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世界中の本好きのために

山田祥寛

Profile

静岡県生まれ。一橋大学経済学部卒業後、NECにてシステム企画業務に携わり、2003年にフリーライターに転身。Microsoft MVP for ASP/ASP.NET。ASP.NET、PHP、Java、MySQLなどWeb技術関連の著書を多く手掛けるほか、「@IT」(ITmedia)や「CodeZine」(翔泳社)など、Webメディアでも執筆する。近著に『書き込み式のSQLドリル 改定新版』(日経BP社)、『独習Javaサーバサイド編 第2版』(翔泳社)、『はじめてのAndroidアプリ開発』(秀和システム)など。執筆コミュニティ「WINGSプロジェクト」では代表を務める。
【WINGSプロジェクトHP】http://www.wings.msn.to/

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常に初心者の視点で、新時代の出版の形を追求する



山田祥寛さんは、IT関連を中心に執筆するフリーライターとして活躍しています。また、日進月歩のIT業界において、良質なコンテンツを提供し続けるため、様々な分野に強みを持つ執筆者を結集する組織「WINGSプロジェクト」を主宰しています。山田さんに、同プロジェクトのコンセプト、書き手としてのこだわり、そして電子書籍のお話も踏まえ、今後の出版業界についての考察を伺いました。

「とんがった」技術者を組織化する意義


――早速ですが、近況をお聞かせいただけますか?


山田祥寛氏: 今は書籍をメインに執筆しています。それと、WINGSプロジェクトというコミュニティの企画の立ち上げから監修をやっていて、二足のわらじでやらせていただいています。

――WINGSプロジェクトはどのような組織なのでしょうか?


山田祥寛氏: 編集プロダクションに近いのですが、編集をやらない編集プロダクションというか、不思議な位置づけです。

――元々は山田さんの作品の、査読・校正などのサポートを行うメンバーだったそうですね。


山田祥寛氏: WINGSという名前ができる前、2001年か2002年ころから、執筆のお手伝いをしてもらっていて、2003年にWINGSプロジェクトという形になったころからは、執筆者の団体として発展してきました。

――そのように形が変わってきたのはなぜだったのでしょうか?


山田祥寛氏: ITの世界は移り変わりが激しくて、しかも範囲も非常に幅広いので、私自身が1人で負っていくのは絶対無理だということですね。私自身は広い立場で全体を見渡す立場になって、メンバーは専業のSEが多いですから、技術的にとんがったところをがっちり追ってもらうという役回りです。

――山田さんの文章は、専門的な話でも、分かりやすいと定評がありますが、ライターとして心がけていることを教えてください。


山田祥寛氏: 私は、基本的に何かの専門家になりたくないという気持ちがあるんです。MicrosoftのMVPということで、Microsoftの技術の専門家と言われることが比較的多くて、もちろんMicrosoftさんは好きですが、そこだけにコミットするつもりはないんです。あくまで外部者としてその技術を見て、その中に自分が入っていく時に苦労したところであるとか、もっと知りたいと思ったところを調べながら書くということは常々心がけています。長く続けていると、どうしても専門家に近い目になってしまうので、いかに初心者の目を維持していくかが非常に難しいところですね。

「書く」ことへの想いが募り、決意の文転


――山田さんは、本を読むことや文章を書くことは小さなころからお好きでしたか?


山田祥寛氏: 私は、小説家になりたかった人間なんです。というか、過去形ではなくて、今もなりたい人間なんです。幼稚園位の時から小説家になりたいと言っていたみたいで、ノートに「日本昔話自分版」のようなものを書いて遊んでいました。子ども向けの本を幼稚園のころからかなり読んでいたようです。

――どのような本がお好きでしたか?


山田祥寛氏: 小学校のころでは江戸川乱歩のシリーズを、単行本で出ていたものは全冊読んだ記憶があります。色んなものを読みましたので、何の本が自分の人生に影響したかとか言われれば、全部ということになりますね。

――本好きにはご両親の影響などもあったのでしょうか?


山田祥寛氏: 父はまるっきり理系で、母も理系っぽい人でしたから、小説は家にほとんどなかったです。ですから、誰の影響なのかが分からなくて、生まれた時から好きだったんだろうなとしか言いようがないんです。中学、高校あたりでは、自分で書いたものを友人に見せていました。友人がそこに一生懸命書き込みしてくれたものが今でも残っていますね。

――では、学生時代はいわゆる「文系」に進まれましたか?


山田祥寛氏: そこはまた矛盾しているんですが、理系なんです。高校は理数科に行きました。親が理系でしたので、そっちに流れていったのかもしれません。ただ正直なところ、気持ちは文系の方に向いていたので、結局、高校3年の11月に文転しまして、大学は文系に行きました。

――高校3年の11月というのはかなり厳しいタイミングですね。ご両親は反対されませんでしたか?


山田祥寛氏: 反対はされたんですけど、極端な反対はなかったんです。そこは親に感謝です。「お前がやる気のある方に行った方が良いだろう」と言ってくれました。なので、そこは比較的柔軟だったのかなと思いますね。

――勉強は大変ではなかったですか?


