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世界中の本好きのために

吉田友和

Profile

1976年、千葉県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。都内出版社で勤務ののち、結婚を機に世界一周新婚旅行に旅立つ。帰国後、妻の松岡絵里と夫婦でまとめた世界一周旅行ガイド『してみたい!世界一周』、会社員生活の中での海外旅行体験をつづった『仕事が忙しいあなたのための週末海外!』が大きな反響を呼び、旅行作家としての活動を本格的に始める。これまでにおよそ80ヶ国を訪問し、現在もほぼ毎月海外へ出かけている。雑誌等への寄稿および記事監修のほか、編集者として旅行ガイドの制作なども手がける。近刊は『スマートフォン時代のインテリジェント旅行術』(講談社)、『自分を探さない旅』(平凡社)など。

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旅がメインフィールド。でも「生き方」も書いてみたい。



吉田友和さんは1976年千葉県生まれ。出版社勤務を経て、2002年、初海外旅行にして夫婦で世界一周旅行を敢行。旅の過程を一冊にまとめた『世界一周デート』で、2005年に旅行作家としてデビューされました。現在、「週末海外」や「自分を探さない旅」といった新しい旅のテーマをを提唱しつつ、執筆活動を続けています。そんな吉田さんに、電子書籍と本とのかかわりについて、旅についてインタビューしました。

行きたい場所も「仕事」にしてしまう


――ちょうど新刊の『めざせプチ秘境!』が出たばかりですね。毎月、海外に行かれていますか?


吉田友和氏: そうですね。月によって違いますけれど、行っている時は連続で行っていますね。毎月行く時期もあります。

――行かれるところはどういう風に決めるんですか?


吉田友和氏: 最近はだいぶ仕事絡みが多くなってますね。純粋に行きたくて行くっていうのももちろんあるんですけど、そういうところも結果的に仕事にしちゃったりすることが多くなっています。

――そうなるとお仕事と吉田さんのライフワークとしての旅と、かぶる部分が多いですか?


吉田友和氏: いやぁ、もろかぶりですね。

新婚旅行で世界一周旅行へ


――世界一周旅行をしたのが約607日でしたね。どうして世界一周に出たのか教えていただけますか?


吉田友和氏: 2002年ですから、10年前ですね。それが、初めての海外旅行だったんです。いきなり会社を辞めて、結婚をして、新婚旅行で世界中に行きました。1年くらいで帰ってくる予定だったんですけど、気が付いたら1年半くらいの長い旅になってしまいました。帰ってきたのが2004年。それで戻ってきて、また社会人として仕事をしていたんですけど、最初の海外旅行でいきなり世界一周をしてしまったせいか、あまりにその体験が強烈だった。やっぱり旅自体の魅力っていうのにどっぷり漬かってしまいまして。でも仕事しながらだとなかなか行けない。



だから「旅行に行きたいけど、仕事もあるし」という状態ですね。仕事することで、安定した収入が入ってきたけれど、旅行に行く時間が全然無くなってしまったので、それで「週末海外」というスタイルで、短期で回数を多く行こうという旅を始めました。主に近場のアジアが中心なんですけど、大型連休とか夏休みをうまくやりくりして、強引に1週間から長くて10日の休暇を取れた時は、アジア以外のちょっと遠いところへ行ったりという旅をしていました。

――今や80カ国くらい行かれてるんですね。


吉田友和氏: はい。その最初の世界一周で45カ国に行ったんですけれど。その後も実はそれと同じくらいの国数を行っていて、さらにその世界一周に行った時に行った場所にも何度も行っています。国の数自体はあんまり意味ないと思うんですけど、気が付いたらすっかり旅の日々になってしまったというところですね。

―― 一生分以上の旅をしたと思いますが、不安とかはなかったのですか?


