人の経験しないことをして自分の希少価値を高める
――今の三宅さんができるまでには、語学教育のお仕事から始まってどんどん深くコミュニケーションの勉強をされたことはもちろんとして、それより前の学生時代にバックパッカーとして海外を旅行された経験なども影響していると思いますが、本から受けた影響についてお聞かせ願えますか?
三宅裕之氏: 本に関する思い出としては、私が2歳になった誕生日から小学校2年生まで、親がよく毎晩読み聞かせしてくれていたことです。これは毎晩でした。この読み聞かせがきっかけで、本が身近なものになりましたし、本の世界に親しみを持つようになったと思います。読んで聞かせてくれたのがちょうど寝る前だったので、想像の世界というか、本の世界に入りながらそのまま寝るという習慣がついて、これがおそらく想像力や発想を豊かにしてくれるのに非常に役立ったのではないかと思っています。
――では、小さいころからよく本を読まれましたか?
三宅裕之氏: もちろん本を読む習慣もつきました。小さいころからよく読んでいたと思いますし、バックパッカーとしてシルクロードへ旅したのは、沢木耕太郎の『深夜特急』を読んでトルコがなぜか気になったせいなんです。それで旅行中に中国留学の経験があるバックパッカーにたまたま出会ったことで、自分も中国に留学した。そう考えると、私の場合の『深夜特急』のように、書籍はいろいろな行動の原動力になり、人生の中で非常に大きな影響をもつものだと思っています。
――バックパックや留学も、いわゆるメジャーなアメリカとかヨーロッパではなく、アジアを選んだのは何か理由があったのですか?
三宅裕之氏: 中国留学やシルクロードへの旅について言うと、2つ理由がありまして、一つは割とマイナーなものに飛び込んでいって自分の希少価値を出して行きたいということです。今でこそ中国メジャーになりましたけど、私の学生時代は、そんなにメジャーでもなかったし中学留学をする人もいませんでした。だから、自分自身の知らないところに飛び込んでいくなら、人が経験していないものを経験したほうが希少価値が出していけるという考えもありましたね。高校時代にやっていたハンドボールもそうでしょうね。
――インターハイ出場経験もお持ちです。相当厳しい練習をされたのでしょうか?
三宅裕之氏: いいえ、そうでもないんですかなりきつかったですね。ただ、これはハンドボール経験からも学んだんですけれども、どちらかというと、自分はさぼって怠けるタイプなんですねなので、やらざる得ない環境に追い込むことが必要なのです。私は仕事柄、努力家だとか行動力があると思われがちなんですけれども、決してそんなことはないんです。ただ自分の強みは何かというと、自分自身で怠け者であることを理解していること。それが強みだと思っているんです。ですから、こんな怠け者の自分でも、努力せざるを得ない仕組みや、努力せざるを得ない環境に自分を置いてしまうことを心がけています。
――具体的にはどんなふうになさったのですか?
三宅裕之氏: 大学時代の留学も、ちょっと生活が便利なところだと、おそらく自分は怠けるであろうと思ったので、生活がちょっと不便で苦労しそうな中国やロシアに自分を置いてしまって鍛えてしまえというような考え方をしました。そういう環境を利用して自分を鍛えるということと、人がやらないことをやるということの2つで、自分の希少価値を出していくこともできるので、それがまた強みにもなっていきます。
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