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世界中の本好きのために

小松易

Profile

1969年生まれ。北海道出身。大学生の頃、交換留学でアイルランドに行き、トランク1つで生活できたことに衝撃を受けて帰国。モノを持たない自由と幸せを実感し、自然と片づけに意識が向くようになる。建設会社の総務として入社後、現場で片づけの重要性を学ぶ。2005年9月に「スッキリ・ラボ」を開業。「片づけを習慣化する」をコンセプトに、個人カウンセリング&コンサルティング、企業研修、講演などを行い、延べ2500人以上を指導。2009年からは片づけの習慣を作る「かたづけ研究会」をスタート。「日本人が本来持っている片づけ力を引き出して、日本を元気にする」ミッションを掲げ、日本初のかたづけ士として奔走中。

Book Information

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スッキリ空間に福来たる、幸せが循環するかたづけの心と実践



小学生から会社の社長まで、日本はかたづけられない人であふれている。そんな悩める人に救いの手を差し伸べる小松易さんは、日本初の「かたづけ士」として知られています。小松さんが2005年にスッキリ・ラボを立ち上げて以後、かたづけを支援した人の人生に驚くような変化が起きた事例は数えきれません。34万部のベストセラー『たった1分で人生が変わる かたづけの習慣』(中経出版)も文庫化され、まだまだかたづけ人口を増やし続ける小松さんの、かたづけに託す夢と、多彩な経験を伺いました。

社長から報告を受けるのも「かたづけ士」の仕事


――小松さんは、日本初の「かたづけ士」という肩書で、すでに延べ2500人を超える方にかたづけの指導をされていますが、始められたのはいつごろからですか?


小松易氏: 2005年に30代から40代、50代ぐらいの主婦の方を中心に始めました。最初は、個人のお客さんを対象にしていました。そのうち、「家が万年床で…」などという男性も対象になってきました。不思議なことに、そういう方がかたづけると、ただきれいになるだけじゃなくて、本人も気づかないようなことが起きたりするんです。万年床をかたづけて2か月ぐらいたってから、「彼女ができた」と電話がかかってくる、ということがよく起こって、かたづけは、人間の根本にかかわることかもしれないと思うようになりました。それからまた2年ぐらいしてから、ある方のご紹介で、社長のかたづけを応援することになりました。

―― 社長のかたづけというと、会社の社長室のことですか?


小松易氏: その会社は1階が事務所で、社長室は3階なんですが、階段を上がっていく途中、ひな壇のように書類が階段に乗っかっているわけです。ドアを開けて社長室が見えてきても、社長室に至るまでの壁際がびっしりと書類で埋まっているという状態。10年来、こんな感じで一向にかたづけかなかったということでしたが、半年かけて社長に個人レッスンしました。当時、私のレッスンの仕方は、毎朝、かたづける時に電話をかけていただく方式でした。

―― かたづける前に電話をかけてもらうのですか?


小松易氏: はい。ただ、いっぺんにかたづけてしまいたい気持ちをあえて抑えて、習慣化してもらうことに力を注ぎます。かたづけを山登りに例えると、山を登ってもらうには、とにかくまず本人が一人で登っていくのを、こちらは手は出さないでちょっと斜め後方で支援して見ている感じです。

―― 具体的にはどのようにされるのですか?


小松易氏: 「1日1か所15分」と場所と時間を決めてかたづけてもらいます。仕事場をかたづける場合は長くても30分か、せいぜい1時間。逆にそれ以上はやらないようにと申し上げています。その時は、うまく一山ずつに分かれていたので、社長室の現状のマップを書いていただいて、それぞれの山にナンバリングして、本棚も含めて100番ぐらいまであったので、それを1か所ずつ、朝10時から10時半、ほとんど毎日かたづけていただくことにしました。毎朝、始める前に、私の携帯に社長から電話が入るんです。「じゃあいまから始めます」「わかりました、頑張ってください」と言って電話を切るという感じで。そうして終わったらまた「10時半に終了しました、じゃあ」と連絡がある。

――社長が小松さんに電話報告をするという感じですか?


