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世界中の本好きのために

高橋政史

Profile

1967年群馬県高崎市生まれ。Googleでも見つからない思考整理術「1枚シンプル思考法」の設計者。大学院時代、難しい経営理論を「紙1枚」でシンプルにまとめた講義がゼミ生に好評。大学院卒業後に入社した半導体製造装置メーカーにて3tトラック一台分の営業資料を畳4畳半ほどにスリム化。経営コンサルタントとして活躍し、ブザン・ワールドワイド・ジャパンにて取締役。マインドマップの法人向けプログラムを開発し、日本企業におけるビジネス・マインドマップの普及に尽力。現在、経験やスキルのない社員でも即実践できる武器「1枚シンプル思考法」の設計・導入のコンサルティングおよび研修を実施。主な導入実績は100社を超える。

Book Information

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情報は消費するためにあるのではなく、価値を創るためにある



経営コンサルタントの高橋政史さんは、複雑な情報、難解な理論も1枚の紙にまとめるという独自の思考術を提唱し、多くの企業でノウハウが採用されています。2011年には、思考整理のスペシャリストを養成する「1枚の学校」を開講するなど教育分野にも活躍の場を広げています。高橋さんの思考法からは、新しいメディアが次々に生まれ、とかく情報過多ともいわれる現代を生きる「知恵」が見えてきます。

現代病「知識メタボ」を防ぐために奔走


――早速ですが、高橋さんのお仕事内容を伺えますか?


高橋政史氏: 今は、本を書く時間を結構割いています。それと企業に対して、「とにかく紙1枚にまとめる」という研修をさせていただいて、あとは「1枚の学校」の3本建てでやっていますね。

――シンプルな思考法を一貫して提唱されていますが、本の執筆とセミナー等では狙いや表現方法に違いはありますか?




高橋政史氏: 書籍だとこれも必要かな、あれも必要かなと思って色々書きますが、セミナーは勉強しに来てもらっているつもりはないんです。全てメモを取るような感じではなくて、終わった時に、今まで難しく考えていたことが、頑張らなくていいとわかって、肩の荷が下りるという感覚を手に入れていただければいいと思っています。一番大事なことが何かということを、ご自身に合わせて受け取ってほしいというのがありますね。よくあるケースですと、セミナーに来られた方が、自己啓発の本を次の日に300冊ぐらい捨てたとかいうことを聞きます。

――大切ではないものが大量にたまっていることがわかったということでしょうか?


高橋政史氏: 私はそれを「知識メタボ」って呼んでいるんです。私が一貫してお伝えしているのは、膨大な情報や知識がある中で、もう足し算はやめようということなんです。足し算をするにしても、体力をつけて、きっちり全部血肉にできるようなやり方をしないと、頭の中が外側の情報と知識で一杯になって、自分がいつの間にか消えちゃうということがあるわけです。

小学校のころから、ノート1ページにまとめはじめた


――高橋さんの代名詞となった「紙一枚」にまとめる思考術ですが、学生時代から実践されていると伺いました。


高橋政史氏: 小学校の時は体育しかできない子どもで、全然勉強ができなかったんですが、中学1年生の時にたまたま塾の先生が、あまりにも勉強できないので要点をまとめてくれたんです。そうすると、教科書を読んでもわからないものがわかる。それが勉強をやってみようと思うきっかけで、それ以降も、ノート1ページにまとめるということを大事にしながらやっていました。

――大学院生時代には、1日1冊読んで、紙1枚にまとめるということも始めたそうですね。


高橋政史氏: 本を読んでも読んだきりだとアウトプットに直結しないので、とりあえず1枚にまとめると、本を自分にどうやって生かすかという視点が出てくるんですね。ただ、私は22歳まで本は全然読まなかったんです。たまたま私の恩師である大学院の担当教授から1日1冊、読めというお達しがあって、それが読みはじめたきっかけです。

――22歳まで本を読まなかったというのは、速読術の本も書かれている今の高橋さんからは意外です。子どものころに読んでいた本もありませんでしたか。


高橋政史氏: 教科書くらいですね。あとは小学校の時に、読書感想文を毎年出さなくちゃならないので、野口英世の伝記を毎年読んでいました。去年の先生と今年の先生が違う先生で、結局提出すればいいので、野口英世だったら去年も読んだし今年も読んだし、また来年も大丈夫。当時は本を読むっていうことに全く価値を置いていない人間でしたね。

「世の中を動かすものを見たい」と半導体業界へ


――大学院卒業後に、まずメーカーに就職されたそうですね。


高橋政史氏: 半導体の製造装置のメーカーに入ったんです。そのあとベンチャーに転職して、香港に行って、それで日本に戻ってきてコンサルティングという流れです。

――なぜ半導体関連の会社に進もうと思われたんですか?