吉田友和氏: それがね、なかったんです。その新婚旅行で一緒に行った妻が、実はスピード婚で、付き合い始めて1ヶ月くらいで結婚しようみたいな話になったんですよ。もう勢いというか、その時25歳で。若かったっていうのもあるんでしょうね。後先を考えないというか。「じゃ新婚旅行にどこへ行こうか」みたいな話をしている時に、「世界一周とか良いんじゃない」みたいな、かなり軽いノリですよね。付き合い始めて1ヶ月くらいってお互い気持ちが高ぶってるというか、あんまり相手の悪い面とかも見えてない状態なので、本当に何にも考えてなかったです。彼女の方は、世界一周はしてなかったですけど、ちょくちょく学生時代に旅をしていたので、その中で実際に世界一周をしていた人に旅先で会ったことがあるらしいんです。で、単純にできるできないで言えばできるっていうことが彼女は分かってたみたいで。僕はかなりノリだったんですけど、彼女の方は現実的に新婚旅行で世界一周に行くっていう具体的に思い描くものがあったみたいで、トントン拍子で決まっちゃっいました。

――まだまだ実際に世界一周する人が少ない中で、先駆者として実際に行かれたということで、今でも語りぐさになりますね。


吉田友和氏: いつも大体その話から始めるんですけど、いくらでも語ることがあるので、その話で終わっちゃうんですよね。例えばラジオとか出演して、違うテーマのはずだったんだけど、「なんで旅をすることになったんですか?」とよく聞かれるんですよね。そうすると世界一周の話から始まって、なかなか本題に入れなかったり(笑)。

最近、世界一周へ行く人が増えている?


――最近では、世界一周に行く人が増えてきたと思われますか?


吉田友和氏: 10年前と比べると、やはり世界一周に行く人が増えてると思います。ちょうど先週日曜日に世界一周ナイトっていうトークイベントをやったんですけど、そこに100人以上来ていただきました。もう3回目なんです。だから皆さんの関心が高まってるのかなあと。あとは、情報が出回る様になってるというか、主にネットを介してだと思うんですけど、世界一周に行けるっていうこと自体がだいぶ知られてきているなと思います。

――吉田さんに影響を受けた方もたくさんいるんでしょうね。


吉田友和氏: 僕だけじゃないと思いますけどね(笑)。世界一周に行った人で「行かなきゃ良かった」っていう人ってまずいないんですよ。大体皆さん満足して帰ってきて、本当行って良かったっていうことを周りの色んな人に言うので、口コミで広がっていくのかなあと。

旅先ではiPhoneでメモを取る


――執筆スタイルについてもお伺いしたいと思います。旅に行った時は、旅行中にメモを取ったりしますか?


吉田友和氏: 今はiPhoneですけど、全部メモを取ります。Evernoteで自動同期する様にしています。仕事的に写真の次に無くなっては困るものですよね。ただ、そんなに細かく書かないですよ。例えば値段交渉した時とか、面白い値段交渉でいくらになったかとか。できるだけ現実に忠実に書きたいので、いくらから始まっていくらになったかとかは、数字って忘れちゃうんでメモを取れるようにしてます。「この日どこへ行って何をした」とかって日記みたいなことはメモしないです。印象的な出来事とか忘れそうなものを中心にメモしています。最近は長編を書くことが増えてきてます。短いものは勢いで書けちゃうんですけど、例えば1冊で1個の旅行記とかになると、300ページとかなんで、ある程度勢いでも書くんですけど、どういう構成で書いていくかは、あらかじめ考えるようにしています。

――今まで行った中で、こういう国は書きやすいなという国はありますか?


吉田友和氏: 現地の人のリアクションの多い国とかですね。代表的なところはインドとか。何もしなくても色々ハプニングが起きるので、書くという意味では、楽ですよね。インドの本ってどの本読んでも面白いと思うんです。だからもう必ず面白くなるようにできていますよね。自分でもインドの本を昨年出したんですけど、書いててちょっと反則だなっていう気分もあるくらいで(笑)。素材からして面白いんですよね。

――旅行記を書かれる時にこだわっている点などはありますか?


吉田友和氏: 旅行記って、簡単に書けそうなんだけど難しいんですよね。あった出来事を時系列に並べても、多分あんまり面白くないんで、どこを抽出してどういう風に組み立てるかっていうとこなのかなと。まだまだ修練してる段階ですけど、奥は深いです。

子どもの頃のお気に入りは歴史小説


――吉田さんの幼少期のお話も伺いたいと思います。子どものころはどのような子どもでしたか?


吉田友和氏: 本を読むのはすごく好きでした。1番読んでいたのは司馬遼太郎とか池波正太郎とかの、歴史小説、時代小説ですね。それを中学生くらいの時に学校の図書館とかで、一気読みしました。

――当時は作家になりたいとは、特に考えてはいなかったのですか?


吉田友和氏: 全く夢にも思わなかったですね。なんかね、歴史が好きだったんですよ。特に戦国時代に武将が出てきたり。そういうところから読書の世界に入ったっていう感じですね。

――日本を旅行される時には、そういうところに寄ったりしますか?