小松易氏: そうなんです。それが不思議な感じで、自分でも面白かったですね。個人のお客さんも同じ方式で行いますが、その社長は、半年後に見事、10年来の山がかたづいたんですよ。10年間できなかった社長室のかたづけができて、良かったなと思っていたら、「じゃあ今度は1階をやってもらおうかな」と社長に言われたんですね。1階は事務所ですから、社長個人のサポートが1段階進んで、会社のサポートに移行したことになります。そんなふうに個人からスタートした仕事が、コンサルティングの仕事につながって、社員研修もやらせていただきました。新入社員向けの整理・整頓のかたづけを、3時間ぐらいのメニューで研修を行います。社長という個人の支援から始めて、紹介や出会いがさらに広がっていく。もともと30代、40代のお母さん、OLさんから始まったかたづけが、いま、どこに及んでいるかというと、ぐるっと回ってきて、小学校まで来ています。

「掃除」と「かたづけ」の違いってわかる?


――小学校でかたづけの授業をなさっているのですか?


小松易氏: はい。日本では、勉強は教えるけれどもかたづけは教えない。子どもにかたづけを教える時は、最初黒板に、「汚れる」と「散らかる」っていう単語を書くんですよ。「この違いがわかる?」ってみんなに聞くんですよ。子どもたちも、わかるような、わからないような顔をします。大体、女の子で利発そうな子が一人ぐらい手を挙げて、「散らかるっていうのはモノがワーッとなること。汚れるというのは泥が付いていたりすること」と説明してくれる。

――子どもたちに違いがはっきりわかるのでしょうか?


小松易氏: 「汚れる」と「散らかる」に「床」という同じひとつの単語を主語としてつけてみると、わかりやすくなります。「床が散らかる」と「床が汚れる」、と言うフレーズから、子どもたちにも違う風景が見えてきます。例えば、お父さんとお母さんと週末、マクドナルドに行って、おもちゃがついているセットを食べようと思ったらコカコーラをこぼしちゃった。この時は、「床が汚れる」だけど、「散らかる」って言わないよねって。じゃあ、この男の子がサッカーをやって、面倒臭いから練習着とかを脱いだものや読みかけの漫画を床にバーッと置いていく。これはまさに「床が散らかる」っていうことですよね。「床が汚れる」に対処するのが掃除で、放課後やることだよね。「床が散らかる」に対処するのがかたづけだというイメージができてくる。そこで「汚れる」に対する具体的な動作を考えると、掃く、拭く、磨く、プラス掃除機をかけたりみたいな掃除の動作。「散らかる」に対するかたづけというのは何かといったら、整理と整頓ということになります。かたづけという私の仕事は、まさに整理・整頓についてです。

――授業をなさってみた手ごたえはいかがですか?


小松易氏: わかってきたことは、生徒がはっきりと変わるということです。生徒がかたづけの知識を身に着けると、変わるんです。それに親は驚きます。毎日、「食器を下げなさい」とか「靴をそろえなさい」とか、「ランドセルをしまいなさい」と何度言っても、廊下や玄関の所に放り投げて遊びに行くのが子どもですからね。それが、学校でかたづけの授業を聞くと、ほとんどの子どもは、何かかたづけに対する面白さや大切さを肌で感じるようです。それを、なおかつゲームにしてしまうのです。

―― どういうゲームにするのですか?


小松易氏: ひとつだけその子自身がテーマを決めて、自分で取り組む習慣行動を3週間続けてもらうんですよ。例えば、小学校5年生でサッカーをやっている子どもがいて、かたづけが苦手なんです。親にいつもしかられるのは、夕飯を食べた後、食器を下げないこと。この子は、それに取り組んだんです。彼は、ご飯を食べたら必ずすぐに自分の食器を下げることを決めて、これを3週間やりますと宣言した。習慣行動の起点としては、自分でわかっていてもついやってしまうことみたいなものをしっかり見据えた上で、マイルールを作ること。25人の生徒がいたんですけれども、宣言する習慣行動は全部違うんですよ。

――子どもたちは自分の決めたルールを守れたのでしょうか?