高橋政史氏: 世の中を見たいという好奇心がベースにありましたね。私はサラリーマンだけはなれないと大学の時に思っていて、後々は何か自分でしたいというのがあったんです。それで大学院で、就職する時に考えたことが、「世の中を動かすものを見てみたい」ということでした。10年20年先を見ることができるところがどこかと考えて、行き着いたのがハードかソフトかっていう視点だったんですね。物事はハードかソフトで動いている。世の中からそれを取り除いたら世の中で消滅するものは何だろうって考えると、ソフトだと教育。ハードだと半導体を除いたら世の中は動かなくなると思いました。そこで教育と半導体の両方を考えたわけですけれども、教育は年を取ってもできるだろう、でも半導体は今を見た方がいいだろうということで、半導体メーカーを見に行ったんですけど、あんまり面白くないわけですね。技術というものは確かにあったんですけれども、結局大きなラインで量産をしていく。

もっと特殊なところはないかなと探していったら、半導体製造装置という業界があって、しかもこれは日本にしかない業界だったんですね。日本のいわゆる町工場の技術が結集されないとできない。日本独特で、かつ日本が今後も下支えしていく半導体製造装置を見ると、半導体の数年後が見えると思ったんです。

――サラリーマンにはならないと思われたのはなぜでしょう?


高橋政史氏: 自分の好奇心を満たしてくれるものが何かと考えて、サラリーマンで決まった仕事をするというよりも、何か新しいものを自分で作っていく方がいいと思っていたんですね。決まった生活を毎日やるより変化があった方がいいなと。あと時代との接点がほしかったんですよね。これから時代が変わるだろう、かつ自分の興味も変わるだろうという予感があったんです。結局、人は時代の中でしか生きていないんですね。就職した時も時代の中でたまたま自分が興味を持てて、何かできそうなことがあるかという視点で見ていっただけですからね。

入社後まもなく、資料のスリム化を提案


――メーカー時代に3トントラック1台分の資料を4畳半にスリム化したとお聞きしました。その時のお話をお聞かせください。


高橋政史氏: 営業のファイリング資料があって、探し物をよくしていたわけです。ダブっているものもありました。それで私も営業に入って日は浅いわけですけれど、その時の本部長にスリム化しましょうと提案書を作って、物理的なものをとにかくどっさりどっさり捨てたっていうことですね。

――それはお幾つぐらいの時だったんですか?


高橋政史氏: 26歳くらいの時ですね。

――意見を言うのはかなり勇気のいることではありませんでしたか?


高橋政史氏: 入社した時から物を申していたんです。入社初日からもう何か言っていて、当然、先輩から「お前は意見を言うのは10年早い」とか、「調和を取れ」とか色々言われましたけれども、それが許される会社でもあったんですね。そもそも、私に会社にすがるつもりが全くないし、むしろ会社に若くても貢献できると思って、自分が思ったことはしっかり言おうとしていました。

――それは昔からの性格、資質という部分が大きいのでしょうか?


高橋政史氏: 昔からそうですね。そもそも人の顔色をうかがうのが苦手でしたし、違和感があっておかしいなと思うことは、学校の先生に対しても言う人間でした。合っているか間違っているかは当然わからないんですけど、自分の責任なので引け目を感じることもなかったですね。

――資料のスリム化の作業はどのように進められたんでしょうか?


高橋政史氏: 家の片付けも一緒ですけど、皆やらないけれども、捨てようと思うと捨てられるんです。結局、「やりますか」と聞いてイエスを取ればいいだけの話だから簡単です。一応私はリーダーですけれども、当然、新人なので私が言っても動くわけはないので、本部長の方から私以外の人を付けていただいて進めていきました。私は人を動かすのが上手かというと必ずしもそうではないんですね。ただ企画書とか提案書で、「多分これをやった方が皆さんにとって仕事が良くなりますよね」と、シンプルに提示するだけです。提案書は新人なりにしっかり時間掛けて作り込みました。ついでに言うとそれも1枚だったんです。1枚でも全体像がわかると、本当に皆さんにとって意味のあることであれば、一人ひとりが自分でできるわけですから。

香港転勤、コンサルタント…、人は「縁」で成長する


―― その後ベンチャーに転じられますが、どのようなきっかけでしたか?


高橋政史氏: ベンチャーに転じたのは、そこの会社のビジョンが面白かったからですね。あとは私自身、会社に勤務するのは3年位と見ていたので、ちょうどタイミング的なものもあってというところですね。

――メーカーをおやめになるのは不安ではなかったですか?


高橋政史氏: そもそもサラリーマンになるというスタンスがないので、不安はなかったですね。ただ、ベンチャーに転じたのは、自分で強烈に願って何かしたというより、その時にたまたま知り合った方とのご縁ですね。何が大切かっていうことは自分なりに持っていたと思いますが、私は明確に何年でこうするっていうタイプではないんです。

――香港に行かれたのはどのようなきっかけでしたか?


高橋政史氏: 日本と香港のジョイントベンチャーの立ち上げに行っていました。たまたまコンサルティング先の日本の会社が香港に進出するということで、私が行くという立場になったんですね。

―― 香港ではどのようなことをお感じになりましたか?


