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世界中の本好きのために

しりあがり寿

Profile

1958年、静岡市生まれ。日本の漫画家。1981年多摩美術大学グラフィックデザイン専攻卒業後キリンビール株式会社に入社、パッケージデザイン、広告宣伝等を担当。1985年、単行本「エレキな春」で漫画家としてデビュー。パロディーを中心にした新しいタイプのギャグマンガ家として注目を浴びる。1994年独立後は、幻想的あるいは文学的な作品など次々に発表。2000年「時事おやじ2000」、「ゆるゆるオヤジ」が第46回文藝春秋漫画賞、2001年には「弥次喜多 in DEEP」が第5回手塚治虫文化賞マンガ優秀賞を受賞した。近年ではエッセイ、映像、ゲーム、アートなど多方面に創作の幅を広げ、iOSアプリ「さるやまハゲの助アプリ」の開発にも取り組んでいる。

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『デバイス』はやがて集約されていく?


――しりあがりさんは、電子書籍は読まれますか?


しりあがり寿氏: いや、全然。僕はiPadもiPhoneも使いますけどね。本を読むよりも情報の断片みたいな物を取り入れるだけで、時間がなくなっちゃう。読むとしても、新書だったり、物の見方や取材のためにバッと読んだりする。エンターテインメントのために何かを読むというのは今はまずない。最近の読書の方法は、最初を読んで、面白ければ最後まで読むし、面白くなければ途中で終わる感じかな。途中で分かったような気になるとそこで終わっちゃうとかね。

――電子書籍は、iPadやKindle、各デバイスの普及で徐々に広がりつつあるのですが、電子書籍に関して、何かご感想をお持ちでしょうか?


しりあがり寿氏: 僕個人の考えでは、自然に端末は集約されていくと思うんです。僕は出張する時に、ノートパソコンとiPadとiPhoneと、何故か普通の携帯電話も持っているんですよね(笑)。やはりフラッシュが使えないので、どうしてもWindowsも必要で。だからね、これ以上増やせないんですよ。iPadなり携帯で移動中に見ようとすると、画面を開いて、ニュースやTwitterやメールのチェックをすると時間が終わっちゃう。逆に夜、囲炉裏の側でブランデーを飲んで読むような時は、そんな時ないけど(笑)囲炉裏ないし。紙の本の方が便利だよね。パラパラめくったり、重みを感じたり。本を読み返したり。時間があったら本を読みたいなー。

大道芸のマーケット的な実験『さるやまハゲの助アプリ』やっています


――しりあがり寿さんの書籍を、読者の方がデータ化することには抵抗はありますか?


しりあがり寿氏: あんまり抵抗はないですね。そういうのって時代の流れだからなぁ。今、僕は仲間と一緒に『さるやまハゲの助アプリ』(通称さるプリ)というiPhone用のアプリを実験的にやっているんですね。僕は、紙の本をわざわざ電子の形に持っていくのって、やはり難しいんじゃないかなと思ってるんです。なので、iPhoneだとか端末に合った形で面白い作品を逆発想できないかなと思った。さるプリには動画や小説もあるし、漫画も色々なものが入っているんですよ。クイズがあったりね。「こういうコンテンツに絶対人ってお金を出さないよね」とか言いながら作っている(笑)。僕は、iPhoneが出た時に、なんとなく「しばらく端末ってこういう物(スマホ)で定着するんじゃないかな」と思ったんですね。だから「これ(スマホ)にあった表現って何かな」と思って、今色々実験しているんですよ。ある一方で、You Tubeとかで動画がタダで見られる。その一方でAmazonみたいな巨大ストアがある。だからさるプリの目指すのは、YouTubeの有料化というよりは、安いAmazonみたいなものを目指している。現物のない、在庫を持たないAmazon(笑)。漫画や動画、小説、何でもゴチャゴチャ売っているけど、ひとつひとつが安い。7円とか。小説だったら小分けにして販売すれば、7円という設定もできるんですね。さるプリは今チケット制で、10ネタ券が85円 30ネタ券が250円、100ネタ券が700円という風になっています。それで作者に少しお金が入るというシステムです。



――どうしてそのような試みに挑戦しようと思われたのですか?