山田祥寛氏: 一番辛かったのは世界史でした。論文もあって、教科書レベルでは対応できないものですから。でも幸いにして私、歴史が好きで、小さいころからの習慣もありましたので、文章を書くのが全く苦にならなかったのが良かったです。

大学時代、インターネットに可能性を見出す


――大学は一橋の経済学部ですね。経済学を選んだ理由はなんでしょうか?


山田祥寛氏: 単純に数学が使えたからです。本当は文学部とかに行きたかったんですけど、理系の親から、つぶしが利かないと反対されて、お互いの妥協点がそこだったという感じです。

――大学ではどんなことを学ばれたんでしょうか?


山田祥寛氏: 経済史の方に進みました。正直なところ、あまり経済をやるつもりがなかったので、結局、文学に近い方面に行ってしまいました。それと、テニスサークルで部長をやっていたのですが、そのころにコンピュータの興味を持って、ちょうど流行になってきたホームページを作りました。

――それまではコンピュータの勉強はされていましたか?


山田祥寛氏: 小学校の4、5年くらいのころ、パソコンでBASICの勉強をしてたんですが、あまり奥深いところまでは行かなかったんです。小学生のレベルでは、実用的なことは結局できなくて、本当に言語として勉強するだけで、あまり面白さは見いだせなかった。大学でコンピュータを再びやり始めたのは、ホームページという実際に使える可能性のある技術に出会ったからです。

――インターネットにはどのような可能性があると感じられましたか?


山田祥寛氏: 自分自身が小説を中学、高校と書いてきたのですが、どうしても限られた友人にしか見てもらえない。ネットであれば自分の書いたものを見せることができますよね。まだあの当時、作品に反応が返ってくることはそれほどなかったのですが、アンケートを設けるとたまにコメントがあったりして、自分自身の発信の場として面白さがあると思いました。社会が変わっていく可能性も感じました。

――大学卒業後はNECに入社されますね。


山田祥寛氏: 大学時代に、コンピュータに興味が出たのでNECに入りました。でもなぜか資材部に入ってしまって、いまいち一貫性がない人生なんです(笑)。資材部の中で何をやりたいかということで、部署のトップの方と面接をしたんですが、新入社員なのに「システム開発がやりたい」って言ってしまったんです。今思うとトップは相当腹が立ったんじゃないかなと思うんですけど、隣にいらっしゃった部長の方が、なんとなくその場をまとめてくださって。蓋を開けてみたら、システム企画をやっていました。

「二足のわらじ」で、睡眠時間は3時間


――初めてのご著書はいつごろ出されましたか?


山田祥寛氏: 書籍執筆は入社1年目です。大学の時にテニスサークルでホームページを作っていたのですが、それだけじゃ面白くないなと、当時最先端のJavaScriptや、VBScriptをホームページの中で仕込んでいったんです。それをどういう風に作ったかというスクリプト紹介のページを別に作って、具体的なサンプルとしてテニスサークルのサイトへリンクさせたりしていたら、それを見た編集者さんから話があったんです。ただ、その当時は物書きで飯を食ってくというのはあんまり考えてなかったんですね。サラリーマンの生活を送りながら趣味の一環として書いていて、もし何かしらきっかけがあったら世の中に出せたら良いなという程度で、二足のわらじとは思ってなかったです。

――その後執筆のお仕事が増えて、スケジュール的に厳しかったのではないでしょうか?


山田祥寛氏: 2002年くらいでは、メインフレームのスパコン系のシステムから、オープン系のJavaを中心としたシステムへの移行が進んでいた時期で、会社から帰るのが毎日終電間際という状態だったんです。家に帰って来たら当然0時を回っていて、そこからパソコンを立ち上げて本を書き始めて、3時、4時まで書き、朝は6時に起きてという感じでした。

――執筆のモチベーションはどういったところにありましたか?


山田祥寛氏: 自分自身の仕事の役に立ったというのはありますが、やはり自分が書いたものが世の中に出ること、自分の力がどんどん充実していくというところに喜びを感じていました。大きな会社にいるとどうしても自分の仕事が、直接の成果として出ることが少ないんです。その対極として、書いたものがそのまま形になるということは、非常に面白いと思いました。

――NECを退職されて専業のライターになる時は、どういったお気持ちでしたか?


山田祥寛氏: 正直に言って、何も考えてなかったです。辞めたのは2003年ですが、その時期には雑誌で記事を書いたり、書籍も何冊か書いて、4時まで起きて6時に起きる生活が1年半近く続いてたんです。会社では、山田は勝手にしてくれていいという感じで、頑張れよとは言ってくれていたのですが、体がもたないだろうというのはありました。会社の仕事も手を抜いてたわけではなかったので、さすがに限界が来て、辞める決心をしました。家内も、こんな生活は止めてくれという感じで、むしろ早く辞めろと言っていたような気がします。

電子書籍は有料コンテンツの選択肢を増やす


――山田さんは電子書籍を利用されていますか?


