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世界中の本好きのために

三谷宏治

Profile

1964年大阪生れ、福井で育つ。東京大学理学部物理学科卒業後、BCG、アクセンチュアで19年半、経営コンサルタントとして働く。92年 INSEAD MBA修了。2003年から06年 アクセンチュア 戦略グループ統括 エグゼクティブ・パートナー。2006年からは特に子ども・親・教員を対象にした教育活動に専念。全国をとびまわり年間数千人に講義・講演を行う。2011年の『一瞬で大切なことを伝える技術』は4万部を超えるヒットになった。妻、3人娘と東京・世田谷区在住。早稲田大学ビジネススクール、グロービス経営大学院 客員教授。放課後NPO アフタースクール 理事、NPO法人 3keys 理事、永平寺ふるさと大使なども務める。

Book Information

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電子デバイスは「簡単」すぎるものではなく、子どもたちが試行錯誤したいと思うものを



東京大学理学部物理学科卒業後、ボストン コンサルティング グループ(BCG)、アクセンチュアで19年半、経営コンサルタントとして働いたのち、2006年からは特に子どもたちを対象にした教育活動をはじめ、現在は大学教授、著述家、講義・講演者として活躍される三谷宏治さん。三谷さんに、子ども時代の読書について、また電子とのかかわり方についてお話を伺いました。

大学教授は世をしのぶ仮の姿


――今、K.I.T.金沢工業大学の虎ノ門キャンパスの主任教授、グロービス経済学院客員教授、早稲田の客員教授と、各種NPO法人の理事など、さまざまな活動をされていらっしゃると思いますが、最近の近況について、お仕事内容も交えて伺えますか?


三谷宏治氏: 私はそういう外向けの肩書みたいなものをいくつか持っているんですが、特に大学教授や客員教授のような肩書は、私にとっては「世をしのぶ仮の姿」みたいなものですね。20年近く経営コンサルタントをやったあと、2006年に教育の世界に専念することにしました。もともと社内研修も含めて「教える」ことについては十数年やっていたんですが、教育、特に子ども向けの教育に注力したいと考えました。でも、組織にはずいぶんと長くいたので、個人でどこまでできるかやってみようとも。ただ、あまりにも肩書が何にもないと、みんな「何者?」って思うので、大学教授ならどうかなと(笑)。社会人向けに教えながら、だけどメインは子どもたちや親、教員向けの授業や講演・研修や執筆なんです。私が教える対象は、経営者から子どもまでなんですけれど、例えば、経営学をビジネススクールで教えているとします。でも、その経営学にしても、単に知識ではなくて「考え方」が重要だ、というのが私の講義です。

――思考法でしょうか?


三谷宏治氏: そうですね。基本的には思考法ではあるわけです。大抵の知識なんて、本を読めば手に入る。私が本当に伝えたいことは、知識をどう使うかということや、どう得るかということ。そういう姿勢や方法なんです。それって「技」なんですよね。技は繰り返しやらないと習得できないので、そういう訓練をしようと。特に、意思決定の練習や、発想の練習は、大人になるほど頭がかたかったりするし、日本の教育では家庭も含めて教わることがない。だから、意思決定の演習なんかは、経営者がやっても、ビジネススクールの学生がやっても、子どもがやっても、点数はあまり変わらない。だから実は、私が教えるネタ自体は対象が大人でも子どもでもほとんど変わらないんです(笑)。同じところでみんなが引っ掛かるし、うまくできないんですよ。

――共通のテストみたいなものがあって、大人も子どもも点数が同じくらいなんですか?


三谷宏治氏: そうです。特に発想系の問題なんて、大人になればなるほど、強い常識にとらわれてしまって引っ掛かるんです。自分は人よりは発想力がある、なんて人は私の発想力研修を受けると「こんなに自分の頭が固かったとは・・・」、と相当落ち込むみたいです(笑)

