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世界中の本好きのために

三谷宏治

Profile

1964年大阪生れ、福井で育つ。東京大学理学部物理学科卒業後、BCG、アクセンチュアで19年半、経営コンサルタントとして働く。92年 INSEAD MBA修了。2003年から06年 アクセンチュア 戦略グループ統括 エグゼクティブ・パートナー。2006年からは特に子ども・親・教員を対象にした教育活動に専念。全国をとびまわり年間数千人に講義・講演を行う。2011年の『一瞬で大切なことを伝える技術』は4万部を超えるヒットになった。妻、3人娘と東京・世田谷区在住。早稲田大学ビジネススクール、グロービス経営大学院 客員教授。放課後NPO アフタースクール 理事、NPO法人 3keys 理事、永平寺ふるさと大使なども務める。

Book Information

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執筆するのはいつも自宅。完ぺきな環境をデスクにととのえる


――続いて執筆スタイルについてもお伺いできればと思います。普段の執筆される場所で、特定の場所はあるんですか?


三谷宏治氏: もう100%自分の書斎ですね。昔からそうです。自分の書斎が一番快適につくってあります。だからそこでやるのが当然です。

――書斎はどのようなお部屋ですか?


三谷宏治氏: まず、机が大きい。普通の机じゃなくて通販で安いキッチンテーブルを買いました。だから幅160cm、奥行き80cmもある大きな机なんです。それだけで便利なんですよね。ガンガン本を積んで、21.5インチの液晶ディスプレイが2つ並んでいて、完ぺきなオーディオ環境がある(笑)。高性能のパソコンがあって、まったくストレスフリーだし、南側の部屋で、正面と左右に窓。左右の壁は窓のほかは全面上から下まで全部本棚です。自分が買ってきた本で主要なものや、自分が面白いと思ったものが開架されているんです。電子デバイスの中に入っていてもいいんですけれど、ただ、刺激にはならないですよね。でも、それも数年もすれば、壁一面がディスプレイになって、バーッと、「あなたが持っている本」みたいな感じで全面に出ますとかになったら、変わると思いますけどね。そこで、本棚を見ながら、「ああ、こんなネタもあるかな」とか、パソコンで簡単に物事が調べられて、同時に刺激が受けられるという環境にしています。

――その書斎をつくられてからは長いんですか?


三谷宏治氏: そうですね。娘が3人いるんですけど、親子5人でずっと3LDKのマンションに住んでいて、夫婦の寝室があって、家で一番いい南側の部屋はお父さんの書斎(笑)。子どもたちは3人で5畳半ぐらいのところにずっと住んでいましたよ。「お父さんの仕事が絶対なんだ」と、「それは仕事をする場所なんだから一番大事なことだ」としていましたね。子どもたちのためにそれを明け渡すなどありえないですし、そんなことは議論にものぼってこなかったですよ。なんせ「お手伝い至上主義」ですから(笑)

――人がなかなか本を読まなくなったとか、そういったこともいわれますが、家庭にそういった場所というのは大事でしょうか?


三谷宏治氏: 弟が近くに住んでいて、マンションをリフォームするというので、「私にやらせて」といったんです(笑)。間取り案でやりたいことがあったんです。廊下とそこにつながるベッドルーム3つにあったデッドスペースを寄せ集めて2畳分の中間の部屋をつくって、そこに薄い本棚をできるだけ造り込みました。みんなの本が置ける場所です。お父さんの本もあれば、お兄ちゃんの本も、妹の本もある、お母さんの本もあるっていう「わが家の図書室」なんですよ。だから、お互いが何を読んでいるかわかる。子どもが親の本を読むこともできる。本と親しむみたいな場所が家庭にあるっていうのは、とても大事だと思います。

電子でも紙でも、一番大切なのは「文字を読むこと」



――電子書籍のお話をさせていただきたいと思います。三谷さんは電子書籍のご利用ってされていますか?