吉田友和氏: しますね。高校生の時に池波さんの『真田太平記』を読んで、長野の上田って真田家の町がありますよね。あそこに高校の時に行ったんです。そういう感じで旅行というか、城を見に行ってました。お城自体は、はっきり言えば地味で、そんなに歴史的価値があるかどうかちょっと分かんない感じでした。上田の町自体はすごく良いところで、2年前くらいにももう1回行ったんです。『サマーウォーズ』という映画の舞台が上田なんです。それこそ上田城とか、真田家の歴史をモチーフにしてストーリーを作ってるんですけど、行ったらそのサマーウォーズのポスターとか町にはってあったり。あのアニメの中で山里の風景、日本の古き良き山里みたいなものが出てきましたけど、本当にそんな感じで、周りの自然が良いところなんです。長野はどこも良いんですけど、上田は好きです。

自炊は2009年から、電子化の流れに即対応した


――旅のスタイルについてお聞きしたいと思います。電子書籍やスマートフォンを活用されていらっしゃるんですね。


吉田友和氏: そうですね、使ってますね。1番本格的に使い始めたのが、初代のiPadが出る半年くらい前に、自炊を始めたんです。iPadが出るっていうことが分かってから、電子化の流れになるだろうなって思ったんです。家が本当に本と雑誌だらけなので、何とかしたいなと思ってたのと、ちょうどiPad発売で電子化が良いタイミングで重なったので、捨ててもいいものと残しておきたいものをスキャンしようっていうのでやり出したのが、iPadの発売の半年くらい前でした。iPadは発売日に買いました。

――2009年ですね。全部ご自身でやられたんですか?


吉田友和氏: 裁断もしました。断裁機をAmazonで買いました。特に本っていうよりは、どちらかと言うと雑誌をやりたかったんですよね。

――では、iPadが出る前に着々と準備をされてたんですね。


吉田友和氏: そうですね。iPadが出た時にすぐ見られるようにしたかったので、iPadが出てからじゃ遅いなと思ったんです。そのころはね、すごく楽しくてやってたんですけど、最近はもうやらなくなっちゃっいました。手間が掛かるし、熱しやすく冷めやすいタイプなんです。ある程度雑誌のバックナンバーとかもクラウドにもう上げちゃったんで、新しく買ってきた本を自炊するってこともしてないですし、何より面倒くさいんですよね。

旅先のために、ガイドマップを自炊する


――旅に行かれた時、電子書籍を持って何か役立ったこと、良かったことはありますか?


吉田友和氏: それは、すごくありますね。やっぱり旅先だと、読書欲が普段よりわくんですよね。長い移動とか飛行機の中とかありますし、あとホテルでちょっとリラックスしてる時とかに本を読みたくなる。あと、日ごろ都内で電車の中とかで読むよりも頭に入ってきます。

――旅先ではどんな本を読まれるんですか?


吉田友和氏: 最近は電子書籍をストアで購入するので、売ってるものですね。あと旅に関して言うと、ガイドブックは自炊する時はあります。2年前かな、12日間っていう短期間で世界一周って、2回目の世界一周に行ったんです。その時はもうiPadが出てたんで、パソコンを持っていくのを止めたんです。そこまでは必ずPCを旅先に絶対持参してたんですけど、そこで初めてPCを置いてiPadだけにしたんです。世界一周で、複数の国に行くので、ガイドブックとか全部持っていったらすごい重さになっちゃうので、思い切って全部自炊してiPadに入れて見てたんですよね。スキャンしてPDFになってるだけなので、インタラクティブな要素が何もないんですけど。例えばアプリとかでクリックして地図が開くとかじゃないじゃないですか。ガイドブックを出してるところが最近ちらほらと出てきてますけど、そういうことを出版社とかが、出してくれるといいですよね。自炊したデータより、そういう電子アプリみたいなものが出てきた方がうれしいなっていう感じですね。旅のガイドブックは電子向きだとは思いますけど。

――吉田さんが考える電子書籍の可能性は、どんなものを秘めていると思いますか?


