BOOKSCAN(ブックスキャン) 本・蔵書電子書籍化サービス - 大和印刷

世界中の本好きのために

田原総一朗

Profile

1934年4月15日 近江商人の末裔として滋賀県彦根市に生まれる。テレビ東京のディレクターや映画監督の経験を経て、ジャーナリスト、評論家、ニュースキャスターとして活躍中。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。現在、早稲田大学特命教授として大学院で講義をするほか、「大隈塾」塾頭も務める。「朝まで生テレビ!」「激論!クロスファイア」の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。鋭い眼差しとは裏腹に政治経済はもちろんの事、バラエティ番組にも出演するなど幅広く活躍する。氏のtwitter上の発言も老若男女問わず社会現象になるほど強い影響力を持つ。

Book Information

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
――まずは電子書籍についてお伺いしたいと思います。

田原総一朗氏: 何冊か僕のも電子化されています。

――蔵書を電子化したものも電子書籍と呼ばれています。


田原総一朗氏: 蔵書を、紙の本を裁断して電子化しちゃうのは、なんでかな、邪魔だからですか。紙の本を裁断するという事は、面積・空間をとるから裁断しちゃうということですか。

――それと、どこでも読むことができるという利点もあるようです。


田原総一朗氏: 別に裁断せずに電子化すれば、早い話がその紙の本を電子化するのに一種のコピーをすればいい訳でしょ。それをわざわざ裁断する理由は何なんだろう。別に紙の本は紙の本であって、それを電子化すればいいんじゃない。なんで裁断する必要があるの。

――今の技術ですと、裁断しないと、スキャンの機械にかけられないんですね。もちろん『非破壊スキャン』――裁断せずに、ぺらぺらめくるだけでスキャンが出来てしまう――技術も開発されていると思うんですけれども、今のところ実用化まではいかず、だからどうしても裁断してしまうという行為になるわけです。田原さんご自身はどのようにお考えですか。


田原総一朗氏: 時代っていうのは変わるものだからね。それでもいいと思うけど。僕なんかは古い時代で紙の方に慣れているから。それはそれで置いておいたほうがいいと思うけどね。

――紙vs電子じゃなく、両立していければいいなと。


田原総一朗氏: まさにそうだね。

――現在、御自著でも、復刊も含めて電子書籍化されていますが、電子書籍というものに対して親しみは感じられてますか。


田原総一朗氏: 今のところ、電子書籍を読むという事はやっていません。ニュース、情報・新聞みたいな即時性、更新性の高い読み物はiPadやいろいろなもので見ています。

――読み物に関しては紙の物で読まれますか。




田原総一朗氏: うん。習慣ですからね。たぶん電子書籍で読むという習慣がつけば、それはそれでいいんだと思う。別に電子書籍がダメだなんて思っていません、全く。

――もし望まれるとしたら、どんな感じになれば読みやすいなという風に思われますか。書籍に限らず、先程おっしゃったようなニュースなども。


田原総一朗氏: iPadでも活字は大きくしたり小さくしたりできるわけね、これはもちろん出来る訳ね、電子書籍は。特に文庫本なんていうのは、昔のやつは小さい字だから、読みにくいんだよね。それで電子書籍になって、大きく出来たりすると、とても便利だと思う。例えばメモが書けるんだよね。

――メモは書けるソフトもありますね、注釈として。


田原総一朗氏: 例えばね、こんな本を読んでいるんだけど、気になる文章に線をひっぱって、行間にメモする。これは電子書籍はできるのかな。

――出来るソフトもあります。できたり、書き込んだりできる物もあります。


田原総一朗氏: こういう事が出来ないと不便だと思うんです。紙は書き込めるじゃん、簡単にね。今紙の場合こういう風に行間に書き込んでいるんだけども、それができればいいんですよ。

――今『ツイパブβ』でたくさん本を公開されていますが、いわゆるソーシャルリーディング、誰々が、この本のこの箇所が面白かっただとか、そのメモと一緒のように、ここは私はこう思ったという風にみんなで共有できますが、以前と比べて読者の顔は伝わってきますか。


