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世界中の本好きのために

午堂登紀雄

Profile

1971年、岡山県生まれ。中央大学卒業後、会計事務所に就職。その後、大手流通企業のマーケティング部門を経て、世界的な経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。2004年に退社し独立。現在は、株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズの代表取締役として、個人投資家を対象に不動産投資コンサルティングを行うほか、数々の事業に出資する投資家としても活動。独自の投資理論と手法を駆使し、貯金70万円から、わずか1年で3億円の資産形成に成功。その体験をまとめた処女作『33歳で資産3億円をつくった私の方法』、続く『30代で差をつける「人生戦略」ノート』(いずれも三笠書房)はどちらもベストセラーになっている。

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本作りは共同作業。自分の原稿はどんどん手直ししてほしい。


――電子書籍のシェアが伸びていくことが予想されることもあって、本の作り方にも変化が出てくると思われますが、今後編集者や出版社に求められる役割はどのようなものでしょうか?


午堂登紀雄氏: やっぱり編集者はマーケッターであるべきだと思います。要するに、市場で今、どういう本が望まれているのかとか、どういうコンテンツが求められているのかを敏感にかぎとって、それを企画にして、適した人材に依頼するという。当然、著者の発掘もそうなんですが、まず企画があってこそですね。それから、私も色々な編集者と付き合って問題があると思うのが、編集者は本を作ることに一生懸命で、売ることは営業や取り次ぎ、書店にお任せっていうパターンがあるけれど、これじゃ駄目だと思っていて、やっぱり自分が作ったものは自分で売るというところまで面倒を見ないと、ますます本は売れなくなっていくと思います。だからそういう意味では、企画、著者の発掘、本作り、そして売るところまで一貫したマーケッターでないといけなくて、一般のビジネスパーソンよりも高いビジネスキルが要求されていくと思うんですね。逆に言うと、出版社の役割がもろく見えてくる。今であれば、紙の本って、1冊作るのに何千万のお金と、時間がかかる。そうすると個人ではなかなかできない。その資金的な手当てをする、広告を出したりするっていうのは、やっぱり出版社がお金を持っているからできるんですけども、逆に電子書籍になると、いらないじゃないですか。そうすると、出版社の役割って何だと。優秀な編集者と優秀な著者がいれば、販売のプラットフォームがあるから、誰でも本が出せる。出版社がある意味というのが見えなくなっている。例えば、ディスカヴァーみたいに取り次ぎを通さないで直販で売っているような所であれば、組織としての力が出てくるけども、取り次ぎに丸投げしている出版社は、出版社という器すらいらないという風向きが出てくるでしょうね。

――ご自分で本を書かれている中で、この編集者はよかった、悪かったとか、そのような違いはありますか?


午堂登紀雄氏: ありますね。私、個人的に好きなのは、自分が書いた原稿に、たくさん手を入れてくれる人ですよ。「こうした方が売れる」っていう、編集者の信念。例えば削るとか、順番を入れ替えるとか、あるいは、章ごと取って、「新しいものを書け」と言ってくるとか、そういう感じですね。逆に、出した原稿がそのままぺろっと本になると、「お前、仕事してねぇな」と思う。作品に手を入れられるのを嫌がる人もいるらしいんですが、私は逆だと思っていて、やっぱり本って、出版社にとっても、編集者にとっても、著者にとっても、商品なんですよね。だから、四の五の言う前に売れなきゃいけない。売れなきゃ誰もハッピーにならないので、やっぱり売れるものに仕上げるっていうのが編集者の役割ですよね。著者の勝手な思い込みとか、偏見とか独断で書いている文章を直していく必要があるんですよね。

自分に突っ込みを入れ、文章を磨き上げろ。


――出版不況と呼ばれる状況が続いていますが、売れる本、多くの読者に求められる本を作ることは、非常に難しいと感じます。抽象的な質問ですが、午堂さんにとって「よい本」とはどのような本なのでしょうか?


午堂登紀雄氏: そうですね。ベストセラーとロングセラーってやっぱり違うところがあって、ベストセラー、要するに初速がいいのは、やっぱりタイトルとか装丁っていうところが切り口になるんですけど、それがロングセラーになるには、やっぱり中身がよくないと長く売れないと思うんですよね。今って、ベストセラーを求めるじゃないですか。これでは皆疲弊するんですよ。コンビニの新商品と同じで、次を出していかないといけない。自転車操業なんですよね。パンと跳ね上がった後、じわじわと残っていく、っていう本作りが理想的だと思うんですよ。それはやっぱり、中身をちゃんと錬磨する、磨き上げるってことだと思うんですよ。とはいえ、そもそも手に取ってもらわなかったら話にならない。そういう意味では、「あおり」のようなものは当然必要だと思いますけどね。

――よい本を作るための磨き上げとして、論述を強くするというか、先ほど言われた独断や偏見を排すといったことが重要となりますが、執筆や編集の際に、その面で午堂さんが気をつけていることはありますか?


