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世界中の本好きのために

遠藤功

Profile

1956年生まれ。早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機株式会社、米系戦略コンサルティング会社を経て、現職に至る。早稲田大学ビジネススクールでは、経営戦略論、オペレーション戦略論を担当し、現場力の実践的研究を行っている。 また、欧州系最大の戦略コンサルティング・ファームであるローランド・ベルガーの日本法人会長として、経営コンサルティングにも従事。戦略策定のみならず実行支援を伴った「結果の出る」コンサルティングとして高い評価を得ている。カラーズ・ビジネス・カレッジ学長。中国・長江商学院客員教授。株式会社良品計画社外取締役。

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現場は決して神聖なものではない


――最初は三菱電機のほうで10年ほど勤められたということですが、そのころの経験で何か今に活かされていることというのはありますか?


遠藤功氏: サラリーマン時代は会社の歯車だったので、コンサルタントとして見る現場と、現場の当事者として見る現場は全然違いますね。ただやはり、私自身の現場経験があるから問題が分かるけれど、現場経験がないと、ピンとこないとは思います。私は現場がどんなことを考えて、何に悩んでいて、どんなことが大変なのかということが分かる。だから決して現場に引っ張られることもなく、問題を客観的に見られるわけですから。

――あくまで客観的に見るわけですね。


遠藤功氏: 私は別に現場主義者ではないですからね。現場というものは時にはずるいし、時には惰性が流れているし決して神聖なものではないんです。それが現場なんです。だから私は別に現場を神格化しようなんて全然思っていない。ただ「すごい」現場もあるわけです。だから、現場は時にすごくもなるし、堕落もする。そういうことを分かっているからこそ、それなりの距離感を保てるわけですね。

電子で読むか、紙で読むか、それは習慣の問題


――遠藤さんは電子媒体を使って本や新聞を読まれることはありますか?


遠藤功氏: Kindleは買いたいなと思っています。本を読むのは好きだけれど、何冊も持ち歩くのは難しいから。新聞は家で読むのが習慣になっているから、わざわざ電子化しなくても家でペラペラめくっていれば済む。私が朝起きて最初にすることは、紙の新聞を読むことだから、それは多分変わらないだろうと思います。だから若い人で今まで日経を読んだことがない人が最初から電子版を読むという感覚はよく分かりますね。

――電子化が悪いとかいう意味ではなくて、習慣の問題なのですね。


遠藤功氏: 読むことが重要なので、それが紙でも電子媒体でもいいわけです。「ちゃんと日経ぐらい読んでね」ということなので、電子が好きな人はそうやって読めばいい。書籍の携帯性を考えると、やはりKindleを1回試してみようと思いますね。

Amazonは日本企業以上に「現場」を重んじる企業


――今はiPadなど電子デバイスがたくさんありますが、Kindleを選ばれるのはなぜでしょうか?


遠藤功氏: Amazonという会社に興味があるんです。以前に、Amazonのイベントに呼ばれたことがあって。Amazonはアメリカの会社なのですが、今どきあんなに現場を大切にする会社は珍しい。日本の会社もお手本にしてもいいくらいですね。ジェフ・ベゾス(Amazonの創設者)というのはいろいろなことを日本から学んでいる。どんどん日本流のやり方を入れてそれをAmazon流に変えていっている会社なので、あそこでは「現場」という言葉が全部通じるんです。ベゾスも「Gemba」という日本語を使っているんです。Amazonは日本の会社が忘れてしまったような、例えば「カイゼン」なんかも一生懸命やっているし、当然「見える化」もやっている。とにかくいろいろなことを日本の会社以上に一生懸命やっていますね。

――日本の企業ですらやらないことにも取り組んでいるんですね。


遠藤功氏: CEO自身が自分で「Gemba」という言葉を使って、それがそのまま定着しているアメリカの会社は珍しいですよね。ベゾスはすごい。「これは素晴らしいことだから私たちは学ばなければいけない」という風にCEOが本気で思っているから、ほかの会社とは力の入り方が違う。そういう会社では様々な取り組みが根付くと思います。

