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世界中の本好きのために

加藤勤

Profile

昭和46年(1971年)、東京都に生まれる。東京大学法学部卒。平成6年NTTデータ通信入社。平成16年(2004年)に書店チェーン、ブックスタマの社長に就任。その手腕で、赤字だった書店事業を黒字化。現在、東京都に11店舗,神奈川県に1店舗,埼玉県に1店舗を展開する。また『中国語が1週間でいとも簡単に話せるようになる本』(アスカカルチャー)は発売から3ヶ月で5刷まで行き、1万部目前。
ブックスタマ
中国語が1週間でいとも簡単に話せるようになるサイト
自腹読書日記

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通じることを目的に書いた、専門的すぎない中国語の本。


――ご自著『中国語が1週間でいとも簡単に話せるようになる本』(明日香出版社)を出されたきっかけをお伺いできますか?


加藤勤氏: 書店をやっていなかったら、たぶん出していなかったと思うんですけれども。あの本を出したのが一昨年の12月ですが、その年の正月ぐらいですね、私、今日(7月17日)ちょうど誕生日なんです(笑)41歳ですけど(笑)

――そうなんですね、おめでとうございます。


加藤勤氏: 一昨年、30代の最後、そろそろ40になるというころ、周りで本を書いている人が結構出てきていまして、自分も何か本を出したいなと(笑)。自分で書店をやっていますんでね、幸いにもちょくちょく出版社の社長さんなんかとも会う機会があって。一昨年の正月に出版社の社長さんと一杯飲んだ時、半分は酒の席の話のつもりで、「本を出したいんですけど」という話をしたら、「じゃあ企画書を作ってください」って。

――企画書、出版計画書ですね。


加藤勤氏: だいたい本を出すときって、特にああいうビジネス書みたいな本は企画書から始まるようですね。そういうのも初めてで(笑)。だから本を書きたいんですけど、という人が相談に来ると、まずは企画書を書いてくださいという話をしますね。企画書とか目次とか、サンプル原稿とかそういうものを書いてくださいということだったので、用意したわけです。企画自体はいくつか作ったんですけど、その中で実現したのが中国語というだけで、最初から中国語の本を書こうと思ったわけではないんですよ。ビジネス書の企画書も書いたんです。

――この『中国語が1週間でいとも簡単に話せるようになる本』は、完成までトータルでどれくらいの時間がかかったんですか?


加藤勤氏: お正月にそのお酒の席でスタートして、出版社さんの中で正式に企画が通ったのが6月。本が出たのが12月。企画としては1年。執筆としてはだいたい3ヶ月ぐらいですかね。

――もう1万部を超えられたんですよね。読者からの声は届いていますか?


加藤勤氏: 読者の方からの声としては、この本を読んで中国語に興味を持ったというのがありました。実際に知り合いには、この本で勉強をしてくれる人もいます。一番うれしかったというか意外だったのが、ある出版社の方ですけど、娘さんがちょっと引きこもりだったらしいんですね。で、私の本を娘さんに渡したら、もともと中国語をどこかで勉強したことがあったんでしょうけど、また中国語をやろうという気力が目覚めて、中国語教室に通いだしたという人がいまして。まったくそんなことは予想していなかったですし、本の力というのはすごいなぁと思いました。

――いわゆる教科書的なものじゃなくて、すごくわかりやすい、スーッと頭に入ってくるような内容のご本ですね。どういう思いでこの本を出されましたか?


加藤勤氏: 本当に中国語を専門にやっている方には、この内容でいいのかというような本ですが(笑)、でも、やっぱりそこなんですよね。私自身、大学まではまったく中国語を勉強していなくて、大学の時に国際交流みたいなサークルに入って、台湾人の友達ができたから中国語に興味を持った。大学時代に始めたんですけど、NHKのテレビ講座なんかを活用していました。この本にもちょっとエピソードを書きましたけど、大学を卒業する時、実際に中国に旅行したわけですが、全然、中国語を勉強しなくて向こうへ行って耳だけで覚えた人のほうが逆に通じるんですよね(笑)。なんでだろう。やっぱり勉強の仕方が違うのかもしれない。中国語は発音が大事だといいますが、発音だけを勉強していたらつまらないわけですよね(笑)。で、やっぱり語学の勉強で一番そのモチベーションになるのは、話して通じた、自分の言ったことを中国人が理解してくれたというのが最も大事だと思うので、それを目指すのであれば、もっと簡単な方法、もっと楽な方法があるんじゃないか。もともとは中国語と日本語は言葉も単語も共通していますし、例えば英語の単語だと一から覚えなきゃいけないけど、中国語の場合は日本語になっている単語というのが結構あるわけですよね。

――親しみやすいはずなんですよね。


加藤勤氏: ええ、通じることを一番に考えれば、もっと簡単に取り組めるんじゃないかなということをお伝えしたくてこの本を書いたんです。

今後も中国関連の本は書いていきたい。


――読書メーターもそうなんですけど、今後ますます読書の仕方というのがネットによって変わってくると思います。そういったことについてはどう思われますか?


加藤勤氏: 逆に、マイナスな反論も当然返ってきますから、怖いですね(笑)。ダイレクトに伝わってくるという意味ではソーシャルリーディングなどで、書き方のスタイルも変化するでしょうし、読み手としても変わってくるんでしょうね。みんなは、どこの何ページが面白かったとか発言するようになりますよね。

――今後、何か本を出されるようなご予定というのはありますか?


加藤勤氏: 中国語の本の話は引き続きいただいていますね。

本は、なくなることのない存在。


――ところで加藤さんにとって本とは、どういう存在になりますか?