入院がきっかけで、浴びるように本を読みはじめた


――幼少期のころから読書体験も交えてお伺いしたいんですが、小学校の入学直後に、入院された時に100冊読破されたとか。




三谷宏治氏: ちょっと珍しい骨の病気で、いきなり小学校の入学式直後に40日間入院をすることになりました。特に最初の1週間ぐらいは1日中ベッドの上にいなくてはなりませんでした。それで、先生方がお見舞いに来てくださって、差し入れに本をくださったんです。いっぱい。体は元気なんです。動けなかったというのではなく、足に負担をかけちゃいけない、歩いちゃいけないということで、しょうがないからもらった本を読んでいたんですけど、それで結局どんどん本を読んじゃうから、追加を先生方に持って来ていただいて、最終的に40日間で100冊。1日2冊半くらい読んでいたわけですね。小学校に入った直後なのに、なぜ本が読めたのかがよくわからなくて、先日母親にも聞いたんですが、「よくわからない」って(笑)。たぶん、2歳上の姉にくっついて、なにやらやっているうちに、自然に読み方を覚えちゃったと思うんですよね。本当に本が好きで、小学校4年の時に1週間で30冊以上読んだことがあるんです。たぶんそれが人生の中で最高記録です(笑)。全部学校の図書室の本なんですけれど何をしていたかというと、朝図書室へ行って借りて、午前中の授業の間に1冊、2冊読んで。

――授業の間にですか?


三谷宏治氏: そう(笑)。昼休みに行ってまた借り直して、午後の授業でまた読んで、帰る時にまた借り直して家で読んで、という風なことをやると、1日に4~5冊ずつぐらい読めるので、1週間で40冊。

成績がよくても、本が読めても「リアル」なコミュニケーションが一番だった中学時代


――クラスメートから、「すごいね」とか、いわれましたか?


三谷宏治氏: いや、別にという感じ(笑)。本当に田舎の学校だったので、本を読むことが偉いことでもないし、やっぱり一番偉いのはリーダーシップのあるヤツ、つまりお山の大将が一番偉いわけですよ。中学校もやっぱり田舎の普通中学校なので、1番偉いのは、当時スポーツ万能、生徒会長でイケメン長身という、バスケットボール部のエースでした。彼はその上成績もよかったですけれど(笑)。そういうスーパーマンがいて、彼を頂点にして、私は階層でいうと、3階層目か4階層目でしたね。お山の大将もいれば、野球部のエースもいればという中にいたから、価値観がそんなにゆがまずに済んだのかなとも思いますよね。別に本が読めることが偉いことでもないし、知識がただあることが偉いことでもない。特に実家は八百屋だったので、「お手伝い至上主義」でした。子どもも、お店の手伝いや家事の手伝いをやることこそがすべてで、勉強しろなんて一言も言われない。机上の勉強なんかより「リアルな体験こそが一番」だという価値観がしっかり出来たのが、逆に本好きとしてはよかったかもしれません。やはりリアルなコミュニケーション、経験みたいなことが大事。だからこそ、本を通じての想像力がもっと伸びるのです。

SFが今も昔も大好きな理由


――たくさん読まれた中で印象に残っている1冊はございますか?


三谷宏治氏: 好き嫌いでいったら、私は小学校・中学校・高校を通じて、とにかくSFが好きだったので、読書経験が相当偏っているんですよ。高校を卒業して東京で浪人した時に、あんまりにも暇だったから、SF以外のものに手を出したんです。それが最初は、司馬遼太郎の『竜馬がゆく』(文春文庫、全八巻)で、1日1冊ずつ読んで、1週間で読了しましたね。そこから時代物や歴史書への扉が開かれました。ただ、子どものころに読んだ本で、この前買い直したものがあるんです。私が小学生のころに出た本なんですけれど、『合成怪物の逆しゅう』(岩崎書店)という翻訳本です。復刊されるぐらいなのでとても人気が高い本でした。生体コンピュータを研究する若い科学者が、殺されてしまいます。意識が戻ったら脳だけにされて、生体コンピュータの一部になっていました。死んだ人間の脳をコンピュータに使っていたはずが、実はその脳たちは「生きていた」というわけですこの陰謀をあばくために何とかしようと思って、彼は合成生物を創り出します。目と口しかないスライムみたいなものですが、自分でコントロール出来る生命体です。そいつらの活躍で、何とか結果的には陰謀をあばくのですが、途中で自分の恋人も同じ人たちに殺されてしまい、二人とも脳だけの存在になってしまう。最後に二人で相談してこの生体コンピュータを破壊することにします。つまり「死のう」といって自爆するわけです。もう、最後がショックで(笑)フランダースの犬じゃないけれど、「主人公が最後死ぬのか!」(笑)ということでものすごい衝撃を受けました。

SF作家は、根本的な問いに、何らかの答えを出そうと物語を書く


――その本は子ども向けなんですか?


