須田邦裕

Profile

1956年、東京都生まれ。一橋大学商学部、一橋大学法学部を卒業。 会計事務所勤務を経て、昭和57年に税理士登録、開業。その後実務のかたわら一橋大学大学院商学研究科修士課程および同博士課程に学ぶ。 現在、須田邦裕税理士事務所所長として、関与先企業の税務経営問題に取り組む一方、各種講演会や税理士養成のための税法講師などを勤める。 著書に『本当はもっとこわい相続税』『会計事務所の仕事がわかる本』『起業から1年目までの会社設立の手続きと法律・税金』『経理担当者のための 税金のしくみと仕事がわかる本』(日本実業出版社)など。

Book Information

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筋を通し 正しきを伝える



須田邦裕税理士事務所所長をつとめる税理士の須田邦裕さん。関与先企業の税務経営問題に取り組みながら、長年の経験を活かし講演会や書籍でノウハウを伝えられています。「経験をあますことなく伝えたい」という須田さんに、豊富な読書経験から「本」と仕事への想いを伺ってきました。

「はっきりとものを言い 筋を通す」税務のエキスパートとして


――こちらの事務所は昭和57年の開設だそうですね。


須田邦裕氏: 私の長女と同い年です。息子も税理士になったので、私の父親の代から親子3世代で税理士です。私は税理士事務所のほかに、株式会社平沢商会という会社の社長も務めています。携帯キャリアのショップを中心に事業展開しており、従業員数は現在130人くらいです。

もともと同社の顧問税理士でしたが、社外ブレーンとして30年以上関わってきました。従業員は当初30人くらいでしたが、事業拡大していくなかで部門別損益管理や社員総会制度の導入を勧めたり、従業員の採用や給与制度の構築などの相談に乗ったりしていました。業績も順調に伸びて、会社説明会の担当者や採用面接官も務めていたのですが、後継予定の方が亡くなったため、当時の社長に懇願され平成20年に社長を引き受けました。

採用や財務、税務は税理士の業務の範疇でさして問題はありませんでしたが、営業のこととなると畑違いで当初は苦労しました。税理士の仕事は、『税務六法』を読めばだいたい答えが書いてありますが、社長になって悩んだときには福沢諭吉の『学問のすゝめ』の中から、その答えを見いだしました。

――「今月の一押し」としてサイトでも紹介されていました。


須田邦裕氏: 『学問のすゝめ』の一節に、蟻の話があります。人は大人になって独立して、自分でお金を稼ぎ、結婚して子どもが生まれて幸せなマイホームを築いて、それを周りの人は大した人だと言うけれど、それでは蟻の門人と同じだ。蟻は自分たちで巣を堀り、来るべき冬に備えて、えさを蓄え、子孫を残して立派な生活をしている、と。

けれども、人間が蟻と同じだったら、何百年経っても地球上には蟻塚しかない。ところが私たちには文明があり、快適な服を着て、夜でも電気がついて、その文明の恩恵を被っている。誰かが苦労して作ってきたものを受け継いでいるわけです。今までの先人を親と考えれば、そこから立派な遺産を相続したのだから、その遺産に自分が生きた痕跡を一つでも付け加えて、次の世代に引き継いでいくことが、人として生きる目的だ、と。私もそういう想いで、仕事に携わっております。

福沢諭吉には、ほかにも「瘠我慢の説」という素晴らしい論文があります。江戸城無血開城についての武士の態度について書かれているのですが、これを読んだ時に、はっきりとものを言う、正しいと思うことをやりとげる、そういう考え方に感銘を受けました。

――福沢諭吉は慶応義塾でしたが、須田さんも社長講座を……。


須田邦裕氏: ……そんなに大したものではありませんが(笑)社内で毎月開いており、私が指定した本を課題に、みんなで一緒に読んでいます。自由参加ですが、毎回50名ぐらいが集まっています。課題書は社員に自分で購入してもらっていますので、累計では既に20冊近い本が本棚に残る計算になります。この取り組みは仕事にも活かされているようで、社内のムードも一段と良いものに変わってきました。小さな輪ですが、こうした取り組みが企業として、従業員の幸せに繋がり、ひいては取引先の皆様のお役に立てることを願っています。

著書一覧『 須田邦裕

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