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仁木英之

Profile

1973年4月17日、大阪府生まれ。信州大学人文学部卒業。在学中には北京に留学、その後、塾講師などを経て2006年5月、『夕陽の梨』で第12回学研歴史群像大賞最優秀賞受賞。同年8月『僕僕先生』で第18回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。同作は『薄妃の恋』『胡蝶の失くし物』『さびしい女神』『先生の隠しごと』とシリーズ化され、人気を博す。2011年6月第一回キネティックノベル大賞審査員特別賞。ほかに『千里伝』『朱温』『高原王記』『くるすの残光』『黄泉坂案内人』など著書多数。近著に『大坂将星伝(上・中・下)』(講談社)がある。

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働きたくない、だから中国へ


――信州大学時代、中国に留学されていますね?


仁木英之氏: 『僕僕先生』や『千里伝』は中国での経験がなかったら書けなかった小説です。

――なぜ中国に行かれたんですか?


仁木英之氏: 就職したくなかったから。働きたくなかった、社会に出たくなかったんです(笑)。とにかく大学時代って楽しいじゃないですか。自由に動けるけど、責任はあまりない。そういう生活が楽しくて、でも大学3年になると就職活動をしなきゃいけない。それが嫌で、留学しようと思ったんです。でも、欧米留学は高くて、その点中国なら学費と生活費とあわせて1年に50万円ぐらいで済んだんです。で、1年行ったけど遊び足りなくてもう1年。当時留学ブームで、同じような日本人がいっぱいいたんですよ。留学しているのにゲームしかしない、日本人としか遊ばない、徹夜でマージャンしかしないっていうようなダメな連中が山ほどいて、天国だった(笑)。僕もまさにそういう生活をしていた。でも、そうやって無駄にダメな人間と交わり、暇があれば旅行もして、そういう経験が最終的にいまにつながっている感じはしますね。

電子書籍の時代を感じる


――仁木さんは、電子書籍についてはどう思われますか?


仁木英之氏: 電子書籍デバイスって、もう20年ぐらい前ぐらいからですね。これから電子書籍の時代が来る…来なかった、来る…来なかった、来る…来なかったって。もう元年は永久に来ないと思っていたら、どうも来たようですね、最近(笑)。iPadを買ってKindleのアプリを入れて自分の本を1回買ってみて、「これは読める。これまでのデバイスは何だったんだろうか。」というぐらいに読める。それで、「来たな」と思いました。

――ご自身の作品を電子書籍で読もうと思ったのは、そういう時代の到来を感じて、実際に読者の立場にたってみようと思われたからですか?


仁木英之氏: そうですね。電子書籍を読む感じは実際に買ってみないと分からないですから。やはり趣は違いますね、同じ文章を読んでいても。善しあしではなくて違うなと感じる。

――著者としてはいかがですか?


仁木英之氏: やはり本を出す側としては、強い警戒心はありますね。フリーでコンテンツを手に入れる人が出てきて簡単に拡散されてしまって、それにタダ乗りする人が出てくる。でも技術が進歩して、安価できちんと電子書籍が手に入るようになれば不正はなくなりますよね。それでも不正をする人は、絶対にお金を出して買わない。だから、いかに「お金を出して買ってもいいですよ」っていう人に対して、簡単な手段を提供できるかが勝負。それを最近、電子書籍の組織はやりつつあるんだろうなと思います。



あとは、歴史物を書くために膨大な資料がいるので、古い資料なんかも電子化できてしまうのは便利で、すごい時代だなと思いますね。小説も本文検索できるものもありますよね。そういう時代に小説家は、資料にもすぐアクセスできてデータ化された小説の中で、読者に何を訴えかけていくかという勝負になっていくだろうなと感じます。ただ、紙の本はずっと残っていてほしいなと思います。あの手触りと本屋さんに並んでいる感じは電子上では味わえないんですよね。

――著作権のお話がありましたが、例えば古本屋に流通してしまった場合、現状のシステムでは著者に還元されない。書籍を電子化する場合でも、電子化されるごとに何か著者に還元できないかというのが課題です。


仁木英之氏: システムとしては煩雑になると思うけれども、1冊1円でも出版社なり著者に入るようになれば、だいぶ風向きが変わるようになると思いますね。お金の問題だけではないけど、流通するものに対する対価が、コンテンツの大元を作った人に入らないっていうのは釈然としないですから。出だしは志でできますが、継続には利益がないともたないんですよね。最終的には、何かよいことがないと。人って気高いものだけど、志が低いものでもあるので、長く続けていくためには、そうしたシステムも必要だと思いますね。

目の前にあることを楽しむ


――仁木さんの今後の展望を伺えますか?


仁木英之氏: 書きたいことが山ほどあるので、小説を書き続けたいですね。企画に上がっているものだけでも、警察物、考古学ミステリー、山岳ミステリー、奈良時代を舞台にしたものなど、本当に色々あります。一つ作品を書くと色々な資料を見るので「これも面白そう」って、どんどん出てくる。すべてのことが物語の種だと思っていると、物語を書く度に種を放り出しているようなもので、一つ書くと二つ書きたいことができて、二つ書くと四つ書きたいことができるので、永遠と続いていくと思います。

――読者の中には「私も書いてみたい」と思う方いると思います。読者に向けて、また、これから書きたいという方に向けてのメッセージをお願いします。


仁木英之氏: 小説家になりたい人には、目の前で起こっていることを楽しんでほしいですね。無理に興味を持つとか、勉強するのはキツイと思うので、自分が何かをしたり、しなくてはいけないことを楽しむ。その楽しさが視野を広げたり、見方を深めてくれたりします。それが作家への第一歩。例えば横のグループがすごいおしゃべりしていたとする。「うるさいなぁ!」と思うのではなく、「何でそんなに楽しいんかなぁ?」って思って聞いたら、苦痛じゃなくなるじゃないですか。よく作家になりたいと言っているくせに文章を書くのが苦痛とか、書けないと言う人がいますけど、それって楽しくない。書くことは時に苦行なので、書くこと以前のことですね。

歴史的なことでもそう、現実的なことでもそう、友人関係でもそう、やっぱり楽しんでみてほしい。「こいつこんなにおもろいぞ」って、腹立つこと言うけど友達でもあるじゃないですか、彼女でもあるじゃないですか。うっとうしいなと思うけど、「あ、これネタになるな」とか、「こうしたらもっと面白いぞ」となると、腹立ちも半分ぐらいですみますよね。そんな風に、目の前で起こっていることを楽しめる目を持ってほしいと思います。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 仁木英之

この著者のタグ: 『歴史』 『留学』 『小説家』 『楽しむ』 『結婚』 『オタク』 『物語』 『家庭』

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