!ニュース個人コーナーなどで連載。現在のレギュラー番組に「ニコニコ生放送」「ニコニコ生活講座」がある。

Book Information

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お金に翻弄されない生き方を伝えていきたい



ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子さんは、新聞・雑誌への寄稿、コラムや著書の執筆、テレビ出演や講演等で、家計と貯蓄に関するアドバイスを行っています。活動の原点にあるのは、自らのOL時代の「貯められない」生活、夫婦同時の失業などの苦しい経験です。お金の問題で悩む人に対し、深い共感を持ちながら、ライフスタイルを提言する花輪さんにお話を伺いました。

タブレットを駆使して多ジャンルの読書


――早速ですが、近況をお聞かせください。


花輪陽子氏: テレビの出演がある場合には、企画会議から入らせていただくこともあります。あとは講演などの仕事もいただいているので、地方に行くこともあったりと、移動も多いですね。

――花輪さんはタブレットもお持ちですが、移動の際には利便性はありますか?


花輪陽子氏: 資料が電子であると、どこでも仕事ができるのでありがたいです。家で全部できる仕事もありますが、午後からちょっと会議に出るとか、そういう時はタブレットに情報を入れておきたい。本は500冊以上スキャンしていますが、タブレットに全部を入れているわけではなくて、パソコンに入っている資料を少しずつ持ち運びできるようにしています。新規で買う本は、電子書籍になっているものは電子書籍で買います。実用書は電子書籍の方がいいですね。あとは、漫画もタブレットで読む方が読みやすいです。

――最近、どのような本を読まれていますか?


花輪陽子氏: 独立してから、この4年くらいバタバタしていたので、ビジネス書やマネー本とか、仕事に直接影響を与えるような本ばかり読んでいましたが、最近は教養を高めるような本を中心に読んでいます。Googleの元日本社長の村上憲郎さんが、ご著書でビジネスマンが学んでおくべき知識として、キリスト教と仏教と西洋哲学とアメリカ史を挙げられていましたので、そういった本を読んでいます。
私は20歳の時にアメリカに短期留学して、ヨーロッパの人とディスカッションする中で、英語力が足りない以上に、教養や共有しているコンテンツをシェアできていないことにコンプレックスを感じていたのですが、今やっとそういった本を読みたいと思えるようになってきました。村上さんが薦めていた『誰もが聖書を読むために』という本がすごく面白い。これまでは旅行で美術館を巡っても、宗教画に描かれている背景が全然分からなかったんですけど、楽しめるようになりました。村上春樹さんやドストエフスキーの小説、『エヴァンゲリオン』などのアニメにも、ストーリーの中で聖書がモチーフになっています。それが分かるようになると面白くなります。『カラマーゾフの兄弟』は、光文社文庫から出ている亀山郁夫さんの訳が分かりやすくて、おすすめです。

――仏教については、おすすめの本はありますか?


花輪陽子氏: 私もお坊さんの本を翻訳したことがありますが、プラユキ・ナラテボーさんの『苦しまなくて、いいんだよ』というという本がすごく面白い。初期仏教の教えが書かれているのですが、苦しみを解消して、もっと楽に生きるための実践的な本です。私も、メディアに出るようになって、うれしいメッセージをいただく半面、全然知らない人からいきなり攻撃されたりもします。そういう時の心の持ち様が楽になりました。
世界の歴史を、美術史、宗教、貨幣などの視点から見る本も面白いですね。ちょっとした教養で人生がより豊かになると思います。電子書籍は、古典だと無料のものもありますので、ありがたいです。

――漫画はどういったものがお好きですか?


花輪陽子氏: 私よりも夫が漫画好きですけれど、最近読んだものですと、『ヨルムンガンド』『進撃の巨人』『惡の華』などです。テレビ放映が待ちきれなくて原作を買って読んでいます(笑)。Yahoo!JAPANで連載している『インベスターZ』も面白いです。

「英語で仕事をしたい」と外資系投資銀行へ就職


――本は小さい頃からお好きだったのでしょうか?


花輪陽子氏: 小学生の時、学校に隣接して大きな図書館ができたので、そこに入り浸って本を読んでいました。神話や伝記をよく読んでいたことを覚えています。あとは手塚治虫さんの『火の鳥』も好きでした。私はマンガ家や小説家にあこがれていたのですが、思春期に入ると本を読まなくなってきて、高校の時には、受験もありましたからあまり読めませんでした。でも、その時すごく日本史にはまって、教科書とか参考書は5種類ぐらい持っていて、持っていくのは重いので、1冊にまとめたノートを作っていました。あとは美術などのビジュアルの参考書もよく読んでいました。今も電子書籍で、『もういちど読む山川日本史』を懐かしく読んでいます。復習するのにちょうどいいですね。

――大学は青山学院に進まれますね。


花輪陽子氏: 英語系の学校に行きたいと思っていて、ミッション系の学校を集中的に受けました。学部は英語講義も多い国際政治経済学部を選びました。その学部には帰国子女が半分近くいたので、英語でも経済の授業も多かったですね。

――卒業後は外資系の投資銀行に入社されましたが、どのような理由からなのでしょうか?


