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世界中の本好きのために

堤未果

Profile

東京都出身。和光小、中、高卒業後、アメリカに留学。ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒業、ニューヨーク市立大学大学院国際関係論学科修士課程修了。国連婦人開発基金(UNIFEM)、アムネスティ・インターナショナルNY支局員を経て、 米国野村證券に勤務。9・11同時多発テロに遭遇後は、日本-アメリカ間を行き来して執筆講演活動開始。2008年、『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書)が30万部を超えるベストセラーに。日本のマスコミが伝えない米国の現状を多面的な角度から紹介。さらに核をめぐる世界の状況やメディアリテラシーなど、幅広いテーマで執筆・講演・ラジオパーソナリティなどを続けている。

Book Information

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『電子書籍』との共存のために『紙』の書籍には、『品質』を高める必性要が求めれている



ラジオのパーソナリティや講演や執筆活動で多忙な中、一か月に『本』を20~30冊読破しているという堤さんに、電子書籍や今後の日本の書籍について存分に語って頂きました。

瞬間的に思い立って読みたくなった時に、『電子書籍』を活用している


――電子書籍は読んだことはありますか?


堤未果氏: 電子コミックを携帯電話でたまに読みますね。何か急に思い立って読みたくなった時とか、あの漫画のあの場面が見たいないう時に衝動買いしてます。新刊を買って読むというよりは、以前読んだものの読み返しのために購入してますね。

――どのようなジャンルの漫画を読みますか?


堤未果氏: ジャンルは、色々ですけど、一番最近ではスピリッツに連載していた『闇金ウシジマくん』を夜中に読みました(笑)。特定の場面を急に思い出してしまうと続きが気になるんですよね、特に「どんな台詞を言っていたっけ?」って、気になってしまうんですよね。私は読むとだいたい台詞を覚えちゃうんです。

――えっ?覚えちゃうんですか?


堤未果氏: はい(笑)。で、何かあの場面のあの台詞をもう一回見たいなっていう瞬間が急にあって、そういう時に携帯で読んでますね。

――携帯での読み心地はいかがですか?


堤未果氏: アクセスが簡単なところが良いですね。ベッドから起きて本棚まで行って、その巻を探して戻ってきて読むという手間がいらないのがうれしいですね。

――携帯で読む時に、要望などはありますか?


堤未果氏: 携帯はちょっと画面が小さいのと、めくる時に「ぶーん」って振動があるじゃないですか?アレが嫌なんですよね。手だとパラパラパラってめくって見れるじゃないですか?すごいわがままなんですけど、私はものすごく読むのが速いので、画面をめくる時間のロスを無くしてほしいですね(笑)。もうちょっと、iPadみたいにスマートに変わったら良いのにな、といつも思います。あと、特定のページで止まるのも改善して欲しいですね。やっぱり本は自分のペースで読みたいですからね。



――本のジャンルでいうと、やはり漫画を読まれるのが好きですか?


堤未果氏: 漫画というより本そのものがすごく好きです。

――推薦したい本などの記事を書かれていますよね。本への愛情は深いですか?


堤未果氏: 深いです。もう生活の中に本が無いと、ダメですね。

――月に何冊くらい読まれますか?


堤未果氏: 月に20~30冊ぐらいですかね。特に家に一人でいる時は、部屋から部屋に移動する時にも読んでいるぐらい好きですね。ジャンルはその時々で、ノンフィクションとか社会的な物も読みますが、ミヒャエル・エンデのような大人の児童書や詩集、エッセイなどですね。頭をからっぽにしたいときは写真集ですね。

――大人の童話というのは、どのようなものですか?


堤未果氏: ミヒャエル・エンデやナルニア国物語などは、映画にもなりましたよね。子供の頃、外国の児童書ばかり読んでいたので、すごく好きなんです。特にイギリスには本当に素晴らしい童話が多いんですが、翻訳者によって全然違うんですよ。その好きな翻訳者のバージョンを何十回も繰り返し読みますね。

――最近は、どんな本を読まれましたか?


堤未果氏: アラスカ在住の星野道夫さんという写真家のエッセイを読みました。星野さんは熊に襲われて亡くなってしまったんですが、写真だけでなく文章が哲学的で素晴らしいんです。写真と文章のページや、文章だけのページなど色々なパターンがありますが、読んでいると被写体の話だけではなく、もっと本質的な人間と自然の関係や、人間が生かされている事への敬虔な気持ちなど、命そのものへの問いかけがずっと流れていて本当に美しいんです。

――幼少期から学生の間までの中で、自分の行動に今でも影響を与え続けている本はありますか?