田原総一朗氏: うん。僕はtwitterをやっていまして、新しいコミュニケーションツールとしては面白い。今僕のtwitterは36万ぐらいフォロアーがいますね。その数は今や週刊誌の読者の数よりも多いと言われるわけですから。週刊誌でそれを超えているのは『週刊文春』ぐらいじゃないかな。

――週刊誌以上に、しかも即時に広まるわけですよね。面白い現象ですよね。


田原総一朗氏: それは面白いですよ。僕はもちろん週刊誌に寄稿していますが、反応が来るのが1週間以上経ってからですよ。でもtwitterの場合つぶやいたその瞬間に来るわけだからね、いろんな反応が。

――この間のメイド喫茶に行かれたときも、すごい反響でしたよね。


田原総一朗氏: 『AKB48』の総選挙の件では100件、200件があっという間に来るからね。そういうのはとても速いね。

――そういった速報性のあるtwitterも含め、電子書籍は我々にどのような変化をもたらすと思いますか。


田原総一朗氏: 色々な情報が、欲しいものが瞬時に手に入るっていうのは、いいんじゃない。今だって例えば僕の場合、売っていない、絶版された本を買おうとすると、二つしか方法が無くて。一つは国会図書館に行ってコピーする。もう一つはAmazonに頼んで古い本を見つけてもらう。いずれにしても相当時間がかかる。こういうのは電子書籍だとすぐでしょう。

――電子書籍の利点の一つとして上げられるのが復刊ですよね。絶版になった物が読めるとか。


田原総一朗氏: これは大きいと思う。僕なんか、わりに絶版になったものを読む事が多いんでね。

――絶版の中には結構反響があるのに、例えばベストセラーになった藤田田さんの『ユダヤの商法』にしても、『今、読みたいな』と思っても絶版になっていてなかなか読めません。


田原総一朗氏: 僕の本でもね、例えば、『原子力戦争』も一回絶版になって、また復刊されてますよ。

――twitterとか電子書籍によってみんなが意見を書き込めるような新しい読書スタイルになったと思うんですけど、そういった読書スタイルが登場することによって、書き手としての意識の変化って、田原さんご自身あると思いますか。こういう風に思われるだろうなと想像しながら書くか、今までの紙と変わらず書くか。


田原総一朗氏: 書き手としてね、僕は今でも手で書いているんですよ。原稿用紙を使って、ペンで書いています。パソコンでは書いていません。というのは一時ね、パソコンで書こうと思ってパソコンをやったんですよ。書いたらね、やっぱりペンと書くのとパソコンで書くのとでは全く違うね。

――脳の使っている部分が違うんですかね。


田原総一朗氏: どっちかと言うとパソコンの場合はね、口述に近いですね。しゃべっているものに近い。言葉が出過ぎなんだよね。やっぱりペンで書くとね、そんなにどんどん出てこない。一字一字出すのに結構苦労しますよ。どうもね、パソコンをやってみて『これは違う』と。これは口述に近いなあと。で、またパソコンをやめて今書いていますよね。書き手としてね、とても便利だという人も多いんです。例えばパソコンで書いていくと、あるブロックとあるブロックの順番が違う場合、入れ替えがとても楽です。これね、ペンで書いていると、そういう入れ替えが難しいですよ。この辺のが非常にやりやすいと。だから校正が、再校正がしやすいという意見が沢山あります。

――それでもあえて紙で、直接書くというのを選ばれるというのは、それ以上の利点があるからでしょうか。もしくは口述で書くことによって、いらない言葉が多く反映されると。


田原総一朗氏: 利点というより、パソコンで書くのは口述に近く、軽くなると僕は思いました。だから書き方も変わってくると思う。

――ところで、日本語の書籍はもちろんのこと外国語の翻訳書籍も豊富にあってたくさん読まれていると思います。それに、ある電子書籍のリーダーでは、日本はダウンロード第1位という結果も出ています。アメリカが2位で。この結果からも日本人は決して『読まない』国民ではないと思うんですけど。