高橋政史氏: 本当に何もわからないので、分からないなりにやったなっていう感じですね。印象深いのは仕事もそうなんですけれども、香港の仕組みの素晴らしさ、やはりビジネスをするためにできたような国だなと感じました。税金の面でもそうですが、非常に物事が効率的に合理的にできているというのが香港の性質ですね。あとは皆さん21歳、22歳でものすごく大きな仕事を動かしていますんで、価値観も違いますよね。日本を外側から見られたので大きい経験でしたね。

――帰国後に経営コンサルタントとして独立されましたね。


高橋政史氏: 帰ってきて、たまたま知り合いの医療法人の方に再建をお願いされて、まあ何も特にやることがないからやりましょうかというのがコンサルティングを始めたきっかけですね。それに成功すると、経営者の知り合いの方から、じゃあうちのリゾートホテルを再建してよとか、立て続けに3件ぐらいが来て、それが私のコンサルタントとしてのベースになりました。

――先ほど「ご縁」という言葉がありましたが、人との出会いが高橋さんのキャリアの形成に大きく影響しているようですね。


高橋政史氏: そうですね。ほとんど人ですね。自分でこうしようというよりも、人のご縁がきっかけで、何か新しいものを始めて、それが道を開いてくれるものだと思いますね。

「普遍的な知恵」が求められる時代になっている


――作家としてもご活躍ですが、執筆される際に最も伝えたいことは何でしょうか?


高橋政史氏: 大事にしたいのはシンプルかつ簡単にというところですね。今の時代って複雑にどんどんなっているので、もっと簡単でシンプルなやり方があるんじゃないのということを提案しています。でも執筆時はむしろ混乱しています。執筆はいつもシンプルにいかないですね。要するに混沌の中から何か本質が出る。混乱のふちに立って、「どうしよう」っていう中で本質を見つけてくるみたいな感じで、原稿はとてつもない膨大な量を削ってというタイプですね。

――作家として、また読者としてでも結構ですが、最近の本、出版業界についてどのようにご覧になっていますか?


高橋政史氏: やっぱり古典の回帰がありますね。昔のようにハウツーがたくさんというものでもなくなってきて、昨年ぐらいから書籍もすごく歯ごたえのある本物の本が売れてきていますし、いい本で長く読める本というものが求められていますね。時代の流れが速ければ速いほど自分の軸を持てるかどうかというのが鍵になると思うので、普遍的な知恵というものが必要とされているのかなと思います。本が本来持つ力に皆さんの意識が向かわれているのかなと、私自身も一読者としてそう感じています。

―― 高橋さんは古典的な本はどのようなものを読まれますか?


高橋政史氏: 本当にありきたりですが、ドラッガーとか、エーリッヒ・フロムとか。英語でもともと書かれたというのもあって、メッセージが明確ですし、感情、魂みたいなものもしっかり乗っていますよね。

――良い本から得たものが仕事に生かされていると感じられることはありますか?


高橋政史氏: 読んだことによって何かは影響しているんでしょうけど、ハウツー本のように直接的にすぐ読んだから、というのはないのもまた古典の良さで、体に染み込むものだと思います。

本当に必要な情報をシンプルに身に付けよ


――出版業界の大きなトピックとして、電子書籍の登場がありますが、電子書籍の可能性についてどのようにお考えでしょうか?


高橋政史氏: 私自身は電子書籍をあんまり見ていないですけれども、膨大に量があればあるほど電子書籍は分があるかなというところですね。電子書籍は使い方によっていかようにもなると感じます。あとは映像的なものに関しては電子書籍の方が分があるので、どう人の認知とか学習に影響を与えるかという、その領域だと思うんですよね。さらには書籍の場合ですと読み手の想像力によって色んなものを頭の中に思い描いていくかと思うんですけれども、電子書籍でいくと読み手の中で想像力が足りなくても補ってくれる。ですから、書籍にとっつけない方が階段の一つとして電子書籍から入られるというのは一つあるかなと思います。

――高橋さんのご著書に関して、電子書籍になることを前提に特別な本作りをするお考えはありますか?


高橋政史氏: 今のところないというのが正直なところです。基本的には紙の書籍として何か書いていて、それが電子化されるというのが今のところのスタンスというところです。まだ私の中でもちょっとわからないので、何かある程度ユーザーの方が電子書籍ってこういうものだっていうものがきっちり認識されて心の中で根付いた時に、何かそこに出してあげたいなというのはあります。もし私がお役に立てるところがあるのであれば、というところですね。

――最後に、今後取り組みたいこと、展望をお聞かせください。


高橋政史氏: 情報が増えてくるほど複雑になって、複雑になることで皆さんからエネルギーがなくなっていっています。結局、自分で何かをつくり出す前に人のものを消費してばかりいる。物も消費し尽くして、さらに知識、情報まで消費し尽くしてしまう。でも、私たちは消費をするために生きているわけではなくて、何かをつくるために生きているんですね。本当に必要なものを、特に20代位に身に付けて、あとは身一つで勝負しようということを伝えたいですね。複雑からシンプルへという武器を持つために、あるタイミングで私から手渡せるものは手渡していきたいなということを考えています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 高橋政史

この著者のタグ: 『コンサルタント』 『コンサルティング』 『思考』 『考え方』 『働き方』 『可能性』 『サラリーマン』 『ベンチャー』 『シンプル』 『情報』 『ご縁』 『簡単』

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