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世界中の本好きのために

渋井真帆

Profile

1971年生まれ。94年立教大学経済学部経済学科卒業。銀行、専業主婦、百貨店販売、証券会社などを経て、2000年28歳のときに独立。企業向けの人材教育、販売コンサルティングの受託のほか、TV、雑誌でも活躍。2012年11月、処女小説「ザ・ロスチャイルド」が第4回城山三郎経済小説大賞受賞。同作品は2013年6月刊行予定。著書に『渋井真帆の日経新聞読みこなし隊』(日本経済新聞出版社)、『仕事心の育て方』 (小学館)などがある。

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書き込みし過ぎた時は、読書用にもう一冊本を買うことも


――本への書き込みはたくさんされるんですか?


渋井真帆氏: そうですね。書き込みすることが多いです。あまり書き込みし過ぎちゃって、らちがあかなくて、もう1回同じ本を買うこともあります。書き込む用じゃなくて読む用に(笑)

――どんな本をお読みになりますか?


渋井真帆氏: 歴史の本が多いですね。

――もし数冊しか持って行けないようでしたら、何をお持ちになりますか?


渋井真帆氏: そうだったらハーレクイン・ロマンスですね、いきなりですが(笑)。何も考えなくてすむじゃないですか。漫画も好きです。ハーレクインって奥が深くて、色んなジャンルがあるんですよ。ヒストリカル(歴史物)も充実しています。マニアックな話ですから、大抵の人は知らないですけどね(笑)。

ヒストリカル物のハーレクインは好きです。日本語版で古いものを探したり、漫画で気に入ったら古いのを探して、ほれ込んじゃったら英語の原版を買って、それらを照らし合わせて気持ちよく読んだり。去年、半年間留学したのですが、ハーレクインの英文を読んでいたのは役に立ちました。

――そうなんですか?


渋井真帆氏: ええ。男性とご飯を食べていた時に、こういう時は何て言えば一番良いのかなと思って、ハーレクインのせりふを英語で言ってみたら、「Oh もう何でも聞いてあげるよ、君」みたいな状況になって。「さすがハーレクイン」だと感心したものです(笑)

半年間の留学が与えてくれたもの


――カナダに行かれたと思うんですけれども、その後ご自身の中で変わった部分はございますか?


渋井真帆氏: 半年の間にバンクーバーの拠点に5ヶ月、それからニューヨークへも行きました。最後の1ヶ月間はヨーロッパを、ロンドン、ブリュッセル、パリ、フィレンツェ、ベニス、ローマを列車で回ったんですよ。半年の間に英語がそれなりに上達したのは収穫でした。一番良かったなと思ったのは、色々な民族の人たち、幅広い年代の方々とコミュニケーションするなかで、文化や考え方、価値観の違いや共通点を肌で感じられたことが、その後の執筆活動や講演の両方に役立っています。

――何が面白いと感じられましたか?


渋井真帆氏: 年代のせいかもしれませんが、大人の留学っていいなあと思いました。話す内容があるから。出会う海外の方みんなが、日本について興味・関心を驚くほどたくさん持っていたんです。文化だけでなく、政治経済や社会システムについてとか、そういうことを聞きたがるんですよ。

――答えられる日本人っていうのはなかなか少ないですね。


渋井真帆氏: そうですね。でも20年近く社会人をやっているのだから、少しくらいは話しの引出しを持っています。それを、たどたどしくても一生懸命しゃべりました。すると、興味があることは彼らは一生懸命聞くんです。「なんだ、英語は流ちょうでなくても、相手が聞きたくなる内容を提供すれば聞いてくれるんだ」と気がつきました。たどたどしい英語でも隣の人と話したりしていると、周りにまた人が集まってきたりするんです。

――全く新しいスタイルですね。


渋井真帆氏: コミュニケーションってそうなのかなと思います。ベニスからローマへ移動する電車の中で「何だろう、あのケーキ」と思いながら、通路の向かい側の人が食べているケーキをずっと見ていたんです。そうすると向こうがチラッてこちらを見るじゃないですか。こちらは普通に社会人の経験がありますから、ニコッと笑い返すわけですよ。それからまたケーキをじーっと見て、それを3回くらいやっていたら相手が「食べるか」って言ってくれたんです。で、「Oh, Thank you!」とか言って(笑)。私はちょっと自分の欲望に忠実過ぎるのかもしれないですね。でも、それで会話をするんです。「このケーキ、うちのお母さんが作ったんだ」「え、手作りなの?」とか、一口食べて「美味しい」とか、「一口しかダメなのかな。もっと食べたい」とか言ったり(笑)。おかげで、各地の美味しいものを沢山ご馳走になることができました。

良きパートナーとの出会い


――先ほどだんなさまのお話も出ましたが、どこで出会われたのですか?


