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世界中の本好きのために

鎌田洋

Profile

1950年、宮城県生まれ。商社、ハウスメーカー勤務などを経験。1982年に5度目のチャレンジの末、株式会社オリエンタルランド入社。東京ディズニーランドオープンに伴い、初代ナイトカストーディアル(夜間の清掃部門)・トレーナー兼エリアスーパーバイザーとして、ナイトカストーディアル・キャストを育成。アメリカのディズニーランドの初代カストーディアル・マネージャー、チャック・ボヤージン氏から2年間にわたり直接指導を受ける。その後、デイカストーディアルとして顧客との関わりを学ぶ。1990年、ディズニー・ユニバーシティ(教育部門)にて、教育部長代理としてオリエンタルランド全スタッフを指導、育成する。

Book Information

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ディズニーに「賭けた」からこそ、いまの自分がある



鎌田洋氏: 特にうわさで聞いても「ディズニーってすごい」というのがあったので、「どうしても入りたい」と思った。それで心がはやって、「一刻も早く」と、勤め先に辞表を出して試験にチャレンジしましたが、全然だめで結局3年間のうちに5回チャレンジして受かりました。ディズニーに賭けたという(笑)。それでいまの私があるのだと思います。

――全てはやはり「行動あるのみ」だとお話を伺って思います。


鎌田洋氏: アメリカのディズニーに28歳で初めて応募したのですが、その時にアメリカのカード・ウォーカーというCEOに手紙を書いています。しかもタイプライターでね。これはブラザーのタイプライターで、ものすごい年代物です。それでアメリカに手紙を書いた(笑)。その1回しか使いませんでしたからいまでも新品同様です。英会話スクールの先生に添削してもらって、完成した手紙をアメリカに送った。そこになぜだか知らないけど、「採用されたら世界で一番美しいパークを作ってあげる」と書きました。「そこでは誰もゴミを捨てる人がいなくなるでしょう」って。それで当然ながら採用されてからナイトカストーディアルに配属された。つまり、自分の未来を自分で作っていたわけですね。

そうじの神様が教えてくれたこと


――ご著書の『ディズニー そうじの神様が教えてくれたこと』を拝読させていただきましたけれども、とても面白いですね。読んで魔法にかかったようでした。


鎌田洋氏: SoftBankの編集者の方がブログで連載していた「高志」という名前の青年の物語をずーっと読んでいて、7、8年前から私に「本を出してください」と言っていたんです。でも、「こういう稼業をやっていて本を出すやつはろくなものじゃない」と断ったんです。売名のために「商材」として本を出すということを売れない連中がやっているのを見ていましたから。

――それでずっと断られていたのですね。


鎌田洋氏: ところが、自分が60歳になった時に「ああ、もう60歳か」と。まだ私の気持ちは28歳のままだけれど、60歳になったし、「そろそろじゃあ……」っていうことで、やっと重い腰を上げて本を書きはじめたのです。その時に編集者に言ったのは「ノウハウは書きたくない」と。ディズニーのノウハウについては、先輩諸氏が既に書いているので、それを書いても意味がない。それよりもっと大事なエッセンスである「感動」や「インスパイア」が物語風に盛り込まれていないといやだと。編集者もよく理解してくれて、「では、そういう企画でいきましょう」ということになった。若い人もすっと読みやすい短編集にしましょうと。

この本には、私がナイトカストーディアルやカストーディアルの仕事の中で体験した、実話に基づいたフィクションが書いてあるのです。ノンフィクションだとあまりに悲しかったり、生々しいお話もあるので。これは『もしドラ』と一緒ですね。『もしドラ』もドラッカーの要素をそのまま紹介するのではなく、ところどころにドラッカーの言葉をちりばめているけれど、全体を1つの物語風にしています。とてもいい本です。ただ、『もしドラ』は長編なので少しハードルが高いけれど、『ディズニー そうじの神様が教えてくれたこと』は短編なので、中学生にものすごく読まれていて、山形の中学校の副読本になっているんですよ。Twitterでの反響はすごいですよ。もう、「感動した」、「感動した」というのがいっぱい来るんです。

電子書籍か紙か、自由な「選択肢」が増える時代へ


――ご自身の本の電子化については、どのようにお考えでしょうか?