午堂登紀雄氏: やっぱり先回りして考えることですね。「こういうことを書いたら、読者からこう突っ込まれるな」というのがなんとなくわかってくるじゃないですか。そうすると、「じゃあこういうことも書かないといけない」という風になる。それは日常の中でも同じで、「こうやったら、きっとこう受け取られるだろうな」とか、先回りしてストーリーを考えようとするという習慣ができましたね。要するに、自分で突っ込みを入れる。これ、おかしいぞ、こういう意見もあるぞと突っ込む。そうするとあまり人から批判されない文章になりやすいっていう感じはしますね。自分の中に色々な自分を持つことで、自分の文章を作れるというか。

――いわばご自分を、その本の第一の読者にするということですね。


午堂登紀雄氏: 本を書くとき、本来は読者の目線に立って、読者の役に立つ本作りっていうのが王道なのかもしれないんですが、自分が何度でも読みたい本というスタンスで書いているんですね。後で読んだ時に「おお、割といいことを書いているな」と色々なフィードバックを受けるっていうのはすごく楽しい。これはお金には換算できない楽しみなので、続けていきたいなぁと思っていますね。

――そう言われれば、午堂さんの文章は、他者に対して押し付けがましい所が感じられないです。


午堂登紀雄氏: 読者も色々な人がいるので、押し付けると反感を買うんですよね。なので、「何々すべき」っていうのは極力使わないようにしているんですよ。自分の価値観の押し付けは、それは余計なお世話でしょってなっちゃうんで、「自分はこう思っている、あなたはどう思いますか」位の方がいいのかなって思っています。例えば、大前研一先生が言うんだったら分かりますよ。でもね、自分みたいな中途半端な人間が言うのはやっぱり難しいかなって思っています。自分は、読者を説得するつもりはなくって、気づいた人が動けばいいんじゃない、信じてくれる人が読んでくれればいいんじゃないっていうスタンスです。別にあなたがそれをやらなくても自分は困らないっていうくらい、ちょっと冷めたスタンスなので、読者から批判が来ても、あんまり気にならない。

意識を変える気づき。「会社は給料をもらって勉強できる」


――現在様々な事業を手がけられている午堂さんですが、ご苦労も多かったとお聞きしております。大学卒業後はフリーター生活をされていたそうですね。


午堂登紀雄氏: そうなんです。就職活動に乗り遅れて、就職できずに卒業してしまったんですよ。でも生活できないのでアルバイトをして、半年くらいで「これじゃまずい」と。で、たまたま大学時代に簿記の専門学校に行っていて、そこの専門学校主催の会計事務所就職フェアみたいなイベントがあって、それに行ったらいくつか「面接においで」と言われて、決まった会社へ入社したんですよ。そうしたら、いきなりミスを連発して。何度もチェックしても、何度も間違える。「お前、使えねぇな」って言われて、1年後、社長とか上司に呼ばれて、ほとんど追われるように辞めました。最終的には自主退職ですけど、まあクビみたいなものじゃないですか。その時は惨めで惨めでしょうがなかったですけど、その経験で、仕事を干されることのストレスがどんなものなのかって分かって、逆に仕事を辞めること自体は怖くなくなったっていうのはありますよね。「また就職活動をすればいい」みたいな感じで、割り切れたというか。でもそう思えたのはずいぶん後の話です。



――その後、コンビニチェーン店に入社された。


午堂登紀雄氏: そうですね。最初仕事をクビになって、「自分は社会人としてはもう駄目だ」と思ったんですよ。じゃあ何ができるかって、もうとりあえず能力がないんだったら、人より長い時間働くしかないと思って、とにかく長時間働こうと思ったんです。でもずっと長時間働いているとつらいので、どうやれば仕事を楽しめるか考えた。例えばコンビニの店員をやっていると、ピッてやって袋詰めするのなんて、つまらない。これをいかに速く、今日は何秒でやるかとか、ハンバーガーを短時間で何個作れるとかね、ソフトクリームを規定量で作る、みたいな感じで半分遊びみたいにやっていた感じですね。当時1996年くらいだと思うんですけど、コンビニがすごく増えていた時代だったんですね。どんどん新店ができていたから、先輩社員がほとんど新店の立ち上げに行っていて、自分が所属していた直営店は、ほったらかし状態だったんですよ。「勝手にやっとけ」みたいな。そうすると、本部の目が届かないから、あまり怒られない。ということは、実験できるぞっていうことに気が付いて、色々な商品を発注したりだとか、並べ方を変えてみたりだとか、ポップを付けてみたりだとか、色々なことをやったんですね。コンビニ業務って、翌日にはPOSデータで結果が出るので、よかった悪かったって全部分かるんですよ。それで自分の「引き出し」をたくさん作れたんですね。その後スーパーバイザーになると、加盟店にこれをやったらうまくいきますよって言ったら、ほんとにうまくいくんですよね。どんどん業績が上がっていった。コンビニの店長って、小さな会社の社長をみたいなもんですよね。アルバイトも面倒を見るし、予算も管理するし。「これってすごい」と思ったんですよ。会社って給料をもらいながら勉強できるパラダイスだという風に気が付いたんですね。「これはもう利用しないと損だろう」という感じに変わりました。それまでね、上司から振られてくる仕事をこなすだけっていうワーカーだったんですけど、それで意識が変わったというのが大きかったですね。

著書一覧『 午堂登紀雄

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