渋井真帆氏: 銀行で彼が私の教育係だったんです。お互いに性格とか好みとかは違いますね。

――似た者同士ということではないんですね。


渋井真帆氏: 印象に残っていることですが、彼と付き合っている時に、向こうが結婚適齢期だったので結婚をにおわせた時があって。それで、「映画を見てもことごとく好みが違うし、泣ける場所も違うじゃない」っていう話をしたら「それは単なる好みの問題でしょ」って言われて。「でも1つ屋根の下に住む様になったら好みが一緒なほうが良いんじゃない」と私が言ったら、「好みはバラバラでも価値観が一緒のほうがよっぽど世界が広がるんじゃない」って言われたんですよ。それで「価値観って何?」って言ったら、「何を大切に思うかだ」と言われて。彼が「もちろん自分は家族っていうのは大切だけど、やっぱり一番生きていく中で大事なのが、どこまで自分を発揮出来るかだと思う」って言うんですね。「その結果がお金だったりポジションだったりするけど、悪いけどその結果に対してはあんまり期待しないで。それは運もあるから」と言って(笑)。「やっぱりどこまで自分を発揮させるかっていうのを何十年掛けてやっていくっていうことが大事だと思うし、君はそういうタイプだよね」って。「自分を発揮したほうが幸せと感じるタイプだから僕と一緒のほうがいいんじゃん」とか言われて(笑)



――いいですね。


渋井真帆氏: 確かにそのお金とかポジションを目指すのも1つの生き方だと思うけれど、一番はその人が今いる場所で自分を発揮出来るというか、どこまで自分のなりたい方向に行けるかというワクワク感で生きていくと、やっぱり結果もついてくるのかなと。それで「彼でいいのかな」って思ったんです。

これからも男たちの熱い物語を書いていきたい


――挑戦を続けられる渋井さんの、今後の展望をお伺い出来ますか?


渋井真帆氏: 今後も歴史経済小説を書きたいです。いくつか自分の中でプランがあって、次に挑戦しようと思っているのは日本の歴史です。源平時代の北条氏を書こうかなと。1人の男性の生きざまを通して物語を描いていくというか、ストーリーは自分の中でほぼできちゃったんですよ。「こういう風にするから」って食卓で夫にしゃべりました(笑)

――食卓から物語が生まれているんですか?


渋井真帆氏: 今回の『ザ・ロスチャイルド』は、TVで観たアラブの春の報道にもの凄くインスパイアされた部分がありました。海外に滞在して、次に書くのは日本の文化、日本の歴史を書きたいな、そうするぞって、ロッキー山脈の氷河を歩きながら誓いました。
北条氏は、徳川政権の安定期には、主君の権力を奪った逆臣と悪しざまに言われたんです。明治時代になっても、承久の乱で天皇に刃を向けたと逆賊扱いされる。だけど徳川家康は幕府を作る時に、その北条氏の政権運営をものすごく勉強しているんです。家康には先例があったけれど、日本初の武家政権の基盤をつくった北条氏にはなかった。システムや組織を作るということに、私は大きな関心、興味があるんです。
システムを作ってきた人間たちは、どんどん権力を握っていくけれども、彼らはおそらく人間としては苦悩が深まる一方だったのでしょう。これってまさに現代でも起きていることで、私たちのリアルな日常に通じる。そういうことも描きたいと思っています。権力を握り、組織を作っていって、皆のためによかれと思って良い組織を作っていく程、悲哀や苦悩が深まっていく男の人生。ありがちですが、そんな男たちの熱く切ない人生を描いていきたいと思います。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 渋井真帆

この著者のタグ: 『女性作家』 『コミュニケーション』 『価値観』 『歴史』 『留学』 『ダンゴムシ』 『女性活用』

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