田原総一朗氏: そりゃ、そうでしょう。

――ただ、本が売れなくなったという風に言われていることに対してどういう風に思いますか。


田原総一朗氏: そりゃインターネットのせいでしょ。つまり、例えば何か起きますね。そうするとテレビで見るのも時間がかかりますね。インターネットで見るのが早いですよね。もうスピードが全く違うから。

――本を読むことには変わりはないけれども、今までの情報の取り入れ方が変化して、様々な窓口から取り入れるようになったということですか。


田原総一朗氏: それは全くスピードが違うからね。だから逆に新聞なんかが売れなくなるんですよね、遅いから。僕は新聞を読むときは、既にだいたい情報を全部知っていますからね、主な物は。

――新聞は、ニュース(NEWS=新しい)という役割が少なくなったということでしょうか。


田原総一朗氏: ニュースの割合が減って、新聞は今、読み物に変わりつつあるし、変わっていくと思う。つまり新聞がニュースではなくむしろ解説になっていくでしょうね。

――新聞社の役割は変化してくるんですね。


田原総一朗氏: アメリカではね、通信社と新聞社が全く役割が違って、記者会見なんかは通信社が集めて、解説は新聞社なんですよ。どう読むかなんていうのは新聞社ごとに違う。日本は通信と新聞はごっちゃになっていた。これはこれから分かれていくでしょうね。例えば有名人の訃報も、すぐわかるわけ。じゃあどういう方だったのか、というような事を新聞が解説してくれないと、新聞の意味は無くなっちゃうね。他にも東電のOL殺人事件で逮捕され無期懲役になった人が、再審で釈放されたと。釈放されたっていうのは、インターネットで情報はわかる。じゃあ、そもそも釈放された人物はどういう人物で、なぜ彼が有罪という判決を受けたのかを知りたいと。そういうのを教えてくれるのが今の新聞の大きな役割でしょうね。

――新聞業界と同じように出版業界も役割がどんどん変わってきてると思うんですけど。




田原総一朗氏: 変わるでしょうね。一番大きいのが、流通の変化によって制作コストが安くなる。電子書籍の場合は、その制作コストが極めて安いから言ってみれば書き手に対する、印税が増えることが期待されるでしょうね。そういうメリットがあると思う。今だいたい印税というのは僕らの場合は1割ですね。それが2割、3割となってくれば書き手としてはメリットあるじゃないですか。でももう一つ、問題があるんだよね。パーセンテージが多くなっても、どれくらい売れるかっていうことですよね、販売部数。ここが問題でしょうね。今、電子書籍ってどういう風に宣伝しているんですか。

――まあ、いろいろな宣伝方法があると思いますけど、もし、紙の書籍と同時発売の場合は出版社が宣伝してくれるんじゃないでしょうか。


田原総一朗氏: どういう宣伝するんですか。僕のは今、何冊か電子書籍になっているけど。

――先ほどお話に出てきたtwitterによる宣伝も多いと思います。影響力のある個々人の口コミでしょうか。


田原総一朗氏: そうやって宣伝の方法が当然変わるでしょうね。今までは本の宣伝というのは、基本的には新聞媒体ですよ、あるいは雑誌媒体。紙で宣伝した。これは紙じゃないから、宣伝の方法がね、いろいろ変わってくるでしょうね。

――検索したキーワードから、『あなたが欲しいのはこういう本じゃないですか』っていうようなものも、一つの宣伝方法でしょうね。


田原総一朗氏: そうだよね。僕の場合とってもありがたがっているのは、ある本が欲しいと、こういう物が欲しいと、やっぱりインターネットを使うと、ずらっと出てきますよ、色々ね。これはとっても便利ですね。今までこういう本が欲しいっていう時に探すの大変だったんだよね。例えば『摂関政治』について書いた本ていうのは探すの大変だったけど、今インターネットで見ればいっぱい出てくる。そういう良さはありますね、便利だね。