吉田友和氏: 僕の読書は、付せん紙を使いながら読むタイプなんです。今はKindleにしたんですけど、それが出るまではSONYのリーダーを使ってました。ブックマーク機能があるんで、それが今まで付せんをはってたところに、ブックマーク機能で代用出来るので楽ですね。見たい時もすぐ戻れます。

――じゃあそうなるともう、ある程度紙でやっていたことができるようになったんですね。


吉田友和氏: テクニカルな部分ではそうですね。

書き手としては、電子化が進んでも変化はあまり感じない


――今は読み手としてのお話をお伺いしましたけど、書き手として電子書籍の登場によって、書き方のスタイルに変化はございますか?


吉田友和氏: 本の内容によると思うんですけど、全く変化がないですね。例えば写真が主体だったりとか、単行本とかでちょっと凝った装丁で作ったりしたものに関しては、むしろ電子化する意味がないかなと思ってるんですよ。一方で新書とか文庫とか、主に活字中心で読み物であれば、定型ですし、電子で読みやすくていいかなとは思います。

――紙と電子とを、内容によって使い分ける様な感じですか?


吉田友和氏: そうですね。だから出す本出す本、全部電子化するっていう考えはないんですよ、今のところは。もしかしたらそういうのも突破出来るようなことが将来的にあるかもしれないですけど、今の時点では全部を電子化しようとは思ってないです。

――旅先でまだネットが通じない場所に行く時に地図が役立つという声もあると思いますが、読者側が電子書籍で読みたいというニーズはすごく多いのかなと思いますが、いかがですか?


吉田友和氏: 恐らく1番合いそうなのが旅行記。例えばタイに旅行に行く時にタイの旅行記とかって飛行機とかで読むと、予習にもなるし気持ちも盛り上がるじゃないですか。だからそういう用途でもし電子のラインナップが充実してくれば良いんじゃないかなと思います。旅行記って自分が書いてると、ほかの人のは読まないっていう著者の人もいると思うんですけど、僕は割と読むのも好きなんですね。自分がそういうのを書き始める前から読んでましたし。旅行本みたいなのって、小説とか実用書とかとまた違うジャンルとしての1つだと思うんですよね。旅ものを読みたい気分の時とかあると思います。ただ最近そういう本が減ってるんで寂しいですね。

歯医者へ行って次の旅の目的を見つけた!


――今後行きたい国はありますか?


吉田友和氏: 来年春にヨーロッパに行こうと思ってるんですけど、ヨーロッパの鉄道を乗り継いで旅をしようと思っていまして。今のところパリから始めてイタリアとかドイツとか回ろうかなと。まだ計画段階なんで具体的には決まってないんですけど。それを思いついたのが歯医者さんなんです。歯医者さんに行っていて、最近の歯医者さんってハイテクで、椅子ごとに液晶モニターが付いてる。そこでなぜかヨーロッパの映像が流れてるんですよね。そこの先生が鉄道旅行好きらしくて。ヨーロッパの、パリ北駅とかから電車が発車する映像とかが延々流れてるんですよ。それをずっとぼうっと口開けながら見てたんで、洗脳されたんでしょうね(笑)。



でも旅って基本的には行きたいとこに行くのが良いと思うんです。行きたいと思う理由は人それぞれでしょうし、本当に本能のままにじゃないですけど、色んなしがらみにしばられて生活している中で、旅くらい別にそういうしがらみとかと解放されてもいいのかなと。

――今後、そういう旅というものを通じてどんなことを皆さんに伝えていきたいと思われますか?


吉田友和氏: 旅の内容がどんどん多様化してきていると思うんですよ。遺跡に行く人がいたり、海で楽しむ人がいたり、お祭りばっかり行く人がいたり。要はテーマ性なのかなと。人によって志向は様々ですし、当然と言えば当然なんですよね。だから、まずは新しい旅のテーマみたいなものをさらに提案できればと思ってます。そしてそれは旅に限らず、考え方や生き方にも言えることなのかなと。ライフスタイルが多様化してきていると言いますか。そういうのも書いてみたいですね。ポジティブな感じで。。。実は最近、何か色々書いてみたいなっていう執筆欲みたいなのがすごくあるんです。旅の本だと内容がある程度限定されちゃうので、旅じゃないものも含めて挑戦していきたいです。あと僕は編集者でもあるので、出版業界自体の動きに興味があります。色々電子書籍とかも出てきて、今すごく動いている時期だと思うんですけど、なにか面白いものをやっていきたいですね。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 吉田友和

この著者のタグ: 『旅』 『チャレンジ』 『海外』 『考え方』 『働き方』 『紙』 『テーマ』 『世界一周』

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