三谷宏治氏: 基本的には、今はしていません。いくつか興味があったので買ったのは、科学雑誌の『ニュートン』が安く出したので、試しに使ってみようと思って買いました。あと、村上龍さんが出された『歌うクジラ』もすごく面白そうだったので買いました。あの音が入っての新しい表現、本とは呼べないようなレベルのものができるんだったら、価値があると思いますね。

――新しい表現としての電子書籍ですね。


三谷宏治氏: 私は、リアルな本の感触も重さも好きですが、ただ一番大事なのは、文字を読むことです。人間の脳の発達上でいえば、文字を読むことってものすごく重要なんです。文字を読むことは、図形の認識から始まって、図形から意味が出てきて、その意味を組み合わせてはじめて頭の中で意味がわかる。だから頭の中のいろんな分野を使う。人間の特性って、色々なものを組み合わせることなんです。人間というか今のホモ・サピエンス・サピエンス、現人類の最大の特徴はそれなんですよね。脳の機能1個1個、つまり見るだけとか話すだけではなく、連合野というんですけど、「つなげる」という部分がすごく大きくて、その力が今の人間を成り立たせています。そしてそれは文字を読むことにおいて、最大限に発揮される。なので、文字を読むことは訓練上も、とっても大事なんです。だからそれからいえば電子書籍であろうが紙であろうがどっちでもいい。

――本質は文字を読むことなんですね。


三谷宏治氏: そうです。ただ、最初に話していた「体感」も大事だと思うので、紙の本っていいよねって思っています。装丁も美しいし、紙質も活字もひとつひとつオリジナリティがある。そういったことが、人の五感を刺激し、色んなことを「つなげ」させるのです。もちろん、スペースの問題もあるし、電子化されていれば中身の検索も簡単なので、私にとっては電子化されているっていうのはとっても意味があるなと思いますよね。一番良いのは紙の本に電子データがついてくるハイブリッド型かな。

――教育者の立場としての、電子書籍に対して何か思うところはありますか?


三谷宏治氏: 私は、そんなには何かが変わると思っていません。iPadを子どもたちに配って「みんなが使っています」とか、そんなのは当たり前。とても簡単に使えるようにもともと作っているわけじゃないですか。だから、私は逆に、みんなにお願いしたいのは、「もうちょっと使いにくくしてくれ」ということです。使うのが簡単だからみんなに広まるのかもしれないけど、それによって子どもたちがどうなっていくかというと、クリックして動かないと飽きちゃうんですよ。でも例えばリアルなブロックだったら、もっと色々なやり方があるから、こっちはどうだ、あっちはどうだって色々考えて挑戦するじゃないですか。けど、あまりに簡単なことに慣れてしまっていると、動かなかったときに、即興味を失っちゃう。そうすると、本当に反応が単純になるんですよね。だから操作をもっと難しく、楽しくしてほしい。これから子どもたちが手にいれなくちゃいけないことは、情報をうまく探す力ではなくて、「考える力」だし、その中でも「色々と試行錯誤する力」です。だから、わかりやすさに走るだけじゃなくて、もっと子どもたちの試行錯誤能力を引き出すものを作ってほしいですね。

たくさんの人に本でリアルな感覚を伝えていきたい



――では最後に、今後の活動などを教えていただけますか?


三谷宏治氏: 2006年にアクセンチュアを、コンサルタントをやめて、それから約6年間、平均年1冊ぐらいのペースで書いていたのが、2011年には4冊出版されました。2012年は2冊出し、2013年は3冊出版の予定が決まっています。だんだん本当の作家さんたちみたいになってきたぞ、という感じです。私は「本」というのは、私は本当に稀少で特別な手段だと思っています。先ほどの体感ということも含めて、リアルなものをどれだけ伝えられるか、読者に試行錯誤をどれだけさせられるかに、チャレンジしています。リアルにちゃんと接することができるのは、どんなに頑張っても1年に数千人です。けれども本は、うまくいけば何万人何十万人という人にものごとを伝えられる。講演だと1時間だけれど、本だったら何時間も考えてもらえる。だから、多くの人たちに、何回も読み返してもらえるような、本当に役に立ったなと思えるような本を書き続けていきたいと思っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 三谷宏治

この著者のタグ: 『コミュニケーション』 『考え方』 『教育』 『子ども』 『本屋』 『書店』 『知識』 『経験』 『発想力』

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