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逢沢明

Profile

京都大学大学院博士課程修了。現在、京都大学准教授(情報学研究科)・工学博士、ニューヨーク科学アカデミー会員。知性学、マクロ情報学の気鋭の研究者であるとともに、教育費高騰の時代に完全無料の初等教育サイトの構築に向けて財団設立も目指す。子供たちを飽きさせない教育のために、パズルやクイズなども重視している。著書に、『ゲーム理論トレーニング』(かんき出版)、『実践・論理思考トレーニング』(サンマーク出版)、『複雑系は、いつも複雑』(現代書館)、『直観でわかるゲーム理論』(東洋経済新報社)、『大人のクイズ』、『頭がよくなる論理パズル』(以上、PHP研究所)など、ベストセラー多数。

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20年前の作品でこのたびSF作家デビュー


――その後もご本名での学術書のほか、実用書なども幅広く出版されました。特にゲーム理論の解説書はベストセラーになりましたね。


逢沢明氏: よく売れたのは10年ぐらい前の『ゲーム理論トレーニング』(かんき出版)ですね。ゲーム理論というと冷たい、権謀術数みたいな感じでみられることが多いんですけど、もうちょっと人間味を考えようとしています。ハートのあるゲーム理論というかね。本当のことを言うと、今度は「日本的なゲーム理論の使い方」みたいな形で書いてみたいかなとか、数学的な立場より、フィクションの形で読ませるほうが、ひょっとしたらもっと受け入れてくれるかもしれないなんて考えています。日本人って「こうしよう」という考え方はできるけど、「こうしたら、こうなる」って先の影響を考えるのがひどく苦手なんです。政府だってそうですが、先の影響を考えないで借金漬けでやっていると、取り返しのつかない危機を招きます。だからゲーム理論や論理思考力を重視しているんです。情報という考え方だけで世の中や世界の見方が変わりします。

――これからまだまだアイデアが出てきそうですね。ところで、逢沢さんはこのほど、SF小説家としてデビューを果たしたそうですね。そのことをぜひお聞かせください。


逢沢明氏: 20年ほど前に書いた小説を東京創元社さんの短編賞に応募してみたんです。年代だけ今よりもうちょっと先に移して。中国の深圳を舞台にした小説なんですけど、それが候補作に残って、今回アンソロジーに収録されることになったんです。

――20年前の作品が古くならず評価されたというのは驚きですね。特に、深圳は経済的に大発展を遂げましたが、大きく書き直す必要はなかったのでしょうか?


逢沢明氏: 冒頭で深圳の駅の様子を書いているんですけど、深圳から留学して来た女性に読んでもらって、20年前に書いたものであることは気がつきませんでした。何にも違和感がなかったと。だから年代だけずらせば、ほぼいける。やっぱりフィクションというのは、単なるエンターテインメントじゃなくって、何か普遍的なもの。人間に関する普遍とか、文明に関する普遍とかそういうものを含んでいるのでしょうね。審査員さんたちも気付かないですから。ただ、この作品で入選しないわけがないと思ったら落とされたんですが(笑)。

長編は3ヶ月で書ける!「知的腕力」なら負けない


――やはりその短編は、相当な自信作だったわけですね。


逢沢明氏: 創元社の編集者の方は、「この作品は、応募者の中で一番完成度が高かった」とおっしゃっていました。たまたま研究した文学の構造理論が役立って、それを元に書いていますからね(笑)。でもなぜ落とされたかは言ってくださらない。まあ、だいたい見当がつくのは、一つには年齢が高い(笑)。小説は商業性が重要でしょ。若い年代でデビューしたら何十冊書くだろうけど、僕の年代では、あと5冊も書くのかなというのがあるから(笑)、審査員の方は若い人を選びたがるという傾向があると思うんですね。

創元社さんは、今年で第3回のコンテストで、その前に2回、だいたい若い方を入選とか佳作に選んでいますよね。ところが編集者の方が、「2作目が書けない」って言って悩んでいました(笑)。コンテストをやるのに何百万も毎年かかっているのに2作目が書けない。僕は腕力で書きますよ(笑)。見かけは腕力がなさそうだけど、知的腕力で書く。長編の結末はこうと漠然と持っているだけで、おそらく3ヶ月で書ける。

――まさしく「鉄腕」ですね。


逢沢明氏: いやいや(笑)。僕が若いころ、小松左京さんとか、日の丸SFの方たちがおられて、小松さんは「コンピューター付きブルドーザー」と呼ばれていましたが、その流儀の書き方が大事なんじゃないかなと。今は審査員の方、文芸評論家だったりして、選ぶのも今風なんです。ミステリーなんかでも大した事件が起こらないとか、等身大の日常だけを書いている感じで。ヤングアダルト向けですよね。それだと、自分の身の回りで大したことが起こらないから、数冊書いたらネタ切れおこすはずなんです。僕は1冊書いているうちに、長編アイデアを6つ思いついていますもんね(笑)。今、編集者の方に、「長編ないですか?」って言われて、何かデビューさせていただけそうになっているんですよ。

――それはぜひ読んでみたいですね。長編を書く際はどのようなことを心がけていますか?


