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世界中の本好きのために

楠木建

Profile

1964年東京生まれ。一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授、一橋大学イノベーション研究センター助教授、ミラノのボッコーニ大学ビジネススクール客員教授などを経て、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授。日本語の著書に、『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)、『知識とイノベーション』(共著、東洋経済新報社)、監訳書に『イノベーション5つの原則』(カーティス・R・カールソン他著、ダイヤモンド社) などがある。

Book Information

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医者で言えば「臨床」、経営ならば「現場」に役立つ知識を


―― 2010年、『ストーリーとしての競争戦略』、がベストセラーになって実務で経営をしている方に大きく反響がありましたね。


楠木建氏: 普通の経済学者は、アカデミックな手続きにのっとった学術論文を書いて、審査を受けて学術雑誌に掲載して、それが経営学者のコミュニティーで広まっていって、いい研究だと引用される。僕はあるときからそういう活動はしていません。僕のオーディエンスは学者のコミュニティーじゃなくて、実際に商売をしている人なので。そういう人にインパクトがあればいいと考えています。だからいまみたいな話からすると、経営学者じゃなくて経営論者。仕事上の興味としては、やっぱり「商売がもうかるために大切なロジックは何かな」ということを考えているということに尽きます。特に僕の場合は、「競争の中で長期的な利益を出すためにはどういう理屈が大切か」ということを考えていますね。

――楠木さんは他の研究者の方たちとは違うスタンスで活動されていらっしゃるんですね。




楠木建氏: 今は自然科学のアナロジーとしての経営学にはあまり興味がない。以前は研究というのはそういうものだと割り切ってやっていたこともありますが、仕事を始めてから7年くらいやってみて、「自分にとってはこの線はないな」と思って、手じまいにしました。なるべく大量のサンプルから因果関係を発見しようとするような学術論文も書きましたけれども、そういう論文はアカデミックのコミュニティーの中では読まれますけれども、一般には読まれない。そもそもが商売している人のために役に立ちたくてやっているはずなのに、商売をしている人には届かないんですよね。まるで、現実に患者を診ているお医者さんに使われない知識を蓄積している基礎医学をやっているような気がしたんで、もうちょっと臨床をしたいなと、患者さんに届くためにやりたいなという風に思ったんですね。ただ、こんなことをちゃんとした経営学者、要するに僕以外の殆どのちゃんとした人が聞いたら「何を言っているんだお前は」と思うと思いますね。ま、良し悪しではなく好き嫌いの問題ですね。天丼とカツ丼どちらがいいんだみたいな話で、僕はカツ丼がいいんだと(笑)。

小学5年生までアフリカ育ち、その影響でテレビはあまり見ない


―― 楠木さんは幼少期アフリカで過ごされたんですね。


楠木建氏: ええ、僕はアフリカで育ったんですが、小学校5年生にはもうこっちに戻ってきていたので、別に大人になってからの仕事上の影響っていうのはあまりないですよね。

―― 生き方の面ではどうですか?


楠木建氏: やっぱりアフリカは非常にのんびりとしていましたので、のんびりしたグウタラな性格になったと思います。宿題はおろか、授業すらまともになかったですからね。学校は寺子屋みたいな感じですね。だから日本に帰ってきて「周りの同級生のやる気が違う」と思いましたね。日本では部活もすごく一生懸命やるでしょう。全くああいうのはできませんでしたね。

―― 帰ってきてからご苦労はありましたか?


楠木建氏: いや子供ですからね、適応も早かった。でもテレビを見た時はびっくりしましたね。アフリカには当時はテレビ放送がなかったから。「オッ、これがテレビか、中に小人が入っているんじゃないの」っていうくらい。だから僕はテレビを見る習慣があんまりなくて、多分この30年間ぐらいでテレビを見た時間を全部合計すると、28分ぐらいだと思います。1年に、50秒ぐらい(笑)。1年に1分も見てないと思うんです。テレビはアフリカ時代の生活の1つの影響でしょうね。

読書は趣味のものを年間300冊


――楠木さんの情報源はどういったものですか?


楠木建氏: やっぱり本や雑誌を読んだり、論文を読んだりしますね。普通にそれは仕事でやりますよね。テレビはなくてもまったく困りません。

―― 学生時代のころはいかがでしたか?


楠木建氏: 読書が本当に好きでしたね。

――何冊位読まれますか?


楠木建氏: 仕事以外の趣味の本では、年間300冊ぐらい読むと思うんですけどね。仕事で読むものは、仕事なので「読書」には入らない。朝早く仕事を始めて、なるべく早く帰る。4時ぐらいに仕事が終わったら家へすぐ帰ります。娘の部活とどちらが先だ位の勢いです(笑)。お酒も飲まないので、読書以外にやることがないんですね。仕事へ行って、ジムへ行って、うちへ帰る。それで読書して、ご飯を食べて、読書をして、寝る、みたいな。平日はそんな感じです。土日は、仕事がある時とない時がありますけれども、ない時は基本的に読書ですね。あとはバンドの練習へ行きます。

―― バンドをやっていらっしゃるんですか?


楠木建氏: 弟とブルードッグスというバンドを組んでいて、70年代のロックをやっています。ライブは恵比寿のLive Gate Tokyoに出ています。

―― 仕事ではなくて読書として読まれる本は、どちらで購入されますか?


楠木建氏: 今はAmazonが多いですね。自分の楽しみで読む本は、半分以上Amazonで購入します。あまり系統立って読まないですけれども、割とレコメンデーションとかにつられますね。基本的にフィクションよりノンフィクションの方が好きです。やっぱりフィクションだと何でもアリなんで。現実に世の中で起きたことの方が、頭が動いていいですよね。僕は割と頭を動かしていたい方なんで、そういう頭が動く本の方がいい。そうすると何か頭が動いて、理屈が分かってスカッとする。多分これはスポーツをやるみたいなのと同じような爽快感なのかもしれないですね。腑に落ちると、モヤモヤしたものがなくなってスカッとするという感じですね。

―― レコデンメーションも活用されてるんですね。


楠木建氏: やっぱり考え事というのは注意だと思います。情報というのは幾らでもあるわけですけれども、そこに人間の注意が注がれて思考がスタートする。人間の注意量っていうのは一定ですから、単純に取り得る情報の量を増やしていくと、それに注がれる注意は減る。だから僕は情報の量を増やすということには全然関心がないですね。だって、一生かけたってね、100回ぐらい生まれ変わっても消化し切れない情報がすでにある。希少性がまるでない。だから、もう普通に成り行きで当たっていって、本が面白ければもうそれでOK。どこかに面白い本がないのかなって探したりとかはしないですね。ただウロウロしているだけでも、千冊ぐらい面白い本があるじゃないですか。それを読むだけでも3、4年かかりますからね。だから僕はもうおなかいっぱいですね。これはありがたいことですよね。尽きない喜びだと思うんですよ。

著書一覧『 楠木建

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