――その中で出版社の強みはなんだと思いますか。


田原総一朗氏: やっぱり企画力じゃない。それから紙の本の欠陥は、書店で売ることだね。書店というのは面積が限られているじゃない。するとね、あまり長くは置けないという問題がありますね。だいたい売れる本なら置くだろうけど、普通は平均どのくらい置いてあるんだろう、書店に。1ヶ月かな、2ヶ月かな。それがね、電子書籍はいつまでも置けるよね、面積っていうのがないから。

――絶版でなかなか読めなくなることもないですよね。


田原総一朗氏: そう、これは大きな変化だよね。極端に言えば50年でも100年でも前の物が読めると。だから『売れる』という事もどう見るのかと。極端に言うと、今までは1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月ぐらいで何冊売れるかが勝負だった。それが年単位になるかもしれない。例えば単純に言うと1万冊以上売れるかどうかが一つの勝負だよね、紙の本は。で1万冊以上売れるなら、まあいいんじゃないかと。でも1万冊って、せいぜい3ヶ月か4ヶ月で見てるんだと思う。

――あと書店に置かれる期間にも影響されますね。


田原総一朗氏: まず3ヶ月。3ヶ月もないかもしれないね。それでこの電子書籍だったら置かなくていいわけだから。それが1年だとか2年だとかいう単位で売れるかという判断、つまり判断の基準が全く変わってくると思います。

――出版社のプロモーションも全く変わってきますね。長期的なスパンでも見れますし。出版業界って我々の知性を牽引してくれるというか、後天的な我々の設計図の1つのような存在ですよね。毎回新しい知識をインストールできるものかなと。


田原総一朗氏: 出版社、編集者の役割が変わるんじゃないかな。今まで出版社の編集者はいろいろあるけど、どちらかと言うと受動的な役割が多かったね。ライターならライター、作者なら作者をね、何人か掴んでいると。30人とか50人とか。それに何か書いてもらうと。じゃなくてもっと新しいライターをどう見つけていくかっていうのが出版社の役割かもしれないね。

――発掘したり、ですね。本というのはすごく重要な役割を果たしますよね、人間の形成において。


田原総一朗氏: そう思う。だから逆に言うと出版社の役割が大きくなってきて。これから生きられる出版社と、生きられない出版社が、はっきり分かれて来ると思う。非常に。そういう意味でもね、出版社の編集担当がね、だんだんフリー化するかもしれない。例えば編集者が、『こういうのはあの出版社がいいだろう、こういうのはこの出版社がいいだろう』という風に、むしろどういう出版社とも関係を持てるという編集者が増えるかもしれませんね。

――今でもよく名編集長という言葉がありますが、もっともっと自由な形になっていくんですね。


田原総一朗氏: そう思います。

――そんな我々にとって欠かせない『本』ですが、田原さん自身の『本』との関わりについてお伺いしたいと思います。幼少時代から学生時代まで、どんな本を読まれていましたか。


田原総一朗氏: 僕はもともとね、作家になりたかったんですよね。だから高校・大学は小説ですよ、ほとんど。日本の作家もロシアの作家もフランスの作家も、もちろんアメリカの作家も。おそらくきっと、何百冊ぐらいか読んだと思う、外国の小説を。

――本を買われる時っていうのは、京都・大阪まで買いに行かれていたんですか。


田原総一朗氏: いやいや、当時は彦根(滋賀県彦根市)で買っていました。高校までが彦根ですからね。大学入ってからは東京ですが。

――学生時代までの間に読んだ本の中で、今でも田原さんの行動に影響を与えている本は何ですか。


田原総一朗氏: 例えば森鴎外なんていうのはね、僕は非常に影響を受けたと思うんですよね。彼はラジカルな物を書いていて、それで彼は軍医だったんですね。最終的に軍医官、軍医のトップにまであがるんですね。だから企業で言えばサラリーマン、あるいは公務員でもいいですね。それを続けながらラジカルな小説を書き続けたっていうのは、とっても僕はいいなと思ったんです。普通は、やっぱり生活をめちゃくちゃにして書くのが、割に作家なんですよ。

