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世界中の本好きのために

向谷匡史

Profile

1950年広島県生まれ。拓殖大学卒業後、週刊誌記者を経て作家になる。人間を鋭くとらえた観察眼と切れのある語り口が特徴的。近年は仏教の教えをわかりやすく解説することを中心に執筆活動を展開している。日本空手道「昇空館」館長も務める。『人はカネで9割動く』( ダイヤモンド社)『名僧の一喝』(すばる舎)、『一瞬で心をつかむプロの「決めゼリフ」』 (青志社)など著書多数。
公式ホームページ
http://www.mukaidani.jp/

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今ある現状の中で自分が一番ハッピーなものを求めていく。それが面白く人生を生きる秘訣である



拓殖大学卒業後、週刊誌記者を経てベストセラー作家になった向谷匡史さん。『人はカネで9割動く』(ダイヤモンド社)や、『図解 ヤクザの必勝心理術』(イースト・プレス)などユニークな著書を多数執筆されています。また作家であると同時に、浄土真宗本願寺派僧侶、保護司、日本空手道『昇空館』館長などいくつもの顔をお持ちの向谷さんに、読書について、電子書籍について考える事などをお伺いしました。

執筆後には、読経、午後5時からは道場で空手のけいこをつける毎日


――普段のご執筆のスタイルを伺えますか?


向谷匡史氏: 5分ぐらいの所に自宅があるんですが、そこで仕事をしたり、白子(千葉県長生郡)にも仕事部屋を借りています。また、ノートPCも持ち歩いていてそれで書いたりもします。でも資料を持って歩くのは大変ですね。執筆用のデータは全部共有しているけれど、資料の共有はなかなかできないのが悩みの種です。今書いているものは、全てインターネット上の保管スペースに上げて同期しているので、どこに行っても書き続けられるんです。

――原稿はパソコンで執筆されるんですか?


向谷匡史氏: 執筆にはPCを使います。こういう風なスタイルになってもう長いですね。パソコンを始めてからだから、15年近くになります。その前はワープロ。フロッピーの時代だとフロッピーを持ち歩いたりしていました。毎日のスケジュールですが、年間通して同じです。1年間を通して5、6冊書くので、その原稿を書きながら、空手の道場でのけいこが週4日ある。朝大体5時前に起きて、7時ぐらいまでちょっと原稿を家で書いて、一応僧籍を持っているのでその後お経を上げて、それから風呂に入って、仕事場へ来て、道場が始まるまで仕事をする。5時から9時まで道場での指導があって、100人ぐらいいるので、分けないとできない(笑)。3コマに分けてやって、それが4日間。そんな感じですね。

――お弟子さん100人は、どういった方が来られるんですか?


向谷匡史氏: 幼児クラスから、一番上がいくつだろう、82歳くらいまでいるのかな。82歳の方は黒帯ですね。

執筆は助走なしで、すぐに取りかかる癖をつける


――ちなみに、執筆される時の導入はどうされるのですか?


向谷匡史氏: 最初にコーヒーを飲みます。

――すぐに書きはじめられるものですか?


向谷匡史氏: 脳科学者の茂木さんが、昔「助走をしない癖をつけろ」というような事を言っていたのを、読んだ事がありまして。それで、即執筆にかかる練習をしています。楽は楽です。起きてニュースをネットで見たりしていると、頭のどこかで書かなきゃいけないという気持ちはあるけれど、「もうちょっと見てから」とか「あと5分してから」とか、そういうのが疲れるから先に書いてしまうという事でしょうね。

――そうは言っても、なかなか一般人には真似のできないことですよね。


向谷匡史氏: 習慣だから。コツは続ける事です。何事も何回か続ければ習慣になる。一番いいのは、例えばずっと忙しい事があるとします。そういう時に、ジュースを作るミキサーで、野菜を詰めてグーンと回すとずーっと中身が減っていく。あれをイメージするといい。あとは雪をバーッとかくラッセル車。あの車をイメージすると大体いい気分になります。一度やってみたらいいですよ(笑)。

――学生時代の読書体験をお話しいただけますか?


向谷匡史氏: 高校1年の時に、尾崎士郎の『人生劇場』(新潮社)という本を読んで非常に感銘を受けました。コップ酒、茶わん酒で冷酒を飲んで青春を語っていくような、「あれいいなあ、あの世界いいなあ」と思った。それからですね、本が好きになったのは。学生時代は絶えず何か読んでいたような気がします。もう乱読。有名な本多勝一さんとか旅行物をよく読んでいた気がします。将来そういうジャンルを書こうと思っていたからじゃないでしょうか。

漫画雑誌のライターから競馬記者、そして週刊ポストへ


――ご自身で執筆されるようになったのは、どういうきっかけでしょうか?