花輪陽子氏: 英語を使った仕事をしたくて、大学で経済を学んだので、金融に行こうかなと思たんです。外資に行きたいというあこがれで、仕事内容をよく知らずに会社に入ってしまいました。外資系の金融機関はTOEICの点数なども採用時に重要視されるのですが、私が入社した会社は、日本の企業と外資のジョイントベンチャーだったので、普通の外資よりは英語の審査が易しかったのかもしれません。最初は日本語しか使わない部署だったんですが、英語を使う部署に異動してすぐにニューヨークに電話しなければいけないことになり、その時は大変でした。でも会社の業務は比較的楽で、18時ぐらいに帰れていました。メールや電話が全部英語だったのですが、仕事を覚えてからは、繰り返しで使う英語も決まっていて仕事も早く終わるようになりましたね。

過剰な買い物と「夫婦同時失業」で見えてきたもの



花輪陽子氏: 当時、ITバブルで景気が良かったこともあって、お給料がどんどん増えていきましたが、自分の支出もどんどん増えてしまいました。会社が丸の内にあった時期があって、18時に終わると交通の便もいいので毎日買い物をしたり、趣味にはまったり。楽しかったんですが、入ってくる以上にクレジットカードでお金を使ってしまった。気付くとリボ払いの残高が200万円になってしまっていた時がありました。そして、2009年にリーマンショックで、新婚3か月目に、夫の会社が黒字倒産したんです。そして、その2か月後に、私が働いていた部署がなくなって、リストラされてしまいました。前から午前中働いてきた同僚が午後になったらいなくなったっていうようなことがたびたび起こっていて、午後に仕事をしている最中に電話で呼び出された瞬間に、「あ、これは」とすぐ分かりました。

――その時はどのようなお気持ちでしたか?


花輪陽子氏: 比較的冷静ではいられたんですが、「なぜ私が」という思いもありました。でも立ち直りが早い性格なので、2、3日で気持ちを切り替えました。会社の借り上げの社宅から出なくてはならず、物件を探したり、失業保険を申請したり、やることが結構ありました。また、当時ファイナンシャルプランナーの資格を取るために勉強をしていて、試験があと2か月後だったので、早く切り替えることができた。夫も、すぐに次の就職先が決まったので、その安心感もあって頑張っていくことができました。一人だと、もっとしんどかったと思います。

――そのような苦しい経験があったことで、その後のお仕事につながった点はありますか?


花輪陽子氏: 失敗が糧になりました。多分、その失敗がなければ本を書くことはできなかったと思います。最近、ニコニコ生放送で家計番組を持つようになって「月収20万以下でも賢く生きる方法」というテーマでお話ししています。私も失業して、生活レベルをすごく落としたことがあったので、お金が少なくても生活できますし、お金を使ってしまう側の心理も分かる。20代で使ったお金を貯めていれば、多分ワンルームマンション一室ぐらい買えたと思うんですけど、そういう生活ではなかったことで、その後の仕事が豊かになったのかなと思います。

編集者とのやり取りで、企画の精度を上げる


――その後本を出されますが、作家デビューの経緯をお聞かせください。


花輪陽子氏: 失業して1年ぐらいして本を出すんですが、その1年間は、ファイナンシャルプランナーの資格を取ったので、ボランティアで仕事をしたり、あとは他の人のセミナーに出たりしていました。活動をしているうちに知り合った人から個人で本を書いたり講演をするにはどうしたらいいかということを色々教えてもらいました。それまでは、出版社にどうアプローチしていいか分からなかったのですが、出版セミナーにも参加をして、そこにいた編集者さんと仲良くなって、いくつか企画を見てもらうことができました。その中で一つの企画が運良くすんなり通りました。力を入れて販売してくださって、出版社の方には感謝の気持ちでいっぱいです。新人だったのに、初版で1万5千部も刷っていただいて、本屋の新刊コーナーにドンと置いていただいて、それがきっかけでお仕事をいただけるようになりました。

――本の企画を出す際には、どのようなアピールをされたのでしょうか?


花輪陽子氏: 企画書では、分かりやすい見出しを考えるのが大切だと思います。サンプル原稿や過去に雑誌に書いた記事など参考資料も付けたり。最初の企画は、本当に力を入れて書きました。それを色んな人に見てもらって、フィードバックをもらって、直したり、新しい企画を考えたり、精度を上げていきました。いい編集者と出会えば本当に1発で決まることもあるので、やはり編集者との出会いが大切です。

――編集者は花輪さんにとってどのような存在でしょうか?