三谷宏治氏: 完全に子ども向けですよ。生きるってどういうことなのかとか、人ができることの恐ろしさとかが伝わってきて、すごい衝撃がありました。それで、すべての本で何が一番よいか?と聞かれたら、それはなんと言っても夢枕獏さんの『上弦の月を喰べる獅子』(早川書房)という本ですね。これもSFです。

――なぜSFがお好きなのですか?


三谷宏治氏: 「好きだから好き」なんです(笑)。ただよく考えてみると、SFって人間にとって根本的なテーマを扱っているから好きなんですよね。例えば、さっきの作品では、「生命って何だ?」がテーマですし、よくあるSFの題材で『未知との遭遇』とかの異星人とのファーストコンタクトものがありますよね。あれは「コミュニケーションとは何か?」がテーマです。、まったく共通の価値観とか経験を持たない者同士が、どうやったらコミュニケーションできるんだろうか?というような、コミュニケーションの根本そのものを問うているわけです。普通の小説では、そんなに極端な状況を前提にできないから絶対書けない。コミュニケーションの断絶とかいったって、それは地球上に住んでいるわけだし、同じ炭素生物なわけだし、そういう意味ではすごい条件が似通った中での断絶なわけですよ。だけどSFであれば、もっと極端な断絶を描くことができる。もっと純粋にテーマそのものをえぐり出すことができる。SF作家は、究極の問いに対して究極の答えを出し続けてきているわけじゃないですか。それがやっぱり素晴らしいなと思いますよね。『上弦の月を喰べる獅子』という本は、夢枕獏が根本的な問い「人は幸せになれるのか?」を問うている。そのテーマに対して、彼は、ある答えを出すわけです。その出し方も、物語の進め方も素晴らしい。読み終わった後に「自分は答えを得た」という気にもなれます(笑)。内容は全部しゃべれないので、この800ページを是非読んでください(笑)。

――この本は、書店さんで手にとって購入されたのですか?


三谷宏治氏: たぶんこれはそうだったと思いますね。

――今でも書店には行かれたりしますか?




三谷宏治氏: 行きますよ。でもAmazonもすごくよく使います。「この本を買っている人は、こんな本も買っています」みたいな関連付けがとっても役に立ちますね。関連するものを追っていくと、深くなったり広くなったり、つながりの中で関連性の強いものが手に入る。だけど、まったく関連しないものも好きですね。中学生のときに家で福井新聞をとってたんですけど、「全国紙というものがあるらしい」と知って、「それをとってくれ」と親に頼んで朝日新聞を別にとってもらいました。その2つを毎日端から端まで全部読むというのをやっていたんですよ。全部読むとたぶん1時間半ぐらいかかるんですけど(笑)。朝読みはじめて、午後家に帰ってきてから読んで、みたいなことを毎日やっていたんですね。それはやっぱり自分自身に「幅」を与えたと思います。新聞には、自分がまったく興味がないような話まで載っているわけじゃないですか。小学生が株価なんかどうでもいいですよね。だけど、そういうトピックが目には入ってくるわけだし、取りあえずパラパラしたら、何か知っている企業の業績の話が目に入ってくるし、地元の話題や、芸能人の話とか、普段全然気にしないようなことすら目に入るかもしれない。だから幅があるわけです。強制的に自分を拡張する感じですかね。インターネットはそんなに深くはないけど、何かをちょっと深めるには楽だし、調べものも楽ですよね。だけれども、自分の興味の範囲内にとどまりがち。書店も新聞と同じで、リアルな書店をグルっと回ったらあらゆる本がある。ネット書店には本は山ほどあるけれど、一覧性もテーマ性もない。書店や図書館をグルグル回るのは、私にとってはとっても楽しいことですね。今まで知らなかったものを見つけるという機会もよく生まれますし。

書店は売りたいと思ったら、買いたくなる仕掛けをしてほしい


――昔と今と比べて、何か本屋さんが変化したなと思うところは何かありますか?


