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世界中の本好きのために

原田武夫

Profile

東京大学法学部在学中に外交官試験に合格、外務省に外務公務員Ⅰ種職員として入省。12年間奉職し、アジア大洋州局北東アジア課課長補佐を最後に自主退職。「すべての日本人に“情報リテラシー”を!」という想いの下、情報リテラシー教育を展開。調査・分析レポートを執筆、国内企業等へのグローバル人財研修事業を全国で展開。学生に無償で「グローバル人財プレップ・スクール」を開講。国際会議「グローバル・エコノミック・シンポジウム 2011」にパネリストとして招待され、以降も我が国からの数少ない出席者の一人として参画している。最新著書は『ジャパン・シフト 仕掛けられたバブルが日本を襲う』(徳間書店)。
公式Webサイト
http://www.haradatakeo.com

Book Information

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価値観を共有するためには、言葉や本が必須


――日本語の意味、価値観を共有できるということが重要なんですね。


原田武夫氏: そうです。じゃあそれをどうやってやるかって言うと、言葉であり、本なんです。これ以外、伝達手段がないです。書くこと読むこと。ここに、今の日本人がどれくらい自信が持てるかなっていうと…(笑)。まだこれからですね。重要なのは統合なんです。今、色々なところで日本は分断されてるんですよ、地方と中央、あるいは富む者と富まない者、あるいは民族。日本は実はバラバラなんです。それを統合するためのファクターは何かというと、価値であり、意味であり、それを伝える言葉なんですよ。それをまやかしで操作できるものだと思って狙ってやるんじゃなくて、いまこの国は危機でしょうと心の底から入っていくものなんですよ。だからテレビを見ていると非常に違和感を覚えます。私はもうテレビを全然見てないですけど、揚げ足を取る様なことばかり言うわけです。そういうつまらないレベルの言葉じゃなくて、人生の命に裏付けされている「これをやらなくてどうするんですか」っていう言葉ですよね。それを綴った本を、たとえ部数が少なくても出しましょうという出版社、あるいは電子出版の媒体というのが、私は求められていると思いますね。

――ちょうどお伺いしようと思った質問の1つが、出版不況の中での出版社、編集者の役割はどんなところにあると思われますか?という質問でした。


原田武夫氏: 今、出版の中で政治の分野というと、出版社は政治家の後追いでゴースト・ライター付けてどうのこうのってなっちゃっているんです。それは違う、逆なんです。出版社が意味や価値を伝えることによって世の中が動いて、結果として筆者が政治家になっていくというのが本来あるべき形なんです。でも今は逆になっている。最初は売れてましたけれどね、あの『美しい国へ』とか。近頃も複数の政治家が本を出していましたけど「ん? どうなんだろう?」という本ばかりです。それは皆、マーケティングだからと思って出しているから。元来、本があるべき価値とか意味の伝達、「これしかないんだ」と勇気を出して、本の中で訴える、というのがなくなっちゃったんです。でももう読者は今世に出ているような本には乗ってこないと思うんです。筆者が本気で書いているかどうかだと思うんです。

「知」を波及するには、電子書籍は可能性がある


――電子書籍の質問をさせていただきたいんですけれども、電子書籍であれば部数によらずに発行できるという、物理的制約から解放される場合もあるかと思います。そういう意味での電子書籍の可能性というのはあると思われますか?


原田武夫氏: 「電子書籍がくると紙の書籍がなくなる」と言っている人がいると思うんですけど、逆だと思うんです。やっぱり電子書籍っていうのは非常に伝播しやすいですよね。「URLここです」っていったら、皆それをクリックすればそこに行けるわけですから。本が、「知」の独占というものに、非常になりにくい状況になっていると思うんです。だから、逆に言うと、本当に良いものは伝播しやすい状況になっているはずなんですよ。かつて大学のオープン・キャンパスとかやっていなかったときは、その大学に入らなければ、図書館にある本を読めなかったんです。「知」っていうのは、独占されるものだったんです。ところが今は、知は開放されているんです。だからそういう意味においては、本当に良いものは伝播される可能性が非常にありますので、電子出版になったらどうのこうのなんて言っている人たちは、本当の意味での価値とか意味を伝えてない、自信がない、あるいは確信犯的にそうではないものを作ってきた人たちなんでしょう。だから困るんです。だって必要なのは媒体が云々じゃないんです。中身、メッセージなんですよ。それによって読んでいるその人の人生を変えられるかどうかなんです。



――それが紙であろうと電子であろうと関係ないですか?