逢沢明氏: 僕、ストーリーテリングを重視するんですね。読者との一種のゲームなんです。例えばここでこうなったら、次はこう進むだろうというのが大抵ありますが、スプラッタームービーとかホラー映画もそうですけど、いい意味で読者の期待を裏切る。センスオブワンダーといってSFでもよく使う言葉ですが、ビックリさせるわけです。あとは、現代は文章を読まない人たちがかなり増えて、本を読むといっても漫画ぐらいしか読まない人たちがいますが、やっぱり文章の力といいますか、文章で表現できるものを追求しています。骨格は映画化が可能なエンターテインメントなわけですが、映像で表現できない細部にこだわりまくった描き方をしているんですね。

――長編小説のテーマをあえて一言で言うとどのようなことでしょうか?


逢沢明氏: 当面「文明崩壊クロニクル(年代記)」といったテーマにしようかと思っています。それとフィクションの場合、「愛と死」というのが最大のテーマになりますね。ただ僕も期待を裏切る形で書かないといけないから、今回の長編は「愛が壊れた世界」にしています、表向きはそれははっきり書かないけど、サブテーマとして、主要登場人物たち、みんなが不完全な愛の形しかない世界です。

自炊歴10年以上、リーダーも開発するヘビーユーザー


――逢沢さんは電子書籍のご利用はされていますか?


逢沢明氏: 僕の部屋、あんまり本がないでしょ?1万冊ぐらいスキャンしたんです。

――1万冊を、先生ご自身で?


逢沢明氏: はい。2000年ごろから始めたんですよね。自炊なんていう言葉が出るもっと前です。ハードディスクの容量がどんどん大きくなるから、それにつれて全部入るようになるだろうという想定でやってきました。そしてこれは自分でスキャンしたものを読むために、僕らで自作したソフトなんです(と、ディスプレイに電子書籍リーダーを表示する)。開発に時間をかけている余裕がなかったので、2、3人で半月で作ったソフトですが、ずっと愛用しています。



――ご自分でリーダーを作られたんですか?


逢沢明氏: はい。線を引いたり、マウスでも書き込みもできます。しおりをはさんでどんどん飛んでいったり、同じ本をいくつでも開けられるので目次を見ながら本文を読むとか、ほかのページを参照するとか、無限に何冊でも同時に開いておけます。

――これはすごいですね。商品化する予定はないのですか?


逢沢明氏: それはありません(笑)。ただ、このソフトはPDFに対応していないんです。JPEGですね。そのうちPDFに対応しないといけないかなと思うんですけれども。

――電子化したものはパソコンで読まれることが多いですか?


逢沢明氏: 僕は本を買ってすぐに、バサッと裁断してスキャナーに放り込んで、パソコンで読むんです。なぜかと言いますと、年寄りの事情で、老眼です(笑)。小さい文字が読めない。パソコンだったら見えますからね。最初は嫌がっていた人も、やり始めると、慣れで「いいなぁ」と言っていますね。

――今はハードディスクはどのくらいの容量でしょうか?


逢沢明氏: 今は2テラバイトで持ち歩いていますね。暗号化ディスクにしています。電子化したものが、ほかの人に流れたら大変ですから。数年前、サイエンティフィックアメリカンという有名なアメリカの科学雑誌にMicrosoftの人が、持っている情報全部をコンピューターに放り込むんだというような論文を載せていましたけど、その人は、150ギガバイトしか入れていませんでしたね。僕は本だけで1テラを超えています(笑)。ビデオとかも含めると、何テラあるかわからない。まだ40箱ぐらいゴミみたいな資料が残っていますよ。ほとんど捨てていますけれども、古い雑誌のスクラップとかがあって、時間があったらスキャンしています。最後は捨てるでしょうけど、どこまでスキャンできるか(笑)。

著書一覧『 逢沢明

この著者のタグ: 『大学教授』 『コンピュータ』 『研究』 『小説』 『情報』 『趣味』 『著作権』 『知性学』 『ゲーム理論』 『SF』

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