――何かそういうイメージはありますよね。


田原総一朗氏: 特に小説の作家はね。だけど鴎外は両方を立てたというかね。僕はテレビ東京のディレクターの時に、テレビでもやりたい事を何でもやっていましたから、『ドロップイン』という言い方をしていました、僕は。

――『ドロップイン』ですか。


田原総一朗氏: 普通『ドロップアウト』というじゃないですか、会社を辞めたりする事を。『ドロップイン』ていうのは、『中にいても手前勝手な事をやる、どこまでできるか』という事を言っていました。これは鴎外の影響だと思いますよ。会社の中にいながら手前勝手な事をどんどんやる。両方が出来る。これ結構面白かったですよ。2回逮捕されましたけどね。でオンエアもしましたよ。逮捕されながら。(笑)

――『もう何でもやっちゃえ』っていう感じですか。(笑)


田原総一朗氏: いや、やっぱりその視聴者に向かって今どういう物が必要かと。どういう物が見られるかと。だから僕は、テレビの番組というのはね3つの条件を満たしていれば、相当何でも出来ると思ってる。一つは視聴率が高いこと。二つ目、話題になること。三つ目、スポンサーが降りないこと。本も同じですよ。まず売れることでしょ。話題になることでしょ。それで出版社が『いやぁ、これはとってもウチでは出来ませんね』と言われない。これ全部重視されるんですよ。スポンサーが喜ぶような番組を作ったら視聴率とれません。で、また視聴率にあまりやると話題になりません。

――難しい問題ですね。ところで現在どれくらい本を読まれていますか。


田原総一朗氏: 今はちょっと忙しすぎるんで、必要な本を読んでいて、必要じゃない本を読む時間が今ないから、ちょっと残念だなって思っています。例えば今、月刊誌を7つやっています。中央公論で天皇の話ね。この摂関にもなるんだけど。で『潮』っていう雑誌と『Voice』っていう雑誌では、若者の対談をやっています。それから例えば紙にはならないけど、WEBで『日経ビジネス』と講談社の『現代ビジネス』の2つをやっていますね。『日経ビジネス』は隔週かな。それから『現代』は月1ですね。他にも『ポパイ』とかね。週刊誌は『週刊朝日』と『FLASH』と。

――それに加えて、さらにテレビもですよね。


田原総一朗氏: そう、だから必要な物は読みますが、必要じゃない物は読む時間がない。

――今どんな本を読まれているんですか。


田原総一朗氏: 今天皇について、具体的には平安時代をやっているんですけど、平安時代っていうのは摂関政治だって事なんで、世襲関白について書かれていたものを読んでいた。その次は今度は平清盛の時代になり、それから鎌倉になっていくと、そういった物を読んでいた。例えば清盛の時代について書いてある物で最近面白い物があって、こういう本はいっぱい買います。それこそ摂関政治だけでも30冊ぐらい買ったんですね。

――何処で買うんですか。


田原総一朗氏: アマゾンです、全部。

――買った本は、どんな読み方をされますか。




田原総一朗氏: 精読です、ほとんど。斜め読みは僕はできません、できなくなった。前は斜め読みしていましたけど。同時に4冊か5冊精読していますけども。

――その中で読んでいて、あ、これちょっと違うなという物も最後まで読まれるんですか。


田原総一朗氏: いやいや、つまらないのは読みません。(笑)つまんないかどうかというのは、書いてある事が深いか浅いかです。ああ、これは知っているからいいやと。

――独自の見解とか新しい切り込みがあると深いというか、面白いというのがありますよね。


田原総一朗氏: そうですね。

――そんなお忙しい田原さんですが、しっかりとした睡眠時間はあるんですか。


田原総一朗氏: とってますよ。7時間が目標ですね。実際は6時間から7時間の間ぐらいじゃないですかね。

――しっかり睡眠時間は確保されているんですね。テレビを見てもお忙しいんだな、と感じていましたが。


田原総一朗氏: 今テレビがね、『朝まで生テレビ』と、土曜日に『激論!クロスファイア』と、それからテレビ東京で『仰天歴史塾』というのをやっていまして、1回2時間版。これは近代史をやっているんですよ。明治からね。

