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貫井徳郎

Profile

1968年生まれ。早稲田大学商学部卒業。93年、第4回鮎川哲也賞最終候補作となった『慟哭(東京創元社)』が、予選委員であった北村薫氏の激賞を受けデビュー。2010年『乱反射(朝日新聞出版)』にて第63回推理作家協会賞受賞、『後悔と真実の色(幻冬舎)』にて第23回山本周五郎賞受賞。著書に、『プリズム(東京創元社)』、『悪党たちは千里を走る (幻冬舎)』、『空白の叫び(文藝春秋)』、『夜想(文藝春秋)』、『灰色の虹(新潮社)』などがある。近著に『新月譚(文藝春秋)』、『微笑む人(実業之日本社)』。

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読者の声を聞き、常に紙でも電子でも推理作家として新しい挑戦をし続ける



1993年に第四回鮎川哲也賞最終候補作『慟哭』でデビューされた貫井徳郎さんは、推理作家として2010年に『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門を、『後悔と真実の色』で山本周五郎賞を受賞、いまも推理作家として新しい挑戦を続けられています。そんな貫井さんに、ご自身の読書について、また電子書籍についてご意見を伺いました。

最新作はミステリーの最高到達点


―― 早速なんですが、最新作も含めてお仕事のご紹介いただいてよろしいですか?


貫井徳郎氏: 8月に実業之日本社から『微笑む人』という新刊が出まして、10月には幻冬舎文庫から『後悔と真実の色』という2年前に山本周五郎賞を頂いた作品が出ました。そんな感じでいま、ポンポンと新刊が続いている状態です。

――最新作の面白さはどういうところだとお考えですか?


貫井徳郎氏: 『微笑む人』は、僕の作品の「最高傑作」ではなくて「最高到達点」です。もうミステリーとして行き着くところまで行ってしまった、これ以上行ったらミステリーじゃなくなる、ギリギリのところの話という意味で最高到達点という言い方をしました。何がギリギリなのかというと、こんなミステリーもありなのかと思わせるような、ミステリーの枠組みを大きく広げる試みをしているんです。たぶん誰も読んだことがないミステリーになっていますので、最初は戸惑うと思うんですけど、「こういうのもありなんだ」と認識を広げて読んでいただければありがたいですね。

―― そういった試みというのは、貫井さんの作品を読む読者の層を広げたいなど、そのような意図があったのですか?


貫井徳郎氏: ミステリーの読者と一口にいっても、たくさんいますし、ミステリーファン全員が僕の本を読んでくださっているわけじゃない。まだまだミステリー読者の中でも開拓できる余地はあります。ただ今回の作品は、意図していたわけじゃないんですけど、普段ミステリーを読まない人でも手に取ってくださっているようです。そういう人の方がむしろ、「ミステリーはこういうものだ」という先入観がないから、普通に楽しんでくださっているようで、これはうれしい誤算でした。やっぱり従来のミステリー読者は、最後にきれいに全部解決するのが当たり前だと思っていらっしゃる方が多いですから。

仕事場には、執筆の邪魔になるようなものはなるべく置かない


――普段執筆される場所というのはご自宅でしょうか?


貫井徳郎氏: いえ、仕事場があって通勤しています。やっぱりメリハリをつける必要があって。自宅ですと色々邪魔になるものが多いですから。仕事場にはなるべく物を置かないようにしています。いまはチョコチョコと物が増えて来ちゃったので、何もないという状態ではないですけど、前は本当、本棚もない、電話線も引いていないのでインターネットもできないといった感じだったんですよ。

―― 一日の流れというのは、どんな感じで過ごされているのですか?


貫井徳郎氏: 僕はわりと集中して2、3時間でガーッと書くタイプなんです。1日400字詰めの原稿用紙で10枚書くことを目標にしています。最近は結構、集中力が上がっているので2時間ぐらいで書けます。午後の3時くらいからスタートして、5時くらいには終わっている感じです。

―― 何か、書かれる前の習慣のようなものはございますか?