小松易氏: 一人ひとりが決めたルールで3週間やって、3週間後にもう1回私が学校へ行ってどうだったか確認していく。そうしたら驚いたことに、どの子もちゃんと決めた通りやってきたんですよね。親も、いくら言ってもやらない子が自分の決めたかたづけのルールを実行したというので驚かれましてね。そうするとお母さんも何かちょっと子どもから刺激を受ける。私はこれで1周したと思っているんです。女性から始まったかたづけのコンサルティングが7年たって小学校へ来て、またぐるっといってお母さんに戻ったわけです。



実は、小学校にご縁をつないでくださったのが、かたづけをコンサルした近所のある会社で、その社長さんはその学校の卒業生であり、以前PTAの会長もされていたんです。それでその会社がかたづいたお披露目を兼ねた記念セミナーに、学校の一角を借りたのがきっかけで校長先生とつながって、「じゃあ一度5年生を見てもらえませんか」というのでかたづけの授業をすることになりました。

板チョコと同じように割るとかたづけやすくなる


――かたづけが苦手な人は、なぜかたづけられないのでしょうか?


小松易氏: かたづけに苦手意識のある人は、ドン・キホーテが風車を目指して突進していくのと同じようなことをするんですよ。私はそれをボスキャラって呼ぶんですが、家で言うと押入れや納戸のように、密度が濃くて大きい場所が気になるんですよね。積年の思いを早く晴らしたいんでしょうけれども、なかなかそこはうまくいかない。4年ぐらい前だったか、ある女性は5月の大型連休に本当は旅行に行きたかったのに10日間全部を返上してかたづけに充てたらしいんですよ。最終日、全くかたづけが終わらなくて、一人じゃできないと悟って、泣きながら私に連絡をくれました。

――小松さんはかたづけは手伝うのではなくて、サポートされるんですよね?


小松易氏: その方には、順番に場所を決めてかたづける方法がうってつけだったようで、最終的にうまくいったんですよ。ですから私のサポートの仕方が合う人には、結果が出ます。ただ、一緒にやってほしいという方は、ほかにも色々と片づけをアドバイスしてくれたり手伝ってくれる方がいらっしゃいますのでご自身で探してみると良いかもしれませんね。

――逆に、かたづけができるようになる考え方というのはあるのでしょうか?


小松易氏: かたづけが苦手な人は部屋を一枚岩で見ていて、この動かない岩をどうしようかと悩んでいるんです。私は板チョコみたいな感じで、「これ、割りましょうよ」って言ってるんですよね。私が提案しているのは、板チョコをパキパキ割って、ひとかけらを15分かけてやろうということです。子どもたちへの授業でも分けることを意識して話しますし、実践もやっぱり分けることが大切です。「分ける」ことは「分かる」ことに通じるので、行動のキッカケになるのです。

スッキリの原点は、子ども時代の友達とアイルランドでのホストファミリー


――小松さんは、小さいころからかたづけが得意な子どもだったんですか?


小松易氏: 割とおとなしい子どもで、いわゆるインドア派でした(笑)。旭川出身なので、子どもはボブスレーやスキーなんかの雪遊びをするのですが、私は母親から「外で遊びなさい」と言われても、あまり行かないでゲームをして遊ぶ方でした。その割に本を読んでいたわけでもないんですが、母が割と教育熱心で、名作絵本シリーズ20冊セットなんかが家にありました。小学校2年生の時の友達の家が、本でもおもちゃでも何でもある家で、よく遊びに行きましたが、常にスッキリとかたづいている家でした。お互いの母親同士も仲が良かったので母も一緒に行っていたりしていました。ある日、その友達の家で母に「やすし!」と急に呼ばれたので、怒られるのかと思ったら、ちょうど友達が漫画の本を読み終わってしまう瞬間に「あれ見なさい」と言うんです。「あなたもいつもああやってたら部屋かたづくでしょ」と言われて、なるほど、と思ったんです。

―― いっぱいものがあってスッキリしているその理由がわかったということですか?