山田祥寛氏: まだ、あまり使っていない状態ですね。無償のものをちょこちょこと自分のスマホに入れていますけど、あくまでどんなものかっていうのを見る程度で、実際に使うことはあんまりないんです。私にとって読書は、小説を読むことだと思っていて、技術書を読むのは仕事だと思っているんです。小説は、寝る前に時間を作ってベッドに転がりながら紙をペラペラして読むので、スマホはあまり開きたくないっていうのがあります。

――書き手、発信者として、電子書籍の可能性をどう感じていますか?


山田祥寛氏: 今まで書籍としてまとめられなかったものを、電子書籍としてまとめる可能性が出てきたなというのはあります。書籍の一番の魅力でありネックでもあるところは、ページ数にしても冊数にしても、量を作らなきゃいけないっていうところだと思うんです。ある程度のページと部数も刷らなければ、同人誌になってしまう。それには、売れる市場と、コスト計算の前提がないといけません。その代替として、今まではウェブサイトという選択肢があったんですが、ここのところ収益を出すことに限界が出てきています。
広告収入モデルは、まだ崩れたわけではないと思いますが、頭打ちになっているのも事実ですね。それではコンテンツに対してお金を払うという形ができているかというと、正直なところできていない。会員制の有料コンテンツを設けたとしても、商売としてなりたちうるかは疑問というのは、どなたと話していても出てきます。電子書籍も形としては同じなんですが、対価を持ったコンテンツビジネス、値札をつけられるものが新たにできたことになります。量を作るのが難しいニッチなものを、ウェブサイトにただ出すだけではなくて、対価を伴う情報として出す選択肢が増えたということなんです。

個々の書籍に統一したコンセプトを


――出版社、あるいは編集者の役割も変わっていくでしょうか?


山田祥寛氏: 出版社も今悩んでるところだと思いますし、私も冒頭で申し上げたように編集プロダクション的な業務をやっているものですから困難を感じることもあるのですが、出版社には、流通させる役割、編集するという役割があります。流通としては、紙から電子になったことで、出版社の意義というのは非常に弱まってしまうとことがあると思うんです。



ただ、出版社が要らなくなるわけではないんです。編集としての役割に絡むことですが、書籍1冊の中である程度統一性、一貫性を持たせることは、それなりに書ける方でしたらできるんです。でも、例えば「10日で覚えるシリーズ」のように、複数の書籍で統一性の取れたコンセプトのある場には必要で、それは絶対1人じゃできないところなんです。シリーズとして見せて、世の中に対して流していくところに出版社としての意味はあると思っています。

――電子書籍によって出版が容易になり、多くの企業が参入することも予想されますが、今後の出版や編集に必要なことはどういったことでしょうか?


山田祥寛氏: 1冊をただ作るためだけに見てくというよりも、最適なコンセプトを見越した形で著者達をまとめて、編集者としてどうコンサルティングできるかだと思うんです。場を設定して、その中で個々の作品を著者がしっかり頑張るという体制が、いかに作れるかにかかっていると思います。1冊の本を編集するだけなら、ネット上で人を集めて査読体制を作ることも可能ですから。本作りの下流の部分の編集だけに目がいってしまうと、著者としては魅力を感じにくいというのがありますね。

電子媒体のモデル作りに取り組みたい



山田祥寛氏: 電子書籍の良いところであり、悪いところでもあるのは、更新がしやすいところだと思うんです。電子書籍も含めて、現在の出版社との契約形態は、単純に本を売って、著者は印税をもらうという形なんですけど、求められている形はそうじゃないのかもしれないという気がします。更新をして最新の情報を提供するのであれば、システムの保守契約に近い契約をしていかないと成り立たないんだろうなと思っています。
私はスマートフォンのプログラミング本を書いているんですが、書籍を出す段階で情報が古くなっていたりするんですね。そういう時は、とりあえず自分のウェブサイトで、インストール方法や、手順を公開したり、編集者さんが仕事の合間に新しい更新情報のまとめを作ったりしている。でも、それは仕事の合間でやっているという形ですから、長期的には成り立たない。とにかく人力が必要になりますから、なんとかしないと到底業界の人間は持たないんです。

――電子書籍への取り組みを含め、山田さんのこれからの展望をお聞かせください。


山田祥寛氏: 著者と編集プロダクションと、両方の立場がありますが、著者としては、とにかく新しいことをやっていきたいです。自分が知ってることだけを書いていくのは非常に楽ですが、先程申し上げた通り、常に初心者の気持ちを大事に、悪い意味での専門家になりたくないと思っています。
編集プロダクション的な立場としては、やっぱり電子書籍がまだよく分からないところがあります。契約形態もそうですし、フォーマット面の問題や、どのように展開しやすい形を作っていくのかなど、そういったところを整理して、10年、20年経っても本を残せて、なおかつコストパフォーマンスに見合うような形をどういう風に作っていけるのかということを考えていきたいと思っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 山田祥寛

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