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世界中の本好きのために

井上孝司

Profile

1966年生まれ、静岡県出身。マイクロソフト株式会社などを経て、1999年春に独立。当初はIT関連分野で書籍・雑誌記事などの執筆からスタート、さらにIT教育分野や航空戦ゲームソフトの監修などにも進出。その後、『戦うコンピュータ』(毎日コミュニケーションズ、現マイナビ)の刊行をきっかけにして航空・軍事分野に進出、さらに「エアワールド」「Jwings」「航空ファン」「航空情報」「丸」「軍事研究」など各誌で執筆活動を展開中。近著に『現代ミリタリー・ロジスティクス入門―軍事作戦を支える人・モノ・仕事』(潮書房光人社)がある。

Book Information

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インカムが入る仕組みづくりの必要性


――読者の方が、住居のスペースに限りがあるため、本を裁断、スキャンして電子化するということについてはどのように思われますか?


井上孝司氏: 電子化は絶対嫌だということは全然ないですし、抵抗はないです。ただ電子化でコピーが広まることで、自分のインカムが減るとかということになったら、それは大問題ですね。そういうことさえなければ私は紙でも電子でも、読みたい方が使い分けていただければいいと思っています。人にはやっぱり好みがありますから。「紙の方がいい」という人もいるでしょうし、「電子の方が、スマートフォンで読めて楽じゃん」という人もいらっしゃるでしょうし、それはもう人それぞれだと思うんですよ。

――使い分けが大事ということですよね。


井上孝司氏: そうなんですよね。人によってそれぞれ状況が違うでしょうから。私のような仕事をしていますと通勤がないので、通勤中に電車の中で読みたいというニーズがないんですよ。そういう意味では、1時間、2時間かけて電車で通勤をしている方は全然事情が違うかと思います。ただ、書き手に対してきちっとインカムが入るような仕組みだけは維持してもらえればなあ、というのは物書きとしての正直なところですよね。

――読み終わった本は古本屋さんなどに売られてしまった場合に、著者に対する利益というのは全くない状況ですが、電子化においては、著者になんらか還元できるようなシステムが必要ですね。


井上孝司氏: 古本屋さんは、そこがつらいところですよね。電子化された場合、一冊ずつを追跡するのが大変かもしれないですね。出版元が一杯あって書き手がワンサカいる中で、流通する中古の本を一冊ずつトラックするって非常に大変な話になっちゃいますね。それこそロジスティックスの大問題で。

――井上さんは、電子書籍の利用はありますか?


井上孝司氏: 私の場合、書籍の場合には基本、紙なんですけれども、海外の軍事専門誌で、デジタル版で読んでいるのがあるという程度ですね。入手してくる資料がPDFということは、ままあります。

――それはパソコンで見られるんですか?


井上孝司氏: 電子雑誌のFujisan.co.jpってありますよね。あれと提携しているアメリカのジニオ・ドットコムというところなんでありますが、そのジニオが実にいろいろな雑誌をデジタル版で売っているんですよ。実のところ、紙より高いんですけれども。

――そうなんですか。購入したデータは何で閲覧されるんですか? 


井上孝司氏: だいたい、ノートPCがメインです。外で原稿を考える時は連れて歩いていますね。最終的に全部データを集約するのは、家のデスクトップです。電子版なので、新しい号が出るとダウンロードして読んでいます。電子版だと瞬時にして手に入りますが、週刊誌のスピードはそれぐらいでないといきないですよね。紙ですと、手元に届くまでに1週間くらいかかってしまうので、週刊だとその情報がもうセコンドハンドになりますから。やっぱり電子版の威力というのは、スピードという点で、存分に発揮されているという感じですね。

資料の電子化によって効率化された仕事


――資料が電子化されたことで、井上さんの仕事のスタイルは変わりましたか?


井上孝司氏: そうですね、例えば政府機関なんかが資料をPDFでまいてくれるようになったというのが一番うれしいですね。実際に今回、燃料の仕様書なんか、ずいぶんPDFでかき集めたものがあります。



――それまでは、そういう政府関係の発表資料というのは。どういった形で閲覧していたんですか?


井上孝司氏: 広報担当者からペーパーでもらってということになると思うんですよ。

――そうなるとコンタクトを取ってということから始めて、1週間はかかりますね。


井上孝司氏: 特に相手が海外なんかですと、送ってもらわないといけないですから時間がかかりますよね。だからコンタクトを取るのも大変、モノを手に入れるのも大変ですよね。そういう意味では、いまって公表できる資料がどんどんウェブで手に入るようになったので、やりやすくなった半面、専業の物書きとそうではない読者の境界がよくわからなくなって仕事が難しくなったこともありますね。同じ資料にみなさんアクセスできますから。

――だからこそ一般の方と見る資料は同じでも、井上さん独自の着眼点がいかされて、差別化が生まれてくるでしょうね。


井上孝司氏: そうですね。見方の解釈のところで差をつけるしかないという状況ですよね。

ひとつのきっかけではなく、小さな断片の積み重ねによる「いま」


――井上さん独自の視点というのは学生時代から培われてきたものかと思います。学生時代にはどんな本を読まれていたんですか?


井上孝司氏: 大学は工学部だったんですけれども、講義のない時間とか休講で空き時間ができた時は、図書館にこもっていたんですよ。大学の図書館の軍事系の本とか雑誌なんかずいぶん読みました。たまたま私が通っていた大学の図書館には、軍事関係の本が大量にあったんです。

――そこで素地が出来上がったんですね。


井上孝司氏: そうですね。あの頃読んだことで得た知識などが、いまでもけっこう効いていますね。1980年代、まだソビエト連邦なんていうものがあった時代です。ソ連の時の方が秘密主義だっただけに、何かチラッと断片が出て来るだけでオッと思わせるものがありましたね。

――学生時代に雑誌などいろいろと読まれている中で、衝撃を受けた本や、心に残った本はありますか?


井上孝司氏: そうですね、特にこれ一冊と言われるとあんまりないです。むしろ、細かい断片の積み重ねで来ているところもあります。だから何か一つで人生がコロッとひっくり返ったという意識はあまりないですね。私がこういった軍事系に興味を持ったきっかけとして、もっとさかのぼると、父が航空・鉄道・軍事系が好きだったんですね。だから家に戦史書なんかも山になって置かれていました。その辺りからなんですよね。同業者の方は似たようなケースが多いかもしれません。昭和30~40年代の本だと、いまになって手に入らないような本もありますね。

著書一覧『 井上孝司

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