小松易氏: 子どもはたいてい、出しっぱなしにするものですが、彼は出して使い終わったらしまうという動作を、無意識にその都度やっていた。だからいつも部屋がきれいなんです。そのコツみたいなものが分かってからは、自分の部屋のじゅうたんの緑色がいつもほとんど見えていた記憶があります。私は「維持」と呼ぶんですが、小学生に教えている基本がこれです。出したら元の場所にしまうことができ始めたのは、母親とその友達のおかげかもしれません。本当に散らかさなくなったのは、彼がお手本になって、母が絶妙なタイミングで指摘してくれたこと。でもこの間、母に聞いたら全然覚えていませんでした(笑)。

―― アイルランドへの留学経験は、かたづけにどう影響していますか?


小松易氏: 留学は大学4年生の時でした。英語が好きで、ラジオを聴いて独学で勉強していたのが、もう就職も内定が決まっていたころに大チャンスが来ました。行き先がアイルランドで、5月に募集が始まったのが第1期交換留学で、素晴らしいホストファミリーとの出会いがありました。1期生ということで、そのホストが大歓迎してくれたんですよ。お父さんはテリーって言って180センチぐらいの大柄の、スラッとした方で、当時私は22歳、彼が42、3歳。ちょうど20歳違ったんですね。私たちが初めて受け入れる日本人だったらしく、音楽や映画について質問攻めにあったり、「ビートルズとU2が好きです」と言ったら、レコードをかけてくれて。娘はピアノ、息子はバグパイプを演奏する音楽一家で、3か月間いろんなことを経験させてもらいました。

―― アイルランド人の気質はどんな感じなんですか?


小松易氏: 男性がおしゃべりなんです。特にそのお父さんが行動的な人で。高校時代サッカーをやっていたというと、朝から芝生のグラウンドに連れて行かれて、仲間のサッカーチームと一緒に試合や練習させてもらったり、剣道もやっていたと言うと、また剣道の仲間も紹介してくれたり、パラリンピックで金メダルを取った選手に会わせてくれたり。お父さんにぐいぐい引っ張られて、いろんな所に連れて行っていただいて、ほかの留学仲間からすごくうらやましがられました。ホームステイの期間が終わってホストファミリーの家を出た友達が2人いたんですが、一緒に面倒をみてくれて、結局最後のほうは3人でホームステイをしたんですよ。

――3人になっても、また色々連れ出してくれましたか?


小松易氏: はい。クリスマスに思い出深いできごとがありました。グラフトンストリートっていう音楽通りがあって、ギターを弾いたりイベントが毎年あって、アイルランド全土が聴くようなラジオの公開生放送番組なんですが、そこで3人でパフォーマンスしろと言われて、「きよしこの夜」を日本語で歌いました。決してうまくないんですけれど、歌い終わったら大歓声でした。それからアイルランドのメアリー・ロビンソンっていう女性の大統領に記念に手紙を書くことになって、折り紙で鶴を折って、手紙と一緒に箱に入れて、大統領官邸へ持って行って守衛さんに渡しました。驚いたのが2週間後に大統領からちゃんと手紙の返事が来たんですよね。これはすごい国だなと思いましたね。そういえば、小学校に折り紙を教えにも行きました。面白かったですよ。

―― なぜ留学先がアイルランドだったのでしょうか?


小松易氏: 多分神様があのお父さんに会うためにちゃんとセッティングしてくれたんだろうなと、感謝しています。その経験があってこういう仕事をさせてもらえるようになったのだと思います。帰る時の荷物はトランク1個でした。それだけの荷物があれば人は生活できるということなんです。

「スッキリ・ラボ」のミッションとは


―― 帰国後は、いったん就職されたそうですが、かたづけ士として独立するきっかけは何だったんですか?