――職業柄多くの本を読まれていると思うんですけど、昔の本と今の本って違いってありますか。装丁についても中身の書き方についてもそうなんですけど、何か変わったなというのはありますか。


田原総一朗氏: 読みやすくしなくちゃいけないと思っているでしょうね、誰もがね。中には読みにくいから売れるという本もありますね。だからこれなんかを書いたのは、前の、『日本の戦争』が売れたんですよね。ちょっと難しいという人がいるんで、それで『誰も書かなかった日本の戦争』を書いたんですよね。

――では、昔と違う点は優しく読者に伝えようとしているということでしょうか。


田原総一朗氏: うん。例えば池上さんの番組がウケるのは、分かりやすいからでしょう。みんな分かりやすい分かりやすいって。本だって2時間で分かるとかあるじゃん、広告で。『1時間でわかる』なんていうのもある。そういうのいっぱい出てるじゃない。だから分かりやすいっていうのは、今、ひとつの売り方なんですよね。

――それがいいか悪いかは全く別として、実際どうなんでしょうか。実際、情報だったり知識の判断レベルが、もっと大衆化するのって、何かメリットってあるんでしょうか。


田原総一朗氏: いまその逆サインは出ていますね。抽象的なものが売れていますね。

――明らかに昔と今では書き方が変わっていますよね、そうなると。


田原総一朗氏: うん。内田樹さんの『街場の~』っていう本も、むしろ抽象論で売っていますよね。まあ、本なんていうのはそうは言ったってテレビと比べりゃケタが全く違うんだから。例えば『サンデープロジェクト』なんて平均視聴率がだいたい7%ですよ。1%=40万人とすると300万人じゃないですか。で、300万人というのは日常での数字なんですよね。本で300万部って言ったら超ベストセラーでしょ。1年に1冊あるかどうかでしょ。本てだいたいね、1万部から2万部売れれば、まあいいやって感じなの。桁がちがう、全くね。だからテレビと本は全く別の物になってくるでしょうね。

――沢山の著書がありますが、どれくらい時間をかけるものなんですか。


田原総一朗氏: もちろん本によって違ってくるけれど、『原子力戦争』なんてのはやっぱり半年ぐらいかかっているんですよね。これは筑摩書房の『展望』という雑誌に連載されたんですよ。4ヶ月連載したのかな。その前に多分3ヶ月ぐらい取材していますから。もちろんやっている間も取材して。まあ、6ヶ月7ヶ月ぐらいじゃないですか。『日本の戦争』というのは、小学館の『SAPIO』という雑誌に連載されていたんですけど、1年ぐらい連載ですね。その前に1年ぐらいかけていますから、2年ぐらいじゃないですか。『大転換』(大転換 「BOP」ビジネスの新潮流)の場合は、潮出版社の『潮』に連載していたもので、これは1年連載ですね。

――どんどん書かれてくんですね。お仕事をされる場所はどこが多いんですか。


田原総一朗氏: 家です。だけど僕は人に会うのが好きなんですよ。人に会うのが趣味なんですよ。幸いなことに趣味が仕事になっちゃったんだけど。どの本を書くにもいっぱい人に会っています。

――普段どれぐらい家にいらっしゃるんですか。ほとんど外にいるイメージがあるんですけど。


田原総一朗氏: 昼間はいないですよ、だから夜ですね。場合によっては午前中とかね。

――仕事場はどんな様子なんですか。


田原総一朗氏: むちゃくちゃ。本や雑誌でむちゃくちゃ。(笑)場所とか自分では分かりますけども。

――インターネット環境もあるんですよね。パソコンは何を使われているんですか。


田原総一朗氏: あります。それからiPadもありますね。今使っているパソコンはね、Apple社のものです。慣れているからね。

――テレビを通して、『インタビューの巨人』とか、色々なイメージを持たれていると思うんですけど、。テレビで見るいわゆる『田原総一朗』という人物と、自分が思う自分とに大きな差はありますか。