向谷匡史氏: 大学4年の時に、僕はもう家内と一緒に暮らしていたので、何か仕事をしなくちゃまずいと思ったんですね。4年生の12月ぐらいに月刊誌に就職したんです。今思えばね、ちょっとパブっぽい雑誌だったんですが、そこの求人広告に応募して。その前にも『別冊週刊漫画』と言う漫画雑誌が出ていて、そこにアルバイトで1ヶ月に1本ぐらいか何か書いていました。やっぱり書いていた実績があったからなのか、あの当時で50人中1人だけ受かったんです。今思えば、おかしかったですね。それで、編集の経験なんて何もなかったけれど「できます」と言って入社してしまって、それから『編集ハンドブック』という本を買って読んだ(笑)。初めてレイアウトした時に、ゲラがすごいはみ出ていたのをいまだに覚えています。今みたいにパソコンもないから、400字詰め原稿用紙で、例えば字詰め16で何行かというのを数えたりするのはプロの人はうまかった。こうパッパッパッとね。

――では、デザインも手作業でしょうか?


向谷匡史氏: そういえばレイアウトはしていました。その時に先輩でいい人がいて、彼について仕事が終わると近くの喫茶店に行って、編集やレイアウトについて教えてもらっていました。12月にそこに就職して、4ヶ月して、その後に『内外スポーツ』という夕刊紙に転職して、競馬記者をしばらくやりました。そうしていたら、知り合いから「週刊誌の専属記者を募集しているから行かないか」とお声がかかったんです。その時は『週刊プレイボーイ』と『週刊ポスト』があったから、「どっちに行く?」と言われて「じゃあポストに行きます」と。それが大学を卒業した年の7月でしたね。

――本を執筆するきっかけはどんな事だったのでしょうか?


向谷匡史氏: 週刊誌の記者になってすぐ、初めて共著で1冊書いてはいるんですよ。それはちょっとまともなルポでした。やっぱり雑誌の記事を書いていて、雑誌というのは残らないという意識がどこかにあったんでしょう。でも本は残ると。それで書いてみたいなというのもあったと思います。

本の企画は、辛抱強く持ちまわるべき


――なかなか書きたいなと思っても、その当時は誰でも本を出せる訳ではなかったと思うのですが。


向谷匡史氏: 結局今、色々な編集者と付き合っていて思いますが、企画というのは絶対値でいい企画ってないと思っているんですよ。Aという企画があって、Bという企画があって、みんないいと思って企画を作るんだけど、要は会った編集者と価値観と感性が共有できるかどうかだけだと思います。例えばヤクザの企画、あるいは仏教の企画と色々ありますよね。仏教に興味のない人に「仏教のこれ、すごく面白いですよ」と出しても全くだめで、違う人に振ったら「ぜひやろう」という事もあります。反対にヤクザのテーマを出しても、興味ない人は「そんなの嫌だ」って言うし、面白いと思う人は「面白い」と言う。結論として、企画は色々と持ち回らないとだめだという事です。誰に合うかわからないから。そのうちお互いによく知り合ってくると、「これはどこどこ向きだ」とか「これは誰向きだ」とわかってくるんですが、そこに行くまでは辛抱強く持って行かなきゃいけない。

――では何かこのテーマで書こうかなと思ったら、「あの編集者だな」とか「あの出版社だな」と考えられるのですね。


向谷匡史氏: そういうつながりが出来上がるまでは、出会う人に「こういうのをやってみたいんだけど」と振っていかなきゃいけない。「そんなの面白くないよ」と言われてもそれは彼が面白くないと思うだけであって、別に企画が面白くない訳ではないという考え方をしなくてはいけませんね。つい「この企画はだめなのかな」と思ったりするんだけど、企画っていうのは絶対値はなくて相対的なものだから、その人と感性が共有できるかどうかという事と、何年かたって同じ企画を出したら向こうが乗ってくるという事もある。その時はだめだって言っておいて(笑)。時代背景が変わっているという事もあるし。だからやっぱり企画を持ち歩いていくというのは大事ですね。

――本だけではなくて、仕事にも言えそうですね。


向谷匡史氏: 全部同じだと思いますよ。僕は交渉術の本を書いているんですが、つきつめていけば、良くも悪くも人間関係が決めていくんです。同じ人間でも「あいつ面白いな」と言ってくれるか「ありゃしょうがねーな」と言われるか、それは相手との関係だから。だからある企画である人と組んでやっていた時、その相手の人が「この人間だからやらせてやろうと思うか、この人間だからやらせたくないと思うかという、それだけの違いだ」と。だからもし何かやるんだったら、持ち回ってください。それで全然変わってきますから。ひとつやれば次につながるという事にもなってきますし。

著書一覧『 向谷匡史

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