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世界中の本好きのために

佐々木直彦

Profile

1958 年生まれ。一橋大学社会学部卒業。リクルート、産業能率大学研究員を経て起業。20数年にわたりコンサルタントとして活動。プロデュースの方法論を体系化。多くのビジネスプロデューサーを育成。事業創造、営業戦略、組織変革、リーダー教育、人材採用の分野で多数の実績がある。また、食のプロデュースやリゾートワークの推進など、都会と田舎の間に、新しい人モノ金の動きを生みだす活動を展開。デジタルハリウッド大学大学院では「プロデュース能力開発演習」を担当。著書に、『考えるノート』『プロデュース能力』『コンサルティング能力』『キャリアの教科書』など。

Book Information

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ノンフィクションとコンサルティングの手法は近い


――コンサルタントとしてのお話をお聞きするうちに、意外なお話が出てきて驚きです。その時の選択次第で、今ごろノンフィクション作家として活躍されていたかもしれませんね。


佐々木直彦氏: 明確に思っているんですけど、ノンフィクションライターとコンサルタントは非常に似ているんです。作品を生み出すのがノンフィクションライターで、コンサルタントは企業相手に結果を出してお金を頂く仕事なので、アウトプットは異なりますが。結局、自分しかない情報を取りにいかないと、圧倒的に素晴らしい価値は生まれないんですね。コンサルでも、誰が見てもわかっちゃう情報でやるのは、まあ事務処理的な物はあるけれども価値はないんです。全然誰も思わなかったような視点を出して、「なるほど、気が付かなかったけどそうだ」って言わせることが大事なんです。相手をその気にさせる世界を作らなきゃいけない。そのためには、全く独自に情報収集して、それをどう組み立てるかという思考も大事なんです。例えば、美味しい生ビールを作るという仕事をする時に、生ビールを出しているお店に、10年担当している営業マンと一緒に行くわけです。その時に10年ずっといい関係を保ってきた営業が聞けなかったことを、その場で聞けないとダメなんです。

――相手から色々な話を聞き出すコツはありますか?


佐々木直彦氏: 人間って本当は自分で自分のことをもっともっと好きになりたいんですよ。肯定したいんですよね。でも自分だけでは肯定しきれない。それをこっちが意味づけするというか、うまく聞いて組み立ててあげると、自然に肯定していけるんですね。聞き出されることがすごく気持ちよくなってくるし、うれしくなってくるんです。そうすると、自分で話そうと思っていかなかったこと、それから忘れていたことを話し出すんですよね。相手に興味を持って、リスペクトできるところが見つかると相手の中に入っていける。そうして引き出してきたものを組み立てる。アプローチがすごく大事で、これはノンフィクションライターと全く一緒なんですね。コンサルタントは未来に焦点を当てて、問題を乗り越えるために何かを推進しましょうみたいなことをしなければならないので、表現の落としどころは多少違いますが、非常に似ているところがある。コンサルタントは文章もうまく書けたほうがプラスですし。猪瀬直樹さんなんか見ていると、ノンフィクションを書いていますが、コンサルタントなんです。もともとお節介な人じゃないですか、あれは元からだと思いますよ。政治とか行政の世界に行きましたけども、同じようなことだと思いますね。

――今後ノンフィクションの作品を書かれるご予定はありますか?


佐々木直彦氏: 今でもノンフィクションで書きたいテーマがあることはあります。耳の聞こえない人の世界について書きたいというのがあるんですね。僕は一時期耳の聞こえない人とたくさん交流していて、手話サークルに行ったりしましたが、世の中には耳の聞こえない状態がどういうものか、全く知られていません。大変だろう、障害者なんだろうぐらいにしか思われていなかったんですよ。身近にいる人は違うことを思っていたと思いますが。企業って、障害者雇用を推進しなきゃいけないということで、何%を取らなきゃいけないって指標ができていますけども、耳の聞こえない人っていうのは、人気が高いんですね。なぜかっていうと、車いすだと設備費がかかっちゃったりするので。あんまりいい言い方じゃないけど、そういう意味じゃコストがかからないと言われているんです。



ただね、コミュニケーションがうまくいかなくて、トラブルが多かったり、そこで続かなかったりして辞める人が実は多いんです。それは、耳の聞こえない人の側にも実は問題があるということがわかってきました。やっぱり閉ざされた世界にいて、普通のことがあまりにもわからない人がいらっしゃるんですよ。耳の聞こえない人もちょっと情報を取ったり勉強したりする必要がある。だけど、聞こえる側があまりにも知らなすぎることのほうがもっと問題なんです。これを知るだけで、「そうだったのか、じゃあこうしたほうがよいな」っていう世界があるんです。

「人」から離れられないから文章を書く


――佐々木さんにとっての本、読書についてお伺いしたいのですが、ご著書で読書記録を書かれているという風に拝見させていただいたんですが、どのようなものですか?


