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世界中の本好きのために

田中靖浩

Profile

1963年生まれ、三重県出身。早稲田大学商学部卒業。外資系コンサルティング会社などを経て独立。経営コンサルティングやセミナーから、書籍執筆、雑誌・新聞連載、テレビ・ラジオ出演、落語家・講談師などとのコラボイベントまで、幅広く活躍している。主な著書に『右脳でわかる! 会計力トレーニング』『経営がみえる会計』(ともに日本経済新聞出版社)『数字は見るな!』(日本実業出版社)、など多数あり、数点は海外でも出版されている。近著に『貯金ゼロでも幸せに生きる方法』(講談社)。

Book Information

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人生を変えたのは本の出版だった


――コンサルティング会社をお辞めになってから、今のお仕事にどのようにつながっていきましたか?


田中靖浩氏: せっかく会計を勉強したので、それを仕事に生かしたかったのですが、人と同じことはやりたくなかった。会計を今までにない形で仕事にしたいとは漠然と思ったけれど、なかなか難しい。専門学校の講師とか、いくつか始めてみましたが、自分の思いと違っていました。第一、普通の会計業務をやっていた時より稼げない。そこで本を出そうと思いました。しかも高慢にも初めの本は「日経」から出すと決めていた。なぜなら、小さいところから出すと、大物にまねされた時に、こっちがまねしたと間違えられるから(笑)。なぜか自信があったんですね。構想が実現するのに7、8年かかりましたが。

――デビュー作『経営がみえる会計』はキャッシュフロー経営の概念がわかりやすく解説された本としてロングセラーになっていますね。


田中靖浩氏: 『経営がみえる会計』は1999年に出て、先日第4版が出ました。最初から新人のくせに売れた。これでありがたいことに人生が開けました。いろいろなところから声をかけてもらって、自分でアピールしなくても仕事ができるようになった。この本が営業マンみたいな感じです。ただ、私が画期的な本を出したというよりは、当時の会計本のブーム、会計本バブルに乗っただけです(笑)。あの頃、会計本がベストセラーの上位に数冊顔を出していました。「キャッシュフロー計算書」が日本に入ってきて、時価会計や連結経営が入ってきたのがそのタイミング。新型インフルエンザみたいに新型会計に恐怖感みたいなものがあった。「キャッシュフロー」という名の付いた本がことごとく売れた。経験が効かない新しい環境だったからこそのフレッシュ・スタート、これは知識と経験でかなわない若手にとってチャンスでした。2000年3月期から新会計基準適用で、その2年ぐらい前から騒ぎが始まっていたので、後発で出した本ですが、大げさではなく人生が変わりました。

「頭を下げる相手」を見極めること


――そういえば、経営コンサルタントの阪本啓一さんが海外在住時代、東京で仕事をされた際、田中さんが『経営がみえる会計』の初版本を自ら阪本さんが滞在されているホテルに届けて、しかも直接ではなく「近くまで来ましたから」とフロントに預けて帰られたということで、阪本さんはその粋な計らいに感激したそうです。そのエピソードの「真相」をお聞かせいただけますか?


田中靖浩氏: あるコンサルティングプロジェクトのメンバーで阪本さんと一緒になりました。阪本さんが翻訳した本を読んで面白いと感じて、「会いたい」と思ったんですが、いきなり連絡して「お会いしたい」というのもおこがましい。あの頃の自分の中で、それは失礼だった。やはり初対面の人に会うのは気を遣いますよ。小心者なので(笑)。

――そういった気遣いはいつも大切にされているのでしょうか?


田中靖浩氏: 仕事で一番大事で、かつ難しいのがファーストコンタクトです。今でもよく失敗します。最初の出会い方で失敗すると後で取り戻せないことが多く、気を遣います。特にフリーランスになると、初対面は大切ですね。頭を下げる人にはちゃんと頭を下げるようになります。その代わり、理由もなくペコペコすることはしない。阪本さんには頭を下げたい気持ちがあった。謙虚に「この人はすごい」、「本を読んでいただきたいな」と思いました。



ただ、逆に最近は年齢、立場上、ある程度偉そうにしなきゃいけないこともある。私はもうすぐ50歳ですが、初対面の相手が年下のことが多くなりました。その時に、あまり年上の人間が下手に出ているとバランスが崩れる。ある程度年齢がいっていたら、すこし威張っていた方がスムーズに物事が進みます。理不尽に威張って、後から悪口を言われるぐらいの方が相手も心が落ち着くので、最近は偉そうにするようにしています。あくまで相手への思いやりとして(笑)。

年齢と共にこだわりのレベルを上げる



田中靖浩氏: 年をとって変化したことがもう一つあるんです。私は、ずっとあちこちで「本の帯に顔を出すやつはバカだ」と言い続けてきました。有名人でも芸能人でもないくせに素人が写真を出すのは品がない、その自意識過剰がたまらんと言っていたんです。本屋に行っても、顔の写真を見ると買う気がなくなると言っていましたが、最近私も帯に顔を出したんです。

――最新刊の『貯金ゼロでも幸せに生きる方法』ですね。


田中靖浩氏: 編集者の女性から、「女性読者に対しては、やっぱり顔があった方がいい」と言われたんです。タイトルとかカバーに関しては、全面的に任せると言ってましたが、最後の最後で「顔写真を使わせてください」と言われた時には自分の中で葛藤がありました。周りから「とうとう出しましたね」みたいな感じで言われるのは目に見えていますからね。

――最終的に顔を出すことにされた決め手はなんでしょう?


田中靖浩氏: よく考えてみると、顔を出す出さないというのはつまらないことです。人生の後半、「細かいことにこだわる」老人になりたくない(笑)。頑固は頑固でいいんですが、他人に対して「こうしろ、ああしろ」と言う人間にはなりたくない。電車の中、イヤホンの音漏れでちょっとうるさいだけで「おい」と注意するような(笑)。これからは、今まで自分がこだわってきたことをどんどん捨てていこうと思ったんです。でもこだわりをなくすだけでは、ただの無節操なので、こだわりのレベルを上げていく。些細なことにこだわるのはやめて、こだわりを深く、抽象化していく。本の「中身」にはもっとこだわりを持って、大衆に迎合するようなことはしない。年齢と共にこだわりのレベルを上げて老人になろうと思っています。

著書一覧『 田中靖浩

この著者のタグ: 『大学教授』 『コンサルティング』 『考え方』 『こだわり』 『アナログ』 『研究』 『デジタル』 『会計士』 『情報』 『態度』 『タイトル』

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