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世界中の本好きのために

加藤昌治

Profile

1994年、大手広告会社入社。情報環境の改善を通じてクライアントのブランド価値を高めることをミッションとし、マーケティングとマネジメントの両面から課題解決を実現する情報戦略・企画の立案、実施を担当した。情報戦略の企画実施業務を行う傍ら執筆した『考具』(阪急コミュニケーションズ)がベストセラーになる。著書に『アイデア会議』(大和書房 2006年)、『アイデアパーソン入門』(講談社BIZ 2009年)などがある。

Book Information

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本を読むことは、情報だけでなく『視点』を沢山獲得するということ


――そのように、多角的に物事を捉えられるようになったきっかけは何でしょうか?


加藤昌治氏: 本をたくさん読むことは、視点をそれだけ多く獲得することにつながると思います。さっきの徳川家康が嫌いで怪我した小学生君も、先に真田側の視点で本を熟読したからであって、山岡荘八先生の『徳川家康』をその前に読んでいたら違っていたかもしれない(笑)。いろんな視点からたくさん本を読んで、いろんな視点を獲得しておけたら、偏り少なく相対的に判断できる。

――学生時代は沢山読書をされたのですか?


加藤昌治氏: 多いといっても学生時代までで漫画を入れて1500冊ぐらい持っていて、あとは学校の図書室で借りてて、とそんなもんですよ。書店1店舗と比べてもそんなに多くないです。読書量が多ければ良いかといったらそんなことはないし、読書する量もその人なりの方法によって違いますよね。だからどれがいいとか悪いとは全然ないんじゃないですか。読んだつもりで内容をもうほとんど忘れちゃっているし(笑)。

今一番読みたいのは『台本』『脚本』作りの本。


――今、これから読みたい本、気になっている本は何かありますか?


加藤昌治氏: 台本、脚本を書くための本をジャンルとして読み始めたところです。まだ数冊しか読めていないんですけれども、台本作り、脚本作りに興味があります。結構多くあるのでちょっと時間かかりそうですが、ある程度読むつもりです。

――それも視点の一つとして色々応用がききそうですね。


加藤昌治氏: 以前、周防正行さんのインタビューを聞く機会があったんですが、周防さん「僕は映画監督と呼ばれるのは嫌です」とおっしゃる。「脚本と監督と両方やらないと嫌なんです。両方やって映画制作者と呼ばれたい」との説を伺って「なるほど!」と思いました。その翌月、偶然にも井筒和幸監督のお話を伺うことがありました。井筒さんも「脚本には必ず携わるようにしている」と同じことをおっしゃった。井筒さんは当初、演出家として映画監督をされていて、『岸和田少年愚連隊』の時に初めて脚本に関わったそうです。そこからは脚本と演出両方をするようにしていると。ここからは勝手な仮説ですが、コンテンツって、分数みたいに線を引いたら下に台本、上に演出。「脚本」分の「演出」だと思っているんです。数学的には間違いでしょうけど、見た目でいうと分母が台本・脚本で、分子が演出ってことですね。要は、脚本がしっかりしているコンテンツはリメイクがしやすい。半面、演出だけが優れている名作はリメイクしにくい。コンテンツとして価値が長く続くのは脚本、台本の領域であると思っています。現世としては演出系の方が華やかですけど。

――だから脚本と演出、両方関わりたいとおっしゃるわけですね。


加藤昌治氏: シェイクスピアのハムレット、演出違いでコンテンツがたくさんあります。国によって言語も違うし演出家も違う。演出次第でかなり違うコンテンツに感じるけれども、ハムレットはハムレットだって分かる。黒澤明監督も脚本にはこだわりを持たれていたとのことですが、『七人の侍』が『荒野の七人』になったり、スター・ウォーズの下敷きになっていると言われたりしていますが、これも広い意味でのリメイクかと。

――台本の作り方の本というと、どのようなことが書いてあるのですか?


加藤昌治氏: 台本にはルールがある、型もある。実はスポーツに近い感じです。完成した映画を見ているだけでは気がつきにくいですが、かなり構造的に作られていることが分かる。そもそも映画の企画とはイコール脚本だと言う方もいる。コンテンツの起点を担っているわけですね。でも、それをどう演出するかということで、アウトプットが全然違う。そこがまた面白いところで。脚本だけではコンテンツにならない。脚本と演出、どちらが偉いんだ議論はナンセンスだと思いますが、僕自身は脚本家でありたいと思う派ですね。本を書く作業は台本を書く作業に近いと思っています。アメリカでは脚本家になる学校があったり、脚本を書くワークショップがいっぱい開催されているようです。構造を学ぶ、作ることをみんなができるようにするための地ならしというか、教え方がある程度できあがっていることに関しては進んでるなあと思います。

「ワークショップの落語化」を実現したい


――最後に、今後、挑戦したいことなどについてお聞かせください。


加藤昌治氏: 「ワークショップの落語化」をカタチにしたいと思っています。まだ妄想段階なんですが・・・言い続けていて実現できていないんですが、ぜひやってみたい。

――ワークショップの落語化とは、具体的にどういう事をするのですか?


加藤昌治氏: 本を書くと、講演を頼まれたりします。僕の場合は本に書いてあることを実際にやってみましょうということで、「ワークショップ・考具」と題して機会があれば方々にお邪魔することがあります。通算で100回ぐらい実施してきましたが、自分一人だけだと、展開するにも限界がある。毎回の参加者が変わるのであれば、ワークショップの脚本は同じでいいわけです。脚本がよくできているならば。きちんとした脚本があって、演出を練習することができたら自分自身じゃなくてもワークショップを演じられるようになる。「ワークショップ考具」を同じ日に2つの違う場所でできたり、自分がいなくてもできるようになる。ワークショップ自体を脚本にしておいて、もう一方で演者を作る。この両方がセットになって落語化の構想になります。
 落語って、つかみを除けば、お話は同じです。つまり脚本が非常にしっかりしている。でも演者である落語家さんによって面白さが全然違う。ワークショップの落語化妄想も、演者は誰でもいいってわけでもなく、そこはそれなりのプロがやる構想です。創作落語を作っている人たちが、他人の噺もやる集団。ま、落語家さんとしては普通かもしれませんが、それを書籍の領域に持ち込んでみたい。
自分が読んで、これいいなあと思うメソッドやら方法を、自分もお手伝いして広げられたらいいなと。書籍の限界である、「読んだ人が自ら行動しないと始まらない」をリアルなカタチで、ある程度の広さとスピードを持ってサポートする構想、現時点では妄想ですね。書籍というコンテンツをベースにして脚本が生まれ、すぐれた演者によって、もっとスピードを持って展開されることになるわけです。上手く行ったら、置屋の女将になってハイヒール履きます(笑)。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 加藤昌治

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