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向谷匡史

Profile

1950年広島県生まれ。拓殖大学卒業後、週刊誌記者を経て作家になる。人間を鋭くとらえた観察眼と切れのある語り口が特徴的。近年は仏教の教えをわかりやすく解説することを中心に執筆活動を展開している。日本空手道「昇空館」館長も務める。『人はカネで9割動く』( ダイヤモンド社)『名僧の一喝』(すばる舎)、『一瞬で心をつかむプロの「決めゼリフ」』 (青志社)など著書多数。
公式ホームページ
http://www.mukaidani.jp/

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今後は仏教小説のような、壮大なテーマに取り組みたい


――今後取り組みたいというテーマはございますか?


向谷匡史氏: 仏教小説みたいなものを書きたいという願望がありますね。小説的なもので、仏教を題材に借りたものを書いていきたいなと思っています。それは宗祖であったり、教義的なものをあるストーリーの中で語れないかなという事を考えているんですが、難しいんですよ。壮大なテーマなので、その中のどこかを切り取ってやるのかはわからないんですが、ただやってみたい(笑)。そういう試みがあんまりなされていないんですね。せいぜいあるのは遠藤周作さんの『沈黙』ぐらいで、あとは難しい本は多いけれど、エンターテインメントの中にそういう問題を含んだものはあまりない。結局医学書なんかもみんなそうだけども、専門知識があるという事と書くという事は違いますよね? 例えば、仏教学者として非常に仏教を良く知っているからといって、それはエンターテインメントにして書く事はできないし、エンターテインメントは書けるけれども仏教の教義はわからないという人は多い。両方を兼ね備えている人っていうのはまず、そうはいないんです。それは医学でも同じですよね。もっと言えば政治も同じ。どの分野だって、専門知識がある事とそれを発表するという事は全く異質の能力なんです。昔は違ったんですよ。例えばライターが少し政治を勉強したり、あるいはインタビューしたり、経済をかじって記事が書けた。でもこれだけ情報社会になってくると、受け手がもっともっと詳しくなっているから、ライターが動いて取材して書いたぐらいじゃだめなんですよ、全然。じゃあプロに書かせればいいじゃないかというと、プロは書けなかった。最近はプロでも書ける人っていうのが良くなってきたんです。そういう時代ですよね。その間に「ペアワーク」という時代があって、中身について、医者でも政治家でも書き手のプロがいて組んで仕事をするというのが一時期ちょっとあった事もありますが、これからは両方兼ね備えた人でないと、やっぱり難しくなってくると思います。

――その業界をわかっていて、かつ発表できる。そういう意味では仏教の小説というのは、向谷さんが書かれるしかないですね。


向谷匡史氏: ただ問題は、出版社と編集者の感性が「それ面白いね」と言うかどうかですね。
興味のある人じゃないと難しいし、じゃあそれが果たしてどの程度売れるのかという事になってくるとまた難しい。出会いがあればやってもいいなと思っています。

人を嫌いだと思ったら自分自身を振り返れ


――編集者、出版社の方と出会われた時に、「ああ、馬が合うな」とか「合わないな」など、何か感じるものはありますか?


向谷匡史氏: 僕はあんまりそういうのはないです。自分と合う・合わないではなくて、それを生かすかどうかの違いだけだと思います。つまり嫌いな人に会っても好きな人に会っても、いい人に会っても悪い人に会っても、年寄りに会っても若い人に会っても、それを自分がどう受け取るかだけの違いであって、あの人がどうだからこの人がどうだからというのはやっぱりちょっと違うような気がしますね。だからヤクザに会えばその事を自分にどう生かすか、僧侶に会えばその事を自分にとってどう生かすかの違いであって、「あいつ嫌だな」っていうのは評価でしかないし、それを生かしきれないだけの違いですよね。自分の問題だから。