三谷宏治氏: 変わった部分でいえば、書店員さんが色々手書きのポップをつくるとか、そういうのが増えてきたなと思います。でも本当に売りたいんだったら、もうちょっと頑張らなければいけないと思います。どこの書店でも同じ商品があるわけだし、Amazonでも楽天でも買えるし、値段も変わらない。だからもっと、買いたくなるような仕掛けをしてほしいですね。そうじゃないと、大きい書店ですら、買おうっていう気にならない。書店員さんたちが、本の数が多すぎて読み切れないんだと思うんですよ。それに、小さいお店はこのままだと、スマートフォンに負けちゃいますよね。小さい書店って、何のためにあるかっていったら、ちょっと立ち寄って、ちょっと暇つぶしの本を買うためにあるわけじゃないですか。スマートフォンは今、大人も子どもも、その暇つぶしの時間を全部吸い取っているわけですよね。だから暇つぶしに読む本、すき間時間に読む本とかっていうような本が全部売れなくなる。ちょっと書店に立ち寄って買うみたいな動きそのものがなくなってしまって、駅にくっついている小さな書店とかは、非常に苦しくなるんじゃないでしょうか。

執筆するのはいつも自宅。完ぺきな環境をデスクにととのえる


――続いて執筆スタイルについてもお伺いできればと思います。普段の執筆される場所で、特定の場所はあるんですか?


三谷宏治氏: もう100%自分の書斎ですね。昔からそうです。自分の書斎が一番快適につくってあります。だからそこでやるのが当然です。

――書斎はどのようなお部屋ですか?


三谷宏治氏: まず、机が大きい。普通の机じゃなくて通販で安いキッチンテーブルを買いました。だから幅160cm、奥行き80cmもある大きな机なんです。それだけで便利なんですよね。ガンガン本を積んで、21.5インチの液晶ディスプレイが2つ並んでいて、完ぺきなオーディオ環境がある(笑)。高性能のパソコンがあって、まったくストレスフリーだし、南側の部屋で、正面と左右に窓。左右の壁は窓のほかは全面上から下まで全部本棚です。自分が買ってきた本で主要なものや、自分が面白いと思ったものが開架されているんです。電子デバイスの中に入っていてもいいんですけれど、ただ、刺激にはならないですよね。でも、それも数年もすれば、壁一面がディスプレイになって、バーッと、「あなたが持っている本」みたいな感じで全面に出ますとかになったら、変わると思いますけどね。そこで、本棚を見ながら、「ああ、こんなネタもあるかな」とか、パソコンで簡単に物事が調べられて、同時に刺激が受けられるという環境にしています。

――その書斎をつくられてからは長いんですか?


三谷宏治氏: そうですね。娘が3人いるんですけど、親子5人でずっと3LDKのマンションに住んでいて、夫婦の寝室があって、家で一番いい南側の部屋はお父さんの書斎(笑)。子どもたちは3人で5畳半ぐらいのところにずっと住んでいましたよ。「お父さんの仕事が絶対なんだ」と、「それは仕事をする場所なんだから一番大事なことだ」としていましたね。子どもたちのためにそれを明け渡すなどありえないですし、そんなことは議論にものぼってこなかったですよ。なんせ「お手伝い至上主義」ですから(笑)

――人がなかなか本を読まなくなったとか、そういったこともいわれますが、家庭にそういった場所というのは大事でしょうか?


三谷宏治氏: 弟が近くに住んでいて、マンションをリフォームするというので、「私にやらせて」といったんです(笑)。間取り案でやりたいことがあったんです。廊下とそこにつながるベッドルーム3つにあったデッドスペースを寄せ集めて2畳分の中間の部屋をつくって、そこに薄い本棚をできるだけ造り込みました。みんなの本が置ける場所です。お父さんの本もあれば、お兄ちゃんの本も、妹の本もある、お母さんの本もあるっていう「わが家の図書室」なんですよ。だから、お互いが何を読んでいるかわかる。子どもが親の本を読むこともできる。本と親しむみたいな場所が家庭にあるっていうのは、とても大事だと思います。

電子でも紙でも、一番大切なのは「文字を読むこと」



――電子書籍のお話をさせていただきたいと思います。三谷さんは電子書籍のご利用ってされていますか?