花輪陽子氏: コンテキストを作る人だと思っています。まずコンテンツ、素材があります。これは料理に例えると魚やお野菜など、生の素材です。それを見事な切り口でさばいて、みんなが食べられるような形にするお仕事が編集者の仕事だと思っています。特に、私のような仕事の場合、内容をそのまま伝えてしまうと一般の人には伝わらない。それは魚を生で丸ごと出すようなものなので、それをうまく食べられる形にしてくれるのが編集者の方です。
例えば、政府系の文章は、間違いはないように書いてあるんですけど、時にちょっと分かりにくい。でも、そういった情報も、文章の書き方、見せ方によってすごく分かりやすくなる。素材と編集が両方いいと、いい本になるのだと思います。

読みやすいけれど、奥行きのある本に


――花輪さんの本は電子書籍にもなっていますね。


花輪陽子氏: 2冊電子書籍になっています。電子書籍になったことによって、本屋さんに行かない人がKindleで買ったり、違う出会いができるようになると期待しています。電子書籍は最初は抵抗があるかもしれないですが、便利なので、1回使ってみるとヘビーユーザーになる方もいっぱいいると思います。普段忙しくて本屋に行けない方にとって、本との出会いの場になると思います。

――執筆では、読者にどのようなことを伝えたいと思われていますか?


花輪陽子氏: テーマに関しては出版社から依頼があったものを書くことが多いのですが、お金の情報だけだとネットなど色々なところで読めるので、哲学や他の情報も含めて書いています。これからの私の課題でもあるんですが、もっと重厚感があるような、読みやすいけれども深い内容にしていきたいと思っています。お金というテーマは、本当に人間の本質を表すようなものです。もっと色んなことを勉強して、奥行きのある本を書いていきたいです。

――本を執筆される時には、どのようなことに留意されて書かれていますか?


花輪陽子氏: 執筆する時に、どんな料理を食べたいかというのが個人個人で違うので、雑誌などの媒体で、読者層がある程度分かっている時は、意識して書き分けています。特に、女性向けに書く時と男性向けに書く時ですね。今、日経電子版で連載をしていますが、忙しいサラリーパーソンは、パッと見て分かるようなものが欲しいと思うので、最初に結論から書いていって逆三角形になるようにしているのと、図版だけ見れば、全部読めなくても分かるような内容にすることを意識しています。女性ですと、もうちょっとフワッとしたところから入っていきます。イラストレーターの藤井昌子さんが素晴らしいイラストや漫画を書いてくださっていますが、やはり漫画があると難しいお金のこともとっつきやすくなる。藤井さんは、出版社の方が紹介してくださったんですけど、それ以降は個人的にイラストをお願いもしているんですよ。



お金の問題を通して、精神的なケアを



花輪陽子氏: ライフプランにも女性特有のものがあります。私がちょうど今年35歳になるんですけれど、団塊ジュニアやもう少し下の世代の35歳前後の女性は、仕事と出産のタイミングで、板挟みになっている方がすごく多い。妊活や不妊治療には、お金の問題もすごく絡んできます。医療保険や、子どもの教育費のことも関係してきます。今後は例えば婦人科の先生と対談したり、共著を書くなど、そういった現代的なテーマとお金を絡めるものが書きたいと思っています。

――そのほかに、ご著書の構想や、活動の展望があればお聞かせください。


花輪陽子氏: 実用系の本も書いていきたいと思うんですが、そこから少しだけずらしていきたいなと。例えば、若い人を中心として、貯金をしてこなかったという過去に対する後悔や、若い人が高齢になった時に年金や医療がどうなるかというような、未来の不安に押しつぶされて、今一生懸命生きるのが難しくなっている方がすごく多い。これは実用的な問題だけでなく、精神的なケアも必要なのかなと思います。お金の問題で、人生を転がり落ちていくような人もいるので、お金の向き合い方や本質的なものも書いていきたいと思っています。
今、特に若い人とかが社会の閉塞感を感じています。自民党政権になって株価が上がったりして、大企業の人とかは結構潤っているのかもしれないんですけど、恩恵を受けない人もいて、ますます格差が開いて、苦しむ人が多くなる。そういった人の苦しみを和らげてあげることができたらいいなと思いますね。
あとは、事実をそのまま書くよりも、小説とか漫画になっていた方がよく分かる。ドストエフスキーの作品も、お金について事細かく書いてあるので、お金にもてあそばれる人や、当時の生活感がよく分かってきました。物語の方がその登場人物のセリフや行動に、自分の生き方を見い出していけるので、『夢をかなえるゾウ』とか、『もしドラ』とかのように、小説などで表現することも、今は願望ですけど将来的にできればいいなと思います。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 花輪陽子

この著者のタグ: 『英語』 『経済』 『お金』 『金融』 『ファイナンシャルプランナー』 『リストラ』

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