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世界中の本好きのために

尾崎哲夫

Profile

1953年、大阪豊中市生まれ。18歳まで関西で過ごす。早稲田大学法学部卒業。早稲田大学大学院アジア太平洋研究科国際関係専攻修了。松下電送機器を経て、代々木ゼミナール、帝京大学、明海大学、関西大学、同志社大学、追手門学院大学の各講師、関西外国語大学短期大学部教授、近畿大学経済学部教授などを歴任。近畿大学経済学部教授を経て、オーストラリアに14ヶ月、米国に9ヶ月で在外研究をする。米国ではLewis and Clark 法科大学院に留学。現在、フリーランスで研究執筆中。田舎ぐらしをするために宮崎に移住し、永住の予定。

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自分の本は自分で売り、タイトルにもこだわった


――本が売れた背景には、良き編集者がいたんですね。


尾崎哲夫氏: もう一つ。私は営業の尾崎と言われたぐらいで、日本全国といっていいくらい、もう延べ数千件以上、営業したんです。いっときはものすごく有名で、本屋に行けば尾崎とバッティングする、と言われるぐらい。私は松下電送に勤めたこともあり、飛び込み営業の経験もありまして、それが著者として売れ筋を探すことに役立ちました。出版社も私の営業を知っていましたから「尾崎に書かせよう」という大きなエンジンになりましたね。すさまじいエネルギーでやりました。それを知らない方は「なぜ尾崎の本ばかり出るんだ。あいつは運がいい」とおっしゃいますが、200冊出たのは、運だけではないと思っています。

――売るためにどういったことを工夫されましたか?


尾崎哲夫氏: タイトルにこだわりました。『10時間で英語が話せる』、『10時間で英語が読める』など言い切りのタイトル。『私の英単語帳を公開します!』や『英語「超基本」を一日30分』など。タイトルを考える時は、いつもまっすぐ考えるんです。一日に30分ぐらいしかできないだろうなと。読者のことを考えて、そのままタイトルにしていくんです。タイトルで随分当たりました。あと、ある出版社の社長に言われたことがありますが、表紙が売れ行きの半分ぐらいを左右する。ですから、編集者とのタッグで、センスの悪い人と組むとつらいと。私も絵は下手ですが、センスのない編集者が選んだデザイナーで、ひどいものができると売れない。売れる本を作るには、タイトル、表紙、編集者、そして、猿まねしないことが大事です。

――似たようなタイトルの本が、今、新書などでありますが、今の本と昔の本、こんなところが変わったな、というのはありますか?




尾崎哲夫氏: まねっこが多いというのはありますね。例えば、ある種のスタイルの英語本が出ると、それが売れ筋と考えて同じような類書をこぞって出していく。売れた本には理由があるだろうけれども、それを二番せんじ三番せんじしても売れるわけでもないのに・・・。売れたものはいいものだという、出版社は実績主義です。新しく分析していくことは少ないんですね。本の外見でいえば、昔はボックスに入っていた本が、ボックスが外されている。ハードカバーも少なくなってソフトカバーが多くなった。それから、インターネットに対抗するため、値段が安くて手ごろな新書が売れているというのはあると思います。文庫はやや小さすぎるので、新書文庫がインターネットの時代にも残りやすいと。だからこぞって新書が出てきまして、岩波や角川も2種類出すとか、新書戦争の時代ですね。

――尾崎さんご自身は、本をどのように買われますか?


尾崎哲夫氏: 本屋さんに行くのと、Amazonで探して買いますね。コメントの数の多いものに狙いをつけて、良ければ同一筆者の本を2、3冊買うとか。やはり、40、50コメントが集中している本はそれなりに値打ちがある。コメント内容はともかく、注目されている本には、いい本が多いですね。

――本の一つの指標になるわけですね。


尾崎哲夫氏: なりますね。全部が全部ではないけれども。あれは画期的ですよね。

――書く際には気になってしまうものですか?


尾崎哲夫氏: いや、参考になりますよ。レビューを書く人は、ごく普通の読者すべてを代表しているわけではなく、マニアックだったり、きちっと文章が書ける人とか、時間があるとか、そういう方なので。良かれ悪しかれセミプロっぽい方もいらっしゃるので、そういう頭で見ています。

執念の筆者と言われた時代も・・・


――これから、何か新しく書こうと思うようなテーマはありますか?


尾崎哲夫氏: 一つはですね、「小学生の英語」というのは企画に出してはいます。要するに、小学校に英語が導入されて、早期英語教育が叫ばれていますが、意外と書籍としては出ていない面がありまして。私の娘が11歳で小学校5年生ですが、英語でドラえもんのシリーズとか、小学館などから出ていますよね。売れる本としては、ありかなと。ただ、世の中のお役に立つのに、私のオリジナリティーが発揮できるものではないんですが・・・。私のオリジナリティーを発揮するものはですね、今持っている種は出版にならないような種だったりするので。例えば「知的財産と英語」とか、難しい、読者が薄いというので企画が通らないですね。

――出したとしても小ロット生産になると、コストと見合わないという理由もあるのでしょうか。絶対数の分母が少ない読者に向けて出すことが、紙では難しい。そういう本は、電子出版もありかもしれないですね。


尾崎哲夫氏: 友達の一部からは、尾崎はIT音痴だけれど、もうそろそろ紙から出て、少し考え方を変えろと言われていますね。あとは、法律と英語とかですね、その辺のクロスしたものを書きたいな、と思っています。

――冒頭の話の中で、オーストラリアから米国、宮崎という風に移り住んだとお話いただきましたが、どういった理由ですか?