三谷宏治氏: 基本的には、今はしていません。いくつか興味があったので買ったのは、科学雑誌の『ニュートン』が安く出したので、試しに使ってみようと思って買いました。あと、村上龍さんが出された『歌うクジラ』もすごく面白そうだったので買いました。あの音が入っての新しい表現、本とは呼べないようなレベルのものができるんだったら、価値があると思いますね。

――新しい表現としての電子書籍ですね。


三谷宏治氏: 私は、リアルな本の感触も重さも好きですが、ただ一番大事なのは、文字を読むことです。人間の脳の発達上でいえば、文字を読むことってものすごく重要なんです。文字を読むことは、図形の認識から始まって、図形から意味が出てきて、その意味を組み合わせてはじめて頭の中で意味がわかる。だから頭の中のいろんな分野を使う。人間の特性って、色々なものを組み合わせることなんです。人間というか今のホモ・サピエンス・サピエンス、現人類の最大の特徴はそれなんですよね。脳の機能1個1個、つまり見るだけとか話すだけではなく、連合野というんですけど、「つなげる」という部分がすごく大きくて、その力が今の人間を成り立たせています。そしてそれは文字を読むことにおいて、最大限に発揮される。なので、文字を読むことは訓練上も、とっても大事なんです。だからそれからいえば電子書籍であろうが紙であろうがどっちでもいい。

――本質は文字を読むことなんですね。


三谷宏治氏: そうです。ただ、最初に話していた「体感」も大事だと思うので、紙の本っていいよねって思っています。装丁も美しいし、紙質も活字もひとつひとつオリジナリティがある。そういったことが、人の五感を刺激し、色んなことを「つなげ」させるのです。もちろん、スペースの問題もあるし、電子化されていれば中身の検索も簡単なので、私にとっては電子化されているっていうのはとっても意味があるなと思いますよね。一番良いのは紙の本に電子データがついてくるハイブリッド型かな。

――教育者の立場としての、電子書籍に対して何か思うところはありますか?


三谷宏治氏: 私は、そんなには何かが変わると思っていません。iPadを子どもたちに配って「みんなが使っています」とか、そんなのは当たり前。とても簡単に使えるようにもともと作っているわけじゃないですか。だから、私は逆に、みんなにお願いしたいのは、「もうちょっと使いにくくしてくれ」ということです。使うのが簡単だからみんなに広まるのかもしれないけど、それによって子どもたちがどうなっていくかというと、クリックして動かないと飽きちゃうんですよ。でも例えばリアルなブロックだったら、もっと色々なやり方があるから、こっちはどうだ、あっちはどうだって色々考えて挑戦するじゃないですか。けど、あまりに簡単なことに慣れてしまっていると、動かなかったときに、即興味を失っちゃう。そうすると、本当に反応が単純になるんですよね。だから操作をもっと難しく、楽しくしてほしい。これから子どもたちが手にいれなくちゃいけないことは、情報をうまく探す力ではなくて、「考える力」だし、その中でも「色々と試行錯誤する力」です。だから、わかりやすさに走るだけじゃなくて、もっと子どもたちの試行錯誤能力を引き出すものを作ってほしいですね。

たくさんの人に本でリアルな感覚を伝えていきたい



――では最後に、今後の活動などを教えていただけますか?


三谷宏治氏: 2006年にアクセンチュアを、コンサルタントをやめて、それから約6年間、平均年1冊ぐらいのペースで書いていたのが、2011年には4冊出版されました。2012年は2冊出し、2013年は3冊出版の予定が決まっています。だんだん本当の作家さんたちみたいになってきたぞ、という感じです。私は「本」というのは、私は本当に稀少で特別な手段だと思っています。先ほどの体感ということも含めて、リアルなものをどれだけ伝えられるか、読者に試行錯誤をどれだけさせられるかに、チャレンジしています。リアルにちゃんと接することができるのは、どんなに頑張っても1年に数千人です。けれども本は、うまくいけば何万人何十万人という人にものごとを伝えられる。講演だと1時間だけれど、本だったら何時間も考えてもらえる。だから、多くの人たちに、何回も読み返してもらえるような、本当に役に立ったなと思えるような本を書き続けていきたいと思っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 三谷宏治

この著者のタグ: 『コミュニケーション』 『考え方』 『教育』 『子ども』 『本屋』 『書店』 『知識』 『経験』 『発想力』

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