――そこがうまくいく会社とうまくいかない会社の違いなのですね。


遠藤功氏: 「現場力」はボトムアップだけども、ボトムアップはトップダウンからしか生まれない。だからトップが本気にならないとボトムアップは生まれてこないわけです。特に日本の会社の場合はサラリーマン社長だから、社長がどんどん代わるでしょう。ベゾスの場合は創業者だから、それが会社の思想として根付いている。AmazonというのはKindleとかITの分野は確かにすごいけれども、決してITだけの会社ではない。そういった意味でも非常にオペレーションの強い、現場がしっかりした会社です。

変化の激しい時代でも、普遍的なことはある


――「気づいているけれどもやらない」というのは、どうしてなのでしょうか?


遠藤功氏: 頭の中では分かっているけれど、行動が伴わないということは「分かっていない」ということなんですね。本当に分かっていたら行動するはずですから。分かった気になっているというだけなんじゃないかな。やるというよりも、やり続けられるかどうか。続けられるかどうかですよ。継続性とか持続性が多分一番重要ですね。

――「継続は力なり」という言葉もありますね。


遠藤功氏: 最近は特にそうですね。これだけ変化が激しいから「変わっていくのが当たり前だ」と思ってしまうけれども、逆に変わってはいけないものも必ずある。変わってはいけないことを愚直にできるかどうかが実は重要なんです。

――普遍的なものは必ずあるのですね。


遠藤功氏: 普遍的なもので差がつくんです。当たり前のことが当たり前にできるかどうかが実はすごく大きな差で、目に見えるようなところで差がつかなくなってきていますね。

毎朝1時間半新聞を隅から隅まで読めばほかの情報はほとんどいらない



遠藤功氏: 私は毎朝新聞を丹念に読みます。隅から隅まで(笑)、全部読みますよ。食事しながらでも必ず読む。後でまた細かく読まなければいけないところは別にして、トータルすれば1時間から1時間半は読んでいますね。だって、それだけやれば今知っておかなければいけないビジネスに関する情報は凝縮されているからです。毎日そうやっていれば、世の中のことはだいたい分かる。私の場合はもう習慣になっています。

――その習慣がついたのは、就職されてからですか?




遠藤功氏: コンサルタントになって、いろいろな業界とお付き合いをするようになってからです。それまでは自分の興味のあるところしか見ていなかったけれど、明日どの業界の人と付き合うか分からないわけだから、いろいろなことを知っていないといけない。当然政治的な話もそうだし、経営者の方とお会いすることも多い。そうすると新聞を隅から隅まで読んでいないといけないんです。自分の「引き出し」を増やすしかないですから。直接役に立たなくてもいつかは役に立つわけだし、世の中のメカニズムはすべてつながっている。例えば産業と金融はつながっているし、政治と経済もつながっている。「だからここの部分だけ知っていればいいや」という話ではないんですよ。

――コンサルティングを始められた時に、ものの見方や仕事に関する意識の変化があったのですか?


遠藤功氏: そうですね。一流の会社の社長と話す時に、彼らは話の間口はとても広いわけです。いろいろな球が飛んでくるから、いろいろなことを知っていないと投げ返せない。その時々に本を読めばいいという話ではなくて、やはり毎日自分で情報にアンテナを張って興味を持つことが大切なんです。いろいろなことに好奇心を持つということが重要で、「自分はこれにしか興味がありません」というのであれば、それはいいコンサルタントには絶対なれないと思います。

――いろいろなところに「引き出し」を持つということですね。


遠藤功氏: すべてのことはつながっているからですね。「製造業だからサービス業は関係ありません」とか「流通業は関係ありません」とか、ましてや「金融業は関係ありません」なんてありえない。全部経済活動という中ではつながっているし、その隣には政治がある。そうすると世界で何が起きているかということに対して興味を持つべきですよね。「自分はこれだけしか興味ありません、これだけ知っていればいいんです」というのでは、その他大勢の人と一緒です。だから自分が違う人間になりたいと思ったら、もっともっと視野を広げて興味を持たないと。

著書一覧『 遠藤功

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