尾崎哲夫氏: 田舎が好きなので、いつも中堅都市か田舎に住んでいました。オーストラリアではタウンズビルとタスマニア。米国ではオレゴン州のポートランドという中堅都市におりまして。宮崎を選んだのは、十数年前に故あって佐賀県に1年間滞在したことがあったんです。その時に、年を取ってリタイアしてから田舎暮らしをするなら九州のどこがいいか考えた。で、宮崎が一番いいと、その時思ったんです。田舎だし南国で、居心地がいいだろうと。ですから、縁があったわけではないんです。

――では、ご自身で選んで決められたんですね。


尾崎哲夫氏: 人情というか、県民性というか、そういうものを気にしていました。いずれ将来は、アイルランドに行ったりしたいなと思いますね。

――英語と法律の二本柱だけでなく、こういった例えば場所を変えて生活することについての本とか、そういうのもすごく面白いなと思うんですが。


尾崎哲夫氏: それはまさにポイントで、場所を変えて住むというテーマは、読みたい人はいると思います。でも、一番売れるのは、10時間で英語が話せる、英検に合格するとか、民法がわかるとか、ダイエットができるとか、そういう実用書なんですよね。ズバッと切実なモチベーションに訴える。住む場所を変えるというのは、ダイエットや、来月新婚旅行に行くのに英語が話せないとかっこ悪いとか、そういう今日明日のモチベーションではないので。読者としても、もらったら読んでもいいけど、わざわざ買うか、というところがありますね。赤川次郎などの有名作家と違って、私の場合、尾崎哲夫の本をいつも狙っている人がいるのではなく、本屋で見つけてわかりやすそうだから買ったら尾崎という人が書いた本だったと。実用書の読者は、そういう淡い読者なんです。わかりやすいからもう一回買う、2冊3冊買う、という程度なんです。ファンというより、法律ならあいつだ、という程度の。司馬遼太郎クラスでしたら、自分の本領以外のものを書いても売れますけれどね。

――200冊もの本を出版する原動力となった、幼少時代の読書体験をお聞かせいただけますか?


尾崎哲夫氏: 中学時代は『赤毛のアン』とかなんだかんだ、高校時代は世界文学全集など、男の子としては相当読むほうだったと思います。高校では文芸部を私が作って部長になって、小説まがいのものも書いていました。高校までは小説家希望でしたから。それで、大学に入る時に文学部か法学部か迷っていたら、おじたちが、法学部でも小説は書けるだろうと。文学部だと就職が悪いし、法学部ならサラリーマンにでもなれるから、というので法学部を選んだといういきさつです。文学部に行きたかったけれど、就職のことを考えて法学部を選んだ人はクラスに1割ぐらいはいました。本を出版したのは、ものを書きたい、表現したい気持ちが人並み以上にあって取り組み始めたからです。特に法律に関しては、啓発精神も動機になりましたし、ここまで来たらとにかく、日本一じゃないけれども、書けるだけ書いてやろうと、そういう野心みたいなものもあったし、書き始めると止まらないというのも本当にあったし。で、200冊書いた。執念の筆者と言われて、すごい時代はありましたね。麻薬みたいなもんで、書いていないと落ち着かない。癖になっちゃうんですよね。

本は、人生で一番大事なもの


――今まで読んだ本の中で、印象に残る本はありますか?


尾崎哲夫氏: 単純に懐かしい思いがこみ上げてくる本は、『赤毛のアン』(講談社)と『走れメロス』(新潮社)。子供のころに読んで。その後さまざまな本に遭遇しましたが1冊に絞りきれないので、少し幼稚ですけど。普遍的な友情や信頼が、よく描かれていると思います。本ではありませんが、私は映画の『アラバマ物語』(米国・1962年製作)がすごく好きなんです。主演はグレゴリー・ペック。南部の差別と闘う正義の弁護士パパ、アティカス・フィンチの物語。うちと同じ父子家庭で、成長した娘が当時の出来事を回想して物語が進みます。戦後、ハリウッドでさまざまな映画が製作されて、いろんなヒーローが出てきました。「戦後のハリウッド映画で一番のヒーローは誰ですか」というアンケートをハリウッドが行ったことがあったんです。1位は、2位のスーパーマンを抑えて『アラバマ物語』の弁護士アティカス・フィンチでした。この弁護士が、アメリカ人の心に残る理想の男なんです。これは、知る人ぞ知る名画です。

――では、最後の質問にさせていただきますが、先生にとって本は、どういう存在ですか?


尾崎哲夫氏: 単純に読書は一番の趣味だし、人生で一番大事なものの一つ。書き手としては、それが人生のすべて。本当に、私にとって本は、人生最大のものだと思います。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 尾崎哲夫

この著者のタグ: 『英語』 『作家』 『営業』 『法律』 『タイトル』 『まっすぐ』 『センス』 『田舎』

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