佐々木直彦氏: 僕はノートをすごく大事にしているんですよ。12月に出た本も「考えるノート」っていうんです。ノートが1冊あれば、どんな混乱していることも必ずまとまって、誰かを説得したり、新しい動きを起こせるように思考を進化させられるんです。読書記録に関しては、昔はとにかく読んだら記録をつけようということをやっていたんだけど、後につながる整理じゃないと意味がないなと思ったので、最近は大事な本の見開きに文章だけじゃなくて絵を描いたり、チャートを書いたりしています。そうやって残しておくと、本のイメージが、見開きを見ただけで全部思い出される。もちろん中には線を引いたり書き込みをしたりとかもします。

――執筆はいつもどのような場所、スタイルで行われていますか?


佐々木直彦氏: ここは事務所なんですが、来てから6年もたっているんですけれど、最近までここで書けなかったんです。もちろん締め切りがあればやるんですけど。僕は森が好きで、森の中のほうが執筆がしやすいんです。原稿はワープロじゃなくて、エディターって言われるソフトで書きます。MacだったらJedit。WindowsだとWZ Editorですね。使うのはMacのほうが多いんだけど、でも質がいいのはWZ Editorのほうですね。

――ノンフィクションのお話からも文章を書くことに思い入れがあると伺われますが、書くことは佐々木さんにとってどういう行為でしょうか?


佐々木直彦氏: 小さいころから文章に敏感で、中学ぐらいから時々詩を書いていたりしていて、どう表現すれば伝わるかなとか、感動をするかなっていうのは、すごい関心があったんですね。もともとは理科系だったんですけども、どうしても「人」から離れられないなと感じて、苦手だったけど文系の勉強もして、文章だけはずっとやっていきたいなと思っていました。僕は本を書くようになったのは独立してからで、それまでは共同翻訳が1冊あったくらいですが、本を書くと、反応してくれる人がいるのが大事なことですね。プラスでもマイナスでも反応がありがたい。なるほどと思うこともありますしね。後、ブログを書いたりとかレビューを書いたりするだけじゃなくて、アプローチしてくる人もいるんですよね。個人でもいますし、企業からも来る。「プロデュース能力」なんかは一番多かったですね。

――本を書く際に気を付けていることや、文章についてのこだわり、流儀はありますか?


佐々木直彦氏: 本によって違うんですよね。基本的に参考文献は使わないんです。本を読んでインスパイアされるってことはもちろんありますが、何かを参考にして書くということはなくて、自己流を自己流じゃないように書くことが多いですね。もともと自己流から始まっているんだけど、読んでいる人が自己流って気が付かないように、どこでもやっていることだと思って読んでもらえるようにすることが大事です。後はわかっていただくために、ケースストーリーをすごく大事にしているんですよ。ケースストーリーって質が低いとしらけるんですね。リアルだなって感じていただけるように気を付けながらやっているつもりです。でも人によっては、これ全部ウソだろうと思う人もいるんです。Amazonのレビューなんかを見ても、そう読んでいる人もいる。それは仕方のないことですし、どちらでもいいかなって思いますね。虚構でも入り込める虚構があるわけですしね。

――文章を書くのは速いほうですか?


佐々木直彦氏: エンジンがかかったら速いですね。一番頑張った体験は、『コンサルティング能力』を1ヶ月山にこもって書いた時に、1日が26時間サイクルになりました。あんまりやっちゃいけないことですが。限界までやったらもぬけの殻みたいになっちゃって、3ヶ月ぐらい何か起こったら死ぬなという体調になってしまいましたね。

――現在の本や出版業界について何かお気づきになる点はありますか?


佐々木直彦氏: 世の中で本が売れなくなってきているのは困りましたね。ネットを見ちゃっているでしょ。例えばFacebookだって、毎日1時間以上やっている人だってたくさんいるじゃないですか。そうしたら本を読む時間がなくなりますよね。情報を取る窓口も多様化しているし、情報を取るだけじゃなくて、SNSで書き込まないと、自分がそのコミュニケーションの中から出ていっちゃうみたいな感じもあるんでしょうね。

電子書籍はメディアミックスの可能性を生かしきれていない


――佐々木さんは電子書籍はお使いになっていますか?


佐々木直彦氏: 昨年末からキンドルの愛用者になりました。タブレット一つで何十冊分も持って歩けるというのはすごいですね。

――蔵書をスキャンして電子化することには抵抗はありますか?


佐々木直彦氏: キンドルを使うようになってからなんですが、自分の書いた本、それから、何度も読み返したい本、読みたいと思って買ったのに読めずに時間が経ってしまった本をスキャンしてタブレットで読めるようにして持ち歩きたくなっています。自分の書いた本は、何を書いたか意外に忘れてしまうので、いつも持っていられると安心じゃないですか。何度も読み返したい本は、もう一冊買って、一冊スキャンして、紙の本は紙の本で書き込みなどしながら読み続ければいいし、誰かとディスカッションしてテーマを深めたい本は、さらにもう一冊買って相手にプレゼントする。こうすると、素晴らしいことが起きる、つまり無理やり相手を巻き込んで安く勉強会ができるんじゃないか、などと妄想しています。

――スキャンされた場合に著者に印税が入るなどの仕組みについてはどう思われますか?