田原総一朗氏: それはね、活字とテレビでも性格は全く違うと思ってる。特にね『朝まで生テレビ』を通して自分自身気づくのは、僕なんか凡人だから、ディスカッションする中でどんどんイメージが湧いてくるんですよ。その人の言葉に刺激されて。どんどんイメージが湧いて、広がっていくのがテレビですね。活字はどうかというと、ひとつのことがわからないと、単純に言うと、2日でも3日でも考えればいいんだから、深まっていくんですね、考えが。どんどん深まり、深まることで一種の抽象化も起きると。イメージがふくらんでいくのがテレビであって、どんどん考えが深まっていくのが活字であり、そこでまた違う性格の自分がいると思っています。

――そうすると、活字の田原総一朗さん、テレビの田原総一朗と性格は違うんですね。勘違いされているんだろうなと思うことはありますか。


田原総一朗氏: ああ、それは別に勘違いされてもいいじゃない。それからもうひとつテレビと活字の違いはね、活字は100%言葉ですよね。テレビでは言葉は表現のone of themです。声の大きさってあるでしょ。強さ、怒り声、目の力。目がね、光っているか、怒っているか、笑っているか。ジェスチャー、色々な事があってね。テレビでは言葉っていうのは表現のone of themです。活字は言葉が全て。ここが全く違う。だからその良さが活字にはあるし、テレビにはまたその良さがある。

――政治経済と文化も含めて、色々なメディアでご活躍されていますが、あるバラエティ番組で100個の質問に答えたりだとか、メイド喫茶に行かれたりだとか、『AKB48』についての言及もあったりだとか。『人生は好きな事探しだ』とおっしゃっていたかと思いますが、その座右の銘そのままのような形でお仕事されていると思うんですけど、今後のどんな野望を持っていますか。


田原総一朗氏: 今、映画を作りたいなと思っています。今割と本気で考えています。

――どういったテーマの映画なんですか。


田原総一朗氏: 内容に関しては、ちょっとまだ。テーマはしっかりあるんだけど、今はまだ公表できません。(笑)

――楽しみにしています。


田原総一朗氏: うん。でもね映画って金がかかるんですよね。今回構想しているのもやっぱり少なくとも5億円ぐらいかかる。それをどうやって集めるか。

――触れ込みとしては『田原総一朗、再びメガホンをとる』という感じになりそうですね。(笑)


田原総一朗氏: どうでしょうかね(笑)。まあ、実現するかどうかはわかりませんけど、今は本気でやろうとしています。

――最後に、田原総一朗さんにとって『本』とは、どういう存在ですか。


田原総一朗氏: 書くっていうのは、自分の考えを深めていくのが書くという行為だと思う。それを深めるというのは自己確認をするということです。『俺って何だ』と。何を考えているんだという事を確認している。例えば今だと、原子力発電が問題になっていて、日本人の70%以上が脱原発とも言われているとして、『本当はどうなんだ』という事を考えなきゃいけない。そういう問題がいっぱいあります。安全保障の問題も、今まで日本人は平和というのは安全保障を考えないことが平和であり、安全保障を考える奴は右翼だという考え。そうはいかないですよね。そういう問題、いっぱいあるよね。少子化の問題とかね。今一番大事なのは少子化だと思っているんですけどね。人口減少ね。そういう『色んな問題を深く考えさせてくれる』行為に、本が深く関わっていると思いますね。

――読者としては、『本』はどういう存在だと思いますか。


田原総一朗氏: 一種の宝物じゃないですか。どういう風に自分を刺激してくれるだろうかという事ですね。これからもどんどん新しい宝物に出会いたいと思っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 田原総一朗

この著者のタグ: 『ジャーナリスト』 『コミュニケーション』 『海外』 『ライター』 『出版業界』 『インターネット』 『紙』 『歴史』 『ビジネス』 『テレビ』 『新聞』 『人生』 『絶版』 『編集長』 『印税』 『雑誌』 『装丁』 『日本語』 『サラリーマン』 『リーダー』 『メリット』 『書き方』

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
著者インタビュー一覧へ戻る 著者インタビューのリクエストはこちらから
Prev Next
ページトップに戻る