原田武夫氏: 関係ないです。パソコンがないときにも読みたいなと思ったら、それは本を買うでしょうし。iPadとかで、いつも自分は何かを見ながらでも、常に読みたいと思う人は電子書籍にするでしょうし。ただそれだけの話ですね。

――原田さんの書籍を、読者の方が裁断、スキャンして電子化して手元に残しておきたいと思うことについてはどう思われますか?


原田武夫氏: 私は私の発してる言葉と、私の書いてる言葉だけで勝負してるわけです。まだ完全なものではありませんけれども先ほど言ったような意味、価値、そういうものを感じて読んでくださっている方というのがいらっしゃることはありがたいです。私の読者の方々とたまにお会いすることがあると、私がお伝えしたいことが届いているな、と感じます。たとえ会ったことがなくても伝わっている。電子書籍とかだと、読んでる最中にFacebook開いて、皆さん友達申請してくるわけですよ。そうすると、よりリアルの世界でつながっていくっていうのは面白いですね。だから書籍を読んで講演会に行くっていうのと同じですよね。電子上でリアル・タイムな関係性を作っていくっていう。それは色んな手段があって良い。でも重要なのは、サンマルコ修道院で読まれていたような羊皮紙の本。あれは2000年くらい前の本を読んでいる可能性があるわけですよね、毎日毎日。私はそういうものをいつか書きたいなと思っているので、仮に読者の方々が、そうやって手元に残したいと大切に扱ってくださっているのは非常にうれしい話ですよね。元来、私が本を書こうと思っていたその目的に非常に合致しています。

――ご自身の本が裁断されるという点について、心境的にはいかがですか?


原田武夫氏: 先ほど話したワイマール憲法の話と同じですね。ワイマール憲法っていうのを、金科玉条のごとく守っていたならば、もう政治は立ち行かない。国が倒れると思った時に合法性、すなわち、明文の憲法を越えたところの行動を政治に許す。でもそれはこの憲法の精神、根本的になぜ憲法が作られたのかっていう精神の部分に乗っ取っているからだって言うと、それに対して本を裁断するのが嫌とおっしゃるような方は、これは憲法違反だって多分言うんですよ。でも今のままでは絶対に成り行かない様な状況になった時に本当に重要なのは、言葉の持っている意味であり価値なんです。だから今は大きな分岐点なんじゃないでしょうか。

世界は日本人に期待をしている


――今後の取り組みや展望を、最後にメッセージとしてお伺いできればと思います。


原田武夫氏: 価値、意味を伝えるっていうことで、今一番足りないのは、世界が求めているにも関わらず、日本人が日本人の価値、意味というのを伝えていないとこだと思うんです。日本人が何を考えているのか、何を価値としているのかを伝えていない。江戸時代に海外から、列強が来て、ヨーロッパ人、アメリカ人たちが驚いたのは、何でこの江戸時代の日本人はみんな幸せそうなんだろうということだった。いがみ合って、競争してぐちゃぐちゃになっている今の世の中を、誰が、どういう価値観で、どういう意味を持って、再統合するのか。そこで、これまで最も沈黙を保ってきた日本人に、今最も期待がかかってるわけです。重要なのは、世界が求めている日本人が持ち担ってきた価値、あるいはその意味というのを、われわれが世界に対してどうやって伝えていくのか。私はこの橋渡しをしたいなと思っています。

――日本人としての意味、価値観を伝えていくことが重要なんですね。


原田武夫氏: 私は『北朝鮮外交の真実』という本の中で、最後に「私は、外務省は辞めるけど外交官は辞めない」と書いたんです。つまり、われわれの国が持ってる、われわれが担ってきたもの、価値観っていうものは、日本がもっと外に発信していかなくちゃならない。私はこれからの世界ってグローバリゼーションではないと思っているんですよ。ジャパナイゼーションだと思ってるんです。そこをつないでいく人間が絶対必要なんです。だからそういう意味では、官僚の官、diplomatじゃなくて、外交家って言うんですけれどdiplomatistがこれから絶対に必要なんです。だから外交家を育て、自分自身も外交家として、日本の担っている価値、意味を、世界の平和とさらなる繁栄のために伝えていきたいなと思っています。

――ある意味、武力によらない、パックス・ジャパン。


原田武夫氏: そうです。パックス・ジャポニカですね。訳すと「日本の平和」という時代。その時代の始まりです。パックス・アメリカーナの時代は、暴力と金融と貧困と圧倒的な富の集積の時代だった。でもパックス・ジャポニカは違うんです。皆が何か元気そうなんです。それは結局、循環型の社会。エコ・システムもそうですし、富の循環もそう。全ての人々にちゃんとチャンスが与えられる。そういう社会を作っていくと、争いは必要無いんです。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 原田武夫

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