しりあがり寿氏: 今の時代って、コンテンツを作る人にお金が入らなくて、間に入っている人ばっかりお金儲けをしている気がしてね。これは世の中の必然なんだろうけれど、作る方としては「なんだかな」なので、わずかな抵抗みたいなものです。そんな感じで7円払ってくれないかな…と思って(笑)。この2012年の4月に始めたんですよね。例えば人気者のコンテンツだったら別に7円じゃなく70円でも売れるわけですよね。App Storeなので価格の自由な設定もこれからできるし。でも結局作者の所には7円のうち2円とかそのぐらいしか入らないですよね、App Storeが20%で、管理する所が何パーセントとかね。

電子書籍は今、戦国時代である


――今後、電子書籍はどのような未来をたどるとお考えですか?


しりあがり寿氏: おそらく電子書籍やアプリというのは、今「戦国時代」な感じで、色々な人が色々なとらえかたをしていると思うんだよね。で、みんながおそらく必死(笑)。みんなが淘汰される立場だと思ってるんじゃないかな。で、最後に何が残るのってところで、ほとんどの人が上手くいかないんだろうけど、もし上手くいったらカッコイイ(笑)。そういう時代なんだろうね。でも、こういうさるプリのような実験的な試みが、みんなの協力と、小規模の投資でできるわけです。漫画家の仲間も「どうやってお金を取るか」という事に、頭を悩ませて色々な事にトライしている。今は漫画でも無料で見せて人気が出たものを有料にするというパターンがなんとなく多い気がする。僕らは大きな額での先行投資はしないで、大道芸みたいなマーケットで、ほんのちょっとずつお金を貯めて、ちょっとずつ見てもらう(笑)。という風な道を探りたいと思っています。

今のような時代こそ『勇気』を養う事が必要


――今の時代をどのような風に感じていらっしゃいますか?


しりあがり寿氏: 日本や世界をとりまく問題について、なかなか希望が見つけられないという感じかな。少子化、財政危機、原発事故、次の大地震、お隣の国との緊張関係、数年前じゃ大騒ぎだった大きな危機がいくつも目の前にあるのに、一向に答えが見出せないばかりかそれを考える体制すらできない。究極の選択肢は、日本は最後の最後はどこかの国の自治区になるか、どこかの国の51番目の州になるかみたいな道をたどるのか(笑)。最近よく思うのは、本当に、ドラゴンクエストのように冒険の旅に出た方が良いなという気がするんですよね。

――何故、冒険の旅が必要だと思いますか?




しりあがり寿氏: 今は、色々な事があてにならない。会社も国も、一寸先はどうなるか分からない。そうなると勇気が必要だと思うんです。今までにない事をやってみるとか、人に「それはないよ」と言われても頑張っちゃうとか、そういう勇気が必要。その勇気のある人が色々な仲間を集めて、中にはダメな人もいるけれど、でもどこかにいい所を見つけて「この人は僧侶の役」とか役割を割りふる(笑)。「この人は魔法は使えないけど力だけある」とか、「こいつは性格が悪いけど盗みが上手い」とか。そういう風に、勇者がリーダーになって、パーティーを作って冒険しないといけないんじゃないかなと思いますね。大きい会社でやる、というよりは、4、5人のパーティーが色々な冒険をして、様々な可能性を探っていく。こんな時代だからほとんどはどこかでのたれ死にするかもしれないけれど(笑)。でもやはりそれをやらないでもダメだろうなと思う。今の時代、国とか自治体とかのセーフティネットに期待できないし、頼れない。下手に期待すると痛い目を見そうだし(笑)。だから家族でもいいけれど、仲間同士で助け合って進んでいくのがいいと思います。自分が勇者になるか、盗賊かは分からないけどね。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 しりあがり寿

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