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仁木英之

Profile

1973年4月17日、大阪府生まれ。信州大学人文学部卒業。在学中には北京に留学、その後、塾講師などを経て2006年5月、『夕陽の梨』で第12回学研歴史群像大賞最優秀賞受賞。同年8月『僕僕先生』で第18回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。同作は『薄妃の恋』『胡蝶の失くし物』『さびしい女神』『先生の隠しごと』とシリーズ化され、人気を博す。2011年6月第一回キネティックノベル大賞審査員特別賞。ほかに『千里伝』『朱温』『高原王記』『くるすの残光』『黄泉坂案内人』など著書多数。近著に『大坂将星伝(上・中・下)』(講談社)がある。

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いままでになかった物語をつくり出す。それが、作家としての快楽



1973年大阪生まれ。信州大学人文学部に入学後2年間、北京に留学。2006年『夕陽の梨―五代英雄伝―』で「歴史群像大賞」最優秀賞を、同年『僕僕先生』で「日本ファンタジーノベル大賞」大賞を受賞し作家デビュー。ほか、『朱温』(『夕陽の梨』完全版)『千里伝―五嶽真形図―』『高原王記』『我ニ救国ノ策アリ 佐久間象山向天記』、僕僕先生シリーズ続編『薄妃の恋』『胡蝶の失くし物』『さびしい女神』『先生の隠しごと』『鋼の魂』など著書は多数。「目の前にあることはすべて物語につながる」という仁木英之さんに、物語を生み出す原動力や独特の世界観をお聞きした。

物語の種はどこにでも散らばっている


――デビューから7年目。歴史小説家としてご活躍中ですが、近況を伺えますか?


仁木英之氏: 昨年10月に『千里伝』シリーズが完結し、11月に僕が大学時代に住んでいた長野県の英雄、佐久間象山を主人公にして幕末ものを書いて、12月には『僕僕先生』の4作目『さびしい女神―僕僕先生』を文庫にし、今年1月からは、大阪の陣を舞台にした小説が上中下で出ます。もうラッシュで、しっちゃかめっちゃかです(笑)。

――走り続けていらっしゃいますが、書き続ける原動力はどこからわいてきますか?


仁木英之氏: 僕は自営業をしていたので、お仕事を依頼してくださる方がいるということがまず一つ。それから、読んでくださる読者の方がいることがもう一つ。

――自営業というのは何ですか?


仁木英之氏: 大学卒業後、スーパーの西友に勤めたんですが、上司に「一緒に店をやろう」って誘われて、「面白そうや」と思って西友を辞めたら、その話がなくなって無職になってしまったんです(笑)。仕方がないので家庭教師のバイトと深夜バイトをしていたんです。昼間の家庭教師で、不登校の子やひきこもりの子を見ているうちに、そういう子どもたちの受け皿になるようなフリースクールのような学習塾を作ろうと思って、長野で始めました。朝10時から夜10時までやって、好きな時間に来られるようなスクール。6年間ほどやっていましたね。

――デビューは31歳ですが、もともと書くことが好きだったんですか?


仁木英之氏: 僕は中学のころから基本的にはオタクだったんです。アニメオタクで、美少女ゲームとかも大好き(笑)。それで、二次創作をやり始めて自分のホームページにアップした。すると、見に来てくれる人がいて、感想をくれたりする。それがもう楽しくてしょうがなくて、それから書き始めましたね。二次創作はどうしても制約が大きいので、仲間内でお遊びでオリジナルを書いてみようかという話が出ました。みんな趣味の域だったんですが、僕は1年間頑張ってプロを目指してみようかと思って、いわゆるライトノベルとエロ小説をあわせて7本ぐらい、長編を書いてあっちこっちに送ったら、新潮社さんと学研さんで賞を頂いたという経緯です。

――小説のテーマはどのように発想されるのですか?


