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世界中の本好きのために

有田秀穂

Profile

1948年、東京都生まれ。東京大学医学部卒業後、東海大学病院で臨床に、筑波大学基礎医学系で脳神経系の基礎研究に従事、その間、米国ニューヨーク州立大学に留学。東邦大学医学部統合生理学教授等を経て、現在は同大学名誉教授。「セロトニン研究」の第一人者。脳内セロトニンを活性化させる技法を教えるセロトニンDojoの代表も勤める。 近著に『涙活でストレスを流す方法』(共著。主婦の友社)、『50歳から脳を整える』(成美文庫)、『医者が教える正しい呼吸法』(かんき出版)、『書くだけでストレスが消えるノート』(扶桑社)など。テレビにも多数出演。

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メンタルヘルスの問題を医科学で紐解く


――執筆を始めたきっかけは、どのようなことだったのでしょうか。


有田秀穂氏: セロトニンの本を書こうと思ったのは、私がやっていたセロトニンと座禅の研究が、実はメンタルヘルスの鬱との関係があるということが見えてきた時だったんです。セロトニンとは何か。そしてセロトニンはどういう働きがあって、どうすると弱るかというメカニズムを社会に情報として発信することによって、増えつつあるメンタルヘルスの問題に対して「医科学の方面から何か役に立つ情報が与えられるかな」と思ったんです。そういったテーマで書いた最初の本が好評だったんです。その後は、そういうセロトニンと座禅、あるいはセロトニンと呼吸法という流れで本を書きました。もう50冊以上になったかな。

――最初の1冊はどのようにしてでき上がったのでしょうか。


有田秀穂氏:セロトニン欠乏脳』という本はNHK出版から出したんですが、大石さんというNHK出版の編集長の方が私の講演を聞きに来られて、「面白いから本にしてみないか」というオファーがあったんです。本を出したら広まり始めて、そこからはテレビに出て、さらに広がっていった。そういった形で著作の数も増え、セロトニンに対する関心もどんどん広がっていったんです。

――執筆に関して、どういった想いをお持ちですか?


有田秀穂氏: 中外医学社という医学の専門の出版社がありますが、私はその出版社の編集委員をやっていたのです。2000年のちょっと前ぐらいに、月刊誌の『クリニカルニューロサイエンス』という、臨床の脳科学を主に医者に向かって発信するといった雑誌の編集委員をある人を介してオファーされたんです。そうやっているうちに脳生理学の連載をすることになって、それからは12年間ずっと連載を毎月やり続けています。毎月、脳生理学のテーマを選んで12年間、1回も落とすことなくやってきました。脳科学においてその時代で一番興味を持たれているホットな話題のものをいつも選んで、それを自分なりに消化して書くということを、長年続けてきました。大変だったなと思いますが、今は、そういう経験が出来たということがすごく大きかったと思っています。

――12年もの間、連載を続けられるにあたってご苦労されたことはありますか?


有田秀穂氏: ネタがだんだん切れてくるとか、自分の関心はもうここで終わりだとか、そういう意味での行き詰まり感というのは、私にはなかったんです。このテーマをある程度書き終わったら次はこのテーマ、次はこのテーマといった感じで、それぐらい脳科学というのがどんどん広がっていましたし、興味深い新しい領域が広がっていたことは間違いないです。脳科学という領域が発展途上でもあったし、セロトニンも含めて新しい治験が多く出てきていました。最後の6年間は、脳科学の中でも、特に心に関係する脳の情報が増えてきていました。そういう意味では後半の6年ぐらいは、ずっと勉強しながら情報を発信していたように思います。
例えば1つのレビューというか、総説が出るのに1000ぐらいのオリジナルの研究があって、その研究をある研究者が纏めたというものを、自分なりに消化して、たった2ページくらいなんですが、そこに書き込む仕事をずっとやってきました。そういう意味では私自身が驚き、興奮したものを、なるべく簡単な言葉で、全く知らない人たちに情報を送っていく。私のフィルターを介してということなので、果たしてこれでいいのかなという不安もありますが、少なくとも読者からの反響をとても感じるものがありました。医者などの専門家に向けた解説書は作っていたのですが、先程のNHK出版をきっかけに、一般の人向けに書く機会が生まれたんです。私の研究成果も踏まえて一般の人に還元するというか、1つの啓蒙活動といった形で情報を社会に広めていくということになりました。色々な脳科学の知識がどんどん膨れあがっていたところと、出版の機会とが丁度重なったのだと思います。

面白いものを見出す能力が必要


――本を書く上で大切にされていることは?


有田秀穂氏: 文章の上手下手じゃなくて、どちらかというとちょっと難しい内容を分かりやすく説明するということ。それは自分自身の1つの能力かなと思います。

――編集委員という経験をお持ちの先生から見た、編集者の役割とはなんでしょうか。


有田秀穂氏: 編集者は色々な能力が必要だと思うのですが、やっぱり面白いものを見いだす能力は必要だと思います。毎月編集委員会をやっていましたが、面白いテーマを見つけるだけじゃなくて、精神医学全体的というか、臨床という現場との関係もあるので、医学の中での位置もきちんと確認しなくてはいけません。そういうことを毎月やっていたことによって、知らない間に編集者の見方を訓練することができたのかなと思います。

著書一覧『 有田秀穂

この著者のタグ: 『大学教授』 『科学』 『考え方』 『研究』 『理系』 『医者』 『幸福学』

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