貫井徳郎氏: 特にないですね。最近は昼寝しています(笑)。15分くらい昼寝をして、起きてから仕事をする。いつも、今日の原稿を書く前に昨日書いた原稿10枚を読み返して推敲して、その流れでそのままダーッと書き始めるという感じです。集中できない時もあるんですが、ともかく10枚のノルマは守ろうと思っているので、なんとか粘って書きます。結局、集中できないと自分がつらくなるだけだし、集中した方が楽なので、自分を追い込んでいます。

――10枚というのは仕事としてのノルマみたいな感じですか?


貫井徳郎氏: 達成感があるんですよ。すごく集中して、もう気が付いたら10枚書けちゃったみたいな、そういう達成感がすごく気持ちいいので、それを毎日味わいたくて仕事をしています。義務というよりは脳内麻薬を出すため(笑)。もともとデビューする前から小説を書くのが趣味だったので、いまでもあんまり義務感はないですね。

『アルセーヌ・ルパン』シリーズとの運命の出会い


――覚えていらっしゃる最初の読書体験というのはどんな感じですか?


貫井徳郎氏: うちは親が漫画を読むのをとがめないタイプだったので、結構漫画が家にあって、友達がうちに遊びに来て漫画を読んで帰るような、そんな家庭だったんです。それで、漫画を読んでいたので本を読むということに抵抗がなかった。小学校高学年の授業で「図書室に行って何か読め」という授業があったんです。そのときに、どうして選んだのか分からないんですけど、たまたま手に取ったのがモーリス・ルブランのアルセーヌ・ルパンシリーズ『813の謎』(ポプラ社)という作品でした。これはもう僕にとって決定的でした。これで自分の人生が決まったわけです。それまで特にミステリーに興味があったわけじゃないんですけど、すごく面白くて衝撃を受けました。実はいとこから以前にルパンの本をドンともらっていたんですが、それまで見向きもしてなくて、「こんな面白いものをなんで放っておいたんだろう」と思って、シリーズをバーッと読みました。

―― むさぼるように読まれたんですね。


貫井徳郎氏: ルパンを読み終わっちゃったら、やっぱりホームズかなと思って、今度は大人向けのものを買ったんです。当時、新潮文庫で160円とか、そんな時代だったんですよ。だから小学生のお小遣いでも買えるので大人用のホームズを買って、読みました。

―― それはお幾つぐらいの時ですか?


貫井徳郎氏: 小学校5年生ですね。借りて読むよりは所有欲があるので、お金を出して買いました。買うにあたっては子供向けのよりも新潮文庫の方が断然安かったからだと思うんですけど、そこで子供向きじゃなくて、大人向けの本に挑戦しようかって気になったんです。

―― スラスラ読むことはできました?


貫井徳郎氏: いやいやいや。たぶん全然分かってなかったと思うんですけど、でも結構楽しんでいました。やっぱり短編集としての『シャーロック・ホームズの冒険』のレベルの高さはものすごい。いまでもオールタイム・ベストを選べと言われたらホームズの冒険は入れたい。後は漫画では、永井豪さんの『デビルマン』(講談社)に衝撃を受けました。アニメの方を先に見ていたんですが、アニメは子供向けで、敵のデーモンというのが一体ずつやってくるたびにデビルマンが戦って倒すといった、普通の勧善懲悪モノでした。それで、そういうものだと思って原作の漫画を読んでみたら全然違っていた。主人公クラスの人も平気でバンバン死んじゃうし、悪魔よりも人間の方がもっと悪魔だ、という話で、小学生にとってはものすごくカルチャーショックでした。それを小学生の時に読んでしまったので、ちょっとやそっとの刺激では満足できない人間になってしまいました。僕の作風は暗くて重い展開のものが多いんですけど、そういうのはデビルマンの原体験の影響かなと思っています。

著書一覧『 貫井徳郎

この著者のタグ: 『アイディア』 『漫画』 『コンピュータ』 『インターネット』 『可能性』 『紙』 『新聞』 『本棚』 『お金』 『人生』 『絶版』 『才能』 『ミステリー』 『クラウド』

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