――確かに評価してしまうと狭くなってしまいますね。


向谷匡史氏: 選ぶ必要はない。全てオールカマーでいい訳で、それをどうするかっていうだけの話です。どうしても相手に求めますよね?「あいつ、言葉遣いがどうだ」とか、「いつも何か言うと批判ばっかりする」というのは、それは違う。「ああ、こういう人もいるんだな」って「どうして自分はこの人が嫌いなのかな」と自分の内面を見ていけばいい。僕が週刊誌時代、人物ものの記事を担当する事が多かったんです。シリーズをずいぶん持っていたので。色々なタレントさんや文化人を、毎週毎週インタビューしたり密着したりする事が多かった。そういう中で、人をどう見るかという訓練をやってきたのかもしれませんね。大宅文庫の大宅壮一さんの、「人物論というのは自分を書く事だ」という名言があるんだけれど、人を見てその人を書くという事は自分を書いているんだというんです。どういう事かというと、自分の価値観で見ているという事ですよね。という事は、好き嫌いというのは自分の価値観でしかない訳だから、相手を自分がどう取り込んで、どう消化していくかだけの問題であると。相手がどうかではなく、自分の問題だと。

――それは色々な方とのお付き合いで得たものですか?




向谷匡史氏: とにかく面白いんです、人に会うって(笑)。僕は好きなんですよね、会うということが。いい人も悪い人もなくて、いいか悪いか勝手に自分が思っているだけで、その人にはたくさんいい友達もいるし家庭もある訳だから、それはそれ。自分がどこかひねくれているのかもしれないし、自分の価値観とたぶんどこか違うからそう思っているだけだろうと思うので、だから人に会う事はやっぱり財産ですね。「人は人によってしか磨かれていかない」という事はよく言いますね。

――そうですね。おっしゃる通りですね。


求めて人に出会わなくても、必要な人には会うようにできている



向谷匡史氏: それともう一つ余談になるけれど、これは週刊誌を辞めて…4、5年ぐらいたった時なんですが、「求めて人に会うのはやめよう」と思った時期があるんです。昔週刊誌にいた時の癖で、なるべく色々な人に会おうと思ってしまう。そうすると世の中は広がっていくし、自分の見聞も広まると思っていたんだけど、ある時なんか人に会ってもしょうがないなと思ってね、今年1年は求めて人に会わない、できるだけ会わないようにしようと思ったんです。そうしたらやっぱり、会わなきゃいけない人には会うんですよ。あれは不思議でした。だからパーティーに誘われても行きたくなければ行かないし、なるべく出ないようにしていたんだけど、やっぱり振り返ってみると知り合わなきゃいけない人には知り合っているみたいな所があるから、人間の出会いというのは求めて出会うものじゃないな、という事はちょっと実験してみた事があるんです(笑)。

――何か仏教の世界にも通じるような。


向谷匡史氏: そんな大げさなものじゃないんだけど(笑)。気まぐれで、なんとなくちょっとやめてみようかなと思ったんです。でも、会う人には会っているし、やっぱり人間って言うのは面白いなと思った時がありました。皆さんもやってみるといいですよ。お酒も6年前に止めたんだけど、やっぱり止めてみたら見えるものが出てきました。もういいなっていう感じはありましたね。酔っぱらいって面白いなって思ったり(笑)。俺もあんなだったのかなとか、同じ話を繰り返してするなとか思いますね。飲んだっていいわけだから主導権は常に自分にある。そうすると物事があまり苦しくない。人に会わないというのも自分で勝手に決めただけ。朝早起きすると自分で決めただけで、強制されてやるものではない。だからいいんですよ、嫌ならやめればいい訳で、また嫌なら始めればいい訳で。

――なるほど、主導権は自分にあるから苦しくないんですね。


向谷匡史氏: 梶原一騎さんという『あしたのジョー』とか『巨人の星』とかの原作者に、昔すごい可愛がってもらった時期があったんです。彼がよく言っていたのは「ねばならない」という考え方が一番だめだと。「こうせねばならない」「禁煙しなければならない」「酒を飲まなければならない」という考えが精神を悪くすると。だから今度それを自分風に解釈すると、強制されないっていう事ですよね。つまり行雲流水というか、右から風が吹いたら左に流れればいい訳で。「在(あ)るがままに、成(な)るがまま」というのが最近好きでよく使うんですけど、あるがままにあるがまま…なるようにしかならないんですよね。あるようにしか存在しないというか。それは仏教的な考え方、「無常観」なんです。どうやったって曲がらないものは曲がらないし、曲がるものは曲がるんだという。それでじゃあ流されるかというとそうではなくて、現実をしっかり踏まえた上でどうするかという事をしないと、曲がらないものを曲げようとするから苦しいので、だからまかせておけばいいんですよ。

――本当に、おっしゃる通りですね。

著書一覧『 向谷匡史

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