堤未果氏: 小さい頃から10代までですか?ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』や『ハイジ』の翻訳版ですね。『ハイジ』ってアニメでは無くて、福音館から出ている分厚い本の方に影響されましたね。『ハイジ』は中学生の時に読みました。

――『ハイジ』は大人向けなんですか?


堤未果氏: あれは完全に大人向けですね。母が家に沢山海外の児童書を持っていて、その中に『ハイジ』があったんです。

無我夢中にやっていくと『道』が開けていく


――大学で国際関係学を専攻されたとのことですが、専攻されたきっかけを教えていただけますか?


堤未果氏: 初め私は芝居をやりたくて、アメリカに行ったんです。自分が演じ、脚本も書きたかったんです。でもアメリカに行って住み始めたらまず、すごいカルチャーショックを受たんです。色々な国の友達がたくさんいて、それぞれバックグラウンドや文化がみんな違うんですよね。そうすると友達の行動にしてもつきあいにしても、自分の予測を全部裏切られるんです。思い込みや先入観が、ことごとく壊されるんです。それがもの凄く面白くて、その人たちの事をもっともっと知りたいなと思ったんです。そしたら、そもそも自分は世界の事を何も知らなかったという事に気がつくわけです。「もっと大きい世界をみたい」と強く思いました。例えば脚本ひとつ書くにも、視野が狭ければ人間は描けないんですよね。それで芝居から転向して、世界がどういう風に絡み合っているのかを一から勉強しようと思い、大学と専攻を途中で変えたんです。

――大学や専攻を途中から変えることって可能なんですか?


堤未果氏: いや、変えられますよ。でもゼロからのスタートなので、ものすごく大変でした。勉強に関しては本当に苦労しました。

――どのくらい努力をしたんですか?


堤未果氏: う~ん、もう死ぬほどやりましたね(笑)。

――どういった勉強をされたんですか?


堤未果氏: 世界の色々な事情に関して基礎知識もろくにないのに好奇心だけで、国際関係論という学問をいきなり専攻したものの、アメリカの授業はディベートが中心なんです。みんな自分の意見を持って討論に参加しなければならないんです。けど最初は基礎知識もないからちんぷんかんぷんで、悔しいから勉強していって意見を言うと、今度は四方八方から反論されるんです。最初は慣れてないから悔しい思いを沢山しました。英語が話せるという事と、ディベート力は全く別物だからです。でも、無我夢中でやっているうちに道は開けてくるもので、良い感じになってきたころに卒業だったんです。4年間ではとても足りず、次に大学院に行った時に初めて自分の考えを自由にぶつけあう楽しさみたいなものが、わかったように思います。

――なぜ大学院に進もうと思われたのですか?


堤未果氏: 国連に入りたかったからです。国連って修士号以上が条件なんですよ。それが理由の一つで、二つ目は大学だけでは物足りなかったからですね。大学というのはベーシックは学べるんですけど、それを自分で分析して自分なりのセオリーにしたり、自分なりの物の見方を掴んでいくところまで行くには、時間が足りないんですよ。だから大学院に行って、今度はセオリーを作っていくというところまでやりたいなと思ったんです。

――大学院の4年間はいかがでしたか?


堤未果氏: 駆け抜けた4年間でしたね。もう最後もすべりこんで卒業みたいなスピードでした。素晴らしい教授が沢山いたのに、教わるばかりだったから、意見交換するレベルになりたかったですね。それでもう2年間居ることにしました。大学院に来ている生徒も、国連の現役の人や研究者などの専門家が多くて、本当に刺激的でした。

『電子書籍』へ恐怖感を持っている大手出版社の編集者が増えている


――今お仕事はどこを拠点にされていますか?


堤未果氏: 今はラジオのレギュラーと月に講演を4、5本、それに執筆と取材をしていますが、全国に行くので東京と関西に事務所があります。関西のオフィスはもう本だらけですね。収納が多い所を選んだんですけど、結局全部本ですね。数か月に1度、200冊ぐらいを売りますが、それでも収納スペースが追いつきません。

――そういった本を電子化しようと思われたりはしないですか?


堤未果氏: 自分でですか?

――ご自分でも、BOOKSCANなどの、蔵書電子化サービスなどを使ってでも電子化することもできます。


堤未果氏: 自分の持っている本を電子化してくれるんですか?それは便利ですね。

――ただ、便利な反面、自分の本が知らないところで電子化されて流用されるのではないかと、権利関係を心配されている作家の方もいらっしゃいますね。


堤未果氏: そうですよね。例えば誰かがお願いしてクラウドに上げた場合、それは誰でも利用できるんですか?それともその人だけ利用できるんですか?