小松易氏: ゼネコンのフジタに就職しました。会社員としての経験ももちろんいまに生きていますが、2000年ぐらいから独自でコーチングみたいな勉強を始めまして。自分がプロジェクトリーダーになって4か月でプロジェクトを1個作って成功させるというようなプログラムをやらないかと言われて、いまの仕事の原点になるようなプロジェクトを作りました。2つイメージがあって、1つはお宅に伺ってグチャグチャの部屋を一緒になってかたづけを手伝うパターン。もう1つは、お宅に伺って、かたづけは手伝わないけど、その人がかたづけようという気持ちを起こして自分でかたづけるためのコーチングをする。お話を聞いて状況を把握して、かたづけ計画を一緒に立てる。5人の参加者が自分の部屋を含めた場所をかたづけていくっていうのを4か月プロジェクトでやったのがそもそもこの仕事のきっかけだと思います。

―― なぜ、かたづけをプロジェクトにしようと思ったのですか?


小松易氏: ふと浮かんだのが子どものころからモノと自分の関係と、アイルランドでスッキリとしたこと。いま考えたら、お父さんが伝えたかったメッセージは、人生はとにかく経験が大切だっていうことだと思うんですよ。モノっていうものも経験のためにあって、それをサポートする道具なんだという考え方です。そのプロジェクトで学んだことが、まさにこれなんですよね。

――ご著書のタイトル通り「人生が変わるかたづけ」を実感されたのですか?


小松易氏: お客さんとやっていく中で、単に部屋がきれいになるというイメージを超えて、万年床の男性に彼女ができたり、料理好きのお母さんがキッチンをきれいにしたら本当に好きな料理をまた作り始めて、家族に喜んでもらったとか、5人それぞれにストーリーがあって。かたづけは単なるかたづけじゃないと気づいたのです。これは、もしかしたら人生が変わるようなことかもしれない。当時、自分にとって本当にやりたいことが見えてきた時、それが「かたづけ」かなというような気づきでした。ビビッと来たんですね。

――実際に起業された時の周囲の反応はいかがでしたか?


小松易氏: かたづけに対する可能性と根拠のない自信だけを持って、結婚した年に会社を辞めて独立しました。幸い、どちらの親も冷静に対応してくれて、賛成してくれました。なにより近くにいた妻が一番にこの仕事を理解し応援してくれて、以来一貫してサポートしてくれているんですが、当時起業して半年後に妻も会社を辞めまして(笑)。「私も人を癒やすマッサージのような仕事を前からやりたかった」と言って辞めてしまった。その時に初めて自分自身の後ろにあったドアがパーンって閉まって、もう後ろには下がれない状態だから行くしかないんだと思いました。そう意味でも妻には感謝ですね。

―― 「スッキリ・ラボ」で大切にされていることは何ですか?


小松易氏: 伝わることの喜びと受け取ってくれるコミュニケーションの楽しさというのを、アイルランドでも学び、かたづけを通しても広げていっている気がします。小学校に行ってかたづけを教えて、子どもたちのかたづけ力を育てる意義は大きいので、長く続けたい活動です。学んだことを家庭に持ち帰るとお母さんも元気になって、お母さんがかたづける。それでお父さんも元気になって、会社をかたづけるというふうに広がっていくといいですよね。

本が人を変えるようにかたづけも人を変える


――ご著書もすでに15冊を超えていらっしゃって、中にはeブックも出されていますが、ご自身は電子書籍をご利用になりますか?


小松易氏: 紙の本はよく読むんですが、まだ電子書籍は、ほとんど利用していないですね。電子書籍になると、絶版がなくなるというメリットがありますよね。それと、かたづけの究極の形は、ドラえもんのポケットのように、欲しいものがいつでも手に入る状態だと思います。だから、いまあの本が読みたいと思った時に、それが電子書籍になっていると、買えばその場で見られるスピード感は大きな魅力ですね。本っていうのは2通りあって、もう読まなくてもそれを持っているだけで、その形や手触りがうれしい、気分がいいっていう本と、本の中身の情報に力づけられる本があると思うんですよね。そういう意味では、本が100パーセント電子書籍になることはないと思っていて、やっぱり紙の本は残ると思います。それでも電子書籍の良さは、この中の情報がスピーディーに早く得られることと、道具としての便利さだと思うんです。あくまでも本は道具で材料だと思うんですよね。

―― 材料というのは、どういった意味ですか?




