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世界中の本好きのために

奥野宣之

Profile

1981年大阪府生まれ。同志社大学文学部社会学科でジャーナリズムを専攻後、出版社、新聞社勤務を経てフリーランスに。独自の情報整理術を公開した『情報は1冊のノートにまとめなさい』(Nanaブックス)で著作デビュー。第2弾『読書は1冊のノートにまとめなさい』(同)、第3弾『人生は1冊のノートにまとめなさい』(ダイヤモンド社)のシリーズ3冊は累計50万部を超えるベストセラーとなる。メモやノート、文房具の活用法から発想法、デジタル・アナログを問わない情報活用、知的生産術まで、わかりやすく書き下ろした著作は、若手ビジネスパーソンを中心に支持を集めている。

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自分の体験や思考、感情には無限の深さがある


――そして、奥野さんのたくさん本を読んだ中での考え方が、いろいろな人に共有されますね。


奥野宣之氏: ウイルスのようにまん延するわけですね。

――広げられるって素晴らしいですね。


奥野宣之氏: そういうことですよね。昔、僕は世界史の授業を受けて「このマルクスというやつはすごいな」と思った。何冊か本を書いただけで、世の中をガラッと変えてしまった。だからある意味、疫病みたいなものですよね。インフルエンザとかスペイン風邪みたいなもので。1つポッとアイデアが出ただけで、「それはいいね」とみんなが言ってドワッと広がって、一気に世界が変わっちゃうんだから。

――しかもなかなか無くならない。


奥野宣之氏: そうそう、ほぼ永久に残るわけでしょ。だから本が爆発するとすごいなと思います。一番すごいと思うのは、コンセプトとかアイデアとか、概念を作ること。そういうのを作るのが物書きの仕事だと思うし、できたなら本望ですね。時代の精神みたいなものを言語化し、生涯追求していくような疑問だとか、生涯求めていくようなテーマって、みんなあるんだと思いますよ、絶対。子どものころに体験したようなことが原点になっていたりするもので、忘れているっていうか、意識されないんですよね。それを見つけたらいいものが書けるし、ただし、放っておいても見つかるものじゃないから、意識的に受け取ろうとしないとダメですよね。自分の中にも発見はありますよ、やっぱり。外向きの発見というのもあるけど、内向きの発見というものが、あるんですよね。いろいろなことを思い出したりしますしね。

――思い出すことは大事なことですね。


奥野宣之氏: そうですね。書くことって、何か子どものころの体験とかで決まってきますよね。僕の子どものころ、数学の先生がかなり高齢の人だったんですけど、身内の方を全部広島で亡くしてしまったらしくて、「アメリカに原爆を落とさなくちゃいけないと思っている」と、チラッと言っていました。

――どういう意味でしょうか?


奥野宣之氏: あれだけのことをされたのだから報復しないといけないと思ってしまうらしいんです。同害報復をしないと筋が通らない、と。「自分にはアメリカ人の友達もいるけれど、それでもアメリカに核の攻撃をしないといけないと思っちゃうことがあるんだよね」ということを、ポロッと言っていたんです。それはすごいことだなと思って、あのころの言葉をいまだに覚えているんですよね。僕が歴史の問題とかが好きなのってそういう所にもあるし、何かものを書くことで思い出したりもします。

――特に幼いころに体験した重要なことは、何となく通りすがってしまいがちなものなのかもしれませんね。それが大切なことだと、どうしたら気づくことができるでしょうか。


奥野宣之氏: 砂金を拾い出すように見つけ出さないといけないと思いますね。自分の頭をかなづちで殴られるような体験が、何気ない言葉、何気ない体験の中であるということなんですよ。それを見つけないと、どんどん珍しい所に行き、珍しい物を見るという方向へ進んでしまいます。その外側に向かう方式には限界があるんですよ、絶対。最終的には、宇宙に行ったりしなくちゃいけなくなる。でも、体験や経験の感情はミクロの世界だから、細かく細かく見ていけば、限界がないですもん。

――自分の内面、そして自分の周りにも必ずあるということですね。


ファンレター返信率100%!


――本を書くという仕事の中で、うれしいときというのはどんなときですか?




奥野宣之氏: やっぱり、ファンレターとかもらうとすごくうれしいですよね。出版社に届いたものを転送してもらっています。部屋に貼ってあるんですよ。島根の八十いくつの女性からいただいた手紙とか。「たぶん私の息子よりもお若いと思いますが」と。ライフログの本を読みながら自分の思い出を振り返っています、とか書いてありました。この人に会ったことはないし、実際に会ったなら、80歳の人に何をしゃべったらいいかわからない。でも、それができるというのが本のすごいところですよね。僕の本も台湾で2万部ぐらい売れているらしいんですけど、実は僕は台湾に行ったこと無いんですよね(笑)。本人は行ったことがないのに、僕の精神は行っている。それは奇跡だと思いますね。本は、勝手に届くわけじゃなくて、能動的に、自分で取りにいくものだから、特に読者とのつながりは深いですよね。

――受動的なものとは違いますね。


奥野宣之氏: pullなんですよね。運命的なものに出会いやすいメディアなんだと思います。

――ファンレターのほかに、絵なども送られているそうですね。これはうれしいですよね。


奥野宣之氏: こういうすごい才能がある人から手紙がもらえるってありがたいですね。メールも全部返信しています。ファンレター返信率100%を、今は維持していますからね。

――100%ですか。なかなか難しいですよね。


奥野宣之氏: ブログとかはさすがに返さないですけど。メールと手紙は絶対に返します。

――売れている数が多いと、それに比例して結構な数の手紙が来ると思いますが。


奥野宣之氏: いや、意外と来ないですよ。今まで100も出していないと思います。意外と手紙を書いてくる人は少ないです。読者カードとかはありますけど。

――そうですよね、手紙を書くって、すごく深い部分に踏み込んでいった人だろうし。


奥野宣之氏: そのエネルギーには、「絶対に返さないと」と思います。返さないと地獄におちると思って(笑)。昔、週刊連載をしている漫画家の人が「忙しくてちびっ子からのファンレターを返せないのが苦しい」って書いていたことを読んで、「そんなことがあるのかね」と思っていたんですけど、あれを無視するというのは、そうとうつらいことだなとすごくわかりました。お金をもらっている以上に、その人の意識をもらっているということですからね。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 奥野宣之

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