――BOOKSCANでは、実際にスキャンを申し込まれた方のみですね。その方以外は見られないようになっています。なので、スキャンしていただくことで数十冊の本を端末1つで持ち運べるようになりますね。


堤未果氏: そうなんですね。それ良いですね。私は、本を書くときに色々調べたりしながらものすごく沢山資料を読むんですが、資料本って重いんですよ。だからそのサービス良いですね。iPad1台を持ち歩けば良いんですよね。

――堤さんは、1冊の本を書き上げるのに、だいたいどれくらいの参考資料を読まれますか?


堤未果氏: そうですね、単行本だと50冊ぐらいですかね。プラス新聞記事とか論文とかをかなり読みますね。

――1冊の本を書くのにどれくらい時間がかかりますか?


堤未果氏: 1冊書くのにですか?出版社にはせかされますが、だいたい平均して1年くらいかけますね。

――出版社の方には章ごとに渡しますか、それとも一回全部書き上げた物を渡して、それから校正を繰り返しますか?




堤未果氏: 出版社、担当編集者によって違いますね。例えば『貧困大国アメリカ』の時は一章書いて渡して、読んでもらって次、というパターンでしたし、岩波ジュニア新書の時は、割と全部書くまで見ないで、全部終わってから出しましたしね。

――出版社によって違うんですね。


堤未果氏: 違いますね。担当者も活発に意見を言ってくれたり、方向性も含めて一緒に作っていくプロデューサータイプの人もいれば、何にも言わない人もいますね。それぞれのスタイルなんですが、ただ個人的にはやっぱりリアクションが豊かな編集者だと嬉しいですね。書いている時って自分一人の作業なので、やっぱり一番最初に読んだ編集者が、「面白いですね」って一言いってくれると、すごくエネルギーが上がりますね。

――そういったところが出版社の役割だと思われますか?


堤未果氏: そうですね。でも編集者というのは今、エネルギッシュなプロデューサータイプの人と、地味だけれど本当に本や本作りそのものが大好きな人と、二種類いるようです。ある先輩作家さんが、昔は長いスパンでつきあってくれて作家を育てるタイプの編集者が随分いたが、今は少なくなったと言っていました。でも最近はノルマもすごくきつくなっていて、編集者の人も2ヶ月に3冊という過酷なペースで出版しているんですよ。本当に大変だと思います。そんな中で1人の作家さんにそんなに集中して関われないでしょうね。全体的に今、時代の速度がスピードアップしている事は、クリエイティブな側面にとっては必ずしも良くは無いですね。

――出版社は、作家さんと一緒に作り上げていくという気持ちや編集力が大事だと思われますか?


堤未果氏: 大事だと思いますね。だけど編集者の人たちと話していると、最近は電子書籍の存在にとても恐怖感を持っているという方が増えています。特に老舗の大手出版社の編集者に多いですね。だけど、「紙」の出版物は絶対に消えないと思います。簡単に手に入るものが増えていくと、人は本物を求めるようになると思います。だから「紙」の出版物は必ず残っていくと思うんですね。なので今までより一層、質の部分を高めるように集中した方が、結局は残っていくのではないでしょうか。でもどうしても私たち皆、時代のスピードについていかなきゃという脅迫観念がありますよね。例えば、1つのテーマで当たった作家がいると、その作家に依頼が集中して同じような内容をいろいろな出版社で、出版する流れがありますよね。あれには私は疑問を感じます。安全な方向かもしれないけれど、あれをやってしまうと作品の中身がどうしても浅くなるし、買う側も飽きてきますし、全体的に質が落ちてくるんですね。だから集中してワーッと依頼が来るときには気をつけて、なるべく1年に1冊のペースにしています。「ぶんぶんゴマ」みたいになっているうちに、自分を見失ってしまいそうで怖いんです。もちろん私が不器用なだけで、すごいスピードで高品質の作品を出し続けられる人もいるとは思います。

日本は『活字文化』が根強いので、読者のレベルが高い


――読者はどういった目を鍛えるべきだと思いますか?