仁木英之氏: 僕は割と興味の幅が散らばっているというか、浅く広く薄いので、本当に目の前のことが何でもお話になる。例えばあそこでおしゃべりしているおばちゃんに「昔どんなドラマがあったんだろう」なんて妄想するのが好きなんです。いまおしゃべりしている二人は仲がいいけど、昔は一人の男を取り合って…とか。まあベタですけど(笑)。高級ホテルに来ているからそれなりに見えるけど、実は貧乏で一生の思い出として来ているのかもとか、そんなことを考えると、どんどんお話って広がります。何にでも物語の種があって、特に僕は歴史が好きです。歴史って本当にどのページを開いても必ず物語がある。そこから広げていって、今年3部作で書いている大阪の陣なんかは、真田幸村と一緒に家康の本陣に突撃した毛利勝永が主人公なんです。真田幸村は超メジャーですが、毛利勝永はすごくマイナーですよね。「じゃあ、このマイナーな人にはどんなドラマがあったの?」というところから物語が生まれる。誰も知らない、いままで物語化されなかったものを物語にする。それができるのが小説家の特権だと思います。

これまでメジャーじゃなかったものをメジャーにすることができる存在だと思っているので、それが、書くための最高の原動力ですね。昨年書いた佐久間象山も、いまNHK大河ドラマ『八重の桜』で奥田瑛二が演じていますが、何をした人かほぼ知られていない。それを刻銘に描きだして、「こんなに面白い人やったんや」っていうのを、物語にできるっていうのは快楽ですね。

無防備なくらい、楽しかった


――プロの小説家になりたいと思われたきっかけは何ですか?


仁木英之氏: 小学生のころに、作家になりたいと思ったことがあったんです。夏目漱石の名作を学校の授業で読んで、『わが輩は猫である』とか読んでみると、作家って何かお気楽でよさそうだと思って(笑)。で、二次創作なんかを始めて、せっかく文章を書いているなら自分の力を試してみたいというのもあって、やってみたらどんどん深みにハマり、彼女にもフラれ・・・。

――フラれたんですか?


仁木英之氏: いやもう、書くのが楽しすぎたんです。もうあきれ果てられ、捨てられ(笑)という。本当に書くことに没頭しました。30歳を過ぎてこんなに楽しいことがあるんだっていうのを知って、無防備なぐらいに楽しかったですね。2ヶ月ぐらいで1作書き上げて投稿して、その結果を待つ間のドキドキ感がまた快感で。大人になると合格発表を見ることなんて、あまりないので。投稿は、よい、悪いがハッキリと当選・落選という形で分かりますから、ちょっとすごいスリルを知ったみたいな、完全に脳内麻薬ですね。一次選考…通った、二次選考…通った、最終に残った!もう飯を食わなくても平気なんです。おなかがすかないんです。

――いまはご結婚されていますね。


仁木英之氏: 3年前に。僕は大学時代から極真空手をしていて、忙しくなって十数年道場から離れていたんです。でも、小説家になれたおかげで割と時間を自由に使えるようになったので、道場に戻ったんです。その時に、嫁さん黒帯巻いていたんですよね。道場で僕は白帯から始めましたので、嫁さんのことを先輩って呼ぶんです。彼女は看護師で集中治療室(ICU)に勤めていて、すごくしっかりしています。向こうは僕を変わった人間だなと思ったらしく、割と需要と供給が一致して、お付き合いして結婚に至ったわけです(笑)。

――仕事の話はされるんですか?




仁木英之氏: 嫁は僕の書いた本は一切読まないです。僕も「読まんといてくれ」って頼んでいる。僕らの仕事って出したものは無条件に批評される、いい風にも言われるし悪い風にも言われる。出す前には編集者にいろんなコメントをもらったり、時にはダメ出しをもらったりする。それってすごくしんどいことなんですよね。それを家庭でもされたくない(笑)。だから、「僕がしっかり働いていたら褒めてくれ、ダラけていたらケツをたたいてくれ。それだけでいい。」と言っています。嫁の実家の人は読書が好きなので結構読んでくれていますが、嫁自身はその言葉通り全然読まずに、僕が働いて本を出していれば優しくしてくれますし、ダラダラしていれば「そろそろ働いたら?」って言います(笑)。僕はそれで十分です。

著書一覧『 仁木英之

この著者のタグ: 『歴史』 『留学』 『小説家』 『楽しむ』 『結婚』 『オタク』 『物語』 『家庭』

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