加藤勤氏: 私はね、書店をやっていますので、これからも本がないと、商売を替えないといけない、やめないといけないなぁということを常に考えながらやっているんですよね。で、電子書籍はどうなるのかというのは非常に気になるところです。Kindle Fireも発売される。私は、本はまだまだなくならない、紙の本はなくならないと思っているんですが、例えばレコードとかCDはなくなってきているから、本もそのうちそうなるんじゃないかと言う人もいるわけです。でも、そうじゃない。音楽というのは、本物は何かと言ったらライブ演奏、オーケストラがその場で演奏するとか、アーティストがその場で歌うとか、それが本物ですよね。レコードって結局は本物じゃないし、より便利なもの、より音質の良いものに取って代わられただけ。じゃあ、本の「本物」は何かと言った時に、例えば作家の生原稿が本物かと言うとそれは違うんですね。作家の生原稿を読みたいという人は研究者じゃない限り、まずいないわけですよ。本の本物って、今で言えば紙の本そのものですし、そうである限りは、電子書籍が出てきても、それは単に便利なもの、悪くいっちゃえば紙の本のコピーなんです。より早く手に入るかもしれない、ただそれは便利なものであって本物ではないのかなと思うんです。ただ電子書籍が本物になる部分って当然あるので、そこが境目だと思うんですね。お客さんって本物を求めていて、これからの時代さらにその傾向が強まると思いますので、本が人々にとっての本物だという部分がある限りは、商売をやっていく方法があるのかなと思います。自分がそれをやりきれるかどうかはわかりませんけど、何かしら本というのは商売として続いていくんじゃないかなとは思っています。

――少しお話がそれますが、いわゆる自炊とか電子化というものに対して、加藤さんご自身どんな風に思われますか?


加藤勤氏: いいとか悪いとか言っていてもしょうがないのでね(笑)。経営している側からしたら困ったなと思いますけど。

――書店さんとして電子書籍に何か期待するものはありますか?


加藤勤氏: ハッキリ言えば、電子書籍はわざわざお店に行かなくても買えるというのがメリットだと思います。家でこの本を電子書籍で買いたいなと思って、翌日わざわざお店に来る人っていないですよね。その場で買えて、すぐダウンロードできますので。

――書店というのは、欲しい本を買うという目的があって行く場合と、今どんな本が置いてあるんだろう、お薦めはどんな本だろうという知的な探検という意味で、落ち着く場所なので行くという場合があるかと思います。その時に電子書籍も何かしらの役割があったら、共存できると思われますか?


加藤勤氏: もちろん本と電子書籍は敵vs.味方じゃないので(笑)。このお店も3年前に改装したんですけど、今、半分は古本屋さんに貸している。古本屋さんも敵だって言えば敵だという見方をする人はもちろんいます。過去そういう歴史があって、ブックオフという商売がない時はみんな新刊のコミックを買っていたのに、ブックオフができてからコミックが売れなくなった。中古でもいいという人が増えてきたんですね。ただそれも20年前の話で、今さらそんなことを言ってもしょうがない。お客さんにしてみれば、そこで読書のスタイルが増えた。電子書籍についても同じことが言えると思うんですけれども、電子書籍が基本的に、「こういう本があるんだ」「これが買いたい」と思った時にその場で買えることだとした場合、書店と電子書籍が組むことを考えると、書店の店頭で電子書籍に出会うということじゃないとたぶん成り立たないと思うんですよね。店頭で初めて知る、その場でダウンロードというのは、お客さんにとってもメリットになるなと思います。



未知の本に出会える場所が書店。


――書店ならではの喜びってどんなところにありますか?


加藤勤氏: 書店というのは本当にいろいろな本が置いてあって、自分が全然知らない本とか、全然興味がなかった本と出会える場所。そういった本たちとは、お店じゃないと出会えないですよね。例えば電子書籍にしても、書店・店頭で出会えば、そこで購買してくれるような可能性は十分あると思います。

――古本に流れるお客さんもあるでしょうが、新しい本は変わらず売れていきますか?


加藤勤氏: 基本的には本は本物である限りは、心配する必要はないかなと思っています。一応自分も本を書いていますので、本を書く側からすると、媒体がどういう形であれ、いろいろな人に知ってもらいたいというのはあります。アプリとかつくれたら良いなとも思いますよ。アプリだったら発音も含めて自分の話した発音を確認できるようになる可能性がありますよね。特に私の場合イントネーションだけ強調していますので、発音が正確かというと、私は正確な発音ができないわけです。でも、それでも相手には通じるってことを、より知ってもらえるようにもなるかもしれない。

――通じるというのはすごくうれしいですよね。


加藤勤氏: そうですね、そこだけだと思うんです。通じない理由というのは日本人の場合はほとんど四声なんですよね。子音の発音は、中国人も結構いい加減なんで、勉強されている方ならわかると思うんですけど、有気音とか無気音とか鼻母音とかですね。あんなの別にできなくたって通じるんです(笑)。それよりも四声、イントネーションが正確じゃないと。日本語でもそうだと思うんですけど、「橋」と「はし」とか、それで意味が変わるでしょ。日本人はあんまり意識していないんですけど、イントネーションで普通に意味を仕分けて、理解している。それと同じで、中国語もそこが正確じゃないと、中国人にしてみると何を言っているかわからないとなってしまう。そこさえできていればいいので、そこをチェックできるアプリとかあったら、より実践的になるんじゃないかなと思いますね。

――では、ぜひ次の取り組みとしてアプリを。


加藤勤氏: そうですね。いや、出版社の知り合いはたくさんいるんですけどね、アプリは知り合いがいないので、誰かそういう方がいるとありがたいな(笑)

(聞き手:沖中幸太郎)

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