堤未果氏: 私は日本の読者というのはすごくレベルが高いと思っています。あまり本を読まないアメリカと比べているから余計なのかもしれませんが、安易な物を求めるといっても、それでもやっぱり本屋さんに行って本を買うという手間をまだ惜しみませんし、電子書籍になったとしても、活字文化というのはすごく根強いので、レベルは高いままだと思いますね。

例えば『新書大賞』で、歴代のラインナップを見ていると、去年は科学者が書いたもので、その前の年は内田樹さんの『辺境論』ですね。その前の年は『貧困大国アメリカ』で、第一回は福岡伸一先生の『生物と無生物の間」です。ここには流行本とか、その時流行った経済本なんかは上位に入っていないです。とてもまじめな本ばかりなんですね。あれは本屋さんと編集者が選んでいるんですね。それも1年間に出た新書1500冊の中から5冊選ぶんですよ。それでこういった書籍が上がっているということは、書店員さんのレベルとか、読んでいる人のレベルってそんなに低くないと思うんですよね。むしろ読者のレベルを見くびっているのは出版社の方です。テレビもそうなんですけど、今の問題は、送り手が受け手をみくびっていることだと思います。今、ラジオのレギュラーをやっているんですけど「リスナーの意識が高いなあ」と、どきっとさせられることがしょっちゅうです。テレビにうんざりしている人がラジオに流れて、今ラジオ人口が凄く増えているらしいです。

――確かにラジオは自分で選んで聴くという感じがしますね。テレビは受動的な感じですね。


堤未果氏: そうなんです。テレビは座って見ていると何も出来ないじゃないですか。でもラジオって何かしながら聴けるので、意識して聴いているときと聴いていない時と分けられるんです。テレビは見始めるとあまり他の事を考えられないじゃないですか。だから余計、ラジオは主体的な媒体だなと思いますね。私の出ている番組は、『質の高い物を』と制作側がすごく意識して作られています。前にテレビのレギュラーをやっていた事もありますが、やっぱり今試されているのは送り手の方だと思いますね。最近では受け手の方が情報量もあるし、すごく先を行っていると感じますね。その一方で送り手は昔と同じ意識のままなので、今何が起きているのかをちゃんと勉強している人が少ないように思います。テレビ局の人が企画を立てる時にその話題について書かれている最新の本を読んでいなかったり、フリーのジャーナリストにネタを聞きに来たりするんですよ。大衆はこのレベルで満足するだろうとあぐらをかいていると、ずっと先に進んでいる受け手において行かれてしまうと思います。

――送り手が選ばれたり、ふるいにかけられたりするんでしょうか?


堤未果氏: ふるいにもかけられるし、受け手がもっとすごいスピードで先に行っちゃうと思うんですよね。個人でも発信ができるわけですし、既存の送り手は本当に守られているけど、新聞もテレビも、これからもずっと同じように組織が守ってくれるかどうか保証はありません。電子書籍がこれだけ浸透してきているということは、国境が無くなってきているという事です。今、日本はテレビも新聞も独占法で守られているますけど、これからもっと自由化が進んだとき、守られている壁も壊されていきますね。その時に準備をしていなかったら、壁が崩れた時に丸腰になってしまいます。その危機感が薄いと思いますね。日本の出版社は電子書籍のGoogleの件でも、ちょっともたもたしましたよね。あっちは海千山千ですからね、(笑)。でもこの波はこれからも繰り返しいろいろな形で襲ってきます。

――出版社はこの波に乗るかどうか、ということでしょうか?


堤未果氏: もしくは何かを守るために内側から働きかけですね。そうでなければ、質を変えていくのかですね。どちらにしてもやっぱり本気で今、考えなきゃいけないところだと思います。

――以前、出版社が主導になって作家さん7人が自炊代行業者2社を提訴した裁判があったんです。堤さんがおっしゃったように危機感が強くなって、その危機感がこういった形につながっているんでしょうか?


堤未果氏: 向かうべき所がちょっと違うかもしれませんね。アレルギーですよね、ほんとに。文明時差みたいなものですね。でも知的財産権という利権拡大にこれからアメリカを始め全力で向かってくるので、やはり準備は必要ですね。

『本』は、『過去』や『未来』へ自分を連れて行ってくれる存在


――ところで、堤さんはたくさんの本を整然と並べるタイプですか?それとも資料として積み重ねるタイプですか?


堤未果氏: ああぁ、大きな山みたいに積むってものですね。うちの父親がやっていました!私は一応高さ順にきれいに並べています。私の事務所は壁面収納が全部本ななんです。でも夢はちゃんとしたイギリスの書斎みたいな書庫部屋が欲しいですね。ああいう所で書きたいですね。

――堤さんにとって、書き手として、または読み手として、本とはどのような存在ですか?


堤未果氏: 自分にとってですか?本は、もう今はいない人と触れ合えたり、過去や未来、そして時間や空間の制限を越えて、自分を遠くに連れて行ってくれるものですね。タイムマシーンのようなものですね。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 堤未果

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