佐々木直彦氏: それは素晴らしいね。たとえ1冊1円でも2円でも著者に入るようになれば、応援してくれる人が増えるでしょうね。でも、例えば300人の著者しかいなかったらやりやすいけど、連絡つかない人がいたらどうするのとか、色々な問題がクリアできれば方法はあるかもしれないですね。

――電子書籍には今後どんな可能性がありそうですか?


佐々木直彦氏: 偉そうなことは何も言えないんですけど、印税があるラインを切ると生活できなくなっちゃう方が出ているんじゃないかという気がするんですね。だから責任を持ってなんとか食べられるビジネスモデルを作らなきゃいけないと思います。そこにおいて、電子書籍というのは、結構可能性があると思うんです。これはメディアミックスがやりやすいというのが1つあると思います。つまり、誰かの本を電子書籍で読みますというのが基本ですが、例えば、人気コラムのWebサイトがあったとして、最近の大人女子マーケットの注目点はコレとコレというビジネステーマがあったとして、そのテーマの本がクリックすれば紹介されて、いくらか払えばダウンロードされてその場で印税が発生するという風なことができるじゃないですか。今後ブレークする可能性をはらんでいると僕は思っています。

――今はまだ電子書籍の可能性が生かしきれていないと感じられますか?


佐々木直彦氏: 全然生かしきれていない。最近僕の本も電子書籍にしてくださいっていうのも来ているんだけど、「あ、そうですか」ってぐらいしかないです。それよりも、例えばもう増刷しなくなった本を、まだ読みたい人もいますから版権引き上げて、こっちが再利用したほうがいいんじゃないかと思っています。無駄になっているコンテンツを生かすという意味でクラウドって大事だと思うんです。そこに行けば取って来られて、コンテンツが使えるという状況にすればいいわけですよ。で、出版社が電子書籍もやりますと言って著者と契約して、今までの本と同じように印税もほんのちょっとだけど払いますという感じだけじゃ、全然面白くない。

Amazonが出版機能を持って、印税30%を払いますという風になったら燃える人がいるじゃない?Amazonというメディアで完結させて、どうやってプロモーションしていこうかという発想のほうがいいかもしれないんだよね。本屋さんに出すのは売れてきたら考えるぐらいでいい。Amazonが別会社を作ってそこから出すとか、何か考えればいいわけで、これからだと思いますね。

後、CDも売れなくなって、松任谷由実さんとか、山下達郎さんとかが、これからはライブを大事にしますとか言っているんだけども、ライブは確実に収益が上がるわけです。それと同じように、特にビジネス系の本なんかは、セミナーにつながることがある。本はテキストとしての可能性もあるし、セミナーのプロモーション材料として、あるいはセミナーを受けた後に買うという連動もあるじゃないですか。セミナーはすごくコアで、最高のセミナーは値段も高いんだけれども、コアだから何千人も来なくて、せいぜい何百人だけど、電子書籍だとそのくらいの数を出すのも簡単じゃないですか。1冊が10000円とか、場合によっては30000円って場合があってもいいわけじゃないですか。そういうことがやりやすくなったと思います。

――最後に、コンサルタントとして今後取り組んでいかれるテーマを教えてください。


佐々木直彦氏: プロデュースできる人を増やすことはとてもいいことだと思っていますので、まずこれをやります。最近、プロデューススキル、特に思考のスキルを身につけると、うつがよくなるってことがわかってきたんです。治療というのは本来マイナスをゼロに近づけるものだだと思うんですが、プロデュース思考によってプラスに転換しちゃう。つまり、いままでできなかったことができるようになって、ビジネスパーソンとしても、人間としてもスケールが大きくなって、花開いていなかったその人の才能が実って、結果としてうつがよくなっている。こういうことが起きるようなんです。僕は医者ではないし、精神科医と組まなきゃいけない部分もあるかもしれませんけど、予防とか、ある程度良くなった人がさらに良くなるスピードが高めるために何かできるのではないかと思っています。

それから、地方を元気にして、同時に、都会で働く人のワークスタイルを転換してもっと人間的にするために、「食」と「ワークスタイル」を切り口にして、都会と田舎のあいだに新しい人・モノ・金の動きをつくりたいと考えています。いま仕掛け中で、まだ言えないこともあるのですが、いくつか、今年発表できるようにしたいですね。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 佐々木直彦

この著者のタグ: 『ジャーナリスト』 『コンサルタント』 『コミュニケーション』 『コンサルティング』 『教育』 『世代』 『キャリア』 『営業』 『独立』 『情報』 『プロデューサー』 『プロデュース』 『恥』 『飲食』 『思い込み』 『マスコミ』

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