鎌田洋氏: それぞれに一長一短がありますね。ボストンで知り合ったガイドの女性に名刺を差し上げた時、本の話題になって「電子でも読めますよ」と彼女に紹介したんですね。そうしたら「私はとってもアナログなので、インクのにおいをかぎながら、カバーをして本を読むのが私のポリシーです」とおっしゃった。それで、「なるほど、そういう人もいるんだ」と思いました。人それぞれに好みがある。私自身は最近Kindleで購入することが多いです。

――電子書籍をご利用されているのですね。


鎌田洋氏: 本は重いし場所を取りますよね。けれど、Kindleだと読みやすいし軽くていい。最近は吉田修一さんという作家の本を気にいって、見てみるといろいろあったので4冊ほど買いました。もちろん私の本もKindleで買ってあります。誰かに見せる時に「ほら、これだよ」とすぐ見せられるでしょう?私もKindleは最近始めたばかりなので、7冊ぐらいの本が入っているわけですが、実際7冊の本を持ち歩くというのはすごく難しい。本は本当にかさばりますよね。広い家に住んでいればたくさん本棚を作れますが。そういう意味ではこういった形で本の精神を持ち歩けるというのは便利です。



人には価値観があるから、自分の価値観に基づいて自由に選択すればいいと思います。本はもっと手軽に読みたい、もう少し安く読みたいという人は利用すればいいし、そうじゃなくて本の厚みの中に魂があるよと思う人は買って読めばいい。それは個人の選択だと思います。いろんな選択があることによって「自由」というものがあるじゃないですか。

――選択肢の多さが自由につながるんですね。


鎌田洋氏: 自由ですよ、例えば車が発明されたら、移動手段がもう1つ自由が増えたんですよ。飛行機という自由が増えたわけです。昔は歩くだけ、それからお馬さんにまたがる(笑)。その移動手段の自由度が広がっただけですよね。それは「本を読む」ということも同じだと思います。あるいは耳で聞くとか。いろんな選択手段があるわけで、電子書籍は自由をもたらす1つの手段、そういうふうに考えればいいのではないでしょうか。

全ての人がプチハピネスを手に入れられる時代へ


――今後も著作活動を通じて、どんな展望を描いてらっしゃいますか?


鎌田洋氏: いま私が書こうと思っているのは、すぐにくじけがちなごく普通の人たちが、ちょっとしたコツを知ることによって、小さなチャレンジとアクションでプチハピネスの爽快感や痛快感を味わえるような本を書きたいと思っています。

例えば、ハーバードを卒業した人たちの話や、授業の本はよく売れますよね。でもあれは一流のショーを見るようなものです。すごい人たちが世の中にはいっぱいいる。でも普通の人は「すごいな、自分はここまでの意志を持てない」とあきらめてしまう。何十億もいる人々が皆一流になったら息が詰まってしょうがない(笑)。でもささやかなプチハピネスを皆が追及しはじめたなら、全世界がよくなると私は思っています。「Tips(ティップス)」、これは「コツ」と言うんだけど、そういったものが手に入れられるような本を書きたい。たいそうな本は書きたくないですね。そういう本をこれから秋口にかけて書こうかなと思っています。皆があきらめてしまっていますが、「あきらめる必要はないよ」「自分ができるちょっとしたことからやりなさい」というメッセージを送りたいですね。名もない人たちが読んで励まされるような、そういう本を書きたい。これが私の夢ですね。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 鎌田洋

この著者のタグ: 『価値観』 『感動』 『心』 『ディズニー』 『インスパイア』 『劇場』 『自由』

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