小松易氏: 知識の宝庫としての本は材料と言って間違いない。でも宝はタンスの肥やしではなく生かさなきゃならない。だからある本に書いてある情報が、自分の次の講演に生かされて、それがまた全然知らない、例えば富山県の仲間たちにしゃべった話をたまたま高校生がそれを聞いて、かたづけってすごいんだということが伝わって、自分もかたづけ士になるという影響を与える。私のアイルランドの経験をいまだに話せることは面白いし、経験することのすごさや実行することで変わるということが、パズルのピースのように生かせることじゃないと意味がない。だから、持っているだけで心癒やされる本も素晴らしいと思いますけれども、やっぱり基本は中身だと思います。情報の流通が速くなって、誰もが手に入れられて、しかも古い本が残り続ける電子書籍は素晴らしいと思いますね。

――小松さんが影響を受けた本というのはありますか?


小松易氏: 私は、大学受験の時、1浪したんですが、受験の前日に、英語の勉強だと思って『英語の発想』っていう講談社新書の名著を読み始めてしまって、もう面白くて止まりませんでした。テストに出ないんですが、初めて英語がわかったという感動がありました。それぐらい面白かった本なんですよね。起業で支えられたのは、トム・ピーターズの『トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦〈1〉ブランド人になれ!』という本です。時間がない時は、妻に読んでもらって付せんを立ててもらうこともよくあります。そこから私も読み出して、そこを起点に全部読んだりそこだけ読んだりと、共同読みしています。

―― 同じ本を奥さまと一緒にお読みになるんですか?


小松易氏: きっかけは、このトム・ピーターズの本なんです。起業したころに買って、明日これ絶対読もうと思って机の上に置いていたら、朝早く起きた妻がそれを持って会社に行こうとしたんです。珍しく怒ってしまって。そうしたら、彼女がすごくショボンとしたので、「じゃあいいよ」って持たせたら、帰ってきた時妻が付せんを付けてくれて、「こことここがあなたの仕事に役立つポイントだから」って渡された瞬間に、本は一人で読まなくてもいいと思ったんですよね。

――かたづけと本との関係はどうですか?


小松易氏: 「断捨離」のやましたひでこさんと一緒に仕事をさせていただいたり、かたづけコンサルタントのこんまり(近藤麻里恵)さんと親しくいただいて、かたづけのネットワークが広がって、かたづけという手法が大事なこととして認知されていくのは、やっぱり本がきっかけです。書店に行くとかたづけの本があることで、かたづけが認知されるので、本の役割は大きいですね。やましたさんも、こんまりさんもそれぞれ女性を中心に幅広く展開されています。私はといえば、最近は学校と会社を中心に展開しています。そうするとかたづけは地域貢献であり、日本を元気にするものになるのではないかと考えています。

――次のかたづけは誰を対象にしますか?


小松易氏: 実はいま、学校の先生向けの本を制作中なんです。先生は生徒に、「かたづけなさい」「掃除をしなさい」と言いながら、自分たちの職員室は、おそらくかたづけいていないですよね。この矛盾はもちろん学校全体の問題でもあるので、いま先生に対して始めた研修を、会社の中でのプロジェクトとして継続的にできればと思います。先生がまずできるようになって、生徒に私が教えているような授業をやってもらっても面白いですね。まず先生自身の身の回りのことから始めて、次に、生徒へのかたづけの授業についても、私が行っている授業の内容も少し盛り込んで書きます。この本を出すことには、とても大きな意味があると思っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 小松易

この著者のタグ: 『海外』 『行動』 『教育』 『言葉』 『子供』 『留学』 『きっかけ